批判と言うのは気付かない内に精神面の重しとなっているものなのだと思い知りましたよ。以後は気を付けたいところです。
今回は半端にギャグ回です。私の書きたいように書いたらこうなる、と言った感じの回ですね。バカっぽいユウキと真面目なユウキ。
そして最後はやっぱり冴えないユウキで締めてこそ「旅路の終わりは」なんだと言われる作品にしていけたら良いなと思います(^○^)
「いくぞ、妖精王。聖剣の準備は十分か?」
ボクは笑い、相手も嗤う。お互い退くことなどあり得ない。ただ一閃、一刀に賭けてボクはこいつに勝つ! 勝たなくちゃいけない! 勝つ以外に世界と人類と彼女の命を守る手段がない以上、勝つよりほか道はない!
「輝けるこの剣こそは、過去現在未来を通じ、戦場に散っていくすべての兵たちが今際のきわに懐く、悲しくも尊きユメーー栄光という名の祈りの結晶。その意志と誇りにかけて、ボクは必ずおまえを討つ!
祖はーーエクスカリバーーーーーーーン!!!!!!!」
チュドーーーーーーーーーーッン!!!!!!!
粉々に吹き飛び、この世界に永久の別れを告げる人類最強の妖精王。
「友よ・・・安らかに眠れ・・・」
寂しげにつぶやいて剣を鞘に収めたボクは、振り返ることなくその場を去って・・・・・・しばらくしたら戻ってきました。
「いやー、やっぱり迫力が違うなぁー! VRMMOでやるロールプレイは! ソードスキルで見様見真似エクスカリバーを模倣できちゃうなんて素敵すぎ! マジ惚れちゃいそうかも! 結婚して! どこの誰が作ったシステムか分からないんだけどさ!」
一頻り大声で喜びを表現しまくりながら、ボクは遊びで使った小道具のお片づけ中。なにごとも後始末が一番大変です。
でも、やる。やっちゃいますよね楽しいから。楽しすぎるから。
人にもよるけど、ネトゲをやるならボクは断然ロールプレイして遊びたい!
SAOでは重なっちゃうけど、本来なら性別も年齢も関係ないんだし男と男がゲーム内で結婚するのだって全然ありだ! だってリアルとネットは別物だもん!
ネカマをやってどこが悪い! 女の子より可愛い男プレイヤーキャラクターなんて、夢があって良いじゃないか! リリィさんみたいに! リリィさんみたいに!
目指すのならば、リア充よりもネト充を選ぶのが正しいゲーマーの道だとボクは信じてる!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ユウキ・・・・・・?
こんな場所で、一人でなにやってるの・・・・・・・・・・・?」
「ぴぎゃああああああああああああっ!!!!!!!」
ずざざざざざざざざざっ!!!!!!!
盛大に砂埃を巻き上げながら全速力で後方へ飛び退くボク!
見られた!? 見られちゃった!? 人として一番見られたくない名珍場面を他の人に見られちゃったのかなボクって奴はぁぁぁぁっ!?
しかも! 肝心の目撃者が今一番気になってる女の子って厳しすぎるだろ人生の難易度的に! SAOなんて目じゃないレベルで攻略難度が急上昇しちゃった気がする目の前の美少女フェンサーちゃんは周囲を見渡してからボクへと視線を戻すと、生ゴミでも見下すような目でボクを見下ろしながら静かな声で問いかけてくる!
「・・・・・・・・・・・・アルゴさんから買った情報のひとつに、穴場すぎてベータテスターですら誰も知らない隠れすぎた名店NPCレストランがここら辺にあるって聞いてきたんだけど、ユウキはそのお店についてなにか知ってる?」
「・・・へ? か、隠れた名店レストランですか? そりゃまぁ、ここいら辺はボクの縄張りというか秘密基地というべきか、とにかくそんな感じの場所だからある程度の目星ぐらいなら付けられるけど?」
「そう、じゃあ今から私を案内して。お代は、店で供されてる『ストレンジブル・ホールケーキ』で構わないから」
「えっと、その・・・アスナさん? 聞き違えた可能性もありますが今、案内役を頼まれたボクの方がお代として奢ることを強要された様に聞こえてしまったのですが・・・?」
「・・・『祖はーーエクスカリバーン』・・・・・・」
ぎゃあああああああっ!!!!!!!!
「奢ります! 奢らせて下さい! 店まで案内しますし、ケーキは何個でも奢りますから忘れて下さいお願いしますアスナ様ぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」
ボク、全力で土下座! デスゲーム始まって以来もっとも本気で命の危機を感じた瞬間が今この時だ! 今ボクは、本気で死の危険を感じてる! 肉体的な死じゃなくて、社会的な死だけどね!
デスゲームをクリアして現実に帰還したら、待っていたのはゴミでも見るような視線でボクをみる沢山の周りの人たちでしたなんて死んでもイヤだ! むしろ、死んだ方がまだマシだい! 死ねば終わるデスゲームと違って人生は長いんだ! こんな事ぐらいで終わらせられて堪るものかぁい!
生き延びてやる! 絶対に生き延びてやる! 生きて必ずSAOの一般プレイヤーたちが作る社会に帰還してやるからなぁぁぁぁっ!!!
「・・・・・・とりあえず店まで案内してくれながら、事情を説明して。内容次第では情状酌量の余地を認めて執行猶予ぐらいはおまけで付けてあげるから」
「ははーーっ! ありがとうごぜぇますだアスナ様ーーっ! このご恩は忘れません! 一生ついて行かせていただきまっす!」
そして誰にも告げ口しないか、一生見張らせていただきます! こんなにも無様な醜聞は、誰にも広めさせたりなんかしない! 絶対に! 絶対にだ!
こうしてボクの、アスナ説得クエストが幕を開けたのだった!
こいつぁ、今までにないほど激しい戦いになりそうだぜぇぇっ!!
ーー今更すぎるけど、ここは第二層主街区《ウルバス》。その外れと真ん中辺りの中心辺りでどっちつかずな場所に位置してる、存在意義不明な裏路地。
要するにMMOの街には必ず存在している『背景の一つにすぎなくて何の役にも立たないんだけど、何故か入れて泊まることもできる宿屋』の街区版。
茅場晶彦の熱意と執念じみた情熱が詰め込まれまくったSAOには、意外とこういう場所が多く設定してある。
多分だけど、これらの設計開発に茅場晶彦は携わっていないんだろうね。もしかしたら関わってすらいなかったのかもしれないけど。だって雰囲気が周りと合わなすぎてるもん。
彼は今回のSAOデスゲーム化で世間ではいろいろ言われちゃってるんだと思うけど、それでもSAO開発にかけた情熱と努力量だけは誰にも否定する権利はないんだと、ボクでさえそう思えるほど細かいところまで丁寧に作り込まれてる。
NPCの台詞ひとつ取っても創意工夫が見られる完成度のゲーム世界に「こんにちは旅人さん。今日はいい天気だね」なんて言葉を、季節も天候も何一つ問わずに言い続けるだけのNPCを配置するなんて有り得るはずないじゃないか。
日本人はオタク気質で、クリエイターは趣味人の集まり。
プログラマーの職場環境が改善しなくなってから数年が経っているけれど、未だに目指す人が消え去る予兆はどこにも見あたらない。そう言う人たちにとって自分の作る作品に個人的な趣味趣向をぶつけるのは多分すごく正しいことなんだろうと思う。それこそ茅場晶彦が自分の邪魔にならない範囲までならばって、渋々黙認せざるを得なくなるくらいには。
その結果生まれたのがこの場所・・・だったんじゃないのかなぁ? 多分だけどね? 見つけたときには小躍りしたし、ボクだけの秘密基地だと認定してあちこち遊び歩いたりはしたけれど存在理由についての情報は何ひとつとして得られなかった。だから推測しかできなかったし、ボク考えるの苦手だし。
とにもかくにも目当てのお店(多分だけどね? アスナが覚えてたのケーキに関してだけで後は丸投げされちゃったから候補絞るの結構大変でした)に到着したボクたちは席に着くと、ケーキを注文してから色々近況報告をすませてた。
「へぇー。キリトって、まだ黒ずくめを続けてたんだ。てっきり、ボクが狩りしてる間にやめてるもんだと思ってたよ」
「あの人のアレは、もう癖みたいなものね。それか、もしくは垢。擦っても擦っても落とすことのできない自分で心にかぶせた黒い垢みたいな物なのよ。きっとね」
言い方はきついけど、見るからに上機嫌なアスナの調子に釣られるようにしてボクも満面の笑顔。終始なごやかムードで食事会を終えたボクたちはお代を払って店を出て(支払いはボクです。これは仕方ないよね、うん仕方がない。大丈夫! 元は取れてる!アスナとお茶できて、元はじゅうぶん取れたんだから大丈夫!)現在はアスナの装備強化のために町中をうろちょろしております。
だって高いんだもん、あのケーキ。あれで得られたバフを無駄にするなんてワリカンでもなければあり得ない。え? さっき大丈夫って言ってただろうって?
うん、言ったよ? だからこそ今、大丈夫にするために無駄金として溝に捨てた気分にならないためにも全力で良さげな鍛冶職人さんを捜してるんじゃん。
正直、ホールケーキ食べた後でフィールド戦闘だけは勘弁してほしいんだよね・・・普通に吐くと思うよ、甘党のボクでさえも・・・。
「食事で得られた《幸運ボーナス》のバフで武器強化の成功率アップ・・・本当に影響するものなの? 実際に強化するのはわたしじゃなくて鍛冶屋さんでしょ?」
「そだよ? でも強化してもらうよう依頼するのも、お金払うのもお客さんの方なんだし、どうせ確率自体に変動ないなら出来るだけ気分良く払って、気分良く打って貰った方がいいと思わない?」
「・・・なるほど。そう言う考え方もあるのね・・・ある意味で勉強にはなったわ」
「まぁ、自己満足なんだけどねー。ゲームはみんなで仲良く楽しくが、ボクのモットーですから♪」
軽い口調で会話しながらウルバスの東広場まで来て、ようやく鍛冶屋さんを一人見つけたよ。ふぃ~、長かったなー。
裏路地から出て主街区へと続く道のりは凝り性なクリエイターたちのせいで、無駄に分かりにくい。慣れてるから迷いはしないけど、それでも正しい道を歩まないと即座に迷う程度には混沌としちゃってる。複数人のアイデアを無理矢理凝縮でもしたのかな?
ま、楽しかったからいっか。それよりも今は強化強化っと。
あ、ボクの分は無理です。インゴットが足りてません。この前投げまくったナイフで大分すっちゃった。てへぺろ♪
「こんばんは」
「こ、こんばんは。いらっしゃいませ。
お、お買い物ですか? それともメンテですか?」
アスナに話しかけられた鍛冶職人のプレイヤーさんが接客を開始するけど、なんだかずいぶんと違和感を覚える反応だなーと感じる対応だった。
本来MMOでの職人プレイはロールプレイヤーが結構な割合を占めている。ゲーム攻略には必須だし、前線に立つメンバーにとっては有り難いことこの上ない存在だけど自分自身が前に出て戦えない職人プレイでみんなを支えたいって気持ちは義務感だけで成立するものじゃないはずなんだ。
それこそリズベットちゃんみたいに、将来的にはリアルでお店を持ちたいって言う個人的願望でも入ってなければ接客業は意外と難しい。特にネット世界ではね。
言いにくいことだし言いたくもないことなんだけど、心ない発言や誹謗中傷はネットの世界では常識であり醍醐味だ。それがイヤならやめればいいんだし、イヤなことがあるから細やかで暖かい一言がたまらなく嬉しいと感じる人だってとうぜんいる。
だから性格が奥手だからって職人プレイをしているのは、別に不思議じゃない。
でも、この人の場合は微妙に変だ。印象と見えてる実績に差が出過ぎてる。
この人のオドオドした態度は、ハッキリ言って周囲のプレイヤーに嘗められやすい。足元見られるくらいならまだしも、ボッタクられることだって当然あるだろう。
でも、彼の身なりは相当に良い仕立てをしてる。どう見たって露天業を営んでたリズベットちゃんと同じ商売やってるとは思えない。エプロン姿で戦場に立っても大丈夫なくらい安定した力強さを感じさせてくる装備品だ。
一方で彼は、妙に接客が消極的だ。
アスナの「武器の強化をお願いします。ウインドフルーレ+4を+5に、種類はアキュラシー、強化素材は持ち込みで」と言う言葉に対して、困ったように眉を寄せてから「は、はい・・・素材の数は、どれくらい・・・?」注文確認を行って「上限までです。鋼鉄版が四個と、ウインドワスプの針が二十個」その答えを聞くなり更なる困り顔を浮かべてから結局は依頼を受け入れる。
「解りました。それでは武器と素材をお預かりします」
「お願いします」
そう言って受け取ったウインドフルーレを、広げられてるカーペットの上に置かれた小さな鉄床の奥に設置されてる携行型の炉を製造モードから強化モードに変更してから、さらに強化の種類を固定して受け取った素材を流し込む。
その一連の淀みない挙動が、ボクの不信感をますます高めていく。
おかしい、絶対に変だ。何かあるとしか思えない。
ボクがそう確信したのには理由がある。余りにも彼の様子が手慣れているのに対して、その接客態度はお世辞にも上等とはいえないレベルのものだったからだ。
人柄は微妙だけど、腕がいいから売れている。その可能性もなくはないけど、だとしたら何で売り子を代わってもらわないんだろう?
性格的に売ることには向いてない、でも職人プレイは楽しみたいと言うならリズベットちゃんでも売り子に雇えば済む話だ。彼女みたいに売れてないから雇うお金がないと言うなら話は分かるけど、この人の腕と設備なら新人職人プレイヤーを弟子代わりに雇うことくらい簡単なはずなのに、どうしてそれをしようとしないのか?
考えられる可能性として一番有力なのは、どこかのギルドに所属している後方支援担当である可能性かな。これなら疑問の大部分は解消できるし。
でも、そんなボクの願いはカァン!カァン! とリズミカルに響いていた金属音が途切れて鉄床の上に置いてあるレイピアが一瞬眩く輝いた光によって儚く消えた。
失敗するはずがない、そう言い切れるだけの高確率な賭けで失敗した。
腕のいい鍛冶職人が。ギルドに所属していて裕福な暮らしをしているらしい鍛冶職人が。性格的に接客業には向いてないのに売り子を兼業している鍛冶職人さんが犯した致命的な大失敗。
ああ・・・と。ボクは思わず天を仰いで嘆きの言葉を口にする。
これはもうーー確定だな、って。
周りに誰か一人でも見物客がいてくれたなら、見過ごす口実が出来たのに。悲しいまでに今のボクたちは広い広場の中で三人ぼっち。
修理不可能な破片となって空気に溶けて消滅していくアスナの愛剣“のような物”の、最後の欠片が消えると同時に鍛冶屋さんがハンマーを投げ出して何度も何度も頭を下げはじめた。
「す・・・すみません!すみません! 手数料は全額お返ししますので・・・本当にすみません!」
連発される謝罪に当事者のアスナは目を見開いたまま反応しない。
そしてボクは、心がどんどん寒くなっていくのを実感してる。
今のはダメだよ鍛冶屋さん。完全に墓穴しか掘ってない。武器はともかく費やした素材の相場について、職人プレイヤーが知らないはずがない。それなのに“手数料は全額お返し”なんて言うのは不味すぎる。
それじゃあ完全に・・・・・・“詐欺商法の自白”にしかならないよ鍛冶屋さん・・・。
「あの・・・本当に、何とお詫びしていいのか・・・。ーー同じ武器をお返ししますって言いたいところなんですが《ウインドフルーレ》は在庫してなくて・・・。せめて・・・ランクは下がっちゃうんですけど、《アイアンレイピア》をお持ちになりますか・・・?」
鍛冶屋さんの提案に一応アスナの顔色を伺ってみたけど無反応。
仕方がないなとボクはお腹を決めて前へと踏みだしてアスナに一歩近づくと、
「アスナ、ウインドウ出して。可視モードで出してくれたら後はボクがやっておくから」
「「・・・え?」」
アスナと、それに何故だか鍛冶屋さんからもハモって疑問の声を投げかけられながら、ボクはウインドウに表示されてるお馴染みの装備フィギュアを念のため一瞥して確認してからウインドウを操作していき、どんどんどんどん深層へと向かって降りていく。
やがて辿りついた目当ての場所《コンプリートリィ・オール・アイテム・オブジェククタイズ》。
はぁ・・・と、ため息をつきながらイエス/ノー・ダイアログを出現させると
「イエスで」
と一言だけ答えてからボタンを押して、疲れた体と心で背後を振り返ったら、
「あっ」
ーー鬼が、出た。
ガランゴトンドスンガチャンチャリーンボサットスッバサッパサリフワフワ。
多種多様なサウンドと共に町中で東広場一面に実体化されて積み重ねられていく、衣服と下着の山、山、山・・・。
そして山の向こう側では、御山を支配しているこわ~い女王様がもんのすごい顔してボクを睨んでおられましたとさ。
これはもう・・・終わったな。いろいろと。
覚悟を決めて、諦めもついたボクは下着の山を発掘してウインドフルーレを見つけてからアスナ様の元へと持参して片膝を付き、
「どうかこれで介錯を」
「良い覚悟ですね。じゃあ早速、私と同じだけ恥をさらしなさい」
「・・・遠回しに殺してってお願いしたのに! アスナの意地悪ーーーっ!!!」
「わかってたから罰したんだと気づきなさいよ、このアホの子はーーーっ!!!」
こうしてボクたち美少女剣士二人による下着の山での死闘が幕をあけたのであった!
「あのー・・・・・・アインクラッド初の《強化詐欺師》である僕の処遇はどうなさるおつもりなのでしょうか・・・?」
「「うっさい! 今取り込み中だから後にして! 今は眼前の敵を打ち倒すのみ!」」
「えぇ~・・・・・・」
久しぶりなのにおバカに続きます