旅路の終わりは、夢の始まり   作:ひきがやもとまち

11 / 46
前回の更新まであまりにも間が空き過ぎたので、今回は初心に帰って短く早くを前提に書きました。そのせいで短いです。

今度、短編連鎖で「ビキニ・ウォリアーズ」とか書いてみたいな~と思っているので、その実験も兼ねてます。
お髭のネズミがメインの回です。ヒロイン役ならともかく主役級の活躍するのは珍しいですかね?

軽い口調で命と向き合い続ける、ネズミの生き様を見よ!(熱血マンガ風)


10話「幕間・ヒゲの信念」

「ーーとまぁ、あの後でいろいろ検討してみた結果なのですが」

「はぁ」

 

 僕こと、ギルド《レジェンド・ブレイブス》の一員である・・・いや、一員に置いてもらっている鍛冶屋のネズハは、目の前で「こほん」と取り繕うように軽く咳をついてから語り出した亜麻色の髪の女剣士ーーアスナさんと言うらしい。今さっき聞かされたーーを見ながら横目で黒い髪の少女のことも省みる。

 

「・・・あの・・・彼女は放っておいていいんですか? なんだかスゴくかわいそうに見えるんですけど・・・」

「気にしないでください、置物です」

「でもーー」

「置物です」

「・・・・・・はい、わかりました。置物ですね。置物だと言うことで納得させていただきます・・・」

 

 有無をいわさぬ調子のアスナさんを前にして、裁かれるべき身の上の犯罪者に過ぎない僕にはこれ以上何も言う資格がない。

 

 せめて冥土の土産として、シクシク涙を流しながら「ボクは友達に恥をかかせた悪い子です。えっちでごめんなさい。罰として廊下に立ってます」と自らの手で書かされた看板を胸に抱き、パンツ一丁で広場の隅にたたされている彼女のちたーーいや、麗しい姿を目に焼き付けながら逝くとしよう。

 

「・・・まぁ、事情はわかったけどサ。も少し踏み込んで詳しく解説させてもらうゾ?

 これは商売じゃなくて善意の救済を目的としてるから金は取らない。だからその分、遠慮容赦なく真相を暴かれても我慢しろヨ?」

 

 彼女たちの知り合いで「こう言う時に頼りになりそうだから」と呼び出された、顔に動物を模した三本髭を描いてあるアバターの、女性なのか男性なのかいまいち判然としないアルゴというらしいプレイヤーさんが少しだけ反応に困った様子で頬をかきながら、僕を含む《レジェンド・ブレイブス》の事情について簡単に説明してくれた。

 

 ーー正直、驚きを通り越して愕然とさせられた。

 

 いったい彼(彼女?)はいつ頃から僕たちの犯罪行為に気付いていたのだろうか?

 その点に関してはボヤかされたが、その情報力が半端じゃないなんてレベルじゃない事だけは痛みを伴う真実の暴露によって教えて貰えた。

 まさかこんなにも早い時点で鍛冶屋が《クイックチェンジ》のMobを習得してるなんて誰も思わないだろうーーそう言う前提で始めた武器強化詐欺だったのに、彼女は(彼は?)もう一段階上まで想定した状態で僕たちをずっと監視し続けていたらしい。

 

 なぜ知っていて犯罪行為を放置したのか?

 

 僕の疑問に対して彼女(もう面倒だから彼女で統一する事にしよう)は笑顔で「誰からもお前らの情報を求められなかったから」と答えを返してきた。

 なんでも彼女のモットーは《売れる情報は全て売る》で、だからこそ《嘘だけは絶対吐かないし、押し売りも自分からは絶対にしない》《相手から求められた奴の情報なら金次第で売ってもいいが、自分から相手に他人の情報を買い取るよう迫る真似だけは殺されてもやらない》んだそうだ。

 

 ーー立派な志だと、今の僕にはそう思える。

 彼女に情報を押し売ってもらえなかった結果、僕なんかの詐欺被害にあって迷惑をかけられたプレイヤーを前にしたところで彼女の主張に一切の変化はないのだろうなと確信できるほど、その態度と言い草は誇りに満ちたものだったから。

 

 仲間に見捨てられたくなくて、置いていかれるのが怖くて仕方なかったから詐欺に手を出してまで縋りついた僕なんかとは雲泥の差だ。

 

 ーーやっぱり僕なんかは《レジェンド・ブレイブス》のメンバーに相応しくない。

 

「どうせ僕みたいなノロマはいつか必ず死ぬんだ! モンスターに殺されるのも、自殺するのも、遅いか早いかだけの違いなんだーーって、あ痛ぁっ!?

 な、なんで殴るんですかアルゴさん!?」

「あ、悪イ。ついカッとなって考えるより先に手が出ちゃったヨ。千コル払えば許してやるから許してくレ」

「台詞の途中で人を殴りつけておいて、お金まで要求するってどこの美人局ですか!?

 しかも今の結構痛かったんですけど!精神的に! ダメージを受けない町中だろうとも、女性に殴られたら男は心を痛める生き物なんだとあなたはもっと知るべきだと僕は思う!」

「サーセンwww」

「サーセン、じゃないですよぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

 全力で怒鳴り散らす僕とは対照的に、ヘラヘラと笑いながら片手を振ってみせるアルゴさん。

 アインクラッド初の強化詐欺師である僕は今、それと同時にアインクラッド初の《美人局被害者》の称号まで頂戴しました!

 なにこれ!凄く要らない! そこいらに捨てて行きたいのですが、《捨てる》コマンドはどこですか!?

 

「いやいや、今のはネズっちが悪いって絶対に。だからはい、千コル寄越して正式に土下座しろ」

「この上さらに土下座要求!? どこまで図々しいんですかアンタ!?」

「いやいや、だってさぁーーモンスターに殺されるのも自殺するのも、遅いか早いかだけの違いって、それデスゲーム開始直後に死んだ二千人のプレイヤーと遺族を前にしても同じこと言える勇気、お前にあるノ?」

「ーー!!!」

 

 そ、それは・・・。

 

 答えに詰まった僕に彼女は顔色一つ変えることなく、ただし纏っている空気を全くの別物に変えて凄みさえ利かせながら、レベル的には格上の僕を相手に平然とした態度で脅しをかけてくる。

 

「今まで死んでいった連中の中に「死んでもいい」なんて思っていた奴は一人もいない。そう言う奴はみんな《はじまりの街》に残ってグチグチ言い続けながら生き続けてるし、そいつらに「死んでも前に出る覚悟」を持たせるために戦って死んだアインクラッド初の騎士様は、オレッちに大枚はたいて買収まで依頼してきやがった。

 そいつらを前にして同じ台詞を言うことが出来るというならやってみろ。そうしたら前言は撤回だ。千コル払ってもらうんじゃなくて、オレッちがこれから稼ぐ金全てを貯蓄して一千万コル払い続けてやる。積み立てローンだ。悪くない取引だろう?」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「黙り込まれちゃ分からン。とりあえずは事情を話セ。訴えるかどうかはそれで決めるし、他の奴らにお前らの情報を売るかどうかもその後ダ。真偽の怪しい情報を有料で売るのは情報屋として、オイラの主義に反するんでね」

「・・・・・・真偽もなにも、僕が強化詐欺をはたらいてみんなを騙し続けてた。それが全てでしょう?」

 

 投げやり気味な僕の言葉にアルゴさんはハッキリと首を横に振り、断固とした態度で僕の言葉と想いを否定した。

 

「それは《お前にとっての全て》だ。この件に関わってるのはお前だけじゃない。被害者だけでもなければ《レジェンド・ブレイブス》の連中でさえ大勢いる関係者の中では、たったの三人ぽっちに過ぎないんだよ。

 この世界は繋がっているんだ。現実以上に誰がどこで何をしようと全員に影響が及んでしまウ。どんなにお前が《他人は関係ない、これは俺たちだけの問題だ》と主張したところで他人には関係ない事情ダ。こっちの都合でどんどん介入してくるし、無理矢理にでも介入させてもらう。おまえたちの都合に巻き込まれて殺されてたまるカ」

「・・・・・・」

「いいか? こういうのはキャラじゃないから、たった一度だけ言ってやる。二度と言わないから忘れられないよう、心に刻み込ませてやるから覚悟しておけヨ?

 ーー現実の甘ったれた平和ボケをデスゲームに持ち込んで逃げに走るなマジムカつくんだよ! お前みたいに軽々しく《死》を口にする奴が、オイラは今一番、大大大っ嫌いなんだ!」

「ーーーー!!!!!!!!」

 

 衝撃のあまり呆然と立ち尽くす僕に、身長差から見上げる形を取っていたアルゴさんは一歩退いてアスナさんの横に付き、

 

「・・・悪イ。ちょっと頭に血が上っタ。こいつの話聞く役は任せちゃっていいかナ?」

「え、ええ。それは構わないのだけれども・・・・・・」

 

 少しおびえながらアスナさんは、恐る恐ると言った体でアルゴさんに尋ねかける。

 

「ねぇ・・・ひとつだけ聞いていい? 一週間前まで私も彼と同じ様なこと言ってたんだけど・・・その頃の私を今のあなたが知ったらどうしてたのかしら・・・?」

「・・・・・・・・・」

 

 しばらく沈黙してからアルゴさんは、「実は前々から“ああしてやりたいな”と思ってはいた」と人差し指である場所を指さして、そちらに僕たち二人の目線が向かい、そこに立ってる置物の少女がしくしく泣いてる惨状を見て、僕たちは想いを一つに出来たと確信しあう。

 

 

 ーー悔い改めて良かった、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・あの~・・・ボクはいつまで立たされっぱなしなのかな? いい加減に許してくれないと、ボクが道端でパンツ丸出しする変態さんになっちゃうんだけど?

 だからさ――恥ずかしすぎて死んじゃいそうだから、そろそろ許してお願いアスナーっ(ToT)!

 さっきのはホントにごめんなさいだよーーー!!」

「・・・・・・・・・あ、ごめん。割と本気で存在を忘れちゃってたわ。

 今回は出番ほとんどなかったものだからつい・・・・・・」

「ひーどーいー! ひーどーすーぎーるー!」

「・・・・・・え。・・・・・・・・・・・・・・・・・・ユウキと・・・・・・・・・パンツ?」

「・・・ふぇ!? ま、まさかキリーー」

「百Gパンチ!」

「ぐはぁっ!? ・・・俺は・・・不幸だ・・・ガクッ」

「主人公気質をもった男の子の宿命だゼ? キー坊♪」

「・・・・・・(ガタガタガタ。注:女の子の怖さを思い知ってるネズハさん)」

 

つづく




アルゴの信念に関する補足:
基本的に彼女にとってデスゲーム内で数少ない「本当の意味でプライベートを共にできる友人はキリトだけ」というオリ設定を採用してます。
なので原作でキリトに対する時の態度と今作で他人と関わる時の態度に大分違いが生じる場合がありますのでご注意を。

もちろん、ストーリーが進む毎に彼女の中でユウキとアスナとの絆も強まっていく仕様です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。