それに伴い章別けは解除させて頂きました。無能な作者の身勝手をどうかお許しください。PKKはやりすぎましたので・・・。
今話の旧サブタイトルは「黒髪のヨウセイ」です。
「でぇりゃああああああっ!!!」
ガギィィィッン!
ーーよし! 敵の集中“だけ”は乱した! ダメージどころか戦闘そのものには全然意味ない投剣スキルで適当な場所狙って投げてみただけなんだけど、とりあえずボクの目的は果たしたぞ!
「・・・と、言うわけだから、あとガンバってねー。応援してるし危なくなったら助けに入るから死なない程度に死ぬ気でがんばれー」
『あいっかわらず無茶言うなお前は!!』
「最初っから、そう言う契約だったしねー。
あ、サチちゃん。怖かったら一度下がって、怖さが消えてから改めて前線に戻って来るようにした方がいいよ?」
「で、でも私が抜けると皆困って・・・」
「だいじょぶだいじょぶ絶対ダイジョーぶい! 君が居ない間は皆が支えてくれるよ。
だって『男の子』だもん。――そうだろう!? みんなぁぁ!?」
『う、うおおおおおおおおおおっ!!!!
男の見栄は女の前でこそ見せるもの!!』
「ね? 大丈夫そうでしょ?」
「あは、あはははは・・・・・・」
槍使いor盾持ち片手剣士の女の子『サチ』ちゃんは、ボクの近くまで逃げてきて困ったように笑ってる。
大岩の上に座って見物しているボクとサチちゃんの目前では、ギルド《月夜の黒猫団》のメンバー(残されたヤローどもオンリー)が敵と死闘を繰り広げてる。
たまに危なくなる時がないこともないけど、前線で攻略組やってるボクからしたら、これくらいチャラヘッチャラ。
「だから今日もビシバシ行くよー! ボクが前線に戻るまでの日数も残り後わずか! 残された時間を最大限有意義なものとして残すため、君たち《月夜の黒猫団》は地獄を乗り越えなければならない! さぁ、諸君! 地獄を味わえーーっ!!!」
『悪魔かお前はーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!(全員涙目)』
ーーよし。今日もやる気じゅうぶんだね。これならラスト・バタリオンにだって203魔導大隊にだって気持ちで負けることはないだろう。
「足りない部分は根性でも見栄でも何でもいいから、とにかく今の自分にあるもので補う!
それがボクの主義だよ!」
「あは、あははははははは・・・・・・はぁ・・・」
笑い疲れちゃったのか、遂にはサチちゃんにも見放されたっぽいボク。
でも、負けない挫けない。だってボクは『遊び』に来ているだけなんだから。
月夜の黒猫団に関わり続けられないボクには、たとえ皆に嫌われたとしてもスパルタを続けることしかできない。
それ以外に、皆が強くなれる手段がないから。強くならなきゃ生き残れないから。
みんなを好きになったボクには、みんなが生きて勝って帰れるようにしごいてあげる事しかできない。
好きだからスパルタする。現実だったら批判されて当然の行為も、デスゲーム化した《SAO》だと必要不可欠になってしまってる。
中堅ギルドに過ぎない《月夜の黒猫団》が前線で戦う攻略組に憧れて、純粋な気持ちで参加したいと、協力したいと願い続けている限り。
彼らに付きまとう『全滅の可能性』が遠のくことはないんだから・・・・・・。
ボクが彼らに出会ったのは、雨合羽フードの男と因縁ができちゃってからしばらく後のこと。デスゲーム開始からだと、五ヶ月くらい経ってたかな?
ネズハさん絡みの事件で連中から目を付けられちゃったっぽいボクは、アスナやキリトやキバオウさん達に事情を話して頭を下げてお願いして、お礼も出来ることは全部しながら今日まで生きながらえてきてた。
うん、我ながらよく頑張ったなーって、褒めてあげたくなる程の忍耐心と自制心だったよ。何回、途中でブチ切れて特攻していきそうになったことやら。
ーーでも、無理なんだよねーボクの場合。
そんな事やったら、やろうと思っただけで死ぬ危険性が出てきちゃうから。
憎しみとか殺意とか、強い負の感情を胸に抱くと危ないボクは、その日も気分転換をかねて適当な素材アイテムの回収クエストをこなしてたんだけど。その日は微妙に普段と違って撤退中のパーティーさんとでくわした。
タンクが一人で後方が多いパーティー編成に《ギルド「@家パーティー」》を思い出しちゃったボクは、なんだか嬉しくなっちゃって「ちょっと加勢させてもらいますね。指示には従いますから、どうぞ扱き使っちゃってくださいリーダーさん」てな感じで割り込むと、一瞬ポカンとしただけで、すぐに了解してくれた。
ーーけど、
「すいません、お願いします。やばそうだったらすぐに逃げていいですから」
この返しはいただけない。
うん、ダメ絶対に。
「一度パーティーに入ったらみんな仲間! みんな家族で友達だ!
ボクらはみんな今まで生き残ってきてるんだから、最後まで誰も見捨てずみんなで生きて帰ることを目指そーよ!」
さっき以上にポカンとされちゃったけど、これはボクの本心だから後悔しないよ! 将来、黒歴史になったとしたって、今この時だけは絶対後悔なんてしてあげない!
そんなこんなでボクが参戦した《月夜の黒猫団》は圧勝。
まぁ、レベル36プレイヤーが居ていいフロアじゃないからねー。勝って当然、負けて偶然。MMOに限らずレベル制が基本のRPGでは、数字こそが全てなのだよ明智クン。
「ありがとう・・・ほんとうに、ありがとう。凄い、怖かったから・・・助けにきてくれた時、ほんとに嬉しかった。ほんとにありがとう」
敵に勝利後、眉尻を下げながら瞳いっぱいに溢れた涙で瞳を揺らして感謝の想いを伝えてくるサチちゃんの眼にを見たボクは、
(ああ・・・この子はちょっとだけだけど、危ないかもなぁ~・・・)
と直感していた。
こういう子には前世で何度か会っているから。その傾向と思考の偏りは予測できたから。
彼女はたぶん、ここで敵に殺されなくても、いずれは皆のために皆に殺されて死んでしまうんだろうな、とーー。
「我ら、《月夜の黒猫団》に乾杯!」
『乾杯!!』
「でもって、命の恩人ユウキさんに乾杯!」
『乾杯!!』
「かんぱーい!」
抱いたばかりの確信を胸に、ボクは《闇夜の黒猫団》が拠点に使ってる第11層の主街区《タフト》の酒場兼宿屋へと案内されて歓迎された。
木綿季ちゃんは見た目通りお祭り好きで、みんなとワイワイやるのが好きらしくて、身体が勝手に盛り上がっちゃうのが押さえられない!
なんだか心も体も軽くなってくみたいで、すっごく嬉しいし楽しいかも! 久しぶりに雨合羽のこと気にしなくていいって幸せだな~。
「あのー、ユウキさん。大変失礼だと思うんですけど、レベルって幾つくらいなんですか?」
ギルドのリーダー・ケイタに訊かれたボクは、少し考えてみてから正直に打ち明けることを選んだ。レベルはもちろん、自分がここにきたのは気分転換が目的であって長期間居続けるのは無理なことも。
最長でも一週間ぐらいしたら上層に戻る身で、戻ってクエストや攻略を始めたら呼ばれても戻ってこれない攻略組の一員であることも含めて全てだ。
「へ、へぇー・・・俺たちとあまり変わらない年頃なのに攻略組だなんて・・・凄すぎますね・・・」
やや引き気味な反応を見せるケイタ。まぁ、それが普通の反応だよね。わだかまりを持たずにアッサリ納得して受け入れる方が異常なんだし。ボクだってこういう反応が返ってくることを恐れなかったわけじゃない。適当に話を合わせながら嘘ついて、お茶を濁して適当にと言う手も考えつかなかったわけじゃない。
でも、こう言う時にはいつも決まって、ボクの身体は今を生きてる少女『紺野木綿季』ちゃんの物であり、死んだ世界に肉体を置いてきた少年『今野悠樹』の自由にしていい物なんかじゃないんだって事実を思い知らされるんだ。
誰かと触れ合うときに遠慮したり、思ってることを言わなかったりする事が凄く苦手に感じてしまって、なんだかモヤモヤして落ち着かなくなる。
遠くの端っこを突っつきあったりする時間が勿体ないっていう、正体不明で根拠もよく分からない強すぎる感情を抱いちゃうのを、どうしても止められないし押さえきれなくなるんだ。
嘘をつくのはいい。嘘を付いてでも守りたいと思った関係と最後の瞬間まで『関わり抜く勇気さえあるなら』ボクは嘘で塗り固められた人間関係を『本物よりも本物だ』として全肯定する。否定する奴らと敵対してでも関わり抜くし、守り抜く。
嘘の先にある必然の結末を迎えたときに誰のせいにもせず、自分のせいだと安易な逃げ道として自殺を選ばずに、苦しみながらも関わり抜いて生き抜く覚悟と責任が伴う嘘ならボクは絶対に否定しない。
むしろ心の底から「すごい勇気だね。ボクにはそれ、できるかなぁ・・・」って憧れると思う。
嘘でも付き続けて自分のことさえ騙し抜けるんだったら、真実と変わらない。全てがバーチャルで出来てる《SAO》なら尚更だ。
だからこそ逆にボクはメリハリをつけるし、つけなきゃいけないと思いこむ身体になってしまってる。ゲームと現実の区別をしっかり付けておくために。
「現実とまったく同じ世界で生きられるなら、なにも辛くて苦しい現実世界で生きていかなくても良いじゃん」
そう思ってしまったとき、たぶんボクのリアルはゲームよりも先に死が確定してしまうだろうから。
死んでしまえば全てが終わって、責任からも逃げられるから。
背負った責任も、背負いきれなかった責任も、全部が全部を生き残った誰かに丸投げして死んで終わりは、もう二度としたくないし、やっちゃいけない。
それが、死んでから別人として生き返ったボクが、関わろうと決めた他人に対して果たすべき責任。
無責任で自分勝手な死も、絶望も。
ボクは二度と肯定なんてしてあげないからね・・・・・・。
「うん、そうなんだ。だから悪いけどボクは君たちの仲間に入れない。
いざと言うときに助けを求められてもキミたちを守ってあげられるとは限らないから、仲間を見捨てることしかできないから。
そんな人でなしを仲間に加えちゃダメだからボクはキミたちの仲間には入れないんだ。ごめんね?」
『・・・・・・』
ボクの言葉で少し気まずげな雰囲気が場に流れたけど、次の言葉で変な風に空気が変わった。
「ーーでも、短期間でよければ戦闘実習で教官役を務めてあげるくらい報酬次第で応じるよ?」
『・・・え?』
さっきのとはまた少しだけ違った返しの声に、ボクは「ほにゃ」って感じで緩く微笑む。
ケイタたち五人は内輪でヒソヒソ相談しあった結果、
「い、幾らくらいが相場なんでしょう・・・?」
ちょっとだけ不安そうに尋ねてくるケイタに『合格』の◎をあげながら、今度は満面の笑顔を浮かべたボクは、
「このパーティーを飲み放題、食べ放題にしてくれること!」
と答えて、その日最後の月夜の黒猫団全員が浮かべるポカンとした驚きの表情をジュースの肴に豪華な奢り飯を平らげたのだった。
「ぜぇ、ぜぇ・・・な、なんとか勝てた・・・って言うか、生き延びれた・・・」
パーティ全員でかかれば怖くもない相手《キラーマンティス》を、実質サチちゃん抜きの状態で倒し終えたバランス最悪ギルド《月夜の黒猫団》のみんなが肩で息をしているのを見ながらボクは、大変上機嫌で満足そうに笑ってあげる。
「あははは、上出来上出来。それだけ死の怖さを思い知れば却って逆に殺されにくくなるし、簡単にあきらめて死ななくもなる。ピンチに陥ったときこそ冷静に、生き残る術を考えられるようにならなくちゃね」
「はぁ、はぁ・・・。そ、そう言うものなのか・・・? それよりも僕は勇敢さとか、負けないための気構えとかの方が重要だと思うんだけど・・・」
うん、それデスゲームになる前に数時間だけプレイできたゲーム版《SAO》開始時にボクが思ってた事と全く同じものだね。
そして、そう想い信じて最初の冒険にでたプレイヤーの間で死傷者多数。
ーーその結果、デスゲーム変貌直後の死者数は惨憺たる有様だったよ?
「通常のオフラインや、今までのVRと《SAO》を同じに捉えちゃダメだよケイタ。これは『ゲームではあるけど、遊びじゃないんだ』から。
それぞれの感覚と個性がモロに出まくるSAOは、いろんな意味で個人差が出過ぎちゃってる。相手に自分の認識を当てはめすぎてると、苦戦するような相手じゃなくても全滅しかねないんだよ?」
「・・・・・・そうかな~? 仲間を守り、そして全プレイヤーを守ろうって意志の強さがあるなら簡単には負けないし、気持ちで負けてないことが一番大切で大事なんじゃないかって、僕は信じてるんだけどな」
うーん。ケイタの言ってることはスッゴく正しくて理想的なんだけど・・・大前提として実力が伴ってないからなぁ~。
「じゃあ、ケイタ。仲間を守って全プレイヤーを守り抜くために、『アレ』。気持ちだけでどうにかできる?」
「アレ・・・って、なんのこ・・・と・・・・・・あ、新手だぁぁぁぁぁぁぁっ!!!! みんな武器を構えて戦闘態勢! 助け合いの気持ちで仲間を守りぬけぇぇぇぇぇっ!!!!」
『HP1桁でどう守れと!?』
「あ、あの・・・私HP回復し終わったし、戦闘に加わろうか・・・?」
「って、サチちゃんが言ってるけど、どうするケイタ~? 彼女の実力だと一方的に嬲り殺されるだけだぞ~?」
「く・・・!! こ、ここは用心棒のユウキ先生におねがいしまーー」
「当然ボクは誰かに死の危険が迫らない限りは加勢しないよ? そういう用心棒契約だからね。ジュースと豪華な食事一回分だけで、おんぶに抱っこを攻略組に頼めると思ったかー」
「・・・・・・・・・・・・ちぃくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!(ToT)
全員たいきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっく!!!!!!(>ュ<。)ビェェン」
『お、おおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!』
うん、良い判断だね。勝てないと思ったら逃げる。負ける可能性の方が高いと感じたら逃げる。死にそうになったら逃げるのが、本来のRPG的には正しい判断だから。
ーーそう言えば、いつからRPGに「戦士は戦死してなんぼ」って格言が生まれたんだっけ?
「死に覚え」とか「ゾンビアタック」なんて単語をSAOで実行したら冗談じゃなくて本気で死んじゃうだけなんだけど、なぜか毎日効率のよい狩り場にたむろしまくってる攻略組のお仲間さんたちはやっぱりキリトと同じで「最強バカ」ばっかりなんだろうなぁ~。
うん、一般的で平均的な正常性を有しているボクが教師で本当によかったね! 月夜の黒猫団のみんな!
「と言うわけで、死ぬ気で走れー。一人でも脱落した人は殺されちゃうからねー? がんばって仲間と全プレイヤーを守り抜けー」
『鬼! 悪魔! この、人殺しぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!』
ふっふっふ。何とでも言うがいいみんな。ボクは関わり抜くと決意した相手が死なないためなら、相手に迷惑と思われると分かり切ってることだって普通にやるよ?
「そう! これぞまさしく愛だぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
『そんな迷惑な愛なんて欲しくねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!』
「あは、あはははは・・・あははははは・・・・・・・・・もう、何でもいいや・・・」
とまぁ、こんな感じで今日の戦闘訓練は終了です。
「攻略組、第28層突破かぁ・・・スゲェなぁ・・・・・・また差が開いちゃったなぁー・・・」
見晴らしのいい丘の上でお昼ご飯をみんな一緒に食べながら、ケイタは不満そうに寝転がって新聞を読んで唸ってる。
「なぁ、ユウキ。どうにかしてサチを両手用長槍使いから、盾持ち片手剣士に転向させる方法ってないのかな? たとえばほら・・・神殿いって『騎士の書』とかを差し出せば転職できるジョブシステムとかさ!」
「うん、ない! ある訳ないし聞いたこともない。それに、そんなのあったら《SAO》じゃなくて別タイトルになってるはずだよね?」
てゆーか、混ざってる混ざってる。なんか色々と混ざり合って別世界のナニカになっちゃってるでしょそれ確実に。
「はぁ~・・・やっぱダメかぁ・・・今すぐ解決する問題じゃなさそうだしなぁー・・・」
「だね。気長にやってく以外には、どうすることも出来ない問題だからね」
自分で作ってみたハンバーガー(仮)を頬張りながらボクたちは青い空を見上げながら呑気な声で、深刻な話題についての会話を続けていく。
「最初に説明したとおり、VR戦闘には馴染める人と馴染めない人との間で物スッゴい格差が生じる。システムアシストがあるから大丈夫と直ぐに割り切れる人たち、最初は手こずるけど慣れたら普通に扱えるようになる人たち、慣れないまでも怖いから死にたくないからって理由で最低限度はこなせるようになる人たち。
色々なタイプがいるんだけど、意外にも一番多いパターンが『初期状態で習得できる基本の単発技を出していれば勝てるはずのイノシシやオオカミに遅れをとっちゃう』人たちなんだって事実は前線どころか後方にさえ、あんまり伝わっていないんだよね」
「ゲームなのに?」
「ゲームなのに。あるいは、ゲームだから。
家でテレビを前にゲームしてたときに出来たことだから大丈夫って思って戦いに出たら、リアルで迫力の有りすぎるグラフィックを前にして恐怖にすくんじゃって何もできないまま殺されたプレイヤーの中にはベータテスターが結構多かったって、だいぶ前に知り合いの情報屋さんから聞かされた」
「へぇ、そんなの売る人までいるんだ・・・ならその人に聞けばサチに勇気を与える方法だって・・・!!」
「・・・高かったけどね、情報料。まさか興味半分で聞いた《はじまりの街》の情報だけで5000コルも払わされるなんて思ってもみなかったよ・・・」
「・・・・・・」
勢い込んで立ち上がりかけたケイタが、座り直して新聞を見上げ直す。
そんなボクたち二人が(たぶん)共有している思い出は、戦闘教官役を引き受けた直後に行った、サチちゃんの致命的すぎる戦闘不適正の実証試験でのこと。
「じゃあ。せっかく戦闘教官の任を拝命しましたので、今夜はボクがサチちゃんの適正テストを行っちゃいまーす」
『おー!(パチパチパチパチパチ!!)』
溢れんばかりに声援と拍手をエモーションとエフィクトつかって再現してくれるみんな。ノリ良いし、付き合いもいいねキミたちは。
「で、でも私ずっと遠くから敵をちくちく突っつく役だったから、いきなり前に出て接近戦やれって言われても怖くてできない・・・」
予想通りと言うべきか、まぁ装備とスキル構成とプレイ時間とを鑑みれば誰にでも分かることなんだけども、サチちゃんは恐る恐ると言った感じのへっぴり腰で片手に剣を構えた見習い剣士感満載のご様子。
うん、ダメだねこれ絶対に。
「さすがのボクでも、今日の今日でいきなり接近戦やれとは言わないよー。それが出来るようになるための最初の訓練なんだから、危険性もなければ誰も怪我なんてしないから、ダイジョブダイジョブだいじょーV!」
「そ、そうなの・・・? だったら平気かな・・・」
ホッと一安心って感じで吐息するサチちゃん。
「でも・・・戦わないんだったら、どうして私剣を構えさせられて・・・」
「うん、とりあえずボクは反撃も防御も回避もしないから、サチちゃんはデュエルシステム使ってボクに向かって切りつけてみて。それが出来たらテストは合格、出来なかったら不合格。アンダスタン?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『はぁっ!?』
おお、期待以上に盛大で大きな反応だ。やっぱり普通の中堅プレイヤーは可愛いなぁ~。
・・・うちのヤンデレ系お母さん美少女剣士や、キチガイ最強バカの真っ黒クロ助にも見習わせてあげてください、お願いします。
「ちょ、な、なに言い出すのよユウキ!? そ、そんなこと私にできる訳ないじゃない・・・無理無理、絶対私には無理!」
「そ、そうだぜユウキ。サチは昔っから恐がりなんだ。モンスターはともかく、人間相手に切りつけられる訳なーー」
「でも」
黒猫団の一員でニット帽をかぶった盗賊風の少年が言ってくるのを遮って、ボクは言いたくないし認めたくもないけど、今のボクが追いかけてる現実を教えておく。
「敵はモンスターだけじゃないんだ、人間だって襲いかかってきたら当然敵になる。少なくとも敵はこっちを『殺したい敵』として攻撃してくるんだよ。
最近の最前線だとよくある話なんだ。そんな所に今のキミたちが加わりたいと願っているなら、最低限うごかないで抵抗もしない人間を攻撃できる程度の勇気は必要になる。自分が逃げるためにも、相手を殺さずに無力化するためにもね。
《剣の世界》ソードアート・オンラインでは、剣一本でどこまでも行けて、どこまでも高見へと上ることができる。仮想空間だから現実世界で無意味な剣の才能が他の何より評価されるし求められるんだ。
だからーー剣一本さえ振れない人は、生きていくことさえ難しい世界なんだよ?」
『ーーーーー!!!!!!』
この日ボクは、サチちゃんに対して知らず知らずのうちに酷いことを言ってしまっていた。
そのことに気づけるのはずっと先のことだし、SAOともVRMMOとも関係ない、語って聞かせる価値すら有るかどうか分からない程度の出来事だけど、この時のサチちゃんの気持ちを考えて思い出すには十分すぎる出来事ではあった。
夜の帳が降りてきて、第11層の主街区《タフト》にも眠って休む時間が訪れる。
その日からボクはーー年頃の女の子と一緒のベッドで毎晩眠らなくちゃいけなくなる性的拷問を受けさせられる羽目になったのであった・・・・・・・・・。
自業自得の末路でも、辛いものは辛いんだよー(ToT)
うわーん、助けてアスナー(>ュ<。)ビェェン
つづく