旅路の終わりは、夢の始まり   作:ひきがやもとまち

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「ありえたかもしれない、ユウキと黒猫団編2」

「黒猫団と攻略組との間にある差は純粋な数字だ。ステータスとレベルだよ。たかが数字だけで無茶な差が開くのがレベル制のRPGなんだから、それは仕方ない」

 

 風景を見ながらケイタと二人で話しているボクは、キリトから聞かされてる話を思い出しながら彼とは微妙に違う見解についてケイタに語って聞かせてみる。

 

「キリト・・・ボクの友達が言うには最前線にたつ攻略組と、それ以外のプレイヤーとの間にある差は情報力だって言ってた。効率のいい狩り場を独占してるから他の人たちより先に行けるんだって。

 でもボクはーー仮に黒猫団が情報を手に入れたとしても結局彼らに追いつくことは出来ないと思ってるんだよね。理由は分かるかい? ケイタ」

「・・・いいや。少なくとも僕たちは意志力では負けてないつもりだし、仲間を守り、全プレイヤーを守ろうって意志の強さでは彼らにも誰にも負けない。そう言いきれる自信が僕にはある。

 それがあるからこそ僕たちは戦えてるし、ユウキたち攻略組だって意志があるから危険なボス戦にも勝ち続けていられるはずだ。そうだろ?」

 

 ケイタの真っ直ぐな想いにボクは肯定の意味でうなずいて、その直後に否定を込めて首を横に振った。

 

「その考え方はあってるけど、間違ってもいるね」

「・・・??? どういう意味?」

「レベル的には安全マージン内だけど、数匹に囲まれて立て続けに攻撃受けたらイエローゲージに突入しかねないダンジョンを『この場所が、現在知られている中で最も効率の良い経験値稼ぎが可能だから』って理由で人気スポットとして人が集まりまくるのが攻略組だよ?

 ケイタは今の話を聞いて行きたくなる? そのダンジョンに。攻略組に加わるためだけに」

 

 真っ青な顔して首を振りまくるケイタに、ボクは「だよねぇ~」と苦笑い。

 確かにあれをマネるのは普通のプレイヤーには難易度高すぎちゃってムリゲーと言うより、むしろ死にゲーになってるクソ難易度だからなぁー。

 

 

 少し座る姿勢を変えてから、ボクはキリトの悪癖と攻略組のみんなをボクの視点から見た感想を付け加えて推測してみた評価とともに説明していく。

 

「キリト・・・ボクの友達の攻略組プレイヤーの話なんだけどさ。

 彼は自己嫌悪するのが趣味みたいな奴で、自分のやってること全部を悪く評価する悪癖の持ち主だから同輩の攻略組メンバーの似たもの同士プレイヤーにさえ『自分たちが常に最強でいたいだけだ』ってレッテルを貼って悪ぶる子供じみた行為をしがちなんだ。

 だから彼は『最強で居続けるための努力』を過小評価しちゃってるんだよねー。

 普通に考えたら『最強になって攻略目指してゲームクリアでプレイヤー全員帰還』も『皆で仲良く分け合って遅々として進まない攻略ペースで矛盾や誤解や諍いを抱えながらでも最終的にはクリアして帰還』も、どっちだって生きて帰ってこれた人の感謝の気持ちは変わらないんだけどなー」

 

 ボクの長話を聞き終えたケイタは、少し複雑そうな表情を浮かべてる。

 キリトの生き様は、ある意味ケイタの理想型だ。

 『救って勝って帰る』と言う結果を、過程も含めて正しく進もうと努力しているのがキリトで、それを成せるだけの才能と実力があるのもキリトだから。

 ケイタの欲しがってる物を全部持ってるのがキリトなのに、それでいて今のところ報われてない要素の方が強いのもキリトなんだよなー。どう考えてもケイタから見て納得できる状況じゃないのは間違いない。

 

 案外、ケイタだったらキリトの自閉症じみて閉塞感のある、偽悪的な考え方を変えてくれるのかもしれない。

 なんとなく二人並んで仲良くご飯食べてる二人の姿を幻視したボクは、目をこすって幻覚を頭の中から追い払う。

 そしてまた、さっきの話を続ける。

 

「ケイタの守りたいって意志の強さは本物だ。

 でも、それはあくまで『死なせない為には危険を可能な限り減らしたい』っていう、安全マージン第一主義が根幹にあるでしょ?」

 

 うなずくケイタに、ボクは意味もなく指を一本立ててから、

 

「逆に彼ら攻略組は『仲間と自分の命を最強の名と天秤に掛けれる』意志の強さなんだよ。

 危険と結果を鑑みて、リスクよりもメリットの方に天秤が傾けば問答無用で邁進できちゃうタイプの意志の強さが彼らにはある。

 逆なんだよ。全く真逆の方向に黒猫団と攻略組の意志の強さは向いてしまってる。

 だから彼らと同じ条件に立てたとしても黒猫団は彼らと同じ道を選ばないし、選べない。

 一方で彼らは黒猫団と同じ道を選んじゃうと、彼らであり続ける事が出来なくなっちゃう。

 攻略組のキリトが黒猫団を理解しきれないように、たぶん今のケイタたちもキリトたち攻略組を理解しきれていないんだとボクは思うよ」

「・・・・・・」

「目指すのはいいんだ、むしろ大賛成だし全肯定してる。

 でも、目指してる対象が現実のソレとは似ても似つかない夢と希望の塊でしかなかったとしたら、ソレはただの願望だ。自分に都合のいいだけの幻想だよ。

 本気で夢を叶えるために努力するんだったら、まず夢のことをよく調べてから理解して、夢を叶えるためには自分たちに何が足りないのか、何が必要で何が手元にあるのかを本気で考える努力もしないとダメなんだよ。

 仲間を守りたい『意志力』の強さはステータスに表示されないんだし、そう言う形で結果を出してもいいんじゃないのかな?」

「・・・・・・」

「努力するのは良い。がんばるのは最高だ、素直にすごいとも思う。

 でも、努力や頑張りに結果を伴わせるには知識だって必要だし、回り道を必要とするときだってある。一週間でレベルを5上げた代わりに、調子に乗って危険を冒し仲間を一人失っちゃったら割に合わないでしょ?

 『急いては事を仕損じる』も『先手必勝』も使いどころ次第で使い分けるのが一番効率よく安全に強くなって夢を叶える近道なんだってボクは信じてるんだどなー」

 

 

 谷間から見える雲と太陽は今日もきれい。

 ケイタの心に雲が出てるのか、それとも雲が晴れたのか。

 あるいは夜が明ける直前の一番くらい時間帯に差し掛かってるところなのか。

 

 ボクには分からないし、分かる日は多分こないと思うけど。

 でも、出来れば彼ら『月夜の黒猫団』のみんなの夢が叶わなくても、成りたかった彼ら自身に成れるといいのになーって心の底から思えるボクは、今日も幸せいっぱいです。

 

つづく

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