今回のは久しぶりであることと、前回ので些か不手際だったなと反省しすぎたためか割かしシリアスなつくりになってます。次話でハッチャケたいものです
正直に白状して、あたしは自分をそこそこ可愛い方だと思っている。
同い年の子たちの中では頭ひとつは無理でも、半分くらいは上をいっているんじゃないかと思っていたし、それなりに努力もしてきたつもりでいる。
お母さんがお化粧してるのを横から見ていて、見よう見真似で再現しようとしたことだってあるし、クラスの子の中では数少ない自分のおこづかいでファッション雑誌を購読している小学生だったくらいだし。
だからSAOが本当に人が死ぬデスゲームになったときには途方に暮れてしまったし、そこに付け込んで何人かの男の人たちが誘いの言葉をかけてきたのを覚えてる。
その時に彼らが浮かべていた顔が、今でも忘れられずに残ってる。
忘れたいし思いだそうとすると気持ち悪くなっちゃうけど、それでも記憶にこびりついて忘れられずに残っちゃってる。
だからなんだと思う。あたしが男の人たちよりも、女の人たちよりもAIプログラムで動く、人の言葉をしゃべれないし理解もできない《使い魔》のピナに心を許して依存する様になっていったのは。
欲望がないから裏切らない。下心がないから襲われない。
悪い言い方をしちゃうなら『都合がいいから』。
良い言い方に逃げちゃうなら『人じゃなくても友達だから』。
本当はどちらなのかあたし自身が決めかねていて、判断できないままズルズルと依存し続けてきちゃったから。
だから今、目の前でピナが消えていったのは私のせいだ。あたしがピナのことを本当に心の底から友達だと思っているんだって自覚できたのが、今この瞬間だったから。
ぜんぶ遅すぎたから。手遅れだったから。なにもかも零れ落ちていって、手の平の上にはなにも残らなくなって始めて大切な友達“だったんだ”って理解できるダメな女の子な私だったから・・・。
だから、一生のお願いです神様。あたしからピナを取り上げないでください。
これからは良い子になります、二度と自惚れたり思い上がったりなんかしませんからどうか、どうかお願いですからピナを、ピナを連れて行かないでください・・・。
「お願いだよ・・・あたしを独りにしないでよ・・・ピナ・・・・・・」
手の平からピナが消え去って、水色の羽根が一枚だけ残った手元を見下ろしながら嗚咽する、一人きりになったあたし。
《アインクラッド》と言う名前の現実とは違う、現実じゃない世界で現実の自信とプライドを持ち込んじゃったあたしが当然の報いを受けて独りぼっちになってしまったのは仕方ないことだけど。
でも、神様。それならどうしてあたしじゃなくてピナを連れて行ったんですか・・・? どうしてあたしを罰してくれなかったんですか? どうしてあたしが! ピナが!
どうしてどうしてどうして・・・・・・!!!!!
「ん~と、まずはこれかな。《シルバースレッド・アーマー》、他にも《イーボン・ダガー》と《タリスマン》と後それから、これとこれとこれと~」
「・・・・・・・・・」
悲しみに沈みゆくあたしの前に次々と映し出されて行くのはアイテム欄のトレードウインドウだ。ひとつ移し終えたら直ぐにも次のをトレードしていって(正しくは譲渡だ。だって、あたしからは何ひとつ渡していないから)先の戦闘でそこそこ余裕ができちゃってたはずのアイテム欄がものすごい速さで埋め尽くされて・・・って、ちょっと!
多い!多いです!多すぎます! て言うかこの人、いった幾らあたしに注ぎ込むつもりなんですか!?
「あの・・・」
「ん~、これだけじゃちょっと不安が残るかな? 上位ポーションもひとつぐらいはストックしとかないとだしね~」
「あの・・・その・・・」
「あ! あとこれ! これがないとダンジョン探索は危険すぎるよね! 《全快結晶》!
偶然ドロップした、即座にHPを100パーセント回復するアイテムらしいけど使いどころが難しくて困ってたところだし、せっかくだから君にトレーディング!」
「女の子に貢ぐアイテムのグレードが高すぎますよ!?」
マズい。この人なんだか、すっごくマズい気がしてきちゃった! 人が良さそうって言うよりかはネジが一本か二本どこかに飛んでっちゃってるレベルでお人好しすぎてる!
「あ、あの! 助けてもらったのは非常にありがたかったんですけども! さすがにそこまでして頂く理由はないって言うか、アイテムだけもらってもピナは生き返らせられないって言いますか・・・」
「え? でも、その羽根が残ってるってことはアイテム名に『心』が付いてる心アイテムなんだよね? だったら死んでから三日以内にたどり着いて蘇生アイテムの花を咲かせれば生き返らせれるよ?」
驚いてうろたえすぎたあまり助けてくれた相手に失礼なことを言っちゃったあたしだけど、ピナが倒される直前に助けに入ってきてくれた黒づくめのその人は特に気にした様子もないまま普通にとぼけた口調で答えてくれて、その内容にあたしは再び驚愕させられる。
「え!? そうなんですか!?」
「うん、最近わかったこと事らしいけど知ってる人は知ってます。でも、四十七層にある高レベルなフィールドダンジョンだから君一人じゃ無理。
で、ボクが送り迎えと道案内を担当するから、君にはその間に生き残っていてもらうため一応の高性能装備を渡してるわけ。分かってもらえたかな?」
可愛く小首を傾げてみせるその人は、あたしと同い年ぐらいの少女に見える。
装備は動きやすさを重視してなのか重い鎧は身につけずに、黒色にも見える裾の長い紫色のドレスみたいな服を身にまとっていて、獲物はたぶん片手長剣一本だけだ。
見たところ珍しいオーダーメイド品でもドロップアイテムでもなくて、そこいらの武器屋さんで売ってる普通のノーマルアイテムだと思う。
・・・間違っても前線になんて出ちゃいけない低レベル装備しか身につけてないのに、あたしにくれたアイテム類はぜんぶが見たことも聞いたこともない超一級品と思しき業物ぞろい。
これで怪しまずに信じる人がいたら正真正銘のアレな人だと、あたしでさえ断定してしまうレベルで怪しすぎる・・・。
「なんで・・・そこまでしてくれるんですか・・・?」
正直、警戒心より先に怖さを感じていた。
ゲーム初日に感じた恐怖がぶり返してきて、ここ一年くらいでようやく見なくなってきた悪夢がフラッシュバックして思い出しそうになって、あたしは思わず吐き出しそうな思いに襲われ口に手を当て押さえ込みながらーー
「え? 死んだ友達を蘇らせれるのに、協力しない人なんているの?」
ーーあたしは思わず相手の顔を見直してしまった。
吐き気なんて一瞬のうちにどこか遠くのお空の彼方まで飛んで行ってしまったんじゃないかと思うくらいにどうでもよくなっていて、「甘い話にはウラがある」が当たり前の《アインクラッド》では聞くはずのない言葉を聞いて今までで一番あわててテンパってしまっていたからだ。
「・・・・・・は?」
「ん? 変な顔して、どうかしたの? ボク、なにか変なこと言った?」
「変というか・・・変としか言いようがないと言いますか・・・」
「ヒドい!? 久しぶりにボクやる気だしてたのにヒドすぎる!」
本気でショックを受けたらしく、大きく表情を崩して泣きそうな顔をするその人。
ここまで感情豊かで素直に表に出す人もクラスにはいたなぁ~って、なんとなく懐かしくなってきたあたしはクスクスと笑い出してしまう。
それを見てその人は「ううぅ・・・まじめに言ってるのに~・・・」と、恨みがましい声で言った後、少しだけ居住まいを正してから。
「ーーでも、これは本当のことなんだよ? この世界で・・・ゲームオーバーが本当の死に直結してるデスゲームにおいて、死んでも生き返らせれる友達は何をおいても生き返らせなくちゃいけない最優先事項なんだ。これに勝る物なんてないんだよ。
お金がかかるから、元手が帰ってこないからなんて理由で見捨ててしまって良い問題じゃないんだよ、絶対に」
「ーーー!!!」
まっすぐ見つめてきた赤い瞳を前にして、あたしは狼狽えたように一歩二歩と後ずさる。たぶん、怖じ気付いたんだと思う。
その人の『生きる』という事への拘りに。愛着とも執着とも言えない、なんだか上手く言葉にできない『死生観』。それの凄みに子供のあたしは怖じ気付いて怯えきってしまっていたんだと思うけど、その人が凄みを利かせてたのは一瞬だけで直ぐ様もとの緩んだ笑顔に戻ると「ニパっ」と笑い
「それじゃあ、今日はもう遅いから一旦ホームタウンに戻ろっか。月のでる夜には痴漢に要注意~♪」
終始ニコヤカな態度であたしを先導しながらフリーベンの街へと戻る。
正体不明で目的も不明で信じていいのかどうかも分からない不思議な感じの女の人は、前を行きながらあたしの方を振り返って「あ、そうだった」と何かを思い出したように声をかけてきて
「思い出してみたら、自己紹介がまだだったよね。ボクはユウキ。見てのとおりのソードマンで、ぼっち可愛い美少女だよ!」
「ぷっ!」
ぼ、ぼっち可愛い・・・あまりにも斬新すぎる自画自賛の言葉にあたしは思わず吹き出してしまって、一瞬だけとは言えピナを失った悲しみを完全に忘れて笑い出しそうになるのを堪えるのに必死だった。
「は、はじまして・・・ぷぷ・・・わ、私の名前はシリカと言いま・・・ぷぷぷ・・・すぅ・・・ぷぷ」
「あはははっ! さすがにそこまで笑ってもらえるとは思ってなかったなぁ! あんまりにも予想外すぎる効果に・・・ちょっとだけだけど傷ついちゃった・・・」
シュンとなって、本当に少しだけ落ち込んで少しだけいじけたような歩調で歩みを再会したその人の背中におかしさを誘われて、あたしは街に着くまでの間ずっと笑い続けていた。
後から考えれば、それはあたしが精神的にいっぱいいっぱいだったからこそ面白く感じて我慢できなくなっただけで、実際には大した事を言っていた訳じゃなかったんだって分かるけど、その時のあたしには何も分からなくてただただ面白くて笑っていて笑い続けていて救われたことにさえ気が付かないほど楽しかったんだと思う。
それがあたし、アインクラッドでは珍しい《ビーストテイマー》のシリカと、攻略組一の変人と名高い名物プレイヤー・ユウキさんとの出会いだったんだ。
あたしがホームタウンにしているのは、第八層にあるフリーベンの街。
宿屋にいるNPCコックが作るチーズケーキがかなり気に入ったのでダンジョン探索をはじめた二週間前から逗留し続けている静かな街だ。
その宿屋に入ろうとした時、隣に建つ道具屋さんからぞろぞろと四、五人のプレイヤーが出てきて内一人の女性があたしに話しかけてきた。
「・・・・・・!」
「あら、シリカじゃない」
「・・・・・・どうも」
「へぇーえ、森から出てきたんだ。よかったわね」
真っ赤な髪を派手にカールさせた、確かロザリアと言ったその女性プレイヤーは、口の端を歪めるように笑うと言った。
「でも、今更帰ってきても遅いわよ。ついさっきアイテムの分配は終わっちゃったわ」
「要らないって言ったはずです! ーー急ぎますから」
会話を切り上げて逃げ出そうとしたあたしだけど、ロザリアさんはまだあたしを解放する気はないらしい。いつもは肩に停まっているピナがいないことに気付いたのか、嫌な笑いを浮かべて見せる。
「あら? あのトカゲ、どうしちゃったの? ーーもしかしてぇ・・・・・・?」
あたしは彼女の悪意たっぷりな笑いに真っ正面から挑むように睨み返すと、
「死にました・・・でも! ピナは絶対に生き返らせます!」
ロザリアさんはあたしの言葉に目を見開いて、小さく口笛を吹く。
「へぇ、てことは《思い出の丘》に行く気なんだ。でも、あんたのレベルで攻略できるの? それとも横にいる新しいお友達の手でも借りるつもりなのかしら? 見たトコそんな強そうにはみえないけどぉ?」
あたしだけじゃなくてユウキさんにまで悪意の巻き添えにしようとするロザリアさんに、悔しさのあまり体を震わせていると「あのさぁ」とユウキさんが頭をポリポリかきながら困ったような表情でロザリアさんに声をかけるのが見えた。
なんだか、言いにくそうな事を言って言いのかどうか迷っている風にも見えるんだけど・・・いったい何を言う気なんだろう・・・?
「なによ? あんたもその子にたらし込まれた口? あの可愛くて小さなオクチだと入るモノにも限度があるわよ~?」
「うん・・・なんて言うか、言って良いのかどうかも分からないんだけどさ・・・」
口ごもりながら躊躇いながら、最後の最後には観念したのか溜息を一つ吐いて肩を軽く竦めてから。
「さっきの口笛吹いてみせる仕草の後で、年下の可愛い女の子を口汚く罵るのはやめた方がいいと思うよ? ・・・はっきり言って年増が嫉妬してる見苦しい光景にしか見えなかったから」
「!!!!!!!!!」
ーー舞い降りる沈黙。
・・・って、ユウキさん!? なんで言っちゃいけない言葉を言ってしまってるんですか!? このままだとーー
「お、落ち着いてくださいロザリアさん! ここは圏内!圏内エリアだから! 槍で刺そうとしても相手は殺せませんって・・・だ、誰かー! 人を呼んできてくれ・・・増援を!至急増援を要請する!
このままだと町中でモンスター鬼婆が出現しそうになってるぞー!」
「くけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!!」
やっぱりーーーーーーーーっ!!!!!!
「に、逃げましょうユウキさん! 今すぐに全力逃走です!」
「わかったよシリカちゃん! アラホラサッサの要領でズラかればいいんだね!?」
「そう言う要らない知識が元で起きた騒動なんだと自覚してくださーっい!」
あたしの叫び声を置き去りにして、あたしとユウキさんは宿屋とは正反対の方角へ逃げ出した後でほとぼりが冷めてから戻ってきてチェックインする。
ーーその結果。
「ものすっっっっっごく怖かったんですからね!」
「・・・・・・面目次第もございません」
なぜか恩人にケーキを奢らせてしまっているあたしです。・・・なんでこうなるんだろう?
「久々にテンションあがって調子に乗りすぎてました。この通りです許してください、反省してますから平に平にご容赦を・・・・・・」
机に額を擦り付けるようにして頭を下げまくりなユウキさん。なんだかスゴく慣れた仕草というか、熟練度を感じさせる慣れ親しんだ雰囲気が不思議に思います。
《謝る》なんて名前のスキル、あったかな・・・?
「・・・もういいですよ。この《ルビー・イコール》でしたか? 奢ってもらった飲み物も美味しいですし」
「ああ、それなら良かった。ホッとしたよ。女の子を泣かせちゃダメだって、いつも言いつけられているからね」
胸に手を当てて、ほうっと息を付きながら心底ホッとしている事をジェスチャーも交えて表現してくれる。その仕草は芝居がかってはいるけれど、なんだかとってもホンワカさせられる暖かみに満ちていて思わず笑顔を浮かべながらあたしはユウキさんがアイテムボックスから取り出してくれたホットワインにも似た味わいの飲み物を口に含む。
「ちなみにその《ルビー・イコール》、カップ一杯で敏捷力の最大値が1上がる高級品なんだよね」
「だからなんでそう言う大事なことを、後から教えてくれたりするんですか!?」
奢ってもらった額が割に合なすぎてます! 出費と経費が破綻しまくりですよ! 大丈夫ですか!? 大丈夫なんですか!? ホントの本当に生活の方はしていけてるのかスゴく心配なんですけども!?
あたしの心配をよそにユウキさんは「あははは!」と朗らかに笑いながらルビー・イコールをガブ飲みしている。
ああ、もう!こうなったら自棄です! 一度注いでしまった以上は最後まで飲み干します! 勿体ないですからね!
始まった直後から(変な理由ででしたけど)にぎやかになった二人だけのお夕飯。
やがてカップが空になってしばらく経ってから「なんで・・・あんな意地悪言うのかな・・・」と言う、あたしのつぶやきで雰囲気が変わる。
しばらく沈黙が落ちてから、ユウキさんが静かな声で語り始めた。
「・・・使い魔蘇生アイテムの《プネウマの花》についてなんだけどさ・・・」
「・・・・・・?」
またしても関連性のない話題。
でも今度のあたしは不思議に思っただけでユウキさんの話に口を挟もうとは思わない。短い付き合いだけど、この人のことが少しだけ理解できるようになってはいたから。
普通の人と少しだけ違う感性を持っているから、普通の人の持つ『普通』と少しだけ異なってる形の『普通』を持つようになった人。それがこの人、ユウキさんなんだと理解できた部分だけは理解していたから、あたしは黙って彼女の話の続きを待つ。
ーーやがて、
「ーーあれって、どこの誰が調べてきて広めた情報だったのかな?」
「え?」
そんなこと、今日ユウキさんに教わるまで存在すら知らなかったあたしに解るわけもない。でも、ユウキさんには何かしら思い当たることがあったりするのかな?
「テイミングできるモンスターは極わずかで、使い魔にすることができたビーストテイマーはSAO全プレイヤーの中でも超極少数のうちで更に一握り程度。
しかも、蘇生アイテムがある思い出の丘は四十七層。使い魔程度の性能だと助けになる要素はだいぶ減ってる。それぐらい苦労してまで生き返らせる価値は使い魔にはない階層なんだよね、本当だったならだけどさ」
「・・・・・・」
「にも関わらず《プネウマの花》の値段は高騰を続けている。使い魔を亡くしたビーストテイマー自身が行かないと肝心の花が咲かないらしいのにだよ? 現在存在しているテイマー全員が求めだしたと考えても良いくらいには高騰しまくっている」
「きっと、居るんだよ。使い魔をAIなんかじゃない、友達だって認識している大勢のビーストテイマーたちが。仲間たちが。
そんな彼らの願いを叶えるために、一部の物好きな攻略組があちこち駆けずり回って見つけてきたのがフィールドダンジョン《思い出の丘》なんじゃないのかな?」
「きっとシリカちゃんが知らないだけでいるんだよ、優しくて助けてくれる可能性のある人はいっぱいね。悪意を持たずに人と接することができる本格的な良い人たちが。
ボクとシリカちゃん二人を合わせても、生き残ったSAOプレイヤー全員と会って話をすることは不可能だ。クリアするかゲームオーバーになって死ぬかまで行っても、それまでに全員と話をする機会なんて存在しないだろう?
会ったことのない人はボク以上かもしれない。合ったことない人はボクですら認められない受け入れられないクズだったりするのかもしれない。あるいは最初はボクから遠くではじまって、最終的にはボクになるのかもしれない。ボクがはじめからボクだったわけじゃないのと同じように」
「だからね、シリカちゃん。使い魔が死んで辛くて寂しいって泣いてる君はスゴく正常で正しい事をしてるんだよ。胸を張って誇っても良いことなんだ。卑下する必要なんてこれっぽちも存在しないんだよ。
辛いときに泣くのは正しい。人が死んで「たかがゲーム」なんて言う奴は間違ってる。
デスゲーム世界に正義とか法律を持ち込むのを嗤うゲーム内弁慶は、リアルでは大半が現実に膝を屈した敗残兵だ。
だからゲームの中では敗者な君が、リアルでの勝利者である君が気に病む必要なんてどこにもないんだよ?」
「でも・・・」
あたしのせいでピナが・・・そう言おうとしたあたしの両手の上に手の平を置いてユウキさんは、
「シリカちゃんにとっては辛いお願いだとわかってるけど・・・ボクはピナが死んで泣いてるままの君でいて欲しいと思う。泣きながら友達の死を悼んであげられる、優しくて正常な女の子で在り続けて欲しいと心の底から神様にお願いし続けている。
ボクは絶対に「使い魔なんてAIだから」なんて言い出して、静かに見送り受け入れられるシリカちゃんにはなって欲しくないと思ってる。もし、そうなってしまったら見たくないし合いたくないと心の底から願ってしまうほどに。
だってボク、ピナちゃんの死を自分のせいだと自責して悲しんであげられてる今のシリカちゃんは、誰よりもかわいくて優しい強い女の子なんだと勝手に信じ込んじゃってるからさ。
だから明日は友達を救うためにも一緒にがんばろうね、シリカちゃん」
・・・ものスッゴく爽やかそうな笑顔で言われちゃったあたしだけど・・・いえ、爽やか笑顔で言われたあたしだからこそ言って良い言葉があると信じていますから。
だから言います。ハッキリと。
自分が思っている言葉を声に出して正直に。
「・・・・・・・・・・・・ユウキさん」
「ん? なにかな? シリカちゃーー」
「自覚のない天然女ったらし」
「なんでさっ!?」
つづく