旅路の終わりは、夢の始まり   作:ひきがやもとまち

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前回の失敗を気にして長い間放置状態になってましたが、ようやく踏ん切りがつきましたので更新させて頂きます。ネタは思いついてたのに変な拘りが邪魔をして放置してしまってごめんなさいでした。

今話は11羽に続く12話として考えていた話です。
元々プログレッシブから本編への繋げ方が原作話からだと思いつかず、オリ回で行くしかないと思いながらも、他の書かれてたSAO作品の影響気過ぎな内容な上に、「名作な本編との橋渡しを担う回でオリジナルはちょっと・・・」と言う妙な拘りによって長い間お蔵入りし続けてきたお話となります。

内容はサブタイトルの時点でわかるとおりに、ユイと絡めてあるオリジナルストーリーですが、時間軸的に彼女自身は出てきません。

Ⅱで最期を迎えたユウキの想いを消え去りそうなユイに伝えると言うお話です。
ややシリアス目な話ですのでご承知おきのほどを。


12話「朝霧の少女と出会うために」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」

 

 低い姿勢から放たれるのは、アスナが持つレイピアの一撃!

 雷が一閃して通り抜けたみたいに光が走って敵との位置が変わり、最初にいた場所とは正反対まで遠ざかっているはずなのに、敵ボスと彼女の位置取りが逆転しただけーーそう錯覚してしまうほどアスナの剣は速くてスゴくて鋭くて・・・!!!

 

 ・・・・・・なによりボクたち男組(注:一人だけ元男が混じってます)がやらなきゃいけない事が何もかも無くなってしまうぐらいに強くなり過ぎちゃってました。ぶっちゃけ、彼女を守るとか言ってた昔の自分が恥ずかしくて死にかけてます。

 誰かボクを殺すか、掘り返されて暴かれないぐらいに深く埋めて・・・。

 

「・・・どうしよう、キリト。やれることがない」

「・・・言うなユウキ。俺たちにだって役割は振られているだろう? ほら、ボスの周りにPOPする取り巻きたちを狩ってまわってアスナを戦いやすくするという重要な使命がだなーー」

「露払いじゃん・・・」

「・・・だから言うなと言うに・・・」

 

 

 

 二〇二三年の現在。アインクラッド歴なんてものはないから階層で数えるけど、第56層・パニまで到達していたボクたちは徐々に強さを増すモンスターたちに苦戦しながらも一人一人が奮戦しながら努力してきたことで意外に死者数だけは少ないまま上がってこれてしまっていた。

 

 ーーそれと言うのも、大半のボスが彼女との一騎打ちに持ち込まれてボクたちから注意を逸らさざるを得なくなっているからなんだけど・・・。

 

「いくら何でも、強くなり過ぎでしょアスナ・・・このままじゃお嫁の貰い手がいなくなっちゃうよ・・・?」

「ユウキ・・・その言葉、絶対にアスナにだけは聞かれるところで言うんじゃないぞ。もし言ってしまった時には、俺は逃げる。悪く思うな、油断したお前が悪いんだから・・・」

「仮定の話で死亡が確定している上に、死につながる要因までボクのせいに特定されちゃってるんだけど!?」

 

 ひっどいミステリーもあったものだね! 名探偵が迷探偵になってるね!

 後それからだけど、ボクは死にたくないから死にません! なぜなら守りたい人がいるからです! それは・・・ボクの守りを必要としてない強さを持ったアスナさんです!

 

 ・・・・・・マジで少し死にたくなっちゃったね、今の一瞬だけだけど・・・。

 

「て言うか、キリト! あのボスは攻撃力が高すぎるから囮役は必須って言ってたのはどうしたのさ! ベータテスターの知識でチートするからビーターって呼ばれてたんじゃなかったの!?」

「・・・ユウキ、生き残るためにも覚えておかなくちゃいけない事があるから教えておく。

 俺がベータ版で上れたのは二ヶ月の間で8層までだ。それ以降に関してはネットで得ていた予備知識や経験測、引き籠もりゲーマー特有のゲーム勘と廃人プレイヤーのみが持つ特殊な廃人スキルなんかを駆使して遣り繰りしてきたんだ。つまりーー」

「つまり?」

「つまり8層どころか50階層より上まで到達している今の状況下での俺はーーただの凄腕ソロプレイヤーの一人にすぎない!」

「えばるなーーーーーーーーーっ!!!!」

 

 なんだよソレ! 1階層のボスの間でコボルトロードと死闘繰り広げてた時にかましてた、あのハッタリはどこ行ったのさ!?

 

「この、知識倒れ! 知識チートしか出来ない凡人! ボクの抱いてた《ビーターってなんかスゴそうなイメージ》を返せーーーーっ!!!」

「俺は手札がショボい時はとりあえず掛け金をレイズする主義なんだ」

「だ・か・ら・え・ば・っ・て・言・う・な!!!」

 

 今あかされる《情報を独占する汚いビーター・キリト》の衝撃の真実! 夢が壊された! ブロークン・ファンタズムだ! 

 前世でなんとなく抱いてた『強くてかっこいい美形の男キャラが、みんなが知らない知識を披露してスゲーかっこいい!』って言われてるシーンに憧れてたボクの夢が木っ端みじんでおじゃんだよ!

 

 

 ・・・はぁはぁと肩で息をついてるボクから体ごと目を逸らして(逃げたな・・・)キリトは何かを深く考え込むようなポーズで思案し始める。

 今までは格好良くみえてたけど、今のボクにはハッタリどころか単なる見栄としか思えないのが悲しくてつらい。

 

「でも、なんでこんなに急激なパワーアップが起きてるんだ? レベルやステータスだけなら俺と対して変わらないんだし、武器特性で俺の方がむしろ有利なはず・・・やべ、自分が悲しくなってきたから先いくわ。後でまたな、ユウキ」

 

 そして言い訳っぽいことを付け足しながら、物理的にも逃げ出すキリト・・・。戦いなよ、現実と。剣で倒せるモンスターじゃなしにさ。

 

「うん、ばいばーいキリト。また次のボス戦でねー」

 

 ボス戦限定の傭兵プレイヤーにして嫌われ者のビーター(他の人にはバレてないから大丈夫!まだイケる!)キリトが誰にも知られないまま一人だけ次の階層へ。

 キバオウさんたちはまだ慣れないらしくて、アスナの無双伝説に目をまあるくしちゃってる。・・・無理ないけどね、普通なら。

 

「・・・けど、どうしてここまで強くなったのかな~? ーーまさか“アレ”が原因なんて事はないだろうし・・・。うーん・・・さっぱり、わかんないや。後でアルゴさんにでも聞きにいこっと」

 

 ボクは気楽な声で言ってみたけど、実はあんまし期待してない。だって最近冷たいんだもん、アルゴさん。特にアスナの情報売ってって冗談混じりに言ってみただけで、苦笑いしながら本人に直接メール送ったりするんだもん! 陰険だよ! ひどすぎる!

 

 

 ーーでも、それも含めて“あの一件以来”からの出来事なんだよなぁ~。そう考えると、やっぱり関係あるのかな? ないのかな? わかんないねやっぱり。

 

 わかんないことは置いといて、ボクは小走りにアスナの元へと甘えにいく。

 今日もボクの生活はアスナに甘えるためにあるのです~♪ あんあん、あお~ん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーそれは昨年が終わりに近づいてる十一月、三十九階層のボス戦が目前に迫っていたある晩のことだったんだ。ボクは夜眠れずに、寝返りを打ち続けてた。

 

 理由は単純に昼寝をしていたからなんだと思ってる。十一月になって寒くなってきたから、たまには昼間っから宿屋をとってお昼寝してもいいよねって思ったからチェックイン。思いっきり熟睡できてスッキリしたけど、その間にボクを探し回ってたっぽいアスナから大量のメールが送られてきてて怖くなったから全部破棄。その後、お仕置きされました。

 

「う~ん、う~ん・・・・・・ダメだ。眠れない。少し外でも歩いて散歩してくるか~」

 

 そう言ってRPG風にフラフラと宿屋の外へとでたボクは、中世ファンタジー風異世界に存在している町の夜景に心トキメかざるをえなくなっちゃったんだよね! 男の子だから(元だけど)ね! 仕方がないよね!

 

 

 散歩から探検に目的を切り替えたボクは、町中を色々と見て歩いてみる。

 幸いにもって言うのは住んでるNPCたちに失礼すぎるんだろうけど、三十九階層の主街区は狭い田舎町だ。すぐに見て回れるし迷子になる心配もない。

 それになにより、この町にある建物は一つを除いてみんな背が低い。目立つ目標がひとつだけだから、目印に困ることはないだろうからね!

 

 

「ふんふんふ~ん♪」

 

 ボクは鼻歌を歌いながら、狭くて小さいドラクエとかに出てきそうな田舎町の夜の田園風景をおもしろそうに眺めて歩く。

 田舎だから夜になると人足はまばらって言うよりも、ほとんどいない。静かで物寂しいんだけど、なぜだかちっとも寒くならない。

 人の住んでる家から暖かさが感じられるって言うのかな? NPCの住人相手に変な言い方しちゃってる自覚はあるけどね。

 

(ーーでも、なんだか最近少しだけ変な感覚をNPCから感じるときがあるんだよなぁ~・・・。なんなんだろう? この感覚は?)

 

 ボクは首をひねりながら、考えても答えが出せたことがない悪い頭で、思い出しながら考えてみる。

 

 

 ーー考えながら歩いてたから気付かなかったけど、いつの間にか町で一番背の高い建物の前まで来ちゃってたみたい。

 

「田舎町の真ん中にたってる教会を見ると、ドラクエⅤを思い出すよね~」

 

 結婚式挙げたんだよねー、フローラと。

 周回プレイで、ビアンカともしちゃったけどね! 水の羽衣が手には入らなかったから大変でした!

 結婚するならお金持ちがいいって言う女の人の気持ちが少しだけ分かるゲーム、『ドラクエⅤ』はプライム値で再販して欲しいソフトです。

 

 

「ま、それはそれとして・・・夜の教会の中にレッツゴー! 飛び出せレヌール城の親分ゴースト! 正義はプレイヤーキャラクターの主人公にあーり!」

 

 城攻め気分で意気揚々と教会内へ突入~♪

 理由は不明だけど夜になると立ち入り禁止になって入れなくなることになってるのに、なぜだか普通に入れてイベントも起きないし神父さんもシスターも家に帰っちゃってる不思議が今あきらかにしてみせる!

 

「たーのもーっ!!!」

 

 ドーーーッン!! 扉を押し開けて元気よく乱入! 悪の城かもしれない教会に情けは無用! 礼儀も不要! すべてはRPG主人公の世界を救う使命によって正当化される、犯罪行為なのであーる!

 

 

「・・・・・・あ、ユウキ。こんな時間に、こんな場所に来るなんて珍しいわね。何かあった?」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 きぃぃぃぃぃぃぃ・・・・・・バタン。

 古い扉を丁寧に閉じながら、ボクは改めて思いました。

 

 ルールは絶対、常識は大事。礼儀作法は絶対厳守しないとママからの怖~いお仕置きが待っているから気をつけましょう・・・と。

 

「じゃ、そう言うことで。よい子のボクはおうちに帰ってお布団に入り、寝る時間でしたので帰りますね。明日の狩りの時もよろしくお願いします、アスナさん。ではではログアウトーー」

「ーー機能なんてない。良識的で模範的な一般プレイヤーのフリして逃げようとしないの、ドラ娘。話があるからこちらに来なさい、今すぐに」

 

 ・・・逃走失敗! 先回り発言で牽制されて逃げられなくなってしまったよ! ボクのターンが終わってしまった! 相手のターンだ! 死ぬる!

 

「ううう・・・・・・夜にまでお仕置きは勘弁して欲しいよぉ~・・・・・・」

 

 うなだれながら閉じたばかりの扉を開けて、ゆっくりと教会中央にある女神様の像の前までやってきて、先に待っててくれたアスナの隣に立ってから一緒になってお顔を見上げる。

 世界観に合わせたのか窓枠には一枚だけステンドグラスが張ってあって、貧しい村に建つ教会でも人々が祈りを捧げる場所だけは綺麗にしておこうと言う、村人たちと神父さんたちの努力が垣間見られたことに少しだけ癒されるボクのお仕置き前に抱いてる傷心。

 

 月光が降り注いでアスナを普段よりももっともっと綺麗に見せてくれてるのもポイント高いぞ! 月明かり・・・グッジョブ!

 

「・・・どうしたのよ、今日はやけに静かじゃないの。いつもみたいに「わーい、教会教会た~のし~い~な~♪」って、はしゃいだりはしないの?」

「・・・・・・ちょっとだけ、今まで貫いてきたボクの生き方を改めなくちゃいけない気になっちゃいそうな感想をありがとう・・・。参考にさせてもらいます・・・」

 

 アスナの目から見たボクは、そこまでお馬鹿キャラだったのだって言う衝撃の真実を前にして、教会の謎なんかどうでもよくなっちゃったよ・・・・・・。

 ううう・・・ボクってそこまでお子様なのかなぁ~? 紺野木綿季ちゃんやって十年以上たってる訳だから、少しは女の子っぽいところも出てきたんじゃないかなーって自信深めてたばかりだったのに~・・・・・・。

 

「・・・アスナこそ、どうしてこんな時間にこんな場所まで来てるのさ? ここって何のイベントも起きないオブジェクトみたいな建物なんだよ? 『一刻も早くゲームをクリアしてリアルに帰還したい』が口癖のアスナが来るような場所じゃないじゃん」

「・・・・・・ユウキの中にある私の認識には大いに改めてもらう必要性がありそうなんだけど・・・まぁ今はいいわ。置いておく。修正はまた日が昇った後にでもね」

 

 朝日が昇ってからのお仕置き確定か・・・・・・死にたい・・・。

 

「・・・この前討伐したフロアボス攻略会議の時のこと、覚えてる?」

「ああ、うん。ちょっとだけぶつかっちゃってたよねー、キリトと」

 

 いやー、あの時は大変だったなぁー。

 少し前から別々に行動しているボクたちとキリトなんだけど、仲自体は前と変わらず良いままだ。時々あったら挨拶するし、たまには一緒にダンジョン攻略したりもしてる。

 

 ーーなのに、あの時に限ってだけは二人とも感情的になって言い争いを始めちゃって、周りの人たちからも心配そうな目で見られちゃってた。・・・主に、二人の間の真ん中が定位置になってるボクに対してね。ほんっとーに大変な思いをさせられました。

 

 二人が争点としてたのはNPCの認識についてであって、ボス攻略そのものからは脱線しがちになっちゃって、最終的には感情的な相違で噛みつき合いそうになったところを「おのれら、彼女いない歴=年齢なオタゲーマーの前で痴話喧嘩すんなや! 目の毒やから出てけ、イケメン黒づくめと嫁夫婦!」・・・キバオウさんによる血涙ながしそうな一喝によって強制終了させられたんだよねー。

 いやー、あの時はほんっとーにボクの居場所がなかったよ、あの会議の間中ずうっとね。

 

「あの時はごめんなさい。ちょっと色々あったせいかイライラしちゃってて、キリト君にも当たっちゃったし、後で謝るついでに食事を奢らせてあげようと思ってたんだけど・・・」

「・・・え? 謝りに行くのに、ついでとして御飯を奢らせるつもりなの・・・?」

「ええ、そのつもりだけど? それがどうかしたの? なにか変だったかしら?」

「いや、なにが変というか全部変しいかないと言うべきなのか・・・一応聞いておくけど・・・なんで?」

「恥ずかしいから。あと、なんか一方的に謝るだけなのは悔しい気がするから。以上」

「・・・・・・・・・・・・」

「以上」

「いや、二度も言わなくても聞こえてるから大丈夫だよ・・・?」

 

 なんだかなぁ~。この子はもう少しこう、ツンデレさんな魅力を発揮する場所と状況を選んでくれないものなのかなぁ~?

 

「なんだか最近、変なのよ私・・・」

「変・・・って、アスナが?」

「・・・ううん、私も変なんだけど、私以上に私たちを覆い尽くしてる周囲の空気そのものが変になってきている感じがするの」

「・・・・・・っ!!」

 

 アスナの抽象的すぎる言葉が、痛くボクの胸を突く。

 だってそれは、ボクがずっと前から感じ始めてて、必死に「そんなことない、そんなはずはない!」って心の中で叫び続けて否定し続けてきた恐怖感の源だったから。

 

 

「はじまりの街でデスゲームが始まったとき、私にとってのSAOはプレイヤーたちの怒りと絶望と恐怖に満ちた叫びが木霊する恐ろしいだけの世界に見えた。

 VRはおろかRPGさえはじめての私には、プレイ開始直後の和気藹々とした雰囲気が一変したこの世界は、そう言う風にしか見ることが出来なくなってたのよ。だから一秒でも早くリアルに帰りたかったの。

 この世界の街から、人から、他のプレイヤーたちから、《アインクラッド》という名の巨大な監獄宮から、SAOに存在しているあらゆる物から逃げ出すために」

 

 その時に感じた恐怖感を思い出したのか、アスナは自分の両手で自分を抱きしめてブルリと震える。

 VRは初めてだけど、RPGもMMOも経験豊富なボクにはかける言葉がどこにも見あたらなくて何も言えない。

 いや、きっとなにを言っても無意味なんだと思う。経験者が語る言葉には、未経験者が感じた想いへの理解は1ミリたりとも含まれてはいないから。

 相手のことを何も知らない赤の他人、そんなのが語る経験者としての経験則では絶対救えないのが負の感情を感じた思い出だ。

 

 それは決して誰とも共有できない、自分だけが背負って生きていくしかない、この世界で一番恐ろしい毒物。自分自身を内部から殺していく、悪意という名の呪いの効能。

 それは言う側も言われる側も深く深く傷つける結果を招くだけのものだ。絶対に言ってはいけない自己満足だ。言うべき言葉なら別にある。あるはずなんだ。それが見つかるまでは黙っていた方がずっといい。

 

 ボクは慎重に慎重にアスナの言葉を一見一句聞き逃すまいとして聞き耳を立て続けてる。前世のボクを殺した病、今生のボクをも殺しかけた呪い。

 それを彼女にかけてしまわないよう、慎重に慎重に相手の背負っている過去を言葉の断片から読みとるために・・・。

 

 

「・・・それらの狂騒は、ゲームが進むと共に落ち着きを見せ始めたけど、私を囲む状況は酷くなる一方だった。私には、ゲーム初心者として他のプレイヤーたちと認識に違いがありすぎてたから・・・」

「・・・・・・」

「周りにいる皆にとっての“当たり前”が、私一人だけ異常に感じている状況。

 皆の言うことが理解できない、言ってる言葉が分からない、どうしてそれが当たり前なのかが受け入れられない・・・。そんな場所が嫌で嫌で仕方なかったし、みんなの言う“当たり前の事”として《はじまりの街》で起きてた狂騒があるんだったら、この世界は本当に怖くて嫌な場所だと心底から思っていたの。

 

「でも、それは私が初心者だからこそ感じてたことで、ユウキやキリト君と出会ってからは徐々に薄れていってた。キズメルさんみたいに心を持ったNPCの存在が私の心を救ってくれもした。

 ああ・・・この世界にも生きている人はちゃんといる。世界は決して《あの街》だけで出来てないんだって、そう思えるようになっていってたのよ」

 

 そこでアスナは言葉を一度切ってから「でもーー」と、暗くて冷たい感情を押し殺したみたいな声で、恐怖を無理矢理にでも抑え込もうと必死になって足掻いてるみたいな苦しみの声を押し出して、“それ”を告げる。

 

 

「最近になってNPCたちに話しかけても、何の感情も感じなくなった。相手からどうとかじゃなくて、自分の中から相手に対して抱く感情が沸き上がってこなくなってしまったの。

 最初はただの思い違いなんだと思ったわ。さり気なく周りの人たちにも話してみたし、キリト君にもなにか違和感を感じたことはないか確認してみたけど『システム的にありえないから』って。

 むしろ、頑張りすぎて疲れてるんだよって言われて、励ましてまでもらえたから安心しきってたんだけど・・・」

 

「でも、違和感は日に日に増して行くばかりで一向に改善されないまま。NPCたちは今まで通りに接してくれてるはずなのに、私たちも今まで通りと同じで、変わらず話しかけているはずなのに・・・。どうしてだか分からないけど、私はある時こう感じてしまったの。そうとしか思えなくなってしまったのよ。

 今の彼らの瞳に、私たちの姿は“映っていないんじゃないのかな?”・・・って」

 

「そう思ってしまった瞬間から、私には彼らが無機質な人間もどきにしか見えなくなってたわ。

 それまで人間と同じで感情のあるAIとして見ていた彼らから魂が抜け落ちて、デジタルデータを掛け合わせて造っただけの数字の塊である自分自身を受け入れてしまったかのような、人間もどきに過ぎない自分たちの運命を甘んじて享受する道を選んでしまったみたいに何も映し出さない感情のない瞳で見つめられるのが嫌で嫌で仕方がなくなってしまったのよ。いっそ、モンスターをけしかけて脅かしてみれば、もしかしたらまた以前みたいにキズメルさんみたいにって思うぐらいに・・・・・・」

「アスナ! それは・・・その方法は・・・!!」

 

 驚いて大きな声を上げたボクの叫びに、アスナは対照的な静かな態度と声音で首をゆっくりと振りながら。

 

「わかってる、それが許されない行為だって事くらいはちゃんと認識できてるの。

 でも、それと同じくらいに私には・・・私とキリト君には私たちの『先』が見えてしまってる・・・。だから怖いの、辛いのよ・・・」

 

「今はいいわ。Mobもフロアボスも、ソロで挑めば返り討ちにあう敵だろうともレイドを組めばなんとかなる。ソロのままでもボス攻略の時に合流する程度でクリアできてる。

 でも、この先は? この先もずっとこのまま、私たちが誰一人としてギルドに入らず、組織の力を振るわないままゲームクリアまで行けるのかしら?

 キリト君はどうかわからないけど、私は無理だと思ってる。私は近いうちに必ずギルドに入っていて高い権限と発言力を有する高位の地位に付くことになるだろうなって確信してる。

 これは攻略組のみんながギルドを作ってレイドに参加し続けてる中で、私たち三人だけがソロで傭兵としてボス攻略の時限定で参加させてもらえてる実績からくる言葉だもの。父の会社を見てきただけの私にだって、そのくらいの未来は先読みできるわよ。

 そして、もしそうなってしまった時、私は私の中にある“恐怖”を消し去ろうとしない自信が、どうしても持つことが出来ないの・・・・・・」

 

「きっと今のままの私が組織の力を手にしたら、私に恐怖を味あわせる対象を消し去ろうとしてしまう。

 どうせ一度消してもすぐにPOPして元に戻ってしまうと分かっていても、それでも私はおそらくやってしまう。指示してしまう。作戦案を上申してしまう。

 そうなる未来には確信が持てるのに、そうならないで済む未来への道筋がどこにも見えない、見つからない・・・。誰かに助けて欲しくて縋りつきたくなってた時に、この教会を見つけたのよ。

 気が付いたら時間も考えずに入っていて、何時間もひたすら女神様のお顔を見上げ続けていたわ。なぜだか彼女にだけは昔のNPCから感じてたのと同じように、私を安心させてくれるのよ。

 まるで、『見ているからね。心配しているからね。あなたは一人じゃないから、安心していいんだよ』って励まし続けてくれてるみたいに。

 『大丈夫だよ。私はあなたたちをずっと見てきたし、これからも見続けていくからね』って、迷子になって寂しくて泣いちゃってる子供をお母さんが抱きしめてくれた時みたいに、優しく包み込んであやしてくれてる。そんな錯覚を感じさせてくれるから大好きだった彼女たちの視線を彷彿とさせてくれるから・・・」

 

 ーーアスナの話を聞きながら、ボクはずっと思い出の中にいた。

 それはデスゲームが始まった瞬間。あの《はじまりの街》の空を覆ってた血の色が晴れて、中央広場が一万人近くのプレイヤーたちが叫んで殴って罵倒しあう混沌のただ中へと叩き落とされた瞬間からボクが感じ続けていた、それまでとの『差異』。

 デスゲーム開始と共に始まった“違和感”。

 

 

 実のところゲームとしてのSAOを初めて最初にプレイ開始したとき、アインクラッドの大地を踏み締めた瞬間にも、ボクはあんまり思うところがなかった。

 アバターは現実の紺野木綿季ちゃんの体をそのままスキャンしただけだから、愛着はあっても愛着以上の物はない。現実のそれと瓜二つの見た目をしたデジタルデータの塊、それだけだった。リアルのベッドの上に置いてきた木綿季ちゃんの身体が着飾って人に見せてあげられるわけでもなかったしね。

 

 現実ではあり得ないお洋服を着せ替えられるのは楽しかったし嬉しかったけど、それはゲーム上で行うお人形遊びの延長線上のことであって、自己満足の域をでるものじゃ全くない。

 リアルの木綿季ちゃんが色々な服を着て周りの人たちに見てもらい、楽しんで笑い合えるパーティー系のMMOだったら楽しめてたのにな程度は思ったりもしたけどね。

 

 

 だからボクにとってのSAOがはじまったのは、実はデスゲームが開始した瞬間からだった。

 それまでに感じなかったナニカを、ボクの身体は明確に感じ取れてたんだ。

 

 

 

 それが転生者に与えられる転生特典なのか、あるいは紺野木綿季ちゃんが元々持っていた特殊な能力によるものなのか、はたまたデスゲームと出会うことで(あるいはVRと接し続けることで)芽生えるはずだった能力が、本来の進み方とは違う道を歩んできた今野悠樹の転生体である紺野木綿季が操るアバター・ユウキだからこそ早咲きの早熟として目覚めてしまったのかもしれない。

 

 それともーーもしかしたらだけど、何も出来ないまま、誰の役にも立てないまま死んだボクが浅ましい欲望で抱いただけの願望でしかないのかもしれないけど。

 

 ボクが此処に来たからこそ救える誰かがいて、その誰かを救うために、その為だけにボクは此処でこうして生き続けているのかもしれないなって、そう言う願いもない訳じゃあない。

 

 でも、その答えはわからない。たぶん、一生かかっても。

 

 それでも、何もわかってないボクにだって感じ取れるものぐらいはある。

 

 《視線》だ。

 

 何気ない会話を誰かとしているときに、隣で誰かが微笑ましそうにボクたちを見ていてくれてる視線を感じることがあった。

 ちょっとした行動の折に触れて、ボクたちと一緒になって誰かが喜びを共にしたそうに見てきている視線を感じ続けてた。

 

 そして、《はじまりの街》の石碑に誰かの名前が刻まれる度、声を上げて泣き叫んで悲しみに暮れる《女の子の視線を》ボクはずっと感じ続けて、励まされ続けてきたんだ。

 

“この世界は閉ざされて、あなたたち以外には誰もいなくなってしまったけれど、私はまだ此処にいます。此処からあなたたちを見ています。見続けています”

 

“誰かが死んで悲しいときには側にいます。一人が寂しくて泣きたいときには一緒に泣きます。辛いときには一緒にいます。苦しいときにも一緒にいます”

 

“一緒にいることしかできないけど、それでも私はあなたたちと一緒にいます。一緒に居続けていたいと心のこそから願い続けます。だから、お願い。死なないで・・・”

 

 ーーって。

 小さな小さな女の子の声が、視線と一緒にかんじられるんだ。感じられてきてたんだよ。

 

 でもーーそれが何時の頃からか弱くなってきはじめた。

 キリトが別行動を取り始めた頃と時期的に重なってたからボクなりに悲しくなっちゃってノスタルジーに浸っているのかもしれないなって、そう思おうとしてはみたんだけどね。

 よく考えて思い出そうとしなくても、重なってた時期はこじつけに近い誤差じゃ済まない時間差がありすぎてたから無理矢理過ぎた。結局ボク自身の抱いた疑惑で、ボク自身の願望が破綻しただけで終わっちゃったんだよ、その時の不安に関してだけは。

 

 けどーー。

 

「“そこに行けなくてごめんさい、癒してあげられなくてごめんなさい、作られた偽物の命でしかないくせに、与えられた役割も果たせない役立たずのまま消えちゃう私を許してください”」

 

 驚いてボクの顔を見つめてくるアスナの視線を感じはしたけど、別に確認する必要はなかったから振り向かない。そうする必要なんてない。

 “あの夢を見たことのある人なら”誰だって今の言葉だけで全てが伝わるはずだから・・・。

 

「ユウキ・・・あなたも見たの・・・あの夢を・・・?」

 

 ボクは女神様を見上げたまま、視線を動かすことなくうなずくだけで返事をする。

 何となくだけど、この女神像は夢の中で泣いてた女の子と、少しだけ似ている気がしなくもなかったから。

 

 長い黒髪で白い服を着た小さな小さな女の子。

 無表情にただ真っ黒い空間に、ただ浮かんでるだけなんだけど、その姿を見た瞬間ボクの脳裏に直接届くイメージがある。泣いてる子供のイメージだ。

 ごめんなさい、ごめんなさいって、繰り返し繰り返し謝り続けて泣き続けて、徐々に徐々に足下から崩れ去って、崩壊していく不吉なイメージ。

 

 それがボクのーーそしてアスナの最近見てきた悪夢の中での出来事だった。アレを見てたからアスナは昔のようにNPCと仲良くできなくなっちゃって、此処から出たくて悪夢を見なくてすむ現実世界へと帰還したくて、一刻も早く一秒だけでも悲しみの中へと沈んでいく女の子のイメージから解放されたくて攻略の鬼になろうとしてた。

 

 他の人たちには決して共感できない想い、見た人だけが理解できる願い。

 まさしく“知っているか知らないか”で人を区別されてしまう、ヒドい現象だなって心の底からボクは思い続けてる。

 

 

「そう言えば、この教会だけは昔のSAOと同じ空気が漂ってる気がするね。なんだか懐かしい気がするよ。変なの、まだ一年も経っていないはずなのにね」

「うん・・・。私も、そう感じてたからここに引き寄せられたんだと思う。ここでならまだ“あの子”に私たちの声が、言葉が届けられるかもしれない・・・そう思ってたんだと今は思ってる・・・」

「ふーん」

 

 ボクは女神様の顔に目を凝らしてみる。けど、やっぱりそこには何も見えない、見いだせない。きっとここに彼女はいない、別の場所からボクたちを見てる。見ていたいって願い続けてるのに、見ているのが辛くて止めてしまおうとしちゃってる。

 

 自分は、この世界にとって必要ない存在で、何一つ与えることもできないまま、自分も悩んで苦しんで、その果てにただ消え去る運命しか用意されていないなら、いっそ今この瞬間にいなくなってしまった方がいい。そう考えるようになってしまったんだと思う。

 

 だからボクは、想いを言葉にして伝えようと思う。

 伝わらないかもしれないけど、無駄な徒労に終わるのかもしれないけど。

 でも、もしかしたら“伝わるかもしれない”。ナニカが変わるのかもしれない。

 その変化は、禄でもないものかもしれない。素晴らしいものかもしれない。何も変わらないまま、変えようとしただけで終わる徒労しか生み出さないかもしれない。

 

 それら全部が、“可能性のひとつ”でしかない。

 良い未来も、悪い未来も、何も変わらないまま変えられないまま進んでいく未来もすべて。今のボクたちから見れば、迎えるかもしれない未来の可能性のひとつに過ぎない。

 

 同じ可能性のひとつでしかないなら、出来るだけ明るい未来が来て欲しいじゃない? 素敵な未来が待ってて欲しいと願うものじゃない?

 だからボクはお願いするんだ。こんな素敵な未来が待っててくれますようにって。

 

 だって、願うだけならタダだからね! タダで良い夢見られて明日も頑張る元気がもらえるなら安い商売さ! ボロ儲けだよ!

 そして、儲けたお金と元気で夢見た未来に一歩でも近づけたなら超大儲け! 元手0からはじめられるビッグな夢の叶え方のコツは、素敵な未来を夢見ることから! これ基本!

 

 

「女神様、ボクも考えてたことがあります。自分はどうして生きているんだろう、こんな自分が世界に存在している意味はなんなんだろうって。

 周りの人たちを困らせて、たくさんのお金や機械を無駄遣いして、自分も悩み苦しんで、その果てに待っているのが避けられない終わりしかないのだから、今この瞬間に消えてしまった方がいい。その方がきっと、みんなにとっても厄介払いが出来て助けになるはずだ・・・。何度も何度もそう思ってました。そう思って生きてきました。

 なんでボクは生きているんだろう、まだ死んでないんだろうって、ずっとずっとそう思い続けて生き続けてきたんです。

 でも、その考え方はーー」

 

 前世のボクと、今のボク。

 今野悠樹と、紺野木綿季。

 

 二度の人生で二度とも味わい、思い続けた想いと絶望。

 もうこんなのは嫌だと何度思ったかしれない。こんなに苦しいなら死んだ方がマシだって、何万回心の中で叫び続けてきたか数えてたのは最初の百回までだった。

 

 何億回もボクは心の中でボクを殺してきた。何億人もの今野悠樹の死体の上に、今のボクは紺野木綿季となって此処に立ってる。立っていられてる。

 

 だからこそ言える。価値のない自分を無価値だと自覚したボクだからこそ言える。

 その想いはーー願いはーー

 

「ーーただの逃げだ。自分以外の誰も救えないし、救われない。

 ただ悲しみと嘆きを振りまきまくって、自分だけは気持ちよくあの世へ逃げる敵前逃亡。傲慢な生の末に選んだ自己犠牲を装った自己満足の極地。糞食らえだね」

 

 吐き捨てた。気持ち悪い想いを、胸の底からすべて欠片も残さないよう全力で。

 

「だって、少しでも考えれば分かる事じゃないか。自分が死んでも自分にかけたお金は誰の元にも戻ってこない。自分が救えなかった人たちは、二度と帰ってくることはない。

 偽物だろうと本物だろうと命は命だ。この世界にひとつしかない、一人しかいない。代わりはないんだよ。少なくとも、君を知る誰かにとっての君は君だけだ。君しかいない。代わりになれる人なんか、この世界のどこにも存在していない。

 君と過ごした時間を大切に思う気持ちは相手の物だ。君の物じゃない。君の物以外に、君が死んであの世へ持っていける物なんて何一つありはしないんだよ。

 君の傲慢な願いで、絶望で、君一人の死で他の誰かを傷つけるなんて勝手な真似をしようとしているならボクは絶対キミのことを許さないからね。覚悟しとくんだよ」

 

 アスナが唖然とした表情でボクを見てるのが分かる。

 うんまぁ、普通はそうだよね。それが普通の反応だよね。死のうとしている人相手に言う台詞じゃないですよね、ちゃんと分かってますごめんなさい。でも、ボクはこういう奴だから仕方ないよね、しょうがないよね、だから我慢してね女神様とアスナ様。

 

「もしキミが誰とも時間を共有しないまま消えようと言うなら、それは単なる自殺だね。誰のためでもない、自分が苦しいから死にたいだけの平凡な自殺。普通の死。

 自分のために生きて、自分のことだけを考えて、自分の傲慢きわまる自己満足の果てに、自己犠牲で死を飾って美化しながら死んでいこうとする浅ましい死に方の典型例。最低だね、反吐がでるよ。

 やーいやーい、引き籠もりのイジケ虫ー! イジメられっ子のおたんこなすー、ちんちくりんの貧乳チビー♪」

 

 散々にイジリまくって扱き下ろしてから、ボクは改めて女神様の顔を見つめて指でっぽうの銃口を向けて言い放つ。

 

「もし、少しでも言い返したいと思ったなら、あっかんべーって舌を出すためにボクの所までやってくるといいよ。

 悔しさでも負けず嫌いでもライバル心でも、愛でも恋でも友情だろうと生きていられて死にたくないと思う理由の根拠になるならオールオーケー! だいじょーV!

 生きてこそ得ることの出来る思い出をボクと共有するために、ボクの所までおいで女神様! ぼっちプレイヤーのボクは、いつだって友達プレイヤー募集中だよ!」

「ユウキ・・・!!!」

 

 あ、アスナのい好感度が凄く上がったのを実感したぞ! やったね!

 

「それにほら、同じ死ぬでも今のままだとキミ、ボクの中での評価最低ランクだよ? 自己犠牲どころか自己満足で死んでくだけの、身勝手でわがままなお子様の典型例なんだよ? そんなの嫌じゃない? だから早くボクの所までおいで? お互い死んでないうちに。キミが死ななくても、ボクが死んじゃうと一生訂正できなくなっちゃうよ?

 言っとくけどボクが弱いからね! ゲームクリアまで生き延びれる自信なんか全くもってないんだからね!」

「ユウキ・・・・・・」

 

 ああっ!? せっかく上がったアスナの好感度が急激に低下していくのを実感できちゃう! むしろ何もしなかったときの方が上がってような気さえする!

 ちくしょうめ! 選択肢選び間違えた! アスナ攻略ルートは1からやり直し決定だ!

 でも、選んじゃった選択肢は取り消せないからこのままプレイ続行だ! リアルにリセットボタンはない! やっぱりリアルはクソゲーだね!Byゲーム神様! そんな詰まらない世界でボクたちは生きている!

 

「ま、死ぬことを自分で選べるなら今じゃなくても、いつでも死ねるんでしょ? だったら今はひとまず生きてみたら? いつでも死ねるのに今死ぬ必要ないでしょ。

 どうせ死んだら何もかも全部が消えてなくなって、罪悪感も苦しみも心の痛みも思い出せなくなるんだし」

「台無し・・・・・・」

 

 うん、ボクもそう思う。本当にヒドい奴だよねボクって! 紺野木綿季ちゃんゴメン! 今のキミの中身はこんな奴です。

 

「んじゃ、アスナ。言いたいこと言ってスッキリしたから帰ろっか? こんだけ騒げば疲れてグッスリ眠れてスッキリして明日は気分も元の状態に戻ってるって」

「・・・ユウキって時々、ものすごく良いこと言うんだけど、その後に必ずオチがつく残念な星の元に生まれてきた子よね。なんでなのかしら?」

「さぁ~?」

 

 生まれてきたときに見えてたのは、知らない天井だったからなー。分厚いコンクリートの天井が邪魔をして空に浮かぶお星様なんて見てません。だから全然まったくわかんなーい。

 

 

 

 こうしてボクたちが過ごした、特に意味のない教会での夜は終わった。

 これが発端なのかはわからないし、調べようもないんだけど、アスナとボクが見ていた悪夢はパッタリ途絶えて、周囲の空気も元に戻った感じがする。感じだけだけども。

 

 確認しようがないから気にしてもしょうがないんだけど、偶に女神様へのお供え物を持って教会を訪れるのがボクの習慣になってたのが、後にボクとアスナが所属することになる《血盟騎士団》の初代本部が辺鄙な田舎町に置かれる理由になることをボクはまだ知らない。

 

 

 

 

 

“ーーわたしも負けずに頑張りますから、ママたちも頑張ってください!

 特に! わたしが行って、あっかんべーをする前に死んだりしたら、お尻ペンペンですからねユウキママ!”

 

 

 

「・・・・・・ぶるり」

「どうかしたの? ユウキ?」

「いやその・・・全くもって見に覚えがない言いがかりを理由にして、小さな女の子にお仕置きされちゃってる自分のイメージを幻視しちゃった気がしてね・・・・・・」

「・・・・・・ユウキ、あなた疲れてるのよ。今日はもう休みなさい。そして明日はポーションを飲んでから病院を探しに行きましょう。ね?」

「ちがーーーーーーーーっう!?」

 

つづく




*一旦アインクラッド攻略編は章分けを解除して「ありえたかもしれない、ユウキと○○編」と明記させて番外編扱いに変えさせていただきました。

単にPKKはヤバすぎたと言うだけですので、話を先へ進めるためにこそ必要な措置ですから、どうかご容赦のほどを・・・!
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