なお、今作ではキリトに対するツッコミは多いですがアンチじゃありません。作者なりのオマージュですのでお間違えの無いように。
あと、最後の最後で爆弾落ちますが余り気にしない様に。いつもの事ですので。
ただし相変わらず原作尊重派の方は絶対読まないで下さい。憤慨ものです。
「よっと、これで今日のノルマ達成っと。
お疲れさまでしたー」
誰に聞かせるでもなくボクは一人で勝利宣言と勝利報告をすませると、今仕止めたモンスターのドロップアイテムを確認しながら帰路につく。
SAOが始まったあの日、SAO開発者の茅場晶彦によってデスゲームが始まったあの日。
ボクがただの紺野木綿季じゃなくて《アインクラッド》に生きる一人の女剣士ユウキとして生きていくことを強制されたあの日から、多くのことが変わった。
まず、ボクたちが現実へと帰還するためにはゲームをクリアする必要があるらしい。それまでボクたちはずっと、自由で不便なだだっ広い檻の中。
それから、デスゲーム開始の宣言時に死んだ二百十三名の後を追うかのように千八百人が死んだ。
殺されたという言い方も出来るけれど、ボクは彼らが死んだと表現している。
だって、死なずに済む方法はあったんだから。
殺されないで済む方法は、ボクたち誰しものすぐ側にあったのに彼らは死んだ。無謀な戦いに挑んで殺されたんだ。
生き残れると信じていたのかもしれないし、信じられる根拠があったのかもしれない。
でも、死んだ。もう居ない。これが彼らの出した答え、もしくは結果。
いくら自分を信じてても、信じてくれる人の数が少ないのなら自己満足だ。決して確信には至れないし実証も出来ない。
彼らが信じていたのがなんであれ、彼らは死んで二度と会えない。ただ、それだけ。
「んー、時間的にそろそろかなぁ?
それとも、急いだ方がいいかな? 今日だけはなんとしても遅刻は避けないとね」
SAO正式サービス開始から一ヶ月が過ぎた今日。
ゲームであっても遊びではない、本当に人が死ぬゲームが始まってから一ヶ月が過ぎた日の夕方。
迷宮区最寄りの《トールバーナ》の町で一回目の、つまりは千人以上の人が死んでからようやく、初めての《第一層フロアボス攻略会議》が開かれる。
「うわ・・・人の数多・・・」
それがトールバーナの噴水広場に集まっているプレイヤーたち四十四人の姿を見てボクが感じた、率直な感想だった。
正直、予想以上。千八百人が死んだ後によくこれだけ集まってこれたなぁと、素直に感心する。
目の前で人が死んでいくのを見て自分の死を連想しない人は、割と少ない。それが親しい人ならなおさら怖い。怖くなる。怖くなって逃げ出したくなる。逃げる場所がないなら、現実から逃避する。そうやって人の心は壊れていく。
強い弱いとかじゃなくて、ただ死にたくないと思ったときに選ぶ選択肢の違い。
逃げ出すか、挑み掛かるか。どちらかを選んだだけ。その程度の違いが生死を分ける。
デスゲームって言う現実は、そういうこと。
「まぁ、勝つこと倒すことを考えるのなら、少ない方なんだろうけどねー」
苦笑しながら呟いたのも、率直で素直なボクの感想。
病気持ちで引きこもりがちな今生でのボクの趣味はネットゲーム。居ながらにして色んな世界を旅して回れるのはスゴく楽しい。
まぁ、それが高じて此処でこうしているわけだから善し悪しなんだけどね。
と、始まる時間が近づいてるっぽいな。人の話し声がザワメきだした。ボクも早く座っておかないと。
えーと、まだ空いてる席で邪魔にならなそうな場所はっと・・・。
「隣、いいかな? 他の人たちはみんなパーティー組んでて割り込みづらいんだ」
「え? あ、ああ、別に良いけど・・・」
「助かるよ、ありがと」
戸惑いがちに、ぶっちゃけちゃうとキョドり気味な態度で返事をしてきた黒づくめな片手剣使い君に笑顔でお礼を言ってから、彼の隣に腰掛ける。
黒いのはボクも同じだけど、ボクの方は紫混じりの群青色だから大丈夫。黒くはない。
挨拶した方がいいのかなと思ったから改めて顔を向けて目を合わせ、真っ直ぐ相手を見ながら笑顔で自己紹介。
「初めまして、ボクはユウキ。片手剣使いのソードマンだよ。
レベルは13でステータスはアジリティに極振り。ソロプレイヤーでMMO歴は4年と少し。盾は装備してないし持ってもないから、タンク役は期待しないでね!」
「あ、ああ・・・えっと・・・」
・・・? なんでこの人、さっきよりキョドってるんだろ? 照れ屋さんなのかな?
「ご、ごめん。俺、人付き合いとか苦手で・・・君みたいなタイプの子と話した経験値が足りてないんだ。別に嫌いってわけじゃないんだけどさ・・・」
ああ、そう言う事ね。分かるけど。
「そうなんだ。こっちこそゴメンね、初対面なのに気安すぎちゃって。
人にも言われるんだけど、なかなか直んなくてさぁ~。
でも、君がそう言うの苦手な事は覚えたから、これから気をつけるね」
「ああ、それで頼む。
俺はキリト、あんたと同じで片手剣使いのソードマン。ソロなのも一緒だな」
「そうなんだ。じゃあ、今回のレイド戦の間だけでもよろしくね!
もちろん、勝った後も仲良くしてくれるなら大歓迎だよ!」
「あ、ああ・・・だからそう言うのが、な・・・?」
「あ、ごめん」
ついついやっちゃったよ。以後気をつけます。
「でも、思いの外集まってくれて良かったねぇ。レイドに挑める最低人数には達してるんじゃない?
これだけ居れば、勝てる確率も出てくるから嬉しいね」
言葉の語尾に「!」をつけないよう最大限度力しつつ、ボクが笑顔でそう言うと、キリトはなぜか顔をしかめて俯いた。
なにかなと思って見ていると、
「・・・それはどうかな・・・。全員が全員、死ぬかもしれない覚悟を持ってここに来ているとは限らないんじゃないか?
もしかしたら《自己犠牲精神の発露》って言うより《遅れるのが不安だから》来てる人もけっこういると思うよ。
俺もどっちかというと後のほうだからさ」
「そうなんだ。でも、それならそれで良いと思うし、問題なく感じるけど、なんでそんなに気重そうなの?」
ボクとしては当たり前の質問をしたつもりなんだけど、どうしてかキリトは愕然とした表情でボクを見つめてきた。
・・・? なに? ボクなにか可笑しなこと言った? 普通のことしか言ってない・・・よね?
「い、いや、なんでそうなるんだ? そんな自分勝手な理由で来た奴なんか当てにしても大丈夫なのか?」
「動機は何でも良いと思うよ。誰一人死なないために努力してくれるなら、目的なんか問わない。
ボスをラストアタックで仕止めて、LAボーナス狙いで良い。
それ以外のドロップアイテム狙いでも、レベル差が開いて於いてかれたくないだけでも、仲間と一緒にいたいからでも、なんでも良い。理由は関係ないし、気にしない。攻略パーティーに入って、同じボス相手に命がけの戦い挑むなら仲間だ。
ボクは仲間を見捨てないし、死なせない。絶対に生きて帰らせる。絶対にだ」
「・・・・・・」
・・・って、ああ!
しまった! つい熱く語っちゃった! ドラゴンボールキャラみたいなノリでカッコつけちゃった! スッゴく恥ずかしい!
「ごめん! そんなつもりじゃなかったんだ!
ただボク、昔から生き死にが関わると冷静さが消え失せちゃう癖があって・・・本当にゴメンなさい!」
「い、いや、気にしなくて良いよ。別に君の言葉で傷ついた訳じゃないからさ・・・」
?? 「傷ついた」?
・・・・・・何に?
「はーい! それじゃあ、そろそろ始めさせてもらいます!」
「あ、始まったみたいだね。静聴して聞かせていただきましょう」
「お、おう」
忍野扇ちゃんの真似をしつつ、ボクは舞台に上がった青髪の人に視線を向けて、子供みたいにワクワクしながら彼を見つめた。
知らない人たちをこれだけ集められる人。
死ぬかもしれない戦いに、誰かを巻き込んでまで何かをしたいと思う人。
その人が何を思い、何を話し、どんな言葉を語るのか。
それが知りたかった。ボクが攻略会議に参加した最大の理由がそれの時点で、ボクには誰の動機も否定する資格なんて持ってない。
だからボクは精一杯挑むつもりだし、勝手に死ぬことを許す気はない。
人を死地に追い込んだんだから、責任とってよ青髪騎士様?
「今日は、俺の呼びかけに応じてくれて有り難う。
俺はディアベル。職業は、気持ち的にナイトやってます!」
「ジョブシステムなんてねぇだろー」
「ナイトは絶叫だってかぁ?」
あはは! この人、おもしろーい!
寄せ集めのメンバーで、蟠りもありそうな人たちが一緒になって笑ってる。それも騎士様が放った一言だけを理由にして。
ネットゲーマーに限らないけどネットユーザーは口が悪いと評判の人がいるし、実際サイトによってはそう言う人もいる。今ここにいる人たちの中にもそう言う人はいると思う。
でも、今彼を笑ってる人たちの声に悪意はない。純粋に面白いから笑って、ヤジを飛ばしてる。こう言うことが出来る人はスゴい人だと、ボクは思ってる。
この時点で、ボクはこの人を信頼した。素直に命を預けることにした。
どうせ預けるのなら、自分が信頼した人に。信頼する前に誰かの命を預ける気はないし、当然ボクの命も預けない。
預けたからには預けぬくから、覚悟してよね騎士様?
「今日、俺たちのパーティーはあの塔の最上階でボスの部屋を発見した。
俺たちはボスを倒し、第2層に到達して、このデスゲームもいつか絶対クリアできるって事を《はじまりの町》で待っているみんなに伝えなくちゃならない。
それが今この場所にいる俺たちの義務なんだ。そうだろ? みんな!」
『・・・・・・・・・』
場を満たす、数舜の沈黙。
そして、それに続く拍手喝采と無数の口笛。
うーん、ここまで完璧すぎると流石に怖いなー。・・・この人まさかNPCだったりしないよね?
理想の騎士様すぎて現実感が乏しくなりそう・・・。セイバーだってここまでじゃなかったよ?
「オッケ。それじゃあさっそくだけど、これから攻略会議を始めたいと思う。
まずは六人のパーティーを組んでみてくれ。
フロアボスは単なるパーティーじゃ対抗できない。パーティーを束ねたレイドを作るんだ」
ですよねー、そうなりますよねー。
うん、ユウキ知ってた。こうなるのも分かってた。
当然、あぶれ組に入れてもらうつもりで来てますから、お気になさらず。
「ーーって、なんでさっきから挙動不審なのさキリト君。
ぶっちゃけキモいよ?」
「失敬な! ただ予想してなかった展開に驚いてただけだ!」
「・・・へ? 驚いてたって・・・まさか君、ソロでボス戦に参加する気だったの!?
むしろボクは、そっちの方が驚きなんだけど!」
死にたいのかなこの人は!?
ボスだよ!? ボスモンスターなんだよ!?
最大で六人のパーティーを八つ束ねてレイドだよ! そしてボスはレイドで倒すこと前提のレイドモンスターなんだよ!
バカなのかな!? バカなのかな!? 本当の本当におバカさんなのかな!?
「死ぬよ! 一人で挑んだら確実に! なんでそんな無謀なことやろうとするの!
お母さんを悲しませるのがそんなに楽しいのか、この人でなし!」
「誤解だ! 俺はただ、ずっと一人でやってきたから今度も一人で挑むつもりだっただけだ! 別に死にたい訳じゃないし、死にたくないから一人でやってきたんだよ!」
「知るか! 始めたころのプレイスタイルで、ボス戦挑むな単細胞!
たけやりでゾーマ倒せるとでも思ってるのか君は!
絶対無理だから、大人しくパーティ組め! ボクでも誰でも何でも良いからパーティーに入れ! 何度死んでも蘇れるゲーム感覚を、デスゲームにまで持ち込むな!
そんなアホな理由で死に行くの、ボクは絶対認めないからね!」
「・・・わかったよ・・・うん、確かに今回のは俺が悪かった・・・」
素直に・・・あんま素直そうに見えないけれど・・・頭を下げて、キリトは謝罪してくる。
これだけで許す気はないけど、今はそれどころじゃない。悪目立ちしすぎた。パーティーに入れるどころか、距離を置かれちゃった気がする。
しょうがないから誰か余り物の人を・・・居た。第一ぼっち発見。
「君もあぶれてるの?」
「あぶれてない。周りがみんな、お仲間同士みたいだったから遠慮しただけ。
ーーあなたたちみたいに悪目立ちして、あぶれた訳でもない」
「「ごめんなさい・・・」」
初対面の女の子に、揃って頭を下げさせられる男二人(元男一人)
くそぅ、男女格差が激しいなぁSAO・・・。
「ソロプレイヤーか・・・。なら、俺たちと組まないか?
ボスは一人じゃ攻略できないって言ってただろ? 今回だけの暫定でいいんだけど、どうかな?」
「・・・・・・」
無言のまま頷いて了承。パーティー登録もすませて名前も確認。
《アスナ》か。良い名前だけど、アバターネームっぽくないし、ひょっとして本名プレイ? その場合はMMO初心者ってことになるけど大丈夫かな?
「よし、登録完了と。
ああ、俺はキリトで、こっちがユウキ。どっちもあんたと同じソロプレイヤーだ」
「初めまして、ユウキです。今回はよろしくね」
「あなたたちはソロなだけじゃなく、さっきのでぼっちになったと思う」
「「・・・・・・」」
再び沈没のぼっち男二人(元ぼっち男一人)。
第2の人生でも異性関係(今は同性だけど)は寂しく過ごす事になりそうだな~・・・。
「よーし、そろそろ組み終わったかな?
じゃあーー」
「ちょお待ってんか!」
青髪騎士が会議を再会しようとした矢先、誰か知らない誰かさんが横やり入れて邪魔された。
誰だよ~と思いつつ、見上げた先にいたのは・・・なんかスッゴい髪型の男の人。
えっと・・・この髪型は・・・メイス? メイスヘアーなのかな? ・・・そんな髪型聞いたこと無いけどね・・・。
他の人たちは驚きながら、ボクはただただ彼の髪型に唖然としながら見守る中を、彼はぴょんぴょん跳ねながら舞台まで飛び降りてくと、
「ワイはキバオウってもんや。ボスと戦う前に言わせてもらいたいことがある。
こん中に、今まで死んでいった二千人に詫びいれなあかん奴がおるはずや」
ザワザワ、ざわざわ。
突然の闖入者に周りは騒然、ちょっとしたパニック状態だけど、別に暴力沙汰に発展する気配はなし。たぶん青髪騎士(いい加減ディアベルさんって呼ぼう)ディアベルさんが何もいわないのも同じ理由。
司会である自分が今なにか言うと溝が生まれる。溝は覆い隠すよりも、一気に露呈させて全員で解決に向かった方がいい。加わりたくない奴は出て行っても構わないって状況を作り出した方が、結果として納得する人の数は多くなる。
参加してる人数が多い以上は切り捨てる人が出てくるのはやむを得ないけど、それは出来ることを全部してからだ。「みんな仲良く」と言ってるだけで何も決断してない人には何も求める資格はない。
「キバオウさん。君のいう奴らとはつまり、元ベータテスターの人たちのこと、かな?」
「決まってるやないか!
ベータ上がりどもは、こんクソゲームが始まったその日にビギナーを見捨てて消えよった。
奴らは旨い狩り場やら、ボロいクエストを独り占めして、自分らだけポンポン強なって、その後もずーっと知らんぷりや。
こん中にもおるはずやで、ベータ上がりの奴らが!
そいつらに土下座させて、貯め込んだ金やアイテムを吐き出してもらわなパーティーメンバーとして命は預けられんし、預かれん」
超口舌、有り難うございました。
と言うわけでボクのターン。
「発言いいですか?
あ、ボクの名前はユウキです。片手剣使いのソードマンです」
「・・・ユウキさんだね。なにかな? 君も誰かに対しての苦情かな?」
「はい。そうです。
ーーキバオウさん。誰かに命が預けられず、誰かの命を預かれないと言うなら、あなたは参加しなくていいので出て行ってください。
みんなが命がけの覚悟で挑もうとしてる場所で、あなたの存在は死の危険を持ち込みます。ボクたちみんなが死なないためにも、みんなに死をもたらす可能性を持つあなたは邪魔です。居る資格のない場所から、早々に出てってください」
つづく
キバオウさんは破滅しません。
向き不向きの適正に合わせた人生が、彼の今後に待っています。