旅路の終わりは、夢の始まり   作:ひきがやもとまち

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久々の投稿です。遅れてごめんなさい。
今話は、もう少しシリアスな内容にする予定だったのになー・・・;つД`)


14話「ゲームであっても遊びではない世界で遊ぶピエロたち」

 発端は、キリトから教えられた一言だったらしい。

 『今日は昼寝するのに最高の天気♪』みたいなこと言われた最近ワーカーホリック気味で疲れてるアスナが休憩をかねてお昼寝して爆睡して寝過ごしてしまったのは仕方のないことだと思う。

 彼女のスッパリサッパリしがらみを切り捨てたがる性格上、『豪華な食事一回ですべてチャラにする』っていう提案だって理解は出来る。・・・でもさ?

 

 

「わざわざボクまで呼び寄せて、お支払い担当させなくってもよかったんじゃないのかなー・・・」

「ーーしょうがないじゃない。なんか悔しく感じちゃったんだから」

「・・・・・・・・・・・・(汗)」

 

 不機嫌そうな仏頂面で窓の外へと視線を向けてるアスナ。目が据わってます。照れ隠しだと分かっていても怖いです。めちゃ怖いです、殺されてしまいそうです。

 

「つか、キリトがめっちゃ気まずそうにしてるんだけど、これって一応はお詫びなんだよ・・・ね?」

「お詫びよ。い・ち・お・う、ですけどね」

「・・・うわー・・・」

 

 物すっごく取り付く島もなし。あのキリトでさえ心苦しそうにしながらボクのことを哀れみの視線で見てきているよ・・・。ーー前世があんな死に方じゃなかったら、本気で死にたい気分になってそうかも・・・。それぐらいに辛いDHED・・・・・・。

 て言うか、本当にこれって『お詫び』なんだよね? 周りの人の視線とか色々と痛くて逆に辛いよ?

 

 

「・・・・・・・・・(ちゅー)」

 

 ボクは自分で注文した分のジュース(みたいな奴)を飲みながら目を伏せて、ちょっとだけだけど落ち込む。

 お詫びでしかないお礼の食事会とはいえ、「好きだ」と自覚した女の子が男の人におごる料理の支払い任されるのって辛いな~。前世では恋ができるほど長い時間学校に通えてなかったから初めて知ったよ・・・。転生者が持つ前世知識ってやっぱり大したことない。

 

「・・・街の中は安全な圏内だから誰かに・・・」「・・・デュエルを悪用した睡眠PK・・・」

 

 二人が話しだした内容は、少し前に圏内で起きたっていう睡眠PK事件についての話題。

 

 普通、街の中のいる間はプレイヤー全員がシステムに守られててダメージを受けないし、与えられない。ゲームオーバーが現実の死に直結しているデスゲームの中で数少ない心休まるオアシスってことになるんだと思う。

 

 でも、修行とかパーティーを組みたいと思った人たちの実力を調べるための腕試しとして《デュエルシステム》っていうのがSAOには存在してる。これさえ使えば町中でもダメージそのものは与えられる。・・・殺せるかどうかは互いに了承した上でボタンをクリックしないとダメなんだけど、このシステムを自分勝手な解釈の元で悪用している人たちもそれなりに出てきてはいる。

 

 眠っている相手にデュエルを申し込んで、相手の指を勝手に動かしてOKボタンをクリック。そのまま一方的に攻撃をして殺してしまうって言う悪質な殺人事件があったーーー“そういう話がSAO内で流布してる”。そんな内容のお話。

 

 あまりボク好みの話題じゃないから耳スルーしてたんだけど、ジュースっぽい何かを飲み終わって次のを注文しようかどうしようか迷ってたら・・・・・・

 

 

「・・・・・・きゃあああああああっ!?」

 

 

 つんざくような女の人の悲鳴が食堂にまで響きわたってきた!

 

「店の外からだわ! ユウキ! キリト君! 行くわよ」

「ああ!」

「ガッテン!」

 

 阿吽の呼吸でボクたちは武器を片手にお店を飛び出す! こう言うときには店を出るときに支払わなくていいクリック操作のお店システムは有り難いね! ーーそんなふざけたことを連想しないとイヤな気持ちにさせられる。この時のボクにはそう言う予感がしてたんだ・・・。

 

 

 ーーそして、外れて欲しいと思っていたその予感は最悪の形で実現することになる・・・。

 

 

 

 

 

「「なっ!?」」

 

 食堂がある街の広場の北側には、子供の頃に今生でのお母さんが子供の頃に連れて行ってくれた教会に似た感じの石で造られた建物がそびえ立ってる。その二階中央の部屋から“ソレ”は垂れ下がっていた。

 

 

 ーー絞首刑みたいにして首にロープを巻かれた全身鎧の男の人が吊されていたーー。

 

 口をぱくぱく動かしながら、『自分の胸を深々と貫いている黒い槍』を両手で掴んで、うつろな瞳でなにもない虚空をただただ見つめ続けている。

 

「早く抜け!」

 

 駆けつけたキリトが鎧の人に叫んだのが聞こえたのか、彼はキリトの方を見下ろすと、剣を抜くために刃を力一杯握って足掻きだす。

 

「君たちは下で受け止めて!」

 

 アスナが指示を出してキリトが「わかった!」と言って従って、「待ってろ!」と叫んで鎧の人が落ちてくる予定の位置へと走り出す。

 指示を出したアスナの方は教会の中だ。男の人が自力で助かれないなら自分がロープを切ればいいと考えたんだと思う。ロープさえ切れば彼を拘束している縛りはなくなって、重力に従った自由落下の末にキリトが今向かっているポイントまで落ちてくるだけだから。

 

 ボクより早いアスナが教会の中へと走り込んで、ボクとほぼ同じ速度のキリトが先行した今、ボクに出来ることは何もない。ボクがいなくても出来ることなら山ほどあるけどね。

 

 だからボクはただ視てる。そこで起きてる全てを記憶しておこうと、乏しい能力の全てをあげて見て、聞いて、覚えるために全力を尽くす!

 

 

 鎧の人の瞳が見開かれるのが見えた。

 見上げている大勢のプレイヤーたちが恐怖に顔を引き攣らせるのを見てた。

 そのすぐ後にHP切れで力尽きた彼が、苦しみ喘ぐ声を響かせながら消えていくのが見えた。

 断末魔の悲鳴を上げた直後にダランと四肢から力が抜けて死んだようにエフェクトとなって消えていくのを見てた。

 彼を殺した剣が地面に落下して音を立てるまでを見てた。

 吊していたロープの輪が役割を終えてフラフラ揺れてから止まるのを見てた。

 教会の下にある石の床に深々と突き刺さる不気味な形の剣を見てた。

 広場にこだまする女の人の悲鳴が聞こえた。

 

 

 ーーーキリトはたぶん、さっきの話にでていた圏内でプレイヤーを殺すためのPK、デュエルによる計画殺人の可能性を疑ったんだと思う。広場にいる人たちにデュエルのWINNER表示を探すよう指示を出したけど・・・・・・たぶんそれは無駄だろうね。

 

 ボクはキリトとは真逆に、落ちてきて地面に刺さった剣を見るため走って近づく。

 

 ・・・変な形の剣だった。いや、これは一応、槍なのかな?

 ソードアート・オンラインってタイトル名にしばられて剣を連想しちゃってたけど、長さが1メートル半もある剣はさすがに珍しすぎる。落ち着いて考えるなら槍なんだろうね、おそらくはだけど。

 

 手元のグリップが30センチ、柄の先端には15センチの鋭い穂先。

 ここまでは変じゃない。変なのは柄そのものにあった。炎みたいな、トゲみたいな突起物が無数に生えてたんだ。

 

 ボクは眉をひそめた。

 SAOはゲームだけど、遊ぶために作られた普通のゲームじゃない。こんな遊ぶようのゲームに出てきそうな切りづらい剣で人を殺す・・・? いくら何でも現実感がなさすぎている。

 

 その後ボクたちは、最近評判著しいアスナ様のご威光を最大限使って教会内部を現場検証させてもらい、キリトにも事件解決まではソロじゃないパーティーとして行動してもらうことになった。

 

「もし圏内PK技みたいなものを誰かが発見したのだとすれば、外だけでなく街の中にいても危険と言うことになってしまう」

 

 これが事件を捜査したいアスナの理由。キリトも賛成したし、ボクだって諸手をあげて大賛成する正当な理由だ。

 

 でも。

 この時点でボクはたぶん二人と同じ事件を見ながら、まったく違うモノに見えてたんだと思う。

 

 だってボクは最初から、この事件を『事件として見ていなかった』んだから・・・・・・

 

 

 

 

「すまない、さっきの一件を最初から見ていた人がいたら話を聞かせて欲しい」

 

 キリトが教会から出てきて広場にいた人たちに呼びかけた。

 

「あ、あの・・・私ヨルコって言います。私、さっき殺された人と一緒にご飯を食べに来ていたんです」

 

 ゆるふわヘアーの青髪で、少しだけ臆病そうな女剣士さんが一人だけ前に進み出てきて説明を始めてくれた。

 

 事件を見ていた人は大勢いたんだけど、『最初から見ていた人』に条件を限定されると該当してたのは一人だけだったみたいだ。他の人たちは一人残らず途中参加組なんだと自己申告してきてる。本当か嘘かまではよく分からない。

 

「あの人、名前はカインズって言って、昔同じギルドにいたことがあって・・・。でも、広場でハグレちゃって・・・周りを見渡したら、いきなりこの教会の窓から彼が・・・ううっ!」

 

 そこまで言って耐えられなくなったみたいに口元を押さえて嗚咽しだすヨルコさん。

 背中をさすってあげながらアスナが優しい声で「その時、誰かを見なかった?」って聞いたら、

 

「一瞬なんですが、カインズの後ろに誰かが立っていたような気がしました・・・」

 

 とのお返事。

 

「その人影に見覚えはあった?」

 

 この質問には首を振るだけで「知らない」のジェスチャー。

 

「その、イヤなこと聞くようだけど・・・心当たりはあるかな? カインズさんが誰かから狙われる理由に・・・」

 

 キリトからの定番質問にも答えは無言での首振り。

 二人が目を離した一瞬だけだけど、ヨルコさんの目が青く怪しく光ったように見えたように幻視させられかけたりもした。

 

 

 

 

 

 

 

「PCメイドだな。作成者は《グリムロック》・・・聞いたことねぇな。少なくとも一線級の刀匠じゃねぇ。それに武器自体も特に変わった所はない」

 

 大男の黒人武器屋さんが凶器となった剣・・・じゃなくて、槍を鑑定した結果を教えてくれている。

 

 あの後ボクたちはヨルコさんと明日また話を聞かせてもらう約束を取り付けて、凶器となった槍を鑑定してもらうためキリトの知り合いで、ボクやアスナとも旧知の仲のエギルさん家にやってきていたわけなんだけども。

 

 ・・・まさか裏通りにある自分の店に、アスナだけじゃなくてボクまで連れてきたキリトをみたエギルさんがあそこまでやるとは思ってなかったなー・・・。うん、軽く衝撃だったよ。元男の子として致命傷になりかけちゃった。

 

 「あはは・・・」って、引き釣った笑顔を浮かべてるアスナの横で、ボクまで引き釣った笑顔を浮かべなきゃいけない羽目になった恨みを誰にぶつけたらよいものか検討中です。

 

「でも、このクラスの武器を作成できるレベルまでソロプレイを続けてるとは思えないし、中層の街で聞き込みをする際の手掛かりにはなるはずよ」

 

 アスナはそう主張したけど、ボクにとってはそれより何より気になってることがあったから早く先を言ってほしかった。

 

「武器の固有名は《ギルティソーン》となっているな。罪のイバラってとこか」

「罪の・・・イバラ・・・?」

 

 ボクは求めていた答えを聞いて余計に混乱させられてしまった。そして思う。

 なんだかこの事件は、最初から途中まで『筋書きが通っているように見えて、シッチャカメッチャカだな』ーーーって。

 

 

 

 

 

「・・・そんなレアアイテムを抱えて、圏外にでるはずがないよな・・・。てことは、睡眠PKか」

 

 キリトが断定口調で言った言葉にボクの意識は、今にも降り出してきそうな曇り空から現実のヨルコさんの前へと帰還する。

 

「半年前なら、まだ手口が広がる直前だわ」

「ただ、偶然とは考えにくいな。グリセルダさんを狙ったのは、指輪のことを知っていたプレイヤー・・・つまり」

「・・・・・・黄金林檎の、残り七人の誰か・・・」

 

 日時は昨日の翌日。昨日と同じ街にある昨日と同じ食堂に呼び出した上での再会なんだけど、お客さんはガラーンとしていて人っ子一人いない。

 みんな怖がって引きこもっちゃってるんだろうけど・・・・・・なんかイヤだな。“こういう景色だからこそ喜ぶ奴ら”を連想させられるから、ものすごくイヤな気持ちにさせられそうになる。

 

「中でも怪しいのは売却に反対した人間だろうな」

「売却される前に指輪を奪おうとして、グリセルダさんを襲ったってこと?」

 

 今日のヨルコさんは昨日よりかは落ち着いたのか、昔の思い出話を辛そうにしながらだけど話してくれた。

 

「・・・昨日、お話しできなくてすみませんでした。忘れたい、あまり思い出したくない話だったし・・・。でも、お話しします」

 

 そう言って話し始めてくれたのは・・・・・・まぁ、言っちゃあ悪いんだけどありふれた内容の内輪で揉めたお話。

 

 半年前までヨルコさんたちが所属していたギルドでの出来事。

 たまたま倒したレアモンスターが強力な装備品をドロップしたから、売るかギルドで使うかで意見が割れて、最後は多数決で売却に決まって、リーダーの人が代表して売りに行って帰ってこなくて、後になってからリーダーの《グリセルダ》さんって人が死んだことを知らされた・・・。ーー本当にサスペンスとかではよくある殺人事件の動機だった。

 

 

「カインズさんを死なせた槍の制作者のグリムロックさんと言うのは?」

「彼は、グリセルダさんの旦那さんでした。もちろん、このゲーム内のですけど・・・。

 ーーグリセルダさんは、とっても強い剣士で、美人で、頭も良くて・・・。

 グリムロックさんは、いつもニコニコしている優しい人で、とってもお似合いで、仲のいい夫婦でした。

 もし昨日の犯人がグリムロックさんなら、指輪売却に反対した三人を狙っているんでしょうね・・・」

 

 ヨルコさんは暗い表情でそこまで言ってから、最後の証言はまっすぐボクたちの方を見返しながら、誠実な声で言い切ってみせた。

 

「指輪売却に反対した三人の内、二人はカインズと私なんです」

「!?」

「じゃあ、もう一人は!?」

「シュミットというタンクです。今は、攻略組の青龍連合に所属していると聞きました」

「シュミット・・・? 聞いたことあるな・・・」

「青龍連合のディフェンダー隊のリーダーよ。デッカいランス使いの人」

「ああ、アイツか・・・」

 

 キリトが合点がいったと感じさせる声を出して、ヨルコさんが顔を上げて、

 

「シュミットを知っているのですか?」「まぁ、ボス攻略で顔を合わせる程度だけど・・・」「シュミットに会わせてもらうことはできないでしょうか? 彼はまだ今回の事件のことを知らないかも・・・」

 

 ーーと、お約束の流れが続いて終わりの言葉に、

 

「だとしたら彼も、もしかしたらカインズのように・・・」

 

 で、区切られる。

 後は簡単だ。アスナから知り合いのツテを辿ってシュミットさんに渡りを付けてもらって、狙われてるヨルコさんには安全のため宿屋の中に引きこもらせる。

 

 

 ーーーーはい、これで『アリバイ工作』かんせーい。

 時間を指定するイニシアティブが、ヨルコさんの方に回りました。後は色々細工し放題でーす。

 

 

「シュミットさんを呼んでみましょう。青龍連合に知り合いがいるから、本部に行けば何とかなると思うわ」

「だったらまずは、ヨルコさんを宿屋に送らないと。

 ヨルコさん、俺たちが戻るまで絶対に宿屋から外にでないでくれ」

「はい・・・」

 

 ーーーあ~あー・・・・・・。やっちゃった・・・・・・。

 ボクは空を見上げながら、降り出した雨の音を聞く。

 

 ポツ、ポツ、ザーザーと言う普段はけっこう好きな雨音が、今日に限ってはヒドく不快で気にくわない『ピエロの笑い声』のように聞こえてならない。

 

 

 心を黒いモノが満たし始めるのを感じて、ボクは左胸をそっと上から押さえつける。

 

 ーーダメだ。まだ止まっちゃいけない。ボクの旅路はまだ終われない。まだやると決めたことを出来ていない。

 

 

 

 ザザ・・・、ザザザーーーーーー。

 

 

 一瞬だけ目眩とともにノイズが響いて意識が飛びかけるのを、窓から外を見上げてたことで何とか二人に気づかれずに済ますことが出来た。

 

 ーーまだ、大丈夫だ。まだ行ける。この程度のことなら踏ん張れる。

 

 ボクはまだ、彼女に誓った言葉を果たせていないんだから、“終わらせること”なんて許されないーーー。

 

 

 

 

「君は、今回の圏内殺人の手口をどう考えてる」

「大まかに三通りだな」

 

 雨上がりの路地裏を、ボクたち三人が並んであるいていく。

 アスナが聞いて、キリトが答える。いつも通りのお決まりパターンを実行した後、ボクのターン。

 

「・・・ユウキは、どう思ってるの?」

「『劇場型殺人事件モドキ』」

 

 アスナに聞かれたボクは即答で返していた。

 だってボクから見れば今回の事件は事件とも呼べない、呼んじゃいけない殺人事件モドキなピエロが遊び半分で描いた醜悪きわまる子供だましなモザイク画でしかなかったから。

 

「劇場型殺人って・・・サスペンスドラマとかでよくでてくる、あの?」

「そうだよ、アスナ。今回のこれは事件なんかじゃ全くない。ただの遊び・・・『ゲームであっても遊びじゃない世界』で起きた、人の生き死にを楽しむためのショーでしかなかったんだよ」

 

 強い口調と瞳でボクが言い切ると、二人はしばらく黙り込んでからキリトがつぶやくように聞いてくる。

 

「ユウキ、そう言いきるだけの理由はあるのか? その・・・これが『奴ら』の仕業だと証明するに足る根拠かなにかが・・・・・・」

 

 キリトからの質問にボクは「にかっ」と微笑み返してやる。

 

 さぁ、ここからはボクの独壇場だ。ピエロたちが脚本演出総監督を勤める三流悲劇を、三流以下の喜劇にまで貶めてやる。

 人に笑われるよりも人を嘲笑いたい殺人ピエロども、思い知っちゃえ!

 

 

 

 

 

 

 

「キリト、よく思い出してみて。そもそも事件の最初にしていた会話の内容・・・睡眠PKの手口についてをさ」

「え・・・。寝ているプレイヤーの指を動かしてデュエルOKさせて、一方的に殺されてしまったプレイヤーがいたっていう、あの事件のことか?」

「うん、それ。これってよく考えてみなくても、おかしすぎるんだよねー。矛盾しすぎてる。あまりにも子供だましでアホくさい」

「・・・??? どこがなのよ、ユウキ。ちゃんと内のギルドでも捜査はしたのよ? ・・・捜査結果は部外秘だから言えないけど・・・」

 

 アスナが言えないことを申し訳なさそうなお顔して言ってくれる。いや、言わなくていいし聞きたくないから。聞くと絶対に巻き込まれるから、さすがのボクもイヤだってそこまでは深入りしたくないって。

 

 

「それは一先ず置いておくとしてーー本題に入ろうか。睡眠PKについてだよ。

 ・・・あれって、さも実際にあった事みたいに話されてるけど・・・本当にあった事件なのかな?」

「??? なに言ってるのよ。ちゃんと被害者だって出てたでしょ? ・・・石碑にだけど」

「うん、そうだよ。被害者はいる。でもそれが直接的に、事件を実証するものだとは限らない」

「どう言う意味なんだ、ユウキ。もう少し、かいつまんで話してくれ」

「ようするにさ、キリト。寝ているときに眠ったまま殺された人がいる事件の話を、『ボクたちはどうやって知ることが出来てたんだろう』って、そういう話だよキリト」

「「・・・・・・っ!?(ガタタッ!)」」

 

「始めからおかしかったんだ。被害者の存在ばかりが実証されていて、事件そのものは曖昧模糊としている事件は本来なら事件にもならないし、なれない。いいとこ都市伝説止まりだ。

 にも関わらず、みんな誰しもが本当のことだと思いこんで、恐れて警戒して本当にやってしまう人たちだって現れてきてる。始まりが真実だったかどうかなんて今更なんの意味も無くなっちゃってる。

 たとえ始まりの事件が『圏内に見えるけど厳密には外だからシステム範囲外』で起きてたとしても、目撃者がいなくて記録も撮影もされてないなら関係なくなってしまってる」

「虚偽による事実の創造・・・・・・」

「そ。始める人間は誰かを殺して、もっともらしい噂を流すだけすればいい。後は勝手に自分たち以外すべてのプレイヤーたちが噂を広めて真実を作っていってくれる。

 彼らは劇場型殺人の総監督らしく、自分の生み出した作品を見た人たちの反応をおもしろおかしく心の中で笑いながら見物しているだけでいい」

 

 『幽霊の 正体みたり 枯れ尾花』ーー化学によると、怪談や幽霊は人々の不安や恐れから生み出されるものらしい。

 人間の力ではどうすることも出来ない超常の存在・・・そういうのが原因なんだから『仕方がない』として受け入れることができていた前世でのボクやクラスメイトたちを思い出させられる言葉だね。

 確かにあのころのボクだったら自分が抱えている心の問題を、他人を物理的にどうこうすることで解決できると思い込みたがっただろうから。

 だからボクには彼らのことを笑えない。笑う資格はない。

 

 だけどーーー。

 

「『生き残りたい』っていう願望と、『死ぬのが怖い』っていう恐怖心。

 これに『弱肉強食』っていう一般的によく知られた原始的生物の本能的行動を調味料として加えてあげるだけで、怖くておびえている生き残りたいプレイヤーたちの間には『誰かを殺して自分だけでも生き残ろうとするのが正しい生存方法だ』っていう認識を植え付けることが可能になってしまう。

 自分たちは中途中途で介入すればいいだけで、普段は他人同士の疑心暗鬼やアイテムの奪い合いを見て笑っていればいい気楽な身分になれてしまう」

 

「今回の場合で言うなら、『罪悪感』がソレに当たるんだと思う。

 ヨルコさんたち三人の売却に賛成した人たちが抱き続けてきた罪悪感・・・。それを彼らは観劇するために利用した。三文芝居の台本渡して、大根役者たちが自分たちの書いた筋書き通りに真剣な気持ちで踊り狂っているのをゲラ笑いしながら眺め続けてるんだと思う。

 復讐と、復讐劇をゴッチャにしたようなつまらなすぎる脚本を渡してね・・・」

 

「復讐心って言うのはね、キリト。根っこにあるのは憎しみじゃなくて愛情なんだよ。大好きだった人が奪われてしまったから、奪っていった人が憎いんだ。愛憎は表裏一体っていうけど、愛憎の表面にあるのはいつだって『愛情』の方じゃないとダメなんだ。

 だって憎しみが表になっちゃったら、愛情は復讐するための口実にすぎなくなってしまうでしょ?

 愛情のための復讐は、愛する人へ思いを捧げる小道具でなきゃ本当の復讐だなんて絶対呼べないものなんだから」

 

「でも、だからこそ彼らはソレを利用する。愛情なんてと笑い飛ばしたがる。

 愛情なんてくだらない・・・自分たちが得られなかったから。友情もくだらない・・・自分たちが人を信じて傷つくのが嫌だから。信頼はくだらない・・・信じて裏切られて人に笑われるのが怖いから。

 現実が辛いから現実はくだらない、帰る必要はない、好き放題出来るここの方がいいとか言ってる負け犬どもの都合に今回ばかりは合わせてあげない。先手を取るよ、二人とも。ラフィン・コフィンの馬鹿ピエロたちに吠え面かかせて「ギャフン!」と言わせてヨルコさんにも明るい表情を取り戻させたあげられるようガンバロー! おーっ!」

 

「おーーーっ!!!」

「お、おー・・・」

 

 『悪党懲らしめる系』の展開になって意気あがるアスナと、その隣にいるせいか微妙にテンション押され気味なキリトも賛成してくれた。

 さぁ、これで準備は整ったぞ! 待ってろよオレンジギルド! 今度こそギャフンと言わせてやるぜ!

 

 ・・・と、その前にオッハナ詰み~♪

 

「・・・? どこ行くのよ? ユウキ。もう少しで青龍連合の本部に着くのに」

「あはは~。ボク、ああいう堅っ苦しいところ苦手だからさー。近くを警戒しているよ。どこかにオレンジの手先が聞き耳たててるかもしれないからさ」

「??? そ、ならいいわ。後でちゃんと合流するのよ?」

「はーい♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー誰もいない路地裏で。

 ボクは口に手を当てて咳きする音を隠してた。二人には知られるわけにはいかなかったから。

 知られたくないモノが、今のボクの手の中には出てきてたからーーー。

 

 

「うわー・・・。こういう事ってあるんだな~。さすがに転生なんてご都合主義の極みみたいなものを、させてもらっただけの事はあるよ。これは予想外過ぎてたなー」

 

 気楽そうに空を見上げるボクの手のひら。

 そこには、すぐに消えて無くなる耐久値超低めのオブジェクト。

 

 

 “真っ赤な吐血”がベットリ付着して、紺野綿季のアバター・ユウキの小さな手のひらを、赤く紅く染め上げていた・・・・・・・・・。

 

つづく

 

 

ユウキに《エイズ再発寸前》のバッドステータスが付与されました。

命をもてあそぶ者たちへの憎しみが抑制を越えてエイズが再発寸前の状態です。

愛情で満たす治療はお早めに。




謝罪と説明:
ご指摘を受けましたので説明と謝罪をさせて頂きます。

今話の最後でユウキが吐血しているのは、システムを超越するのがSAO作品の主役条件だと思ったことに起因しております。

ただし、これは今回限りの使い捨てネタとして使っただけのものであることを説明しなかったことにより誤解を招いてしまったことを深く謝罪いたします。ごめんなさい。

あくまで今話の此れは、ユウキの身体に異常が起きていることを彼女自身に強く実感させることが主目的であり、次話からは「あれ以来、血は吐いていないけど・・・」みたいな表現で不安を表しながら、憎しみにかられた時などに「――ザザ、ザザザ――」と画像が乱れて目を見開いて動きを止めるなどの表現方法で対処するつもりでおります。

言葉不足のせいでご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした。
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