旅路の終わりは、夢の始まり   作:ひきがやもとまち

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更新です。グラディールさんが成敗される回ですな。
後半は完全なギャグになってますのでお気をつけて。


原作1巻版3話「ゾンビ騎士の碑」

「ソロのユウキとKoBメンバーがデュエルだとよ!」

 

 真っ昼間に街のど真ん中で行われてる決闘騒ぎを聞きつけて、いい感じにギャラリーが集まってきてくれている。もっとも、これが《黒の剣士》や《閃光》だったら、こんなもんじゃ済まなかっただろう程度のものだけど。

 とは言え、攻略組でソロってだけでもレア度は高い。オマケにボクの個性はともかく木綿季ちゃんの身体は間違いなくカワイイ。アスナと違って絶世の美少女剣士タイプじゃないけど話題性は十分だろう。

 

「ガキィ・・・・・・そ、そこまでデカい口を叩くからには、それを証明する覚悟があるんだろうな・・・・・・」

 

 呼びかけられて視線を戻すとグラディールさんの顔・・・ではなくて、システムメッセージが表示されていた。

 

【グラディール から1vs1デュエルを申し込まれました。受諾しますか?】

 

 読み終えたボクは、さっきとは打って変わって朗らかなニッコリ笑顔を浮かべて確認する。

 

「えーっと、ルールは《初撃決着モード》でいいのかな? なんならアイテムをバンバン使えて、壊された武器も取り替え放題な《ありあり》の方でも別に構わないけど? ボクはこれだけで十分だけどね♪」

「・・・っ! いいから早く選んでボタンを押しやがれ!」

 

 ボクは、見せつけるようにゆっくりオプションを操作して《初撃決着モード》を選択可能にしてから、念のためにアスナの方を見て視線で問いかけておく。「いいよね?」って。

 

「大丈夫。団長にはわたしから報告するから」

 

 頷きながら声に出して返事を返されて、彼女の言葉をどう受け取ったのかまでは分からないけど、グラディールさんが叫ぶように気勢を上げてくる。

 

「ご覧くださいアスナ様! 私以外に護衛が務まる者など居ないことを証明しますぞ!」

 

 なんでグラディールさんが元気よくお返事してるんだろう・・・。

 この人って本当にアレな人なんだなぁ・・・・・・。

 

 ――ま、別にいっか。

 

「おっけー♪ それじゃあ、やろっか♪」

 

 パチンと、指を鳴らしてからオプションを選択。表示されてるメッセージが【グラディールとの1vs1デュエルを受諾しました】に変化する。

 その下に六十秒の数字が出てきて、カウントダウン開始だ。これが0になった瞬間にシステム上の決闘がはじめられる。

 

 グラディールさんは腰から得物の大剣を抜いて、ガシャッと大きな音を立てながら構える。ボクシングの王者決定戦前に選手同士が行い合う、定番の威嚇だね。意味はあるかもだけど、ないかもしれない相手次第の奴。ちなみにボクは相手次第の人。

 威嚇してきた人がキリトかアスナだったら恐怖か威圧で緊張させられてたかもしれないけど、逆に今は彼らと比べてしまってショボく見えて仕方がない。

 

 ボコボコにされながらアスナに稽古をつけて貰って、キリトを拝み倒して腕試しのデュエルに付き合って貰って。おそらくはSAO最強の師匠二人から直々に剣の指導をしてもらった幸運なプレイヤーのボクには分かる。分かってしまう。 

 

 グラディールさんの剣は“まったく成ってない”ことが。

 

 

【DUEL!!】

 

 互いに剣を構えながらカウントダウンが終わるのを待ち続けていたボクたちの間に広がる空間に紫色の文字が表示されて弾けて消えた。

 同時にボクとグラディールさんは動き出す。

 

「ふぅんっ!!」

 

 先に動いたのはラディールさんだ。両手剣を振りかぶりながらの猛スピードダッシュ。突進系の上段ダッシュ技《アバンランシュ》。

 半端な防御だと受けることは出来ても衝撃で反撃ができなくなって、横に避けても突進力で距離ができるから放ち終わったときを狙って反撃しても届かない、優秀な高レベル剣技。

 

 それを見定めてから、ボクも一拍以上遅れて動きはじめる。

 相手の彼が小馬鹿にした顔でせせら笑うのが視界に映った。

 

 当然だよね。だって普通、先に当てた者勝ちの決闘で相手に出遅れるのは敗北フラグまっしぐらなんだから。

 

 ――でも、忘れちゃいけない。これは、ゲームであっても遊びじゃない世界で行われている決闘ゲームだと言うことを。

 普通のゲームや決闘だったら、相手の趣味や性格に関係なくシステムの課したルール内で勝敗と勝つための目的が決まっているけれど。

 

 SAOはそうじゃない。デスゲームの中はそうじゃない。戦う理由は自分で決める、決められる。

 そういう世界だからボクは、デスゲームと化した今でも《アインクラッド》が“嫌いになれない”でいるのだから。

 

「ふっ――!!」

 

 二人の距離が縮まって、グラディールさんがシステムアシストに技を委ねて自動的に大剣をボクへと向けて猛スピードで振り下ろしてくる。

 ボクはそれに対して下から切り上げる側だ。位置的にも武器の重さ的にも圧倒的にボクの方が不利。もしこれが“ソードスキルの打ち合いだったら勝負はついていたのにね”!!

 

「ふぅっ!!」

 

 相手の剣技が最終段階に入ってシステム任せになった瞬間に、ボクは“走るのをやめて身体を捻る”!!

 モーションを起こせば発動するソードスキルを半端な状態で不発に終わらせて、空しく刃を光らせただけでザッと引く!!

 

「な、にぃぃぃっ!?」

 

 間近に迫っていた相手の顔が歪む。システムアシストの結果なのか、嫌にハッキリと相手の動き、その全てがスローモーションみたいにクッキリと視界に映っている。

 装飾剣の刃がボクの鼻先数ミリ先か、それ以下の距離を掠めていくのを火傷した時みたいなチリチリとした痛みとも言えない小さな刺激で体感したボクだけど、剣と戦闘の世界アインクラッドを司るデスゲームの守護者カーディナルは、この程度のかすり傷をダメージとは認めてくれない。掠めただけの攻撃を、攻撃が当たったと判定してもらえなかったんだ。

 

「ふっ――!!」

「――ひっ!?」

 

 ボクは不敵に笑って、相手は怯えた悲鳴を上げる。

 どんなに優秀なソードスキルを使おうとシステムに頼って委ねている以上、システム的に使い終わったと判断されたら無意味化する。アバタースキルじゃなくて、プレイヤースキル・・・自分のセンスだけで対応しなくちゃいけない状況に追い込まれたときどうするか?

 それを考えられるから、キリトはソロの攻略組で、アスナはソロで遊撃できる攻略組最強ギルドのサブリーダーで、ボクは二人の友達で教え子なんだ! 誇り高い二人の剣士の名前に泥を塗る戦いなんて、最初から真面にぶつかり合う気なんか全くない!!

 

 

「うああああああっっ!!!!」

「ひぃぁぁぁぁぁっっ!?!?」

 

 技を出し終わった硬直時間で動けなくなっている無防備なグラディールさんに、ボクは猛然と反撃を開始する!

 

 ズカドカズドズド!!!

 剣を連続で叩き込みまくっての連撃! 体にじゃない、相手の持つ剣に対して同じ所を連続で叩きまくる! ソードスキルは使っていない。“まだ”スードスキルを使うことはできない。キリトじゃないボクには、勘だけでそのポイントを見つけ出すまでには至っていない。

 ぎぃぃぃっん!!!

 

「!! 見つけた! 《ヴォーパル・ストライク》!!」

 

 連続で叩いていた装飾剣の一カ所だけ、他と違う音が跳ね返ってきた。装飾華美なプレイヤーメイド品特有の壊れやすいポイント。

 キリトから無理矢理に聞き出してお金まで払わされた極秘中の必勝戦法《武器破壊》。それをボクなりにデュエルで使えるように改造したソードスキルと通常攻撃の組み合わせ連撃! 名前はまだない!!

 

 バキィィィィィィィッン!!!!

 

 派手な飾りがついてた剣が、力ずくでへし折られて上半分の刀身がポリゴン片になって消え去り、空へと帰って行く。

 

 刃を折られた柄だけを握ったまま、未だに茫然自失して動けずにいるグラディールさんの目の前に拳を突き出して二本の指を立てる。

 

 

「――ぶい!!」

 

 

 ニカッと笑って勝利宣言。

 「卑怯だ・・・」とか野次馬たちが囁いてるのも気こえないフリ~。

 

 ・・・種明かしをしちゃうとスゴく単純なオチだった。

 キリトの言葉を引用するなら「初動でほんの少しタメを入れて、スキルが立ち上がるのを感じた瞬間に、パーン!と弾けさせて台無しにしてしまう感じ」って、ところかな?

 

 プレイ開始直後のSAOがデスゲームになる前に、数時間の間だけ一千人のベータテスター以外のビギナーたち九千人が体験しまくってたはずのソードスキル発動失敗。それを意図的に再現してみただけのキャンセル技を使った小細工でしかない。

 

 熟練者を相手に高度な技を高度なフェイントで騙すなら、難解で高度なテクニックよりも初心者向けでしょうもない凡ミスの方が欺し易い。詐欺の基本です。みんなは欺されないよう気をつけましょう。

 

 

「ん~、スゴく気持ちよかったねー。こんだけ勝てればボクはもう満足かなー。

 グラディールさんは最後までやりたい? 武器を替えてデュエルを決着させたいって言うなら付き合うけど?」

「~~~~~っっ!!!」

 

 わざと、ビーターモードの時のキリトが入ってる口調を意識しながらボクが小声で言ってあげると、彼は一度だけボクを振り返って汗まみれの顔で睨み付けてくると前方に目線を戻してメニュー画面を呼び出して操作を開始。大剣と同じくらいに装飾過剰な短剣を取り出して装備し直すのをボクは後ろからジッと確認する。

 

「貴様・・・殺す・・・絶対に殺してやるぞぉぉぉ・・・って、ひぃぃぃっ!?」

「オッケー♪ つまりその短剣は、キミが負けを認める気がなくて、決着がつくまでデュエルを続けたいって意思表示なんだよね?」

 

 にっこり笑いかけながら、背後から近づいてきて首筋に刃をピタリ。どっからどう見ても大の大人を脅迫している怖い女の子にしか見えません。アバターがリアルの身体を再現したものに変えられちゃったから仕方がないんだもーん。文句は茅場昭彦にでも言ってきてね。最上階の黒鉄宮にいるからさ。

 

 

「え、いや、あの、その・・・・・・こ、これはぁ・・・・・・」

「《初撃決着モード》の場合、相手が負けを認める以外でデュエルを終わらせるには相手のHPを半減させるか、あるいは最初に強攻撃をヒットさせるかで良かったんだよね? 強攻撃を当てる箇所は特に指定されてないみたいだし頭とか首とかでも大丈夫なのかな? デュエルの決着だとPKしてもオレンジ認定されなかったと思うんだけど、どうだったか知ってる? グラディールさん(に~っこり♪)」

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?!?!?」

 

 ジョリッ。

 

「返事は『アスナ様ごめんなさい』か『アスナ様すみません、もうしませんから許してくださーい』の二本だけでお願いしまーす☆」

「あ、あああアスナ様ごめんなさいごめんなさい許してください! もう二度とこのような真似は致しませんからコイツ本当に止めてください! 俺殺されそうになっちゃってますからぁ!?」

「はーい、女の子相手に失礼な事言った罰としてもう一言追加しちゃおっかー? 『グラディールはストーカーしてた悪い子です。罰としてアスナ様の護衛役をやめさせてもらいに行ってきますから解放してくださーい』って」

「え! そ、それはさすがに・・・・・・い、いいい言います言います言わせてください! 言いますから小攻撃で少しずつ削ろうとする素振りはやめてください!

 お、おお俺グラディールはストーカーしてた悪い子です! 罰としてアスナ様の護衛役をやめさせてもらいに行ってきますから解放してくださーい!!!!」

「はーい、よく出来ましたー♪ これにて一件落着! デュエルも決着! だからもう、降伏しちゃって大丈夫だよ?」

 

 刃を首筋から外してあげると、「はふぅぅぅ~・・・」と大きく安堵の息をして(たぶん)英語で降参を意味してるんだと思う言葉で「アイ・リザイン」とつぶやこうとしてたんだと思う。

 

 途中でボクが邪魔してブッタ切っちゃたから確証はないんだけどさぁ~。

 機会があったら、起きた後にでも聞いてみようーっと。

 

「アイ・リザイ―――」

「ていやっ! チカン成敗剣!! めーーーっん!!」

「ンぶぅぅぅぅっ!?」

 

 ドガン! と、大きな音が響いて顔から石畳へとディープキスさせられるグラディールさん。

 初めてのキスは大理石の味・・・豪華だね。女の子をお金持ち装備で守ろうとした報いだよ、反省しなさい。

 

 

「ん。変態成敗完了! これにて一件落着! 今度こそホントにV!!」

「・・・・・・かわいい仕草で容赦ねぇなぁオイ・・・・・・」

 

 どっかの誰かから、そんなこと言われた気がするけど気にしません。アスナから物凄く呆れた目で見られていたって大丈夫! まだイケる! 全然大丈夫だよ!(後半は強がり)

 

 ボクはアスナを守り切れただけで大満足! 自分の名誉やプライドよりも守りたい人の安全が最優先! それこそ護衛に必要な条件なんだよグラディール・ワトソン君! えっへん!

 

 

つづく

 

 

オマケ「キリトが手の内のひとつをユウキに晒している理由説明」

 キリトには、教えたくない情報を聞かれたときに法外な高値を吹っ掛けて相手の方から引き下がらせようとする悪癖があります。

 一方で、「払ってくれたら教えてやる」と言ってしまったとおりの金額を払われてしまうと無かったことに出来ないお人好しな側面を持ってもいる人です。

 これは、ビーターとしてのヒール役を演じる彼と、ナイーブで傷つきやすく基本的にはお人好しで善良な彼との間で不協和音が生じているためと作者は予測しております。

 そんな彼にとって、裏表無く素直になついてくるユウキは子犬に戯れつかれているかのようで調子が狂い、お金で逃げようとして払われてしまって仕方なくといった感じの前日談があったと言う裏設定です。




《チカン成敗剣》
剣を寝かせて刃の腹を叩き付ける剣。要するに峰打ち。悪人成敗と言ったらコレ。
ただし使っているのが西洋風の片手用直剣なのでチト危ない。とゆうか痛い。

当たり前の話としてソードスキルでは全く無い。
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