旅路の終わりは、夢の始まり   作:ひきがやもとまち

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久しぶりの更新となります。久しぶりなのに前書きに書くことが思いつかないアホ作者を許してくださいませ、本当になにも思いつかなくて…。
なお、サブタイトルはいいのが思いつかなかっただけで他意も意味もありません。


原作1巻版7話「《マザーズ・ロザリオ》? いいえ、《アザーズ・ロザリオ》他人同士です」

 私の友達、『絶対に殺させない剣』略して『絶剣』のユウキは弱くない。

 

 ずっと前線に張り付いてレベル上げに勤しんでる私やキリト君よりステータスでは下回るけど、性能重視なモンスタードロップより自分好みな形状のプレイヤーメイド装備で固めてるから武器の面でも私たちより劣るけど。

 

 ボスを相手にとどめを刺すラストアタックを決めることはほとんどないし、ボスが召喚する親衛隊モンスターを倒した数でも攻略組の中では下から数えた方が早い程度のものだけど。

 

 それでもユウキは弱くない。むしろ強いと断言できる。

 

 

 ユウキは今まで、ボス攻略メンバーから外されたことが一度もない。多くの攻略組プレイヤーがギルドに入るのが当たり前になった今でもソロプレイヤーのまま最前線に居続けてもいる。

 装備でもレベルでもステータスでも各上な大手ギルドメンバーたちを外してでも、ソロの助っ人プレイヤーとして彼女はボス攻略メンバーに選出され続けてきた。

 

 それが証拠だ。彼女は決して弱くない。むしろ強いと、私『血盟騎士団』副団長の“閃光”アスナは自信を持って断言できる。

 

 

 彼女がラストアタックを決めないのは、最初からレアドロップ品を求めてないからだ。親衛隊を倒した数が少ないのは、敵を倒すよりも味方が倒されないことを優先して動き回っているからだという事実を、私たち『絶剣』と一緒に戦った攻略組古参メンバーは誰もが知っている。熟知している。

 死ぬかと思った一撃を前にしたときの恐怖と、それが助かったときに見せたユウキの笑顔と一緒に身体と心で思い知らされているからだ。

 

 彼女は、自分自身が戦わない。戦場全体を広く見渡せるよう走り回って、苦戦している味方がいたら助けて回る。

 それが『絶対に殺させない剣』の戦い方であり、強さなんだと私たちは誰もがみんな当たり前のこととして熟知している。――そのはずだった。

 

 

「スゴい・・・・・・」

 

 思わず、それだけつぶやいてから見惚れることしか出来なくなる。それ程までに、今のユウキはスゴい。凄すぎる。

 

 求められた時間まで守りきれなくて、青い目の悪魔に接近されそうになっていたキリト君の前に一人で立ちはだかって“呪文みたいな何かの名前”をつぶやいた次の瞬間。

 青い目の悪魔目掛けて突撃していった時から、ユウキはユウキのままユウキじゃない強さを発揮して、ボスモンスターの攻撃をたった一人で凌ぎ続けてしまっていた。

 

 とにかく、速い。動きが目で追えないくらい、反則級な速さで動いて剣を振り続ける。

 休むことなく切りつけ続けて、ソード・スキルの限界を超えちゃってるんじゃないかってぐらいに別格過ぎる速さを持つ剣の技。

 

 それを今のユウキは完全に自分の物として使いこなしてしまってる。

 まるでユウキがユウキじゃないみたいに。私の知るユウキではない誰かが、ユウキの身体に乗り移って戦っているかのように鮮烈なまでに、鮮明なほどに、私たち見る者すべての心と記憶に残り続けるであろう、一生分の忘れない記憶として刻み込もうとしているかのように。

 ユウキは今、全身全霊で剣を振るって、SAOの歴史に残る伝説を刻み続けていく。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」

 

 叫びながら前へ前へと突き進んでいくユウキの声は、私の知るユウキのもの。その顔も、身体も、表情も声音もすべて。私がよく知るユウキのものなのに、なぜだか私たちの誰も知らない別の誰かがユウキとして戦ってくれてるように見えてしまう。

 

 ――ああ・・・でも、なんでなんだろう。どうしてなんだろう。今まで一緒にいてくれたユウキが、ユウキじゃなくなってるはずなのに・・・どうして・・・。

 

 私の心はこんなにも懐かしさで満ちあふれているんだろう・・・? こんなにまで愛おしさが込み上げてくるんだろう・・・?

 まるで長い間離ればなれになってた大切な親友と再会した時みたいに。死に別れた恋人と一瞬だけでも再会できた時みたいに。

 スゴく嬉しくて懐かしくて愛おしくて涙があふれてくるぐらいに切なくて・・・とても寂しさで胸が張り裂けそうになってくる。

 

 まるで私の心が、この感動と喜びを一瞬のものでしかないと知ってるみたいに。ほんの一瞬だけ会うことを許された織り姫と彦星の別れの時が、もうすぐそこまで迫ってきてることを気づいてるみたいに。

 

 鮮烈に輝く、一瞬の光として見ている人の心の中だけに残り続ける思い出として、今のユウキは私たち全員のために誰かとして戦ってくれている・・・・・・。

 

 

「―――ぷはっ!! もう無理! 限界! ギブアップ!

 キリト、ボクもう維持できそうにないから後お願いね! 頼んだよ!?」 

「え? ――あ、はい。後は任されまし・・・た?」

 

 

 あまりにも現実離れしたユウキの変貌ぶりと圧倒的な強さを前にしてキリト君も呆然としてたのか、微妙にボケッとした反応を返した後で彼もまた青い目の悪魔へ向かって突撃していく。

 

 とは言え、そこはやはりビーターのキリト君だ。相変わらず反則なまでに強い。強すぎる。

 

 ・・・と言うより、あの両手に二本の剣もって振り回しながら使用してるソード・スキルは、明らかに既存の知識で知られているスキル情報には存在してない奴よね・・・? もしかしなくてもエクストラスキルだったりしないかしらアレって。

 しかも威力と使いこなし具合から見て、熟練度は既に最高レベルに達してると見たわ。私たちにエクストラスキル手に入れたこと内緒にしたまま、熟練度も最高レベルにまで上がるほど習熟しちゃってたんだ-。ふーん、へー、そうなんだぁー。

 

 ――よし、戦い終わって勝利した後に、あの薄情者をとっちめてやるわ。もちろんユウキも同罪で問い詰めてあげるから覚悟しておきなさい二人とも。

 友達をおいて一人だけ秘密を抱え込むような悪い子たちには100万Gパンチが待っているものなのよ。

 

 

 

 

「・・・・・・うおおおおあああ!!」

「ゴァァァァアアアアアア!!」

 

 雄叫びを上げ、俺は隠し技のエクストラスキル《二刀流》の上位剣技《スターバースト・ストリーム》、連続十六回攻撃を止めとして放ち。青い目の悪魔グリームアイズを死闘の末、遂に倒してポリゴンの破片として飛び散らせることに成功した。

 

 最初の時点で、ユウキ相手にHPを大きく削られていたのが影響し続けたのだろう。グリームアイズの動きは目に見えて衰えており、俺の方でもわずかに余裕を持って戦闘を勝利で終わらせることが出来たようだった。

 ・・・まぁ、余裕があると言ってもHPバーが赤いラインになってるし、助け起こそうとして落とした拍子に頭を打ち付けても死に心配は絶対にない程度の余裕しか残ってないんだが・・・それもある意味しょうがないだろうな・・・。

 

 本来ならレイド組んで倒すボスモンスターを一人で相手にして、実質二人だけで倒したわけなんだから、これだけ残ってたら余裕と表現しても罰は当たらないと俺は思いたい。

 

「やぁ、キリト。勝てたみたいだけど、大丈夫だった? ・・・生きてるかい?」

「・・・お前、なぁ・・・・・・」

 

 思わずガックリとなる俺。今の余計な最後の一言でドッと精神的ダメージが追加された気がする・・・。死にそうな思いしながら必死に生き延びようと頑張った直後にかけられる言葉としては最悪すぎる一言だった。

 

 ――あ~・・・疲れたダリィ、家帰って早く寝てぇ・・・ベッドに入って休みたい・・・。

 

 思わず、そんな風に思ってしまう俺だったが――現実はそれほど甘くないし、優しくもないようだった。

 

「キリト君、ユウキ。ずいぶんとバカみたいに無茶してくれたわね? 人がどれだけ心配したかちゃんとわかっているのかしら?」

『はい・・・ごめんなさい・・・。心より反省しております・・・』

 

 額に青筋浮かべたエフェクトを幻視させられそうな表情で笑顔を浮かべたアスナが、両手を腰に当てて俺たち2人を見下ろしてきたので即座に正座姿勢へ移行。

 生き延びることこそアインクラッド攻略と現実への帰還を目指す攻略組にとっては何よりも重要な能力。恐怖のオカンキャラを前に、勝ち目のない勝負を挑む気など少しもない俺たち2人だった。

 

「ま、まぁそのなんだ。生き残ってた軍の連中は回復しといてやったが、コーバッツが言うには俺たちが来るより先に2人死んでたそうだ」

「・・・そうか。ボス攻略で犠牲者が出たのは、67層以来だな・・・」

「こんなのが攻略って言えるかよ。・・・ったくさぁー、死んじまったら何にもなんねぇんだぞ?

 そこんとこ部隊を率いるリーダーだったらキチンと理解しといてくれよな、コーバッツさんよぉ―」

「うぐ・・・。申し訳ない・・・。・・・いや、申し訳ない、です・・・」

 

 不満を吐き出すようなクラインの台詞に、情けなさそうな声で横からコーバッツが答えてやっていた。

 て言うかコイツ、本当に死ななかったんだな・・・。戦いに夢中で全然気づかなかったわ・・・。

 俺はまだ戦闘の余韻が抜け切れたいないらしい頭を左右に振って太くて大きな溜息を吐いて気分を切り替えようとしていると、勢い込んでクラインが訊いてきた。

 

「そりゃそうと、オメエ何だよさっきのは!? 見たことねぇぞあんなの!」

 

 言われて気づくと、アスナとユウキを除いた部屋にいる全員が沈黙して俺の言葉を待っている。

 ちなみにアスナはユウキを説教中で、俺の話にはあまり興味がなさそうだった。話せば聞いてくれるだろうとは思うのだが、確証が持てない程度にはユウキのことで頭がいっぱいらしい。

 

 あと、なぜだか部屋の隅でコーバッツが、

 

「・・・“そりゃそうと”・・・か。

 ふっ・・・攻略とも呼べないボス攻略を指揮した男への評価など所詮、この程度なのは致し方なきこと。俺は気にしない、気にしない、気にしない・・・・・・」

 

 なんか落ち込んでるっぽい。別にいいんじゃないかと、俺なんかは思うけどな。単なる事実なんだから。

 

「・・・エクストラスキルだよ。名前は《二刀流》だ。――言うまでもないと思うが、出現条件とかが解ってたら、とっくの昔に公開してるネタなんだから聞いてくるなよ? 俺にだって心当たりはさっぱりなんだから」

 

 疲れてるから要らぬ問答をしなくて済むよう、あらかじめ予防線を張った上で説明する俺。

 クラインも興味津々ではある様子だったが、言ってやった説明自体は無理なく矛盾なく当たり前のことだったのもあってか無駄な質問をしてくることはなく。新たな質問と質問相手へと矛先を変えた。

 

 俺と同じくエクストラスキルと思しき謎の剣技を使ったユウキと、ユウキのスキルについてである。

 

「おい、ユウキ。オメェも水臭ぇじゃねぇか。あんなすげぇウラワザ使えるのを黙ってるなんてよぅ。

 そりゃ、レアスキル持ってるなんて知られたら色々聞かれて面倒くさくなるからイヤだってのは判るが・・・ありゃ一体どんなソードスキルなんだよ? この場にいる奴だけにでいいから少しぐらいは教えてくれてもいいだろう? な? な?」

 

 楽しそうな口調と笑顔で、悪意も作為もなく言ってくる辺りクラインはほんとに良い奴だと俺は思う。

 ネットゲーマーは嫉妬深くて、妬み嫉みがあって当たり前なんだが・・・それを一切感じさせない受け答えができるのは、意外とコイツの人間性が出来てる奴だからなんだろうなーと、最近特にそう思うようになった俺である。

 

 ――それはそうと、先の質問には俺も興味があった。

 俺は確かにエクストラスキル《二刀流》が使えるようになった、謂わばSAO二人目の《ユニークスキル》持ちでもある訳なのだが。それはそれとして珍しいスキルを見ると心が躍るのは、俺も重度のネットゲーマーってことなんだろうな。実際のところ。

 

 そんな俺たちの期待を一身に浴び、ユウキはいつも通りの態度に戻った表情で「コテン」と小首をかしげながら、こう答えてくれた。

 

 

「え? わかんない」

 

『――――は?』

 

 

「なんか、たまにあるんだよね。戦闘中に熱くなってブチ切れるみたいになっちゃって、記憶と意識が飛んで、気がついたら戦闘が終了してましたって感じのことが。

 まぁ、さっき使ったソード・スキルのことは何となく覚えてるんだけど・・・使えるときには使える代わりに、使えないときの方が多いからなぁ~。オマケに使ってるときは意識と記憶が吹っ飛んじゃうみたいだし。

 別人みたいな速さで動く自分を上から見下ろしてたような、ありえない記憶も混じっちゃう時があるソードスキルだからね。こんなの公開しても意味ないんじゃないかなーって思って言わなかったんだけど、ダメだった?」

 

 

『―――何その謎スキル。スゴく怖い・・・・・・』

 

 誰彼ともなく、そうつぶやいて、ユウキの使っていた正体不明の多分エクストラスキルの話はこれ以上しない方向で沈黙のまま可決された。

 

 いや、ほんと。デスゲーム化したSAOで、この手の話は本気でヤバい事態を招く恐れがあるから禁句なんだよ。

 少し前にあった《圏内事件》もそうだったけど、親しい人と死に別れてしまったトラウマ持ちプレイヤーが《アインクラッド》には腐るほど存在している。

 コイツらの場合、幽霊でも何でもいいから死んだ人にもう一度会いたいと心から願っていて、その為には手段も犠牲も選ばないプレイヤーもたまにはいる。

 

 怪談話や、冗談としてならギリ有りなこの手の幽霊話は《SAO》だと、ガチでやっちゃ駄目な話の代名詞だ。絶対にユウキの使ったあのスキルのことは秘密にしておこうと暗黙の了解で全員が意見を一致させて、俺たちはそれぞれの場所へと帰路に就いた。

 

 クラインたちのギルド《風林火山》は、このまま75層の転移門をアクティベートして新しい街に一番乗りしてから帰るとのこと。

 コーバッツたちは疲れているなりに、面子の問題があるので自力で帰るらしい。死なないように頑張ってくれ。俺はもうヘトヘトだから、これ以上は守ってやれないからな。

 

「それで? アスナたちはどうするんだ?」

「え? 何言ってるのキリト君。わたし、しばらくギルド休んで君たちと一緒にパーティー組むって言っておいたでしょ? もう忘れたの?」

「・・・え。そんなの言われた覚えないけど―――」

「言ったのよ」

「いや、俺の記憶だと確かそんなこと一言も―――」

「言ってたのよ。私が保証するわ。絶対によ」

「・・・・・・・・・」

 

 問答無用の威圧感によって俺は反論を諦め、黙って彼女に従う道を選ぶことにした。

 何となくユウキを見ると、目が合ってアイコンタクトを交わし合う。

 

 俺たちはこの時、言葉を介さず互いの気持ちを誤解なく相手に届けるという偉業を成し遂げていたのだが、きっとこの個人的な経験は他の人たちに伝わることのないまま忘れ去られていくのだろう。人の歴史って大体そういうものだと、よくゲームとかで言ってることだから。

 

 だからせめて、俺たち二人が共有した思いを心の中だけでも言葉にして記憶に残そうと俺は思う。

 

 

『美少女が怖い笑顔で迫ってきたら、どんな最強ソードスキルを使えようと役立たない』

 

 

 ―――以上。女の子は怖いと理解させられた一日の顛末についてでした。

 

つづく




あとがきに書くつもりで書き忘れてました。
今作ユウキのユニークスキル設定に関してまた後日にさせて下さい。
眠いのと執筆マシンの電池が切れかかっていますので。
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