「『軍の大部隊を全滅させた蒼い悪魔』『それを単独撃破した二刀流使いの五十連撃』・・・こりゃ随分大きく出たもんだなぁ! HAHAHAッ!!」
新聞を読みながら目の前の黒人巨漢が楽しそうに大笑いしている。
途中まで流暢な日本語で話してたくせして、最後だけ外人っぽく大げさなジェスチャー付きで笑い飛ばすところとかが何かムカつく。
「・・・笑い事じゃねぇよ・・・尾ビレがつくにも程があるだろ。お陰で俺はねぐらにもいられなくなって迷惑してるんだからな。少しは気を遣えフランクすぎる民族性の外国人」
不機嫌になった俺は、揺り椅子にふんぞり返って足を組んで茶を啜る。
そして、頬杖ついてそっぽを向くと朝から色々あったアレやこれらを思い出してゲンナリした気分にさせられて溜息を吐いた。
――昨日の迷宮区で青眼の悪魔を倒して街に帰還した翌日。
予想したとおり、俺は朝から剣士やら情報屋やらに押しかけられて、脱出するために高価な転移結晶を使うハメになり、これ以上の赤字は出さないためにエギルの営む雑貨屋の二階にシケ込んで、不良在庫の茶を啜っていた。
「引っ越してやる・・・どっかすげぇ田舎フロアの、絶対見つからないような村に」
「いやー、それは無理なんじゃないかなー。少なくとも今の時点では、だけどね☆」
ブツブツつぶやく俺に、右斜め前に座っているユウキがニコニコした笑顔を向けながらスタッカート付きで、細やかなる俺の希望を打ち砕いてくれる。
「今じゃもう既にアルゲード中――ううん、多分アインクラッド中が昨日の事件で持ちきりになってるんだもん。どこに逃げたって直ぐに見つかって追いかけられて、またすぐ引っ越さなきゃいけなくなっちゃうから同じだよ。
現時点までのアインクラッドは隅々まで攻略し尽くされた既知の世界です。誰にも見つからない、知られてない田舎フロアに移り住みたいなら、まずは自分で冒険して今より上の階層で見つけ出しましょー!」
ビシィッ!と、Vサインを俺の眼前に突き出しながら、ユウキは「ニカっ」と笑って断言する。イヤらしくもなんともない、いい笑顔なのが何かムカつく。
「まあ、そう言うなキリト。一度くらいは有名人になってみるのも面白そうじゃねぇか。どうだ? いっそ講習会でもやってみちゃ。会場とチケットの手はずはオレが整えてやるぜ? 有料でな」
「するか!」
エギルも概ねユウキに同感らしく、さらに碌でもない提案までしてくる始末だ。しかも有料で。友達甲斐がないにも程がある。
俺は、意地の悪い悪友二人になにか言い返してやろうとして、その前にまず喉を潤そうとコップに手を伸ばしたら空になっていた。
ちくしょう・・・お茶にまでからかわれるなんて、今日は厄日だ・・・。
――と、思っていたのだが。
「そりゃあ、アンタの自業自得なんじゃないの~?」
そんな声と共に背後から近づいてくる足音がして、振り返った先にピンク色の髪とそばかすが特徴的な少女が荷物を運びながら佇んでいた。
「アタシたちだけの秘密だ-、って言ったのをバラしちゃったんだから」
そう言って彼女、少し前に知り合ってからエギルの店でたまに会ってる鍛冶師の少女リズベット、通称リズは「にひっ」と嫌味な笑顔を向けてきながらも運んできた荷物を床に置き、俺用にと持ってきてくれたらしいお茶のおかわりを淹れ直してくれてから仕事の手伝いに戻っていった。
数少ない心優しい友人からの気遣いが、俺のすさんだ心を甘く酸っぱい思いで癒やしてくれる。・・・茶の中身は相変わらずの不良在庫っぽくて風味も味も甘辛かったけども。
「・・・ねぇ、ちょっと待ってキリト。キミもしかしなくてもリズちゃんと知り合いだったの!?」
そして何故だか変なところで食いついてくるユウキ。なんか信じていた友達に寝取られた、みたいな顔してるけど大丈夫か?
「あれ? 言ってなかったっけか?」
「言ってないよ~!!」
ブンブン両手を振り回しながら、目をバッテンにして驚きと怒りを表現するユウキ。
・・・そう言えばユウキには、言ってなかった気がするな・・・。
別に教えたくなかったってわけじゃないんだけど聞かれなかったし。俺、他人のこと言うのも聞くのも苦手だし。
それに、アスナとリズが親友同士だったってことは出会ったときに偶然知ったし、アスナとユウキは端から見なくても仲良すぎるから、なんとなく情報は言わなくても伝わるもんだとばかり。
ま、いっか。
どうせ暇だし、気分転換ついでに“あの時のこと”でも語ってやるとするか。
「――と言うことがあって、俺はリズと友達になったんだよ」
俺が四八層主街区《リンダース》にある《リズベット武具店》でのリズとの出会いに端を発した、五十五層でドラゴンが住んでる雪山で《クリスタライト・インゴッド》を手に入れるまでのちょっとした冒険について二人に向かって話し終わると。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
なぜだか白い目付きで、軽蔑したような瞳を向けられてしまった――。
「あー、その、なんだ。キリト、するってぇとお前さんはリズベットの奴と一緒に登った山で夜を明かさざるを得なくなって、手料理ごちそうして二人横に並んで寝て、手を握って欲しいと言われたから握ってやって、翌日には街で告白されたけど友達になりました――と、そういうわけか」
「ま、まあそうだな。途中で多少というか結構な誇張や過剰表現があった気もするけど、大雑把に言うとそんな感じのことがあって俺たち二人は友達に―――」
「女ったらし」
「スケコマシ」
『天然ジゴロの口説き文句チーター野郎』
「なんでだよ!? あと、最後の罵倒を言ったのはどっちだ!? デュエルしてやるから表へ出ろぉぉっ!!」
根も葉もない濡れ衣を着せられ、あたかも俺が女心を弄ぶ男として最低最悪なビーターであるかのように決めつけるのはやめてもらいたい!
こういう、言われる側の事情を考慮しない無責任なネットスラングこそが日本のネットゲーマーを生きづらくしている現実を思い知るべきなんだ! コイツらみたいなプレイヤーは特に!
「いや、無理だよその言い訳は!? 『誰かを見殺しにするくらいなら一緒に死んだ方がマシだ。それがリズみたいな女の子なら尚更な』なんてセリフが口説いてないのに出てきてる時点でジゴロだから! タラシだから! 生まれついての天然ナンパ男以外には不可能なレベルの超難度口説き台詞だよ、それ!?」
「俺は常識的なことを言っただけだ! 何もおかしな事は言っていない!」
「それはギャルゲー世界の常識だよ! ギャルゲー主人公以外がやったらジゴロ以外の何物でもないんだよ!?」
「知らん! 俺はネトゲ一筋のネットゲーマーだ! ギャルゲーの常識なんてものはプレイしたことないからわからんし知らん!!」
朝からのゴタゴタで鬱憤が溜まってたのか、噛み付いてきたユウキに俺まで噛み付き返してしまった。
それぐらい不本意な言われようだったんだ! タラシだのジゴロだのギャルゲー主人公だなんて謂われのない言われようはな!
「裏切ったなキリト! ボクの気持ちを裏切ったな! 信じてたのに! ボク、キリトのこと信じてたのに!
リズちゃんは強気な口調で男勝りっぽく見えて、実は誰より女の子らしい乙女チックな美少女だと思ってたのに!
それが殺し文句で口説き落として惚れさせる天然ジゴロ根暗美少年剣士に穢されちゃうだなんて! このリア充男! ネト充の敵! リア充爆発しろーっ!!」
「ここはネットの世界だ! リア充はいねぇ!!」
ガウガウ、ガウガウ。黒犬同士が吠えまくり合うように言い合いを続ける俺とユウキ。・・・なんかクラインと話してる時との差異がなくなってきてる気がするけど、頭に血が上っているからか気にならない。
とにかく今は先の言葉が如何に理不尽なものだったのかをコイツに判らせることが重要だ!
――なんか、視界の隅でリズが耳まで真っ赤になってプルプル震えてる姿が見えたような気がするけど、それはユウキに怒っているのであって俺に対してではないと俺は親友のリズを固く信じている
「だいたいだな! ・・・ん? ちょっと待て、ユウキ。誰かが二階に上ってくる音がする」
「へ?」
ソロの野外活動に慣れた俺は、聞き耳とかのスキル値もけっこう高く、言っちゃ悪いが大雑把なきらいのあるユウキはあんまりそういうのが得意じゃないのか気付くのが俺より遅れはしたものの、それでも直ぐに階段を駆け上がってくる足音に気付いて視線を扉の方に振り向かせる程度には冷静さを保っていたようだった。
「・・・アスナ?」
息せきって上がってきたのは、血盟騎士団副団長姿のアスナだった。
なんか疲れてる上に、顔色も心なしか悪く見えるんだけど大丈夫なのか? ゲームの中でさえ悪く見える顔色の再現レベルって少し異常だぞ?
「ハァ、ハァ・・・どうしようキリトくん、ユウキ・・・。大変なことになっちゃった!!」
「・・・は?」
「へ・・・?」
アスナの言葉で再び顔を見合わせる俺たち二人。
今度は怒り顔じゃなくて?顔だが、答えがわからん者同士が顔つき合わせても答えが出るはずもなし。
結局は涙目になってるアスナに、さらなる負担をかけること承知で聞くしかない無力なユニークスキル使いの黒尽くめ二人な俺たちだった。
「君とボス攻略以外の場で会うのは園内事件のとき以来だったかな? キリトくん」
その人は重々しい声と口調で、ボクの隣に立つキリトに向かってそう言った。
なんとなくボクは部屋の上を見上げて、真っ赤な下地に十字架をあしらった下の方には《KoB》って書かれたギルド旗とでも呼べばいいのか名前は知らない高価な布を見つめる。
そこは1フロア丸ごと使った円形の部屋で、壁は全面透明のガラス張り。
部屋の中央には半円形の巨大な机が置かれていて、その向こうに5脚の椅子が並んでる。
何度きても慣れる気がしない、五十五層主街区グランザム市、別名《鉄の都》にあるギルド血盟騎士団本部の幹部用会議室。
その騎士の城の主が今、他四人の幹部さんたちと一緒にキリトとアスナと、あとなぜだかボクまで呼ばれた前で語りだす・・・。
「・・・いえ、前に六十七層の対策会議で少し話しました。ヒースクリフ団長」
「あれは辛い戦いだったな」
血盟騎士団団長、ヒースクリフさん。
見た感じからして重厚そうなイメージを持つ『騎士団のお城ー』って感じの建物の主で、キリトの二刀流が知られるまでは全プレイヤーの中で唯一のユニークスキル持ちとして知られていた最強の聖騎士。
この人に会うと、なぜかお尻がムズムズしてきて、大声を上げながら走り出したくなっちゃうんだよね。なんでなんだろう?
それに、この建物の中にいるといつも以上にジッとしてるのが我慢できなくなって困るんだけど・・・。
これはたぶん、紺野木綿季ちゃんの体質によるものだよね? ボクがジッとしてるの苦手すぎるダメな子だなんて思いたくないよ?
「あの時は、我々も危うく死者を出すところだった。トップギルドなどと言われていても戦力は常にギリギリだよ。――なのに君は、我がギルドの貴重な主力プレイヤーを引き抜こうとしているわけだ」
「――え?」
驚いてアスナの横顔を見るボク。
そして、サッと逸らすアスナ。
・・・おぉーい、目を逸らすなこっち向けー。現実から目を逸らしてもいいけど、ボクの目は逸らさないで。聞いてないよ、説明してよー。
「貴重なら護衛の人選には気を使った方がいいですよ」
「その通りです、団長。ですから私は血盟騎士団を脱退してソロに戻り、キリトくんとユウキと一緒に行動する道を選んだのです。
彼らの方が血盟騎士団団長の指名された護衛よりも強いのですから、その方が安全で確実だと判断したからです。私が貴重だと仰られるならご理解頂けませんでしょうか? ヒースクリフ団長」
「・・・・・・え?」
今度はボクじゃなくてキリトが「え?」。
アスナ・・・ボクだけじゃなくてキリトにも内緒にして連れてきてたんかい・・・いくら何でも、ぶっつけ本番すぎて程があると思うよ、ボクでさえも・・・。
「アスナ君、そう結論を急がなくてもいいだろう。それに今は彼との話の途中だ。もう少しだけ彼と話をさせてくれないかね?」
「・・・・・・失礼しました。どうぞ」
「ありがとう。・・・それでだ、キリトくん。グラディールは自宅で謹慎させている。迷惑をかけてしまったことは謝罪しよう。
だが我々としてもサブリーダーが引き抜かれて、はいそうですかという訳にはいかない。
――そこでだ、キリトくん。私と二人でデュエルをしないかね?
私と戦い、勝てばアスナ君を君が連れていき、もし負けたら君が我が血盟騎士団に入るのだ。どうかね?」
「・・・・・・」
「欲しければ、剣で手に入れる。大手ギルドのギルマス相手だろうと関係ない。この世界では剣一本でどこまでも行って良く、どこまでも傲岸不遜に格上から奪い去っても良いのだよキリト君」
「・・・・・・・・・」
「だから君がアスナ君を欲するというなら。あるいは、アスナ君の願いを叶えてやりたいと望むのであれば私を君の剣で――《二刀流》で倒して奪い給え。
何故ならそれが、現実世界から飛び出した仮想の異世界、石と鉄の城《アインクラッド》に生きる剣士としての在り方というものだからだ。君もそう思うだろう?」
「・・・・・・・・・・・・」
団長さんの言葉を聞き終えても、沈黙したまま答えを返さない。
――その沈黙自体がなにより雄弁な答えになっちゃってたから、ボクは心の中でひっそりと溜息を吐かざるをえないんだよねぇ・・・。
一緒にいて途中からわかってきたことなんだけど、キリトは普段から安全マージンやリスクコントロールにうるさい割に、本質的には戦うことに損得勘定が必要ないところがある。
ドラゴンボールの孫悟空とかと、タイプ的には似ているバトルジャンキーな心を持ってるんじゃないかな? 『戦うこと、勝つこと、最強を目指すことに理由なんか要らない!』みたいな感じで。
そんな彼がリスクを気にするようになったのはたぶん、《SAO》を始める前にやってたっていうMMOで出会った嫌なプレイヤーたちとのことを気にし過ぎちゃってるせいなんじゃないかなー?
キリトって意外と、良いことよりも悪いことの方が尾を引きやすくて、嫌な思い出ほどずっと後まで覚え続けてる傾向があるし。ぶっちゃけ、あんまりMMOに向いてる性格してないからね。
十人のプレイヤーと出会って、内九人がイヤな人でも一人だけ気が合う人に出会えたら『採算取れたよラッキー☆』って思わなくちゃやってて辛くなるのがオンラインゲーム。
ソロ一本でプレイし続けるなら、オフラインでもやっていた方がずっとストーリーも展開も楽しめる。
それでもキリトがオフラインじゃなくオンラインを選ぶのは、人付き合いで後天的にできた内向的な性格の彼と、生まれつきバトルジャンキーな悟空体質だった先天的な彼の気質とが相性悪くて場面場面で影響し合う役割が変わっているからなんだとボクは思ってる。
バトルに関係する部分では孫悟空なキリト、それ以外の時にはナイーブな美少年のキリト、みたいな感じで。
まぁ、長くなっちゃったけど要約すると。
キリトは強い人から挑戦されたら断れないよね、孫悟空だから。俺より強い奴が向こうから来たぜ!で、リスクコントロール無視して突っ走っちゃうよね体質的に。
「団長、わたしは別にギルドを辞めたいと言ってるわけじゃありません。ただ、少しだけ離れて、色々考えてみたいんで―――」
「いいでしょう、剣で語れと言うなら望むところです。デュエルで決着をつけましょう」
「す――って、え!? ちょっと待ってキリト君! わたしがせっかく考えた説得計画が台無しにな――」
「よろしい、キリト君。男と男、剣士と剣士が交わした約定だ。君が勝ったとき、私も決して違えることがないことをここに宣誓するものである!」
「え、え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
大絶叫アスナ。予想外の展開に狼狽えざまを晒しっぱなしだね、シーマ様に怒られちゃいそうなくらいに。
でもまぁ、今回のことは仕方ないんじゃないかなぁ? 策士策に溺れたって感じで、アスナの自業自得と思うしかないよ。――だからそんな縋るような涙目で見つめてきても今回だけは助けてあげないよ? たまにはシッカリ反省しなさい。
・・・と、忘れるところだった。
「あのー、団長さん。ボクからも質問いいですか-?」
「ん? なにかねユウキ君。君からの質問なら私はいつでも歓迎するよ?」
「ありがとうございます。じゃあ失礼して――何でボクまで呼ばれたの? 今日って・・・」
これは本当に不思議な疑問。ここに来るより前から気になっていて、キリトが呼ばれた理由を教えてもらってからも、やっぱり謎なままだった未だに続いてる今回の謎トップ1。
わりと本気で何でなのかスゴく気になってたんだけど、団長さんの方はそうでもないみたいで「はっはっは、そんなことか」とアッサリ答えてくれそうな雰囲気。・・・空気読んで教えてくれるの待って損したかも・・・。
「なに、ユウキ君には前々からずっと勧誘し続けてきたからね。血盟騎士団に入ってもらいたいと思う理由が今回の件で一つ増えただけの事だよ。なんら問題はない。
せいぜい『必ず入ってもらいたい』という思いが『絶対に入ってもらう』にランクアップした程度の変化だ。だから今日も勧誘するつもりで呼んだだけで大した意味はないのだよ。大事のように誤解させてしまってすまなかったね」
「大事だよ!? 物凄い大変化だよ! パワーアップしちゃってるじゃないか!!」
任意の『入ってもらいたい』から『入ってもらう』に強制されちゃってるじゃん! キリトの時にはオブラートに包んでた綺麗事さえボクの分にはなくなってるじゃん!
どのダンジョンからクリアしても良いけど、放っておくとボスが強くなってくRPGで残しておいたボスが強くなり過ぎちゃったパターンになってるのはMMOでもRPGの世界だと大事なんだよ!?
ダンタークが第二形態に進化しちゃってて勝てなくなっちゃったじゃないか! せめてノエルの方で! あっちだったら第二形態の方が弱いから!
「無論、君にもキリト君と同じ条件で勧誘を要請するつもりでいた。君の名も知られていないユニークスキルの威力を確かめる上でも丁度いいだろう?
君の・・・ユウキ君の手に入れた剣技を私にも見せて欲しいのだ。そして願わくば、君にもまた私にとって良きライバルとなってくれる事を私は心から望んでいる・・・」
誠意溢れるまなざしでボクを見つめてくる団長さん。その瞳は純粋すぎて綺麗すぎて、嘘偽りはまったく無いってことはボクでさえも判るんだけど、う~ん・・・・・・。
「・・・せっかくだけどデュエルの方は遠慮しとこうかな。キリトが負けたらボクも血盟騎士団に入るってルールで大丈夫だよ」
「なっ!? 正気かユウキ!?」
「そうよユウキ! 早まっちゃダメ! もっと自分を大事にしなさい! 女の子でしょ!」
キリトとアスナが心配してくれるけど、コレでも一応考えた結果としての答えだから変える気はないんだよね。
「いいのかね? いや、私としては願ったり叶ったりではあるのだが・・・君にとってのメリットがあるように見えぬのだがね?」
「たしかにメリットはないかもね。でも・・・・・・」
ボクは隣まで来て心配してくれてた友達二人に笑顔を向けて、ためらいも迷いも、後悔だって絶対しない覚悟を込めて断言で返す。それがボクなりの二人に対する答えだ。
「キリトが負けて血盟騎士団に入っちゃった後に、ボクだけ一人でいてもつまらないし意味ないからね。
二人と一緒にいられる場所が血盟騎士団に変わっただけなら、ボクは全然ダイジョーVだよ」
びしっ!とVサインを作って、笑顔の左脇に飾らせながら団長に向かってお返事するボク。
実際、言ったとおりの理由でギルドへの参加を了承するつもりのボク。
ボクの剣はキリトや団長と違って、自分のために戦うための武器じゃないから、守りたい誰かを守るための剣だから。
だからボクが守りたい二人がいる場所が、ボクにとっても守るべき場所になる。建物や場所そのものに意味はあんまり感じていない。二人が来なくなったエギルさんのお店にしょっちゅう顔を出しに行くボクって言うのは、彼には悪いけどあんまりイメージできなかったからね・・・。
「それにほら、ボクより強いキリトが勝てなかった人にボクが挑んでも勝てるはずないし。そんなので危ない目に遭ってアスナを心配させちゃうのはイヤだし。
あと、アインクラッド最硬の防御能力を持ってる人の戦い方を観戦させてもらった方が、後々アスナたちを守るのに役立てられるかなって思ったんだ。参加選手になっちゃうと公平を期すために見せてもらえなくなっちゃうんでしょ? だからだよ」
「なるほど。そういう戦う理由もありなのか・・・私とは真逆だが、それもまた良しだな」
団長さんがなにか得心したように頷いて、キリトの方へ顔を向け直す。
「そういう訳だキリト君。決闘の準備と会場はこちらで全て手配させておく。
君が勝ったら遠慮なくアスナ君を引き抜いていき、負けたらユウキ君も君のせいで血盟騎士団に入団する事が自動的に決定される。そのつもりで心穏やかに自宅にて詳細が届くのを待っていてくれ給え。」
「お、おう・・・。なんかプレッシャーが一気に増大して胃が押し潰されそうな錯覚を覚え始めてるんだが気のせいなのかな・・・?」
「気のせいだろう。なにしろここはバーチャルリアリティの世界だからな。胃の痛みなどという肉体的問題は影響をおよぼせん」
「そ、そうなのかなぁ・・・?」
不思議そうな顔で胃の辺りを撫でながら退室していこうとするキリト。
ボクもその後を追いかけてついて行こうと思い、ハッ!と思い出して団長さんのところへ走って戻ってくる!
いけない! 大事なこと聞くの忘れてたよ!!
「団長さん!団長さん! もう一つだけ質問良いですか!? すっごく大事なこと聞き忘れちゃってたから!」
「ほう? 君がそれほど気にする事柄があるとはね・・・なにかな? 私に答えられる疑問であれば良いのだが―――」
「簡単な疑問だよ! 即答できるよ! 質問はたった一つだけだから!」
「もしキリトが負けてボクも入団する羽目になったとき、制服の色をもう少しダーク系にすることって出来ますか!?
極端な話だけど、赤と白のおめでたい紅白柄じゃなければひとまずOKなんだけど!?」
「あっ!? ズルいぞユウキ! その質問は俺も言質を取っておかなきゃいけないことなのに!
で!? どうなんだ団長! 俺たち黒尽くめ二人に相応しく紅白柄以外のおめでたくないカラーリングに制服変更する件は有りなのか!? それとも無しなのか!?」
「・・・・・・すまないが原則として、血盟騎士団の団員のシンボルカラーはこの二色だけだ。それ以外の色を用いらせるかどうかは入団が決まった後にでも要相談するとしよう」
『NOォォォォォォォォォォォォッッ!?』
「・・・・・・バカばっかりね、二人とも・・・・・・」
つづく