旅路の終わりは、夢の始まり   作:ひきがやもとまち

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それなりぶりの更新となります。『グラディール再び回』。
次はロードを更新できればいいんですけど、時間がなぁ~(;´∀`)


原作1巻版10話「ゾンビナイトは紅の殺意を隠しきれなった」

 キリトが団長さんと決闘して負けてボクと一緒に血盟騎士団に入隊することになった初お仕事の日。

 ボクたちは幹部の一人でフォワードの指揮を任されてるって言う、斧戦士のゴドフリーさんに実力を見せておいて欲しいってことで、彼とあと一人を加えた四人パーティーでの五十五層ダンジョン突破をやらされることになったみたい。

 詳しくは知らない。いきなりやってきたゴドフリーさんが大声で笑いながら任務内容だけ伝えられただけだからね。

 

 彼は如何にもな体育会系の人で、『考えるんじゃない!感じるんだ!!』とか少年ジャンプに載ってそうな作品とか台詞とかがスゴく好きそうに見える人。

 こんな人がなんで、ガチな廃人プレイヤーばっかりが集まってきてるはずのSAO配信開始時プレイヤーに混ざっていたのかは、もっと判んない。

 

 

「えっと・・・ゴドフリーさんに言われた待ち合わせ時間と場所は、『三十分後に町の西門に集合』であってたよね?」

「ああ、そうだ。間違いない。・・・あのテンションで言われた内容を俺が簡単に忘れられるはずがないからな・・・」

「・・・ああ・・・なるほど。キリトだもんね~・・・」

 

 キリトと並んで待ち合わせ場所を目指すため、石壁に囲まれた街の通路を歩きながら雑談していたボクは、キリトの疲れたみたいな「ゲンナリ」したテンションでの返事に思わず苦笑しちゃう。

 

 キリトって基本、熱くなるときはメチャクチャ熱くなるんだけど、熱いときでも体育会系ノリは苦手な人だもんね。

 なんて言うかこう・・・『スター・バースト・・・・・・ストリ――――ムッ!!!』とかは大声で叫びながら言えるんだけど、『くらえ!愛と怒りと悲しみの・・・灼熱!ゴッド・フィンガ――ッ!!』は絶対言えなくてスゴく抵抗感あるタイプ?そんな感じの人。

 

「まぁ、キリトって見た目からしてバトルラノベの方が性に合ってそうな服着てるもんね。黒いし。

 たしかに少年向けバトル漫画のノリは相性悪そうな色してるなぁ~って、最初に会ったときからずっと思ってたんだよねーボクも♪」

「おいコラ待て、黒づくめ同盟の片割れ。お前だって服の色は黒一色だろうが!」

「ふふ~んだ♪ 残念でしたー☆ ボクが考えたイメージカラーは黒じゃなくて『群青』だもんねー! 黒一色のキリトとは違うのだよ、黒とは!」

「同じだ――――っ!?」

「違うよ!? 全然違うよ!? 黒と群青は全然違う色なんだからね!?」

 

 暇つぶしの会話でなぜだか自分の色談義になっちゃったけど、それはともかく時間通り目的地には着きました。これが毎度の、ボクとキリトの目的地まで一緒に歩く道。

 

 

「あ。アレじゃないのかな? ホラ、あそこでボクたちに向かって手をブンブン振ってるのってゴドフリーさんぽくない?」

「おーい! コッチコッチ!!」

 

 ああ、やっぱりそうだった。宣言通り街から門を出た目の前の場所で待っててくれてたんだ。律儀な人だな~・・・って、およ? 一緒につれてるあの人ってもしかしなくてもひょっとして・・・・・・。

 

「・・・グラディールさん? えっとぉー・・・、どゆこと?」

 

 両手を腰に当てて邪気のない笑顔で待ってたゴドフリーさんが連れてきてた、今日のパーティに参加する最後の一人はグラディールさんだったみたいだ。

 ほら、アレだよアレ。あの人だよ。アスナのストーカーしてて成敗されちゃった、ゾンビナイトのグラディールさん。いや~、懐かしいなー♪

 あの事件からあんまし時間経ってないけど、久しぶりって感じがするよね! ・・・なんか途中で色々ありすぎた気がするから・・・。

 

「ウム。君らの間で生じた問題は承知している。だが、これからは同じギルドの仲間。ここらで過去の争いは水に流してはどうかと思ってな! ガッハッハ!!」

 

 大声で陽気に笑ってみせるゴドフリーさん。そして、その横では最初からずっと申し訳なさそうな顔と態度でオドオドしているグラディールさん。

 

「先日は・・・ご迷惑をおかけしまして・・・二度と無礼な真似はしませんので・・・許していただきたい・・・・・・」

 

 彼はのっそりと前に進み出てきて、ボソボソと聞き取りにくい声で謝りながら頭を下げてくる。

 

 ――だから彼にはたぶん、見えなかったと思う。

 彼の殊勝な態度で謝る姿を見たボクの両目が、少しだけ細められて彼を見下ろしてたことを。

 そのとき思い出してた前世の記憶と、目の前の彼の謝る姿を重ね合わせて見ちゃってたボクの心の中だけの出来事を。

 

 

 ・・・病院って言う場所は特殊な場所で、難病を患って入院してくる人ほど本人自体は何にも悪いことしてなくて、ある日いきなり体がスゴく苦しくなったり痛くなったりして救急車で運ばれてきて、悪いときにはそのまま入院させられて・・・二度と元には戻ってこれないまま別の世界へ行かされちゃう時と場合がけっこうある。

 

 だからなんだろうね。どうしても自分は『可哀想なヤツなんだ・・・』って感じちゃうし、お外を元気に走り回ってる同世代の子たちなんかを見ていると『何で自分だけが・・・!!』って思うようになっちゃう。

 そういう子たちはイタズラして周りの人に迷惑かけないと、今の自分の不幸を我慢するのが難しい。

 そして中には、『自分は可哀想なヤツなんだから、これぐらい許されるべきなんだ!』って、悪い意味で開き直っちゃう子たちだっている。

 

 そういう子は必ずと言っていいほどイタズラのたびに毎回謝ってくれる。

 そして、また同じイタズラをして、同じように謝ってくる。何度も何度もその繰り返しをリフレインしちゃうクセが付いてしまってる。

 

 そういう子たちを見ている内に、ボクはなんとなく気づけたことがあるんだよね。

 彼らが患ってる一番の病気は難病そのものじゃなくて、『病気を言い訳に使って自己正当化する屁理屈』なんじゃないのかなーって。

 

 今のグラディールさんがしてくれた謝り方は、丁度どの子たちと全く同じ謝り方と表情だったんだ。

 彼らはみんな『自分をシッカリ見て欲しい!』って、感じの言葉を病室が同じ子供たちの前では言ったりしてたけど、でもみんな判で押したみたいにイタズラした後に言い訳するときの態度と口調と表情は同じになる奇癖を持っていたから、すぐに分かった。分かってしまったんだ・・・・・・。

 

 

「・・・うん、そうだね。これからよろしく、グラディールさん」

 

 少しだけ無理して笑いながら、ボクは彼に右手を差し出して握手をしあって、心の中で彼のことを“諦める”。

 

 きっと多分、ボクの中で彼の進むべき道が閉ざされちゃったのはこの時なんだろうなって、後になったらそう思えるようになるんだけど・・・今はまだ、あんまりそういう考え方のできる気分になれない。胸がムカムカして気持ち悪い・・・。

 

 ・・・心の奥深くから湧き出してきそうになってる、黒くて良くない『イヤな気持ちになる感情』を必死になって押さえ込んでいる最中のボクに、救いの手を差し伸べてくれたのは意外じゃない人からの意外すぎる一言だったのはボクにとってとっても意外な幸運だったと直後に思う。

 

 

 

「・・・・・・いや、誰だよコイツ? ユウキの知り合いか?」

 

『『『え・・・・・・?』』』

 

 

 ボク、ゴドフリーさん、グラディールさん絶句。

 ・・・そういえばキリトはあの事件の後に合流してきてるから、全然あのときのこと知らない可能性もあったんだったっけか・・・。忘れてたよ~、完全に前壁に徹底的にねー・・・。

 

「――え? あ、あれ? 君たち、もしかしなくても知り合いじゃなかったりとか・・・?」

「・・・・・・(こくん)」

 

 ゴドフリーさんが意外そうな顔で驚きながら、確認取ってアッサリ期待外れの返事を返されて困ってる困ってる。

 

 ・・・そういうゴシップネタに興味ないもんねー、キリトって。

 攻略情報以外は全然調べようとしないから、こういったプレイヤー同士の揉め事に関する情報は中級プレイヤー以下の情報しか持ってないときがたまにあるぐらいだし。

 しかもアスナに関することで相手が男性プレイヤーだと、十中八九以上の確率で色恋沙汰だしね。どう考えてもキリトが苦手そうな分野だし、アスナに関してその手の話題はありあまってるし。

 まぁ、普通に興味ないから調べないかー、普通に考えて。しゃーない、しゃーない、しゃーないない。

 

「え~とね。キリトは知らない? 少し前に六十一階層のセルムブルク転移門前で起きた事件の被害者がボクで、加害者だったのがグラディールさんなんだけど?」

「「え?」」

 

 なのでボクが分からないキリトに説明しようとしてたら、なんでだかグラディールさんと、あとゴドフリーさんまで驚いたみたいな声出してボクを見てきた。

 でもボクは嘘なんか言ってないから気づかないフリ知らんぷり。それでもボクはやってない。

 

「あー・・・、なんか新聞で読んだ記憶があるようなないような気がしなくもなくて・・・見出しに書かれてた名前とかってわからないか? それ聞けば一発で出てきそうなところまで出かかってるからいけるはずなんだが・・・・・・」

「え~と、名前はねぇ・・・」

 

 考えてみて、そして思い出せないボク。ジッとしながら新聞読むのは苦手だよ。難しい漢字が多いしね。

 それでも頑張って記憶を穿り返してアレでもない、これでもないと悩みながら「う~ん、う~ん・・・」と呻いていたところ――閃いた!アレだ! アノ名前こそ事件につけられた最初の名前だったはずだよ!たしかね!

 

 

「アノ事件の名前はね、キリト・・・何を隠そう『アスナ様ごめんなさいチカン成敗剣事件』だよ!!」

「!! 思い出した! 思い出したぞあの事件だよな!? あの『ストーカーしてた悪い子の俺が殺されそうになってますアスナ様事件』か!!」

 

 

「違わい!? 誰がチカンでストーカーだ、このクソガキ共がぁぁっ!!!」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 しばらく沈黙が流れて、みんなの視線が最後に声出したグラディールさんに集中するアインクラッドの中心じゃないけど話題の中心で。

 

「・・・あ、いえそのあの・・・ぶ、無礼をいたしました。三度目はやらないようにしますので二度目までは許していただきたい・・・」

 

 もの凄~く怪しすぎる挙動不審な態度で言い訳してくるグラディールさん。

 それでも仲間だから信じようとしちゃう辺り、ゴドフリーさんはいい人過ぎる性格の持ち主なのか、あるいはちょっとだけアレな人なのか・・・よくわかんないよね。

 

 

「そうだぞ、キリト君。その言い方では自らの過ちを認めて謝罪し、改心したグラディールの誠実さに失礼ではないか。仲間に対して敬意を顕わにし、もっと適切な名付けられ方をした事件名を挙げてやるのが人として思いやりという物だ」

 

「私は罪人を罰することを好まない。罪は憎むべきだが、罪を犯した人間には贖罪の機会を与えるべきだと考えているからだが・・・しかし! それ故に私は自ら罪を認めて謝罪をし、正しい本道へと帰還してくれたグラディールの勇気と誠実さに深く感銘を受けさせられた! 感動した!

 だからこそ私は言葉を飾らず、ありのまま余計な物の混じっていない正しい事件の内容を名前から推測できる最高の事件名であの悲しい出来事を水に流そうと思う。

 どうかキリト君、君もグラディールの仲間として彼の犯した罪を知り、その上で今後は仲良くしてやって欲しい・・・・・・」

 

 

「そう、あの事件の名とは即ち! 『愛の戦士(ストーカー)グラディール、悪い子だった事実を認めて閃光のアスナの護衛役をやめさせてもらう事件』である!!!」

 

 

「違うっつってんだろうが筋金入りの筋肉脳味噌ゴドフリーさんよぉっ!? 関係ねぇオードブルのあんたから先に死んだことにさせてやろうか!? このクソ野ろ・・・う・・・・・・」

 

 

『『『・・・・・・・・・』』』

 

 

 ・・・・・・・・・再び気まずい沈黙が落ちてくるボクたち三人の頭上。

 なんだか今日は、途中からずっとグダグダだね・・・・・・。

 

 

「よ、四度目こそは必ずや無礼な真似はしませんので・・・許していただきたい・・・・・・」

「アンタのSAOにおける感情表現システムは、コピペ機能でも付与されてるんじゃないのか・・・」

 

 キリトがパソコン好きらしいツッコミ入れるのを聞いて、ボクも思わず頷いて同意しちゃってたときに。

 チームリーダーのゴドフリーさんが、リーダーらしく号令かけて今回の訓練に出発決定。

 微妙な距離感たもって歩き出そうとしたボクたちに、ゴドフリーさんの野太い声で引き留められる。

 

「おっと、待ちたまえ。今日の訓練は限りなく実戦に近い形式で行う。危機対処能力も見たいので、諸君らの結晶アイテムは全て預からせてもらおう」

「転移結晶もか?」

「もちろんだ。実戦形式での訓練なのだからな」

 

 キリトからの質問に、当然だと言わんばかりに頷くゴドフリーさん。

 ボクたちは一人ずつゴドフリーさんに自分が持ってるアイテムを差し出して、念のためにポーチの中まで確認されてからようやく出発準備完了。

 

 

「ウム、よし。では出発!」

 

 ゴドフリーさんの号令に従って、ボクたち四人はグランザム市を出て遙か西の彼方に見える迷宮区目指して歩き出す。

 デスゲームにおいて最後の生命線と言ってもいい、転移結晶がない中でのダンジョン攻略はかなり危険だ! 頑張らないとボクもキリトも死んじゃうかも知れないんだからね!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・な~んちゃって。

 

 

「・・・コソコソ(どうだった、キリト? ボクの送ったハンドサインちゃんと分かってくれたかな?)」

「・・・ヒソヒソ(問題なしだ。お前が差し出しに行くとき俺が預かり、俺が行くときはお前が預かる。ポーチの中身確認も同じ要領で切り抜けた。卑怯者のベーターな俺に死角はない)」

「・・・コソヒソ(・・・その設定、まだ生きてたんだ・・・。まぁ実戦形式の訓練だって言うことだし、いざという時のために敵を欺くにはまず味方からを実践するのだって訓練の内でOKだよね?)」

「・・・ヒソコソ(設定いうなし。だが、その考え方には賛成だな。生き残ることこそ最優先。そういうのは俺好みと言えなくもないが・・・だが、“こんな物”隠し持ったままで何に使うつもりなんだ? なにか悪巧みの小道具にでも使うつもりだったりするのか?)」

「・・・ヒソヒソコソコソ(ふふ~ん♪ ちょっとだけねー☆ まぁ結果は見てのお楽しみってことで!)」

「・・・・・・(たまに見せる黒い小悪魔モードのユウキが出てきたな・・・グラディールさんとやら。合唱)」

 

 

 こうして次回、ゾンビナイト・グラディールと黒い小悪魔ユウキの化かし合いが火花を散らす!?

 勝利の女神は果たしてどちらに微笑むのか? それは戦ってみないと分からない!!!!

 

 

アスナ「え? 誰か私のこと呼んだかしら?」

 

 

 ・・・と思ったけど、戦わなくても分かるときも偶にはある気がする・・・。

 勝利の女神は、意外と身内びいきが多い傾向がありますからね・・・・・・。

 

 

つづく

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