旅路の終わりは、夢の始まり   作:ひきがやもとまち

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久しぶりの更新になってしまいました、申し訳ありません。
本当は早く続きを書く予定だったのですが、幾つかあるストーリー候補が決まらず、正直いまだに迷ってる状態ですが、止まり続けるわけにもいきませんので一旦投稿。後は野となれ山となれ。


原作1巻版15話「朝露の少女と黒の剣士と、そして二人の少女たちと――」

「ねぇ、キリト君。どう思う・・・?」

「・・・どうって、言われてもな・・・」

 

 アスナから問われた俺は、自分でも厳しいと思える顔つきになって唇を噛みしめて、俯いたまま即答してやることが出来なかった。

 

 朝の白い光の中でまどろみながら、たまたま早く目が覚めてしまっていたところに『女の子が目を覚ました』というメールをアスナたちから受け取った俺は大急ぎで二十二層の森林エリアにある二人が買ったログハウスまでやってきた俺は、少し離れた場所から目覚めた少女が朝飯を食ってる姿を眺めながら小声で話し合っている。

 

 昨日調べたとおり、肉体的には問題がないことも確定することができた。

 『ユイ』という名前であることも、本人自身の口から教えてもらうことにも成功した。

 

 だが・・・・・・状況はハッキリ言って最悪だった。

 この世界に閉じ込められてから今日まで、色々と酷いことを見てきたつもりになってたけど・・・・・・今回のコレは、酷すぎる・・・。あまりにも残酷すぎる・・・。

 

「記憶は・・・・・・ないみたいだな。でも、そんなことより、あの様子だと・・・・・・精神的ダメージかなにかで・・・」

「そう・・・思うよね・・・・・・、やっぱり・・・・・・」

 

 泣き出す寸前のような顔でアスナが絞り出すような呟きをこぼすのが、耳と心に痛かった。

 もしかしたら俺も、今の彼女と同じような表情を浮かべて泣きそうになっているのかもしれない。

 そう思うと無性に、ナニカに対して腹が立ったが、何に対して怒ればいいのか分からない状況の中で感情は空転してしまって、結局俺は自分の腕で自分の両手を強く握りしめる事しかできなかった。

 

 ・・・俺たちが森の中で拾った少女『ユイ』は、記憶を失っていただけじゃなく、『心』までもが完全に子供に戻ってしまってたんだ・・・。

 

「はい、ユイちゃん。このパンも美味しいから食べてごらん? このクリームをかけて食べると、もっと美味しくなるんだよ♪」

「くい・・・む?」

「うん、そう。クリーム。これはねぇ~、《逆襲の雄牛》っていう牛さんがくれる、すっごく美味しいミルクなんだよ。ほら、あ~ん」

「あ~~・・・ん・・・・・・ッ!! おい、しい・・・っ!!」

「でしょ~☆ 沢山あるから、いっぱいドーゾ♪」

「んっ♡」

 

 今はユウキに相手をしてもらいながら、目覚めた時間帯に合わせて朝飯を食べさせてもらっている彼女は、年齢的には八歳ぐらいの見た目をしているように思える。

 ログインしたのが2年前で、俺やアスナと同じように現在の肉体がゲーム開始時にスキャンしたリアルでの自分を元にしたアバターであることを考えれば、今は十歳ぐらいにはなってるはずだ。

 

 ・・・だけど彼女の、覚束ない言葉を使った話し方は、まるで物心ついたばかりの幼児そのもので、とても肉体年齢相応の精神年齢に達しているとは言いがたい・・・。

 もちろん、そんな状態の子供にナーブギアを使わせて、VRをプレイさせようとする人間なんているはずがないのだから、彼女が――ユイが今の状態になってしまったのはデスゲームに囚われてしまった後ということになる。

 

 ナニカがあったんだ・・・あの小さな女の子の心が、子供に戻ってしまうほどのナニカ良くないことが・・・・・・。

 一体なにが起きてああなったのか、今の俺たちには分からないし、正直言って分かりたくもない。想像するのだって嫌すぎるぐらいだ。

 

「ごめんね、キリトくん・・・・・・私たちにも出来ることはあるんじゃないかって思うんだけど・・・・・・ただ今は私、どうしていいのか判んなくなっちゃってて・・・・・・」

「無理しなくていい。俺だって同じだ。大丈夫だとは思っているけど、いろいろ考えちまって不安で仕方がないくらいなんだし・・・」

 

 相手の瞳が濡れてるのを見せられたとき、俺の胸にも来るものがあった。

 思わず、相手の肩に手を伸ばして抱きしめてやりたい衝動に駆られ―――そして、やめる。

 代わりに俺は彼女が考えそうな懸念を先読みして、今のアスナが何に悩んでいるのか見当をつけると、言葉によって相手を慰められるよう自制する。

 

「それに・・・アスナだったら多分、あの子が記憶を取り戻すまで面倒みてやりたいとか思ってるんだろ?

 ただ、そうしたら攻略が遅れてしまって、あの子がアインクラッドから解放されるのが遅れてしまう・・・そういう理由で悩んでるんじゃないのか?」

「・・・・・・・・・ん」

「ジレンマだよな・・・・・・俺にも気持ちは解るし・・・」

 

 俺もアスナも、そしてユウキも攻略組ギルド《KBG》のメンバーだし、自慢するわけじゃないが俺個人の存在も攻略プレイヤー全体の中ではそれなりに影響力は大きい方だと思ってはいる。

 大抵の奴が安全マージンを優先して大手ギルドに加わるのが多数派の中で、迷宮区の未踏破エリアのマップ提供料ではソロプレイヤーとしてならズバ抜けてる方だし、俺たち三人全員がいるいないで攻略スピードが遅くなってしまうのは、自惚れではなく事実だと思う。

 

「大丈夫だ、俺たちにも出来ることはある。まずは、それをしよう」

「そう・・・だね・・・。はじまりの街に行ってみれば、何か分かるかもしれないし、新聞の尋ね人コーナーにも書いてもらえば名乗り出てくれる人がいるかもしれないし・・・」

 

 俺がそう言うと、アスナは今日はじめて笑顔を浮かべて、表情の乏しくなっていた華麗な顔に生気が戻ったように見えた。その時だった。

 

「お~い、キリトー、アスナ。ユイちゃん、お腹いっぱいになって眠いってー」

 

 ユウキからの明るい声が聞こえてきて、俺たちの間に横たわっていた暗い空気を払拭する。

 見ると、俺たちが話し合ってる近くまでやってきてたユウキの後ろで、眠たそうな顔して両手で目をグシグシこすっているユイが見えた。

 その姿を見たアスナが少し辛そうに顔をしかめたけど、すぐに微笑みを浮かべ直すとユイの元まで歩いていってベッドに寝かせるため運んでやってから戻ってくる。

 

「う~ん・・・?」

「?? どうかしたか、ユウキ?」

 

 するとユウキが、何か考えるような仕草をしながら妙な声を上げてきた。

 不満、という訳でもなさそうだったが、どこかしら納得がいかないような、妙に腑に落ちない落ち着かないような顔つきで、うんうん唸りながら珍しく考え悩む素振りを見せ続けてくる。

 

「うん、なんかユイちゃんの受け答えとかで気になる部分があってね。なんでかな?って、ちょっとだけ不思議に思っちゃって」

「・・・ユイの態度に気になるところ・・・?」

 

 その言葉に、俺は首をかしげた。アスナも同様みたいで、俺が見下ろすと不思議そうな表情で見返してくるだけ。

 ユウキだけが別の意味で不思議そうな顔をしながら、「うん」と自分自身が先に言っていた言葉に頷きを返して、

 

「ユイちゃんってね。たしかに言葉遣いはタドタドしいし子供っぽいんだけど・・・・・・僕たちから言われた言葉はちゃんと理解できるみたいで、最初のとき以外はキチンとした受け答えが帰ってくるんだよね。それが、ちょっと不思議でさぁ~」

「?? そりゃまぁ、言われてる言葉くらい理解できるだろ? 普通に考えて・・・」

 

 不思議そうな表情をしながら理由を説明してくれたユウキだったが、その内容は却って俺たちには混乱が増すだけにしかなってくれるものじゃなかった。

 たしかにユイは、サンドイッチやパンを知らない――いや、思い出せなくなってるみたいで、それらの名前を言われても理解できずにオウム返しで返事をしてくることは、俺が見ただけでも何度かある。

 

 だけど流石に、「パン」と言われた言葉が理解できないとか、相手が何のことを「パンだ」と言っているのかさえ分からないなんてほど悪い状態じゃない。

 何かが原因の強いショックによって心が子供に戻ってしまってるだけで、彼女はきっと普通に戻れる女の子なんだから・・・・・・そう思っている。

 

 だがユウキは、それだけだと納得できなかったらしい。「う~ん・・・」と一声唸ってから腕を組み。

 

「フツー子供って、あんなに物覚えいいものかなぁ?

 もっと何度も同じことを教えて上げて、やっと覚えてくれたんだけど前に教えたのを忘れられちゃってて、また同じことを教えて上げて・・・・・・そういうのを何度も何度も繰り返しながら少しずつ学んでいって、大きくなってくのが子供だったらフツーだと思うんだけどなぁ・・・」

「そりゃあ、まぁ・・・・・・言われてみたら、そうかもしれない・・・・・・のか?」

「・・・いや、僕に聞かれても」

 

 小首をかしげながら告げられた、ユウキからの実感がこもった子育てマニュアルみたいな話を聞かされて、十代半ば男子の俺としては正直反応に困るしかなく、そんな俺の返しにユウキの方まで困るしかないループに陥っちまう羽目になる。

 

 いやまぁ、ゲーマーの中で子育て経験ある奴なんて、そう多くはないだろうし、SAOの配信開始直後にプレイするような廃人レベルのネトゲーマーは、家庭とか学校よりもゲームを優先するレベルの奴らだから廃人扱いされてるわけで。

 

 正直、フツーの子供だったらとかの話を聞かされても、リアルでそういう経験まったく無いヤツがほとんどだから分かりようがないんだよな・・・。

 ・・・・・・って言うか、改めて言われたら急に、ユイに対して自分がキチンと対応できてたのか不安になってきちまったな・・・。

 ゲーム内にリアル持ち込むのはマナー違反だから今まであんまり考えてなかったけど、ユウキに言われて現実の自分思い出させられたら、なんかスゴく不安感が・・・・・・

 

「――じゃあユウキは、ユイちゃんが子供のフリをして私たちを騙してるって言うの? そんなのって・・・」

 

 いきなりの問題定義によってリアルの自分を思い出させられちまって混乱してた俺と違って、アスナの方は冷静なままユイへの愛情が優ったのか、ユウキの意見に対して不満そうに唇を尖らせながら反発していたけど、これにはユウキの方が首を大きく横に振って否定を返し、

 

「それはないよ。子供のフリするのって思ったよりずっと大変だし。ユイちゃんの年齢で可能だったらハリウッド級の子役じゃないと無理になっちゃう。

 まぁ、可能性としては0じゃないけど、現実的には無いんじゃないかなぁ・・・」

「う、う~~ん・・・・・・」

 

 新たに追加された情報提供によって、さっきよりも益々混乱するしかなくなってくる俺。

 さっきも考えたことだけど、ユイの見た目年齢はだいたい8歳ぐらいで、ログインしてから今までの時間を加算した実年齢は約10歳程度ってことになる。

 

 ・・・たしかに10歳の子供で、あの演技力はちょっとな・・・。

 まぁ見た目はスゴく整っていて、幼いけど可愛いって言うより綺麗さを感じさせられるほど銀幕スターみたいな印象受ける美少女だし、大女優の娘さんだったって可能性もなくはないほどの美少女ではあるんだが・・・・・・そんな娘がSAOにログインして、アスナたちの元で子供のフリする意味なんてある訳ないしなぁ~。

 

「つまりユウキは、こう言いたいってことか?

 ユイは、子供っぽい言葉遣いや反応の割には“賢すぎる”

 それらが演技でやってるにしては、“子供過ぎる”・・・・・・そういう事なのか?」

「・・・・・・うん。なんかアンバランスな感じがあるんだよね、あの子って。それでいてスゴく落ち着いてるようにも見えるし・・・・・・なんかそこら辺がよく分かんなくて・・・。

 自分でも何言ってるんだろうって、思ってはいるんだけど、でも・・・・・・」

 

 言いながらユウキは、背中越しにユイの眠そうにしている姿を振り返って、心配そうな視線を投げかける。

 その反応を見たとき、俺も彼女が何を気にしているのか少しだけ分かったような気がした。

 

 おそらくユウキは、“そういう子供たち”に会ったことがあるんだろう。だから、その子供たちとユイが同じなのか否か、それが気になっているし心配もしている。

 それで色々と、俺たちが気にしなかった所まで細かくチェックしながら、俺たちの元まで報告に来てくれた。そういう事なんだろうと俺はおぼろげに理解させられる。

 

「――悪い。逆に気を使わせちまったみたいだな。とりあえず明日は全員でユイを連れて、《はじまりの街》に行って情報収集をしてみよう。

 今のユウキの話で考えるなら、ユイはそれなりに目立つ子供だったはずだし、覚えてる人も結構いるかも知れない。行ってみる価値は充分にあるさ」

「ん・・・そう、だね・・・・・・ありがと、ユウキ。私たちの分まで色々ユイちゃんのこと考えてくれて」

 

 俺とアスナから礼を言われて、ユウキは「ニコリ」と笑っただけでユイが待つ部屋へと戻っていく。

 あまりの悲劇にショックを強く受けすぎて、ユイの状態を『特殊な状態だ』と判断しただけになってしまった俺とアスナは、ユイが今日まで「どうやって生きてきたか?」を考えるのを無意識のうちに辞めてしまっていたが、ユウキだけはユイの症状と実際の生活を当てはめて考え、「今日までどうやって生きてこれたのか?」について思案を巡らせてくれていた。

 

 それはユイにとって辛い過去を想起させる行為だが、同時に彼女の『今までの足取り』を想像することでもあり、この家に辿り着くまでに辿ってきた『道のり』を逆に辿っていく行為でもある。

 

 彼女のルーツや親御さんを探し出すためには必要な思考作業だったのに、俺たちは「相手にとって辛い記憶だから」と敢えて目を逸らす道を選んでしまってたんだ・・・・・・その事を痛感させられながら俺たち二人もユウキの後を追う。

 

 そして心の中で誓っていた。

 おそらくアスナも俺と同様の誓いを立てていたと思う。

 

 ユイのために、もう二度とこんな事はしないと。

 彼女が帰るべき所に帰せるよう、どんなに辛いことでも決して目を逸らさず受け入れてみせると。

 そう二人して、心の中で誓いを立てていた。

 

 

 ・・・・・・後に俺が、今の時点で。

 この騒動が、“あんな結末”に終わると知っていたら、同じ誓いを誓えたかどうか何度か自問自答することになる誓いを。

 

 未来に待つエンディングを知らない、ただのプレイヤーでしかない俺たち二人は無邪気に無悪意に、そんな誓いを立てた上で《はじまりの街》へ赴くことになる――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――なんやかんやと色々あった結果として、キリトと僕とアスナとユイちゃんの全員で《はじまりの街》に行くことが決まった僕たち臨時即席パーティーのご一行さんだったけど。

 ユイちゃんがもう今日は眠そうだったし、今から行くと広すぎる《はじまりの街》だと探してる時間なくなっちゃう危険性もあったから、明日になってユイちゃんが目を覚まして朝ご飯を食べたら即出発って形に決まって、その日の対策会議は一旦終了。

 

 分からないことは多くあったし、色々と不思議な事もいっぱい見つかっちゃったけど、それでも何とかなるし、ユイちゃんの為にもしてみせる!って気持ちだけは絶対に保つ覚悟を決めて、その日は終わる。・・・・・・そのはずだったんだけど。

 

 ――その日最大にして最後の事件は、キリトたちと僕とが会話して、眠そうなユイちゃんがお昼寝してご飯食べて起き直してから勃発することになる・・・・・・

 

 

「そういえばユイちゃん。私たちの名前、もう覚えてくれたかな? 私はね、アスナって言うんだよ。この人はキリト。そして、こっちの子はユウキ。言えそう?」

「あ・・・・・・うな。き・・・・・・と。ゆー・・・き・・・・・・」

「ハハッ、たしかにユウキ以外は、ちょっと難しいかもな。なら何でも、言いやすい呼び方でいいよ」

「・・・・・・ん。あう・・・な。きい・・・と・・・。ゆーき・・・」

 

 ニコリって笑って、ユイちゃんの頭をポンポンってしながら優しい声でキリトがあやすように話しかけてるのを眺めてる光景に僕まで嬉しくなってきちゃう気持ちになってたときのことだった。

 

 ――それは突然起きたんだ・・・。

 キリトから言われた言葉を、子供なりにいろいろ考えて考えて、考えがまとまったらしくて顔を上げて、ゆっくりとキリトの顔を見上げながら、おそるおそるって感じで口を開いて、ユイちゃんはこう言った。

 

「・・・・・・パパ」

 

 そして次に、僕のことを見上げながら、

 

「ゆーきは・・・・・・ママ」

 

 最後にアスナに向かって、ゆっくりと人差し指を向けながら、

 

「あうなは・・・・・・おかーさん」

 

 

 ―――ものすっごく事案になりそうな、複雑なご家庭事情っぽい呼び方を、僕たち三人につけてくれちゃうと言う大事件が勃発してしまうことになったんだ・・・・・・!!

 

 

「い、いや待ってくれユイ! たしかに言いやすい呼び方でいいとは言ったけど、流石にその呼び方はその・・・《はじまりの街》で人捜ししてるときに呼ばれると困る呼び方と言うか!」

「そ、そうだよ! キリトは分かるし、僕も――な、なんとか我慢できるけど! アスナの呼び方は変えよう!ね? 僕のと交換しよう! そうすれば少しはイメージ的にマシになるかも知れないし!?」

「そうよそうよユイちゃん! なんでユウキが『ママ』で、私が『お母さん』なの!? 何で呼び方を別けたのか理由を説明してちょうだい! お願い!」

「そこ!? アスナが気にする所って、そこだったの!? もっと気にしなきゃいけない事って無かったっけ!?」

「重要なことよ! 十代乙女の女の子にとって『ママ』と呼ばれるか『お母さん』って呼ばれるかはヒジョーに重要な問題なの!!」

 

 謎理論によるアスナの主張に、なぜだか理屈不明な言い分なのに、ちょっと分かっちゃう自分がなんかイヤなんだけど!?

 これは十代乙女で女の子の木綿季ちゃんが気にしてるんだよね!? 僕じゃないよね!? 十代男の子で死んだ今野悠樹は心まで男の子が死んだりとかしてないよね!? そっちの方もスゴく気になり出しちゃった僕なんだけど!!

 

「あう・・・・・・えっと、じゃあ・・・・・・きいとは、パパ。

 あうなは・・・・・・あうなママ。ゆーきは・・・ゆーきママ・・・」

 

 

 ――しかも、もっとスゴい事案発言になっちゃっただけだったね・・・。

 なんかもう、僕とアスナがキリトの『1号さん』『2号さん』みたいな扱いされちゃいそうな呼び方になっちゃったよコレ・・・。

 明日の新聞は『二刀流VS神聖剣』を超える大スキャンダル間違いなしだ~(ヤケクソ気味)

 

 

「い、いやユイ・・・その呼び方も流石にちょっと・・・別の方向で――――」

「・・・あう・・・・・・きいと、何でもいいって・・・・・・」

『『『う、ぐぅッ!?』』』

 

 

 そして子供の必殺スキル《泣き落とし》でクリティカルヒットを食らわされた《閃光》と《絶剣》と《黒の剣士》の攻略組メンバー3人は敢えなく全滅。

 白旗を振って、この呼ばれ方で《はじまりの街》をユイちゃんのご家族探して歩き回らなくちゃいけなくなりましたとさ。めでたしめでたし。

 

 レベルを頭打ちするまで上げて、装備を上限いっぱいまで強くした武具で固めても。

 小さい子供の泣き顔の前では、僕たち三人はたぶん一生勝てません。そういうパーティーなんだろうなーってことを、お互いになんとなく分かり合うことができた、そんな日の最後に起きた最大の悲劇イベントは、そんな結末。

 

 

「――まぁ、町中だから武器は外しといていいし、防具も普段使ってるのより数ランクぐらい弱いのつけてけばバレる心配ないとは思うけど・・・・・・できれば知り合いには会えないといいなぁー。

 《軍を全滅させた悪魔を単独撃破した二刀流使い》の追加ニュースで記録更新になっちゃうかもしれないし・・・」

「言うな、ユウキ。・・・・・・俺はもう、今さら抜けたくなってる気持ちを必死に押さえ込んでる最中なのだから・・・」

 

 

 

 男プレイヤー二人が(内一人は元男の子だけど)ソファに並んで座って、明日からの世間の目について暗澹たる気持ちを抱えながら今日の夜は更けていきましたとさ・・・。

 

 

つづく

 

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