旅路の終わりは、夢の始まり   作:ひきがやもとまち

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気付かない内に結構間が空いちゃってすみません。更新です。
今話は純粋なギャグ回です。次回からプログレッシブ「儚き剣のロンド」編が本格的にスタートします!・・・たぶん。


7話「《ウルバス》で昼食を」

「いや~、しかしまさかなァ。あのキー坊が女の子二人に男一人でハーレムパーティ結成してるとは思ってなかったヨ。オレっちも正直ビックリしたゼ」

「・・・第二階層主街区到達直後に、一番高いレストランの一番高い飯を奢らされてる俺を見てハーレムという単語が出たのなら、俺はアンタの語彙力を本気で疑うぜアルゴ。

 正直ディアベルが死んだのは、お前の書いたガイドブックの文字が間違って解釈されたせいじゃないかってさ」

「女の子に奢るのは男の甲斐性サ。励めよ、性少年♪」

「ちくしょう! やっぱ男一人に女の子キャラばっかのハーレムパーティーなんか良いことないじゃないか! オフラインの嘘つき!」

 

 う~ん、キリトがなんだかダークサイドに落ち掛かってる。て言うかむしろ、希によくいるお前らになりかかってる。

 この件に限ってぼっちなゲーオタは、みんな同じ感想を持つなぁ~。

 

 ・・・わかるけどね?

 

 確かにハーレムパーティーって実際にあったら気まずそうなんだよねぇ。だって滅茶苦茶気を使わないとパーティー崩壊待ったなしだもん。怖いよ普通に。恐怖だよ。

 

 『はがない』の小鷹さんみたいに上手く人間関係をやりくりしないと破綻しちゃうよ? 女の子とはエロゲのハーレムエンドを目指しちゃダメ! 目指すならギャルゲの個別ルートで一人への愛一択だ!

 

「・・・なのでそろそろ、縄を解いてくださいアスナ様。さっきからずっと縛られてて動けないままアスナが食べてるのを見てるのは辛いです・・・」

 

 涙目で上目遣いに懇願してみたけど、これはマジだ。冗談ではないし、伊達でもないんだよ!

 いや、本当、マジで美味しそうなご馳走を前にすると身体が言うことを聞いてくれなくなるんだって!嘘偽りとかじゃなくてさ! 本来の身体の持ち主な木綿季ちゃんのせいなんだろうけど、この身体本当に食い意地張ってる!

 ご飯前にしておあずけとか、死ぬわ! デスゲームでモンスターに倒されるよりも先に、お腹が減って死ぬわ!空腹じゃなくて、お腹ぺこぺこで死ねるわ!

 

 アバター・ユウキの死因が《お腹が減って》とかマジ嫌すぎるんですけども! だからお願いアスナ様! 一口だけでもボクにちょうだい!

 このままじゃボク、我慢できなくなっちゃう~~~っ!!!!!

 

「ん~♪ 蕩ける~♪ 甘~い♪ 美味しい~♪

 うん。御馳走様でした。おかわりを貰うわね?」

 

 鬼ーーーーーーっ!!!!!

 

 

 

 

 ーーここはアインクラッド第二層主街区《ウルバス》の北東に位置している高級住宅地。

 街の規模にあわせて高級住宅地も《はじまりの街》より大人しめで、比較的静かで閑静なペンションっぽい雰囲気を醸し出してる感じかな?

 で。ボクたちが今いるのは只でさえ立地の良い高級住宅地の、更に一等地にある高級レストラン。お客さん役のNPCが常時一定数以上はいるよう設定されてるらしくて、広さの割に無駄に広い印象がない。

 流行ってるけど高価だから客層は限られてる演出なんだと思うけど、なかなかコジャレた演出でボクは好きだなぁ。

 

 ・・・これで出されるご馳走に手が出せたら文句ないんだけど、あいにくとそれは無理。

 だってこのお食事会は『アスナへのごめんなさいパーティー』だもん。アスナ以外の人は食べちゃダメなんだよ?

 怒らせちゃったボクたち二人は、仲良くお仕置きされ中。キリトは店の床に正座させられてて、ボクは縄で縛られて身動きできずにアスナの前の席で涎をダラダラ・・・って、餓鬼地獄かよ! 辛いよこれ!誰か地獄から救い出してよ!

 蜘蛛の糸を垂らしてくれる神様、まだーっ!?

 

「ハハハ! いやはヤ、キー坊のコミュ症っぷりは大分気にしてたし、コボルトロードの件もあるから心配してたが杞憂だったみたいだナ。これならオレっちも安心してキー坊を任せられるヨ。

 ーーあ、ウェイトレスのお姉さ~ン。オレっちにもアスナさんと同じのおくレ。初対面で巻き込まれただけのオレっちには罰則とか関係ないからナ」

「「鬼! 悪魔! 人でなし! 髭ネズミーーーーっ!!!!」」

 

 ボクとキリトの想いが一致し、絆の力でチェインをクロニクル!

 ・・・でも微動だにしない縄の耐久力は58。ボクの腕力パラメーターじゃ引き千切れません。

 たかが数字が増えただけで縄にも勝てない! これがレベル制MMOの理不尽さというものか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・で、だ。お前ら本気でこの後、どーすんの?」

「「寄生します。最強無敵のビーターさんに」」

「帰れ! あるいは、自立しろドラ娘ども!」

 

 キリト激怒。陰を踏んでて、なんか良い感じだね!

 

 ーー食事が終わってボクらは今後の方針について話し合っていた。

 幸いこの場所はレストラン、攻略には直接関係しない娯楽施設だ。街開き直後にプレイヤーたちが絶対向かわない場所のひとつと断言できる。

 だからキリトものんびりとコーヒータイム。コーヒーなのかなんなのか、よくわかんない味だけどコーヒーブレイク。店の人がコーヒーだといったら紅茶だろうとコーヒーなのです。

 ブラックだなぁ、ゲーム世界の飲食業界・・・。

 

 

 ・・・さておき。

 正直ボクとアスナは当てにして欲しくない類の問題なんだよなぁ。

 

 アスナがMMO初心者なのは今更言うまでもないことなんだけど、実はボクも同じ様なもので経験と知識はあっても考えるのが苦手なせいか、攻略方面はどんなゲームでもwik頼り。ハッキリ言って向いてないこと甚だしいです。

 

 ストーリーとかキャラクター相関図とかから、隠された血縁関係を予測したりするのは得意なんだけどなぁ~。

 ゲームの攻略とかになると途端に無能になるボクは、マスタング・ユウキ大佐。指ぱっちんで火が出せます。嘘だけどね?

 

「とは言えキリト君。私がゲーム初心者なのは君も気付いているんでしょう?

 ゲーム初心者を指導して導くのが、熟練プレイヤーの義務と言うものじゃない? 私の言うこと間違っていたかしら?」

「う、ぐ・・・。反論しづらい常套句で攻めてきたな・・・でもそれ、お前の知識じゃないだろ絶対。明らかにキャラが違いすぎてるからな。

 いったい、誰に聞いたんだ? その便利で卑怯な、ぼっちプレイヤー相手するとき用の鬼札」

「はいっ! ボクが教えました!」

「よし、分かった。お前には後でウルバス外周を三回回ってワンと鳴く訓練を鬼教官役として課してやろう。喜んで走ってこい」

「格差社会、酷すぎない!?」

 

 愕然としたボクに溜息を付きついて呆れながらも、キリトは真剣にこれからの事を考えてくれ始めた。

 なんだかんだ言っても結局最後は助けてくれちゃうあたり、チーターにもビーターにも向いてないってバレちゃう最大の要因なんだけどなぁ。

 

「・・・俺としては何よりもまず、武器の強化をしておく必要があると思ってる。

 俺の《アニールブレード+6》と、アスナの《ウインドフルーレ+4》・・・だっけ? は、何とかなる数値だが、ユウキのそれはなぁ・・・」

「ああ・・・そう言えばたしかに名剣っぽい雰囲気はしてないわよね。むしろ普通の市販品っぽい・・・ん? ねぇユウキ。あなたのその剣、もしかしなくても《はじまりの街》の武器屋で売ってた奴じゃあーー」

 

 キリトが指さし、アスナが批評し、アスナが驚愕の表情を浮かべながら指摘してきたそれについて、ボクの答えはーー

 

「ぶいっ!」

 

 満面の笑顔でにっこりVサイン! 女の子の笑顔はエクスカリバーにも勝る最強の武器ーー

 

 ごちん! べちん! ぶっすり!

 

「・・・痛すぎるし酷すぎるよ! いくら仮想データで痛覚なくて攻撃不可な《圏内》の中だろうとも、衝撃で吹っ飛んで頭から厨房に突っ込んでったら流石に痛いよ!心理的に!

 実際には傷を負ってないのに「痛みが走った」って、脳が誤解しちゃうんだからね! もっと気をつけてよねっ!

 ーーそれと、そこの刺す人! なんか今、ダメージ判定入るか入らないかの微妙な感覚で調整して、ボクのお尻にレイピア突ついたりしなかった!? なんだか妙にお尻が痛いんだけど、さっきから!」

「知らない。記憶にない。それこそ脳の誤解という奴じゃないかしら?

 変な決め付けで責任転嫁をするのはやめていただきたいわ」

 

 ちくしょう! なんだこの官僚政治家タイプの答弁!記者会見かよ! しかも妙に手慣れていたし!

 アスナの実家って、もしかしなくても良いとこの偉い大先生とかじゃないんだろうね!? だったら勉強教えてください!お願いします!

 期末はデスゲームで免れたけど、出席日数の関係上これ以上成績落ちるとマジやばいんで!

 

「・・・バカかお前は? なんで武器を高性能な物に買い換えもせずボスに挑んだりしたんだ? 『ボスと戦う前には装備を調えましょう』という常識を知らないのか?」

「・・・私でさえ予備のレイピアくらい買った上で死ぬつもりのダンジョン探索挑んでたのに、あなたは生き残るつもりで武器も変えずにダンジョン潜っていたというの・・・?

 バカなの?死ぬの?死にたいの? いいわ、私がその願いを叶えてあげる。

 喜びなさい、ユウキ。あなたの願いは、ようやく叶うーー」

「ストップ!ストップ!ストーーーーップ!!

 誤解だから違うから! ボク死にたがりのエースパイロットさんとかじゃないから! ジオンの亡霊に取り付かれてたりしないから!

 お願いだから、人殺して愉悦感じる神父さんモードにならないでアスナーーっ!!」

 

 全力逃走して店の壁際まで避難したボクだけど、アスナの手には未だに《ウインドフルーレ》の白刃が・・・!

 どっちかって言うと深紅の魔槍もった全身タイツに追いかけ回されてる衛宮君よりも「小便はすませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする準備はOK?」とか言われながら片腕落とされてる人の気分だよ! 吸血鬼じゃなくて人間だったら、多分あの人もボクと同じ気分を味わえるよ!

 暴力反対! 話し合おう!話せば分かる! 人とのコミュニケーションは会話が基本さ!

 

「・・・いいけど、別に。じゃあ一応聞くだけ聞いてあげるわね。

 ーーユウキ、あなたなんで弱い武器のまま最前線まで出てきたの?」

「格好良かったから! 雰囲気重視の装備にしてみました!

 始めてのVRで体感ゲームだから、能力値よりも自分のテンションの上がり下がりを重視してーー」

「コロス」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?

 アスナの目からハイライトが消えたー!? デレてないのにヤンデレ状態と同じ精神異常被っちゃってるーっ!?」

「おい、落ち着け!落ち着くんだアスナ!さすがにソードスキルの使用はヤバい!

 最悪、衝撃だけでユウキが昏倒しちまうぞ!?」

「はっはっは。やっぱり賑やかだなァ。オネーサンもパーティーに入れて貰おうかなァ?」

「断固拒否する! これ以上厄介ごとを抱え込まされてたまるか!

 女はこれ以上パーティーには入れん! パーティー崩壊の危機しかもたらさないから!」

「うわぁぁっん!キリトー!

 アスナが、アスナがね・・・ボクのレベルが自分たちより低いのは、武器の性能のせいだって難癖付けてくるんだーっ!」

「その通りだボケーーっ!

 鍛えるついでに素材集めて、武器交換目指してこい!!」

 

 そうなりました。

 

 こうしてボクは素材と経験値を求めて二層の西フィールドへ《ウインドワスプ》狩りに。

 アスナとキリトはアルゴさんから教えられたエクストラスキルをくれるNPCに会いにテーブルマウンテンへとよじ登りに、それぞれ向かっていきました。

 

 

 

 

 普通のオフラインでは無理だった《お気に入り武装だけ使ってクリア》は、VRでもデスゲームでも無理だったよ!

 

 

 

主人公の淡い期待が打ち砕かれたところで続く




注:別にユウキは危険を承知で弱い武器を使っていたのではなく、デスゲームでソロプレイだと純粋な能力値よりも精神力の方が重要だと考えたからで、お気に入り武器を使うことによって上がるテンションの方を優先した彼女なりの生き残り戦術です。

一応、強化はしてあります。弱い武器なので補正が入りやすく、性能強化に成功しやすかったのと、安価な大量生産品なので失敗して壊れても構わないと言う考えもあるにはありました。

因みにですが、予備に全く同じ物を四本持ってます。弱いから軽いのです。キャパも減り辛いです。相変わらず失敗した時の事を想定しないと動けない主人公です。
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