今話はゲストキャラとしてあの子が出ます。レギュラーではありませんが、その内また登場させたいものです。ではお楽しみいただけることを祈っております。
《ソードアート・オンライン》は名前の通りに読んで字の如く《剣の世界》が舞台のゲーム。
当然、メインとなる武器は剣。他の武器も多いし役には立つけど、なんと言っても剣の優遇っぷりも半端じゃない。
だって、剣だけ多いんだもん。武器ジャンル。長剣、大剣、刀、曲刀、小剣、短剣、細剣、etc.etc.・・・。
ここまで剣押ししまくる茅場晶彦は、間違いなく刀剣男子! これ確定!
きっと自分専用の格好良くて超高性能な世界で唯一の逸品を武器にしてるに違いない!
・・・・・・とまぁ、暇つぶしに独り言を心の中だけでつぶやき続けてたボクだけど、そろそろノルマもこなせた頃だし終わりにしよっかな~。
「ほいっ、《投擲》! 命中! 当たれば死ぬ!」
スローイング・ナイフをビシバシ当てて、飛びまくってる飛行系Mobモンスター《ウインドワスプ》狩りをしていたボクは、始めてから1日足らずで目標数に達しちゃって暇すぎたから、レベル上げも兼ねて《投剣》スキルのさらなる熟練度アップに挑戦中。
「いやー、剣だけだと退屈すぎたからFPS気分でヘッドショット狙いまくってたんだけど、意外に楽しいなぁ~これ。
敵に向かってナイフ投げて仕止めるって、アサシンみたいで超COOLだよね!
ジャック・ザ・リッパーちゃん大好き!」
テンション高く、ボクは次々と残弾数に限りがあるナイフを投げ続ける。
MMOはパーティープレイが大前提。ボクもいずれはどこかのギルドに入れてもらいたいなぁとは思っているので、出来るだけ多くの役割をこなせるように今からアバターのステをまんべんなく上げておくのは基本中の基本。
対Mob戦と対人戦ぜんぜん違うからね! キャラ構成は早めに決めとかないと危ないよ! 高レベルになってから対人戦仕様にするには1から育てた方が早いくらいだからね!
ゲームの中だからこそ、ご利用は計画的に。
課金でやりなおせないデスゲーム、マジ大変です。
「・・・っと、最後の《スローイング・ナイフ》になっちゃったか。これ投げたら街に戻らないとね。
手に入るお金と使ったナイフの経費で半端な所持金増額だけど、お金目当ての狩りじゃないから別にいいよね! あくまで目的は経験値!
キリトーっ! ボク約束守ったよーっ!」
遠いお空の下のどこかで元気に旅しているだろう友人にエールを送ると、ボクは歩いて街まで戻ります。家に帰るまでが遠足です、街に戻るまでが冒険でっす!
「帰ってきたー!」
バンザイのポーズで街の入り口を占拠しようとするボクだけど、小さすぎるから無理でした。つか、アーチ門広いしデカい! 人一人で何とかなるレベルじゃねぇー!
・・・てな訳で落ち着いてからナイフの補充に向かいます。大騒ぎしちゃってちょっとだけ恥ずかしかったよ、うん。反省してます・・・(赤~////)
「へい、おばちゃん! いつも通りナイフ五十本ちょうだーーぶほぁっ!」
「・・・・・・誰がおばちゃんなのよ、誰が。
あたしこれでも現実だと、歳よりも幼く見られてたんですけどね、お客様?」
「・・・ず、ずびばぜん。だからせめて、お客様の背中を踏まないでください・・・お客様は神様であってボールじゃないんです・・・」
いつもナイフを買ってる馴染みの露天商といつも通りのやりとりを交わしてから、ボクは改めて補充したナイフをストレージに仕舞う。
うん、やっぱ良いねここのナイフは。よく分かんないけど、なんか好き。単なる好みで錯覚なんだろうけど好き。大好き。
「う~ん、このなんとも言えない重量感・・・。ナイフ持ってるって感じが溜まらないな~。やっぱりゲームは現実でできない事やってこそだよね! リズベットちゃん!」
「・・・・・・気持ちは分からなくもないけど、もう店の前で『投剣で人を刺し殺せそうなナイフが欲しいです!』って大声で注文するのは止めてね。
さすがのあたしも、あれには引いた」
「・・・はい、ごめんなさいでした・・・。もうしませんので許してつかぁさい・・・」
シュンとなって項垂れるボク、転生者の紺野木綿来十一歳。前世も合わせると三十路に近いです。
「・・・わからないわね・・・」
「・・・・・・ん?」
これ以上貶められない内に退散しようと、いそいそ帰り支度をしていたボクに彼女、職人クラスでメイサーの女の子《リズベット》ちゃんが何か言ってきた。
彼女を振り返りながらボクは不思議そうな思いで声を出す。
だって、なに言ってるか分からなかったんだもん。しょうがないじゃん。
なのにリズベットちゃんは不機嫌そうにボクを睨みつけてくる。
ふぇ~、理不尽だよぉ~。アスナ~お願い、傷心のボクを慰めて~。
「アンタが毎日この店に来る理由が分からないって言ってるのよ。
自分で言うのもなんだけど、あたし口悪いし手は早いし態度も悪けりゃ接客マナーは練習中だしで良いとこないもの、このお店。
せいぜい売りと言えば商品の質くらいで、それさえ専門で鍛えてる人たちには到底敵わない。所詮は素人の手作り品よ。
そんな半端性能な武器を、アンタなんだって毎日毎日買っていってくれるのよ?」
「??? ダメだった? リズベットちゃんがダメだって言うならやめるけど?」
「茶化すな。ダメって訳じゃなくて、理由が知りたいって言ってるの。
アンタが他の店のじゃない、あたしの店の商品を買っていく理由が、あたしは知りたいのよ」
なんでか判らないけど真剣そのものな表情で訊いてくるリズベットちゃん。
ボクもそれにつられて真剣に考えてはみたんだけど・・・う~ん、でもなぁ~・・・。
「なんとなく好き・・・うん、やっぱり幾ら考えてもこれしか理由は思いつかないや」
「なっ・・・!?」
またしても何だだか判らない理由でリズベットちゃんが驚愕の表情を浮かべる。今日は本当、驚いてばっかりだな~。
「あ、アンタ正気なの!? そんな雰囲気重視、見た目重視なプレイスタイルなんかじゃ、直ぐにやられてゲームオーバーで死んじゃうわよ!? 少しは身の安全考えなさいよこのバカ!」
「??? 雰囲気重視や見た目重視で武器選んじゃいけないの?」
「今はいけないの! まだ序盤も序盤、第2階層までしか上れていないのよ!?
なのにそんな極端なエンジョイ装備じゃ、攻略して脱出なんてとてもじゃないけど・・・・・・」
「・・・・・・????
現実で出来ないことを実現出来るのが、ゲーム最大の魅力じゃなかったっけ?」
「・・・・・・!!!!」
なぜかリズベットちゃんの顔が引きつった様にも見えたけど・・・気のせいだよね。うん、平気へっちゃら絶対大丈ぶい!
「どんなに頑張ったって無理なものは無理、出来ないことは絶対出来ない。
それこそ幾ら遮二無二必死になって作業に没頭したって、不可能なものは不可能なんだ。
だってここは自由意志で動ける現実世界じゃなくて、コンピュータで制御されて制限された自由と選択肢からしか進む道を選ぶことが出来ないし許されない、全てがルールづけされて運営されてるゲームの世界なんだから。
プログラマーである茅場晶彦が求めていない存在は、この世界に居られないし誕生することさえ出来ないと、ボクは思ってるんだよね。
だからここは可能性に満ちた、剣一本でどこまでも上っていける世界だけど、それ以外の道を選んだ人たちには全然未来や将来への選択肢も与えてくれない、まるで死の世界なんじゃないかとボクは思っているんだー」
「でもさ、それって見方を変えればスゴく素敵な事じゃない?
だってこの世界には、茅場晶彦が許した範囲までなら幾らでも何でも出来るし、何していいんだ。何でもだよ?
子供の頃に憧れてた聖剣エクスカリバー制作を目指したって良いし、ひたすら珍しいモンスターをテイムするため森に籠もり続けるのだって全然有りだ!」
「《はじまりの街》でデスゲームが始まったとき、茅場晶彦は確かにこう言った。
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』
『諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう』
『この世界を創り出し、鑑賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った』
『プレイヤー諸君のーー健闘を祈る』
・・・・・・ずっと考えてたんだ、これらの言葉の意味についてね。それでようやくボクなりに答えを出すことが出来た。
きっと茅場晶彦は『この世界で本当に生きているボクたちを見ていたいんだ』よ。ロールプレイなんかじゃない、ゲームの枠内なんかに収まりきらないようなモノスッゴい何かを見たくて仕方がないんじゃないかな?」
「だってそうでもないと、一万人プレイヤーの旅の記録なんて読みあさる意欲なんて湧くはずないでしょ?
きっと茅場晶彦はボクたち全てのプレイヤーが大好きで、自分の期待に応えてくれるプレイヤーはもっと好きで、弱くても初心者でも全然ゲーム知識のない素人だって《SAO》が本気で好きで本心から楽しみまくってる人たちには他よりも願いを叶えてあげたくなると思うんだよねー」
「だからリズベットちゃん。ボクや君がこの世界を真剣に生きてる限り茅場晶彦はボクたちの味方で、ボクたちの夢を叶えられる環境を用意してくれ続けるんだと思うよ。
世界的に有名なプログラマーが肩入れしてくれて用意してくれたルートなんだよ?
そんなの、挑戦しない選択肢なんかあったって選ぶはずないでしょ!
絶対に挑戦してクリアーしてやりたくなるじゃん! ゲーマーとしても《アインクラッド》に生きてる一人の人間としても!」
「あ、長くなっちゃったね。ごめんねリズベットちゃん。
んとね、とりあえず何が言いたいのかと言うと・・・思いっきり楽しめ! でないと損だよ!
デスゲームが終わって現実世界に帰還したら二度とここには戻ってこられない。ただの思い出か記憶になっちゃう。
でもボクたちは今、この時だけは此処で生きて息をしている。めいっぱい楽しんでいいことになってる」
「それにまぁ、夢のないこと言っちゃうけど・・・どうせ苦しんだって楽が出来るようになるとは限らないんだし、最悪損したまま人生終わらせられるだけだよ? だったら死ぬまでは楽しんでた方がずっとずっとマシな人生だったと思えるよきっと。
後悔だけして死んでくのは・・・・・・もうイヤだからねぇ・・・・・・」
ーーと、なんか色々語っちゃった。最近多い気がするなぁこういうの。歳かな?精神年齢的な意味で。もしくは魂年齢でも可。
「じゃあもう行くよ。これありがとね、リズベットちゃん。大切に使い捨てて一杯ワスプ倒しまくってくるよ。
それじゃあ、まったねーっ!」
「・・・・・・リズよ」
「・・・ほえ?」
ん? なんか今、リズベットちゃんがなにかしら言ってたような気が・・・。
「呼び捨てにされるのは癪だけど、数少ない馴染みの常連客からいつまでも『ちゃん』づけで呼ばれてるのもなんかイヤだったから、妥協した折衷案として『リズ』。
いい? これからあたしの名前を呼ぶときにはリズベットちゃんじゃなくて『リズ』って呼び捨てにするのよ。わかったわね? ユウキ」
「・・・・・・」
「な、なによ急に黙り込んだりして・・・さっきのあたし、どこか可笑しかった? 変なこと言っちゃってたかしら?」
「・・・・・・」
「ね、ねぇちょっと、聞いてるの? あ、あたしはリズって呼ぶよう言ってるんだからアンタも何か答えなさいよね」
「・・・・・・」
「ね、ねぇ、本当にやめてよその沈黙。なんかすっごく居た堪れなくなっちゃって、恥ずかしくもなってきたんだけど・・・・・・ああ、さっきのあたしは何であんなこっ恥ずかしいセリフを言っちゃったのかしら・・・うう、死にたい・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・デレた」
「・・・は?」
ついさっきまでの乙女モード全開だったリズベットちゃんーーじゃなくってリズが顔と声音と口調を一変させて、途端にガラの悪い不良少女もどきの凶眼でボクを睨みつけてきたんだけど、浮かれ騒いで頭に血が上り、理性が月の裏側まで蒸発してっていたボクは気付くことなく有頂天に空高くまで舞い上がる!
「デレた!デレたよ!リズベットちゃんが、リズがボクにツンデレたよ!
すごい!かわいい!これが本物のツンデレなのかぁ~。初めて見たなぁ~」
「な、な、ななななな・・・・・・!!!!」
「わ~♪ 顔が真っ赤でタコみたーい! か~わい~♪
ねぇねぇリズ! 一緒に写真撮ろうよ写真!ツンデレ覚醒記念日にお店の看板の下か上に飾れば千客万来間違いなし!
・・・・・・って、あれ~? どうして《圏内》なのにハンマー取り出してるのリズ?
そして、どうしてボクに向かって振り上げて、あまつさえソード・スキル《パワー・ストライク》を使用しようとしちゃってるの? 重いよね?その一撃。衝撃だけでボクを気絶させるくらいは訳なくこなせーーちゃ、え、うそ、マジで? ホントに?
本当のホントにボクはそれで叩かれるの? 叩かれちゃうの? 痛い思いしてお仕置きされちゃうの?
ーーちょ、いや、マジやめてリズベットちゃん。いえ、リズベット様お願いします許してください!
死ぬ死んじゃう!ホントに死んじゃう!デスゲーム始まってから最初の《圏内殺人事件》が起きちゃうーーーっ!!!!」
「ーーふんっ!!」
どごぉぉぉぉぉぉぉっん!!!!!!!
「きゅ~・・・・・・」
「ふんっだ!」
ボロボロになって潰れたカエル状態のボクを後目に、リズはのっしのっしと足音を轟かせながら去っていった。
今はいい。しかしいつの日にか必ずや、第二第三のリズベットちゃんがーー
「とりあえ、ず、だれ、か、ポー、ション、くだ、さい・・・・・・がくっ」
つづく
実は昨日の段階で思いつていたネタを半端に忘れて使えなくなってしまいました。
覚えている範囲内で概要だけ書いときます。
ツンデレたリズ、ユウキに自分が可愛いエプロンドレス来たら似合うかどうか聞く。
ユウキ、可愛いエプロンドレス着てハンマー握ったリズを連想。
「う~ん・・・」とうなるユウキの反応を悪い方に解釈したリズがハンマー構える。
命乞いするユウキに対して、容赦なく振り下ろされるハンマー。
地に沈むユウキ。プンプンと怒りながら歩き去るリズ。
後から来て遠目にユウキの失神体を見たキリトとアスナ。
「いったい、何があったんだ(の?)・・・?」
――な感じです。個人的にはこっちの方が良かったなぁ。全部思い出したら書いてみよう。