仮面ライダー剣~The earthly World~ 作:龍騎鯖威武
レンゲルは未だ自身の武器を振りかざし、戦う事をやめない。
説得しても、適当に流されるのだ。
「くっそ!なんてタフなヤツだ…!」
留美奈達は肩の上下が激しくなっている。呼吸が荒くなっているからだ。チェルシーやギャレンも同様だ。
しかし、レンゲルだけは全く息があがっていない。それどころか更に感情を高ぶらせている。
「いいぞぉ…その調子だ!どんどん、戦おうぜ?」
レンゲルラウザーを振りかざし、駆け寄る。
そこに…。
「おおおおおおおおおおおおぉっ!!」
ガギイイィッ!!ドガアァッ!!
「うおっ!?」
少し後ろでブレイラウザーを立てて胸を押さえていたブレイドがレンゲルラウザーを防ぎキックを放った事で、レンゲルは2mほど後方へ吹き飛ばされた。
「ノゾムさん、あんたどうかしてんのか!?」
「どうかしてるかもな。でも、戦えるんならそれで良いんだよ!!」
レンゲルは3と6のカテゴリーのラウズカードを取り出す。2枚技の攻撃は凄まじい威力がある。それをブレイド達は良く理解している。そのため止めようと走り寄るが、レンゲルは高くジャンプして場所を移動する。
「モグラと白熊のセッションと言ったところかぁ?」
カードをラウズしようとしたとき…。
「この世にいるカリスの二次物よ。俺に協力しろ」
ふと声が聞こえて、振り返るとサングラスとコートを身に着けた長身の男が立っていた。
「なんだアンタ?」
「おいぃ。いま、良いトコロだから邪魔すんな…」
レンゲルが文句を言っている最中に、その男の姿は見る見る変わっていった。
寵臣の体は更に大きくなり、黒い鎧に青い羽のような装飾を幾つも纏った姿。右手には剣が握られており、今までのアンデッドとは大きく力が違うことをその威圧感から物語っていた。
彼らの知識から理解できたのは…。
「上級アンデッド…ダイヤのカテゴリーJ!」
そう、人間に擬態する事が可能な上級アンデッド「ピーコックアンデッド」と呼ばれる。
「イサカ…と呼んでもらおう。さぁ、俺に協力しろ」
イサカと名乗ったピーコックは、まずギャレンに襲い掛かった。
「うわっ!?」
ズガアアァッ!!
黒い剣を振りかざし、降ろす。その威力は凄まじい。ギャレンがとっさによけながら射撃を始めようとする動きよりも早く、それはやり過ごしがたい攻撃であった。
「ギャレン、君は戦士としてはまだ十分な実力を兼ね備えていない。だが、俺と共にアンデッドを封印し続ければ力は身につく」
「い…いやだ!君なんかに従わなくても…強くなって見せる!」
ピーコックの言葉を断固拒否するギャレン。
「君はどうだ…ブレイド!?」
突如、肩から青い羽が浮かび上がり、ブレイド目掛けて放たれる。それはまるで刃物のように鋭利な武器となっていた。
ガギイイイイィッ!!
「くっ!?ぐううぅっ…!!」
ドガアアアアアァッ!!
「ぬあああああああああああああああぁっ!?」
必死にブレイラウザーで叩き落していったが手数が多すぎる。すぐにブレイドの動きが追いつかなくなり、羽の餌食となった。
「ちっ…つまらない冗談だな…!勧誘しながら攻撃するとはな…交渉術が致命的だ!!」
ブレイドは毒づきながらピーコックの行動について文句をつけて挑発する。
だがピーコックは溜め息をついて、留美奈達を見つめる。
「能力者…だったか?だがアンデッドを封印できる能力を持たないならば、用はないな」
「そうかよ!」
ゴオオオオオオオオオォッ!!!
留美奈はピーコックに小鳥丸を振り下ろす。大きな竜巻が起こり、それがピーコックを包み込んだ。
だが…。
「フンッ!!!」
それを自身の力で振り払う。全く効いていない。
「なら…!!」
チェルシーが自身の能力を使い、ピーコックに重力攻撃を与える。
「…!」
さすがに重力という地球の法則には耐えられないのか、ピーコックは膝をつく。
「今よ、斬崎剣斗!!」
「わかった!!」
攻撃を仕掛けるならば今しかない。ブレイドはラウズカードを取り出した。
<THUNDER><KICK>
「うおおおおおおおおおぉっ…ふんっ!!」
<LIGHTNING BLAST>
ブレイラウザーを地面に突きたて、地を蹴って飛ぶ。空中で大きく一回転し、キックの体勢を取った。
「らあああああああああああああああああああああああぁっ!!!」
ブレイドの必殺技「ライトニングブラスト」の発動だ。これならばトドメとは行かずとも、ピーコックに多大なダメージを与える事が出来るはず。
そこに…。
<TORNADO><DRILL><SPINING ATTACK>
「ツアアァッ!!!」
「なに!?」
突如として現れたカリスが、ブレイドの攻撃を邪魔した。
ガギイイイィッ!!
「ぐああああああああぁっ!?」
進路の垂直方向から強力な攻撃を受ければ、その攻撃は大きく揺れる。ブレイドは吹き飛ばされ変身が解除された。
「剣斗!!」
留美奈が抱き起こす。その剣斗の表情は苦悶に満ちていた。
「ぐうっ…カリス…!!」
カリスは悠然と立ち、ブレイド達を見下ろしている。
「邪魔をするな。オマエ達にウロチョロされると迷惑だ」
カリスアローを次はピーコックに向ける。
「久しいな」
「カリス…。まさか、貴様の手に渡っていたとはな」
ピーコックはカリスを忌々しそうに睨みながら呟く。どうやら二人は、何らかの因縁を持っているらしい。
「バトルファイトのルールは知っているだろう。俺は何のルール違反も犯していない。この力もルールに従って手に入れた。俺はそれを行使しているだけだ」
「…バトルファイト…?」
留美奈達はその言葉に首をかしげる。
一方の剣斗は、その言葉について何か知っているようだ。じっと見つめていた。
そこに…。
「おいおい、俺を無視しちゃいけないぜ?」
レンゲルがラウザーを構えて歩いてきた。その姿は威圧感さえ感じる。
しかし、カリスとピーコックはそれに動じる事はない。彼らもまた、威圧感を放っている。ここは威圧感で満ちていた。それに押しつぶされそうになっていたギャレンなどは、その感覚に麻痺さえ感じるようになっていた。
「だいたい、カリスの擬似物ってのは何だ?」
レンゲルが抱く一つの疑問。カリスというのがこの黒い仮面ライダーらしき人物だという事は理解できる。剣斗から教えてもらったからだ。だが、そのカリスが、ブレイド、ギャレン、レンゲルの「二次物」というのが分からない
「…言葉の意味を考えれば分かるはずだ」
「つまりカリスが、ブレイドやレンゲルの元になってるって訳か!?」
再び問いながらレンゲルラウザーを振り下ろす。
ガギイイィッ!!
しかし、カリスはそれを意図も容易く防いでしまった。
「ちっ…!」
「理解力は人並みにあるようで助かった。ならば、コピー品がオリジナルに勝てるかどうかも理解できるはずだ!!!」
ズバアアアァッ!!!
レンゲルの胸をカリスアローが切り裂く。
「ぬおぉっ!?」
堪らず吹き飛び、その拍子にレンゲルバックルが外れて変身は解除された。
「いってぇな…!」
頭をさすりながら、ノゾムは起き上がった。
「ノゾムさん!」「雲間ノゾム!」
剣斗達がノゾムに駆け寄る。怪我は深刻ではなさそうだが、彼の精神状態が不安ではある。
「あら?なんか萎えた…」
どうやら、先ほどの感情の高揚は変身時にのみ作用するものであるらしい。今のノゾムは変身前と変わらない様子だ。
「戻ったのか?」
「おぉ…もう大丈夫だ!」
彼らを見ていたピーコックとカリスは、顔を見合わせる。
「さて、カテゴリーJ…。ここで封印させてもらう」
「生憎、そんなつもりはない」
ドガアアアアァッ!!
「っ!?」
不意に、目の前が粉塵で覆われる。その攻撃の主は上空にいた。
鷹のような姿をしたアンデッド。地面に降り立つと、そのアンデッドは眼鏡をかけた長身の男に姿を変える。
どうやら彼も上級アンデッドのようだ。
ピーコックも姿をイサカへと戻す。
「退こう。今はそのときではない」
「あぁ」
どうやらイサカとこのアンデッドは、協力関係にあるようだ。二人は景色に溶けるように姿を消した。
カリスは軽く息を吐き、剣斗達を見る。
「…また会おう」
そう言って、カリスもまた、姿を消していった。
留美奈達の家で待っていたのは、ノゾムへの説教だ。レンゲルの作用とはいえ、意識が明確にある状態でブレイド達に襲い掛かったのは、放っておける事態ではない。
「あんた、イカレてんじゃないのか!?」
留美奈は開口早々に罵倒するが、ノゾムはまるで反省の色も見せずにこう言った。
「イカレてるかもな。でも、あれは仕方ないぜ?なにしろ、戦いたくなっちまうんだからよ。一種の麻薬症状みたいなモンか?」
首をかしげながら言っていた。どうもあの状態の事が本人も不思議な感覚であったらしい。
「いい加減にしろよ!!なんでそんな涼しい顔してられるんだ!?」
「留美奈さん、落ち着いてください!!」
それを聞いていたルリは留美奈を止める。留美奈は何とか引き下がったがその目から怒りは消えていない。
ルリはこう言った。
「あの…黒い服の男の人が言っていたことが…このことなんですね」
スパイダーを封印した際に現れた黒ずくめの青年。彼は何かを知っているような口ぶりであった。
だが、レンゲルのことをBOARDでもない彼がなぜ知っていたのか…。
「上級アンデッドなのかもな」
「でもアンデッドなら、わたし達に忠告するなんてことはないはずよ」
たしかに、アンデッドにとって人類は敵そのものである。その敵に危機を忠告するなど、まず考えられない。
しかし、心当たりが剣斗にはある。
「あの男が人間の味方のアンデッドだとしたら?」
「そんなの有り得な…」
ノゾムは言いかけたところで思い出した。
人間の味方をするアンデッドなら一体だけ存在する。
「じゃあ、あいつが…人類の始祖「ヒューマン・アンデッド」だっていうのか?」
「ヒューマン・アンデッド…?」
銀之助は首をかしげる。剣斗はそれに気づいて説明を始めた。
「アンデッドというのは、さまざまな生物の先祖だ。彼らは全部で53体存在し、それぞれが種の繁栄を望んで、最後の一体になるまで争った。これを「バトルファイト」という。結果的に生き残ったのは、人類の始祖であるアンデッド…ハートのカテゴリ2である「ヒューマン・アンデッド」だ」
その言葉は留美奈たちにとって妙な説得力があった。たしかに頭脳は優れているものの、強靭な肉体や筋肉、爪や牙も持たない生物がこの地球上で最も繁栄しているというのも奇妙な話ではある。だが、それがアンデッドによるバトルファイトの結果だと考えれば仮説とはいえ辻褄が合う。
バトルファイトという単語について、チェルシーが思い出す。
「さっき、上級アンデッドとカリスが言っていた会話…」
ピーコックとカリスはこんな会話を彼らに見せていた。
「カリス…。まさか、貴様の手に渡っていたとはな」
「バトルファイトのルールは知っているだろう。俺は何のルール違反も犯していない。この力もルールに従って手に入れた。俺はそれを行使しているだけだ」
「もしかして、カリスというヤツもアンデッドなのかもしれないわね…。バトルファイトがどうとか言ってたし、カテゴリーJとも面識があるみたいだし…」
いろんな話がありすぎて、留美奈の頭はパンク寸前。
「あぁもう!いろんなことが多すぎてわかんねぇよ!!」
彼らは未だ、頭を抱え続けていた。
同時刻。
天王寺はレンゲルバックルに似た3つのバックルを見つめている。
何かの気配を感じたのか、振り返る。
「来ると思っていたよ、カリス」
目の前にはカリスが立っていた。
「こんなところで、こんな大きな企業を立てているとは…相変わらず、姑息なマネをしてくれるな」
「だが…ブレイドもギャレンもレンゲルも、君の対応次第では味方になることも十分にありえる。まぁ、君が友好的になればの話だが」
「…無理だな。俺の正体を知るや否や…奴らがどういった行動に出るかは見て分かる」
どうやら、この二人も良く知っている間柄らしい。
「そういえば、イサカやタカハラと会ったようだね」
「奴らも此処に?」
「ライダーシステムを渡せと詰め寄ってきた。まぁ、返り討ちにしてあげたがね」
そう言って、天王寺はあるラウズカードを見せた。光の関係でカリスの目には黒い長方形の固まりにしか見えない。
だが、そのカードがどんなものかはなんとなく理解できた。
「本当に卑劣で姑息だな。貴様も正々堂々と自分の力で戦えばどうだ?」
「君が封印したそのカード…。それは君自身の力といえるか?」
その言葉には返す言葉がない。たしかにラウズカードには別のアンデッドの力が宿っており、その力を行使するカリスは自身のみの力で戦っているとは言い難い存在だ。
「チッ…ああ言えば、こう言う。本当に相変わらずだな」
「こうでもしないと、君達に勝てそうもないのでね」
ふと、カリスはアローを天王寺の首に突きつける。
「ならば、ここで勝てないようにしてやる。死ね」
「君には私は殺せない。私が君を殺せないように…」
相変わらず、言葉の裏をかいた返答で、返す言葉を失わせてくる。彼はいつもそうだった。
適当な言葉で話題を変えたり、話し相手の言葉の盲点をつくなどして説得や話し合いはまるで通じない。頭脳が優れた存在であった。
カリスはアローを下ろし、闇の中に消えた。
「いつか分かる。このバトルファイトの勝利者は…必ず俺になる。…必ずな」
カリスの消えた闇を見つめていた天王寺。
ラウズカードをしまって小さく呟く。
「勝利者など必ず決まるわけではない。「運命」というモノは、この世にいる生物が握れるものではないのだから」
続く…。
次回!
カテゴリーKか…。
レンゲルを…救いたい。
違うな。
アンデッドに良心などない。
分からない。だって…
感情は同じじゃないもの…。
第6話「不死生物の良心」
今、その力が全開する…!
キャスト
斬崎剣斗=仮面ライダーブレイド
浅葱留美奈
ルリ・サラサ
チェルシー・ローレック
五十鈴銀之助=仮面ライダーギャレン
雲間ノゾム=仮面ライダーレンゲル
イサカ=ピーコックアンデッド
タカハラ=イーグルアンデッド
???=仮面ライダーカリス
天王寺賢二郎
あとがき
いかがでした?
伏線ばっかです。今回は、この物語のなぞを改めて再認識する事を目的としました!
次回はクラブのKが登場です!
お楽しみに!