東方桃玉魔 〜ピンクの悪魔が跳ねる時、幻想郷は恐怖に慄く〜   作:糖分99%

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なぁにこれ









草の根と桃色玉

 こんにちは、わかさぎ姫です。

 

 ええ、湖に住む人魚です。

 突然ですが今、絶体絶命、生きるか死ぬかのピンチです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 釣り上げられました。

 

 

 それも、なんだか桃色の球体じみた小さな生物に。

 

 私、いつものように湖を気ままに漂っていたのですよ。

 そしたら服の襟に釣り針が引っかかったみたいでしてね。ええ、不意を突かれてそのままザッパンと。

 

 釣り人は本当に小さく、一尺行くかどうかという大きさなので、もしかしたら見逃してくれる、もしくは私でも勝てると思いました。ええ、最初は。

 でも冷静に考えてみてください。自重の何倍もある私を釣り上げたんですよ、この桃色玉。見た目にそぐわずヤバいですよコレ。

 

 また、私は大きいから見逃してくれるんじゃないか、という期待も即裏切られました。

 釣り人の後方。そこには我らが同胞がシメられ、サバかれ、塩に漬けられているではありませんか。

 そう、その子よりも大きな同胞が幾つも。

 まずいです。シメられサバかれ漬けられる未来しか見えません。

 

 さらにそこに追い打ちをかけるように……

 

「おー、カービィ大物釣ったんだなー」

 

 赤っぽい服、不自然に硬直し突き出た腕、紺の帽子に顔を隠すように貼られた札。

 そんな格好をした妙な人物が現れたのだ。

 

 その正体は私だって知っている。ヤバい奴の下僕のヤバい奴として草の根妖怪ネットワークでも有名な妖怪。

 邪仙、霍青娥の下僕、キョンシーの宮古芳香。とにかく悪食であり、生物無生物有機物無機物なんでも食らうという。

 

 あっ、私死んだわ。

 

 そう確信しても無理はない。

 あまりにも、あまりにもこちらに分が悪すぎる。

 しかも私は釣り上げられた陸の上の人魚だ。不意をついて逃げ出しても、ホームグラウンドである湖に果たして捕まる前にたどり着けるだろうか。

 

 ……ビチビチやっている間に食われそうだ。

 

 いや、キョンシーの方は動きが鈍いらしいのでまだいい。問題は私を釣り上げた桃色玉の方。

 確か噂によると、単身で天狗や河童に喧嘩を売り、神に蹴りをかまし、妖怪を見境なく襲う極悪妖怪……と報告されていた気がする。

 つまりヤバい奴。そこのキョンシーの主人並みにヤバい奴である。

 

 どうやら私はここまでらしい。

 影狼、蛮奇、またほとりでお茶会しようって約束してたけど、守れそうにないや。

 

 ……。

 

 ……いや、諦めきれない。

 

 そうやすやすと自分の命を投げ捨てられるものか。

 そうだ。あの異変の時のような心の強さを持たなくては。

 強く心を持て、わかさぎ! 決意を抱け、わかさぎ!

 

 私は一つ飛び跳ね、体制を整える。

 二人はピクリと反応するが、それでも私の方が早い。

 私はその手を地につけ……

 

「どうか、命だけは」

 

 必死に命乞いをした。

 

 陸上で悪食キョンシーと天狗に喧嘩売った桃色玉二人に勝てるはずがない。

 ならばもう、相手の情に訴えかけるのみ。

 

「うぃ?」

「うが?」

「食べても美味しくないです。多分私大味です」

「味とかどうでもいいんだー。私は味なんかわからん」

 

 しまった。なんでも食べる悪食キョンシーに味が悪いなんてアピールしても意味がなかった。毒があると言っても迷わず食らうだろう。

 

「それにー、私は青娥から偶然釣りに来てたコイツと夕飯を取ってくるよう言われているんだー。だからお前も夕飯なー」

「ぽよ?」

「そこをどうかお願いします! あなたは平気で食べられても青娥さんは嫌いかもしれないじゃないですか!」

「じゃあ私が食う」

「そんな……殺生な……」

 

 やはり、私はおかずになる運命しかないのか。

 私は、全てを諦めた。

 

 だが。

 

「待て、お前らっ!」

「……」

「ぷ?」

「なんだー、お前たち」

 

 私と、桃色玉と芳香の間に割って入って来たのは……私の友人、今泉影狼と、赤蛮奇。

 その体を呈して、私を隠すように立ちはだかってくれた。

 

 ああ、影狼、あなただって芳香には勝てる実力がないのにも関わらず、私を気丈にも守ろうとしてくれる。尻尾思いっきり丸まっているけど。大丈夫? 舐められない?

 ああ、蛮奇。あなたは草の根妖怪ネットワークの一員でもないのに私を守ろうとしてくれる。弱点の頭をどこかに置いて胴体しか来てないけど。頭を置いてくるとかシュールすぎる。

 

「めんどーだなー」

「ぽよー」

「でも魚は欲しいなー」

「さかな! さかな!」

「あ、諦めろ!」

 

 未だ私を食べようとしている芳香に対して影狼は必死に食い下がる。

 やはり持つべきはいい友人だ。ありがとう、影狼。そして芳香の口から溢れるヨダレが怖い。

 

 と、ここで気がついてしまった。

 蛮奇の頭の一つが、芳香の後ろからこちらへ向かっていることを。

 

 不意打ち。それに違いない。

 まさか、影狼が必死に食い下がっているのは、注意を引きつけるため……?

 影狼、蛮奇、恐ろしい子……!

 

 蛮奇'sヘッドが芳香ににじり寄る。

 

 いける。誰もが、そう思った。

 そう、思ったのだ。

 

「ん! 誰だー!!」

「ぼぶふっ!!?」

『蛮奇ィー!?』

 

 なにかの気配を感知したのだろう。

 素早く後ろへ振り抜いた腕は蛮奇'sヘッドを打ち抜き……蛮奇'sボディに深々と突き刺さった。

 

 パタリ、と地に伏す蛮奇。

 

 影狼は青ざめた様子で倒れた蛮奇に駆け寄り、私もまたビチビチとにじり寄る。

 

「ば、蛮奇!」

「蛮奇! しっかりしてよ! 蛮奇!」

「はぁ、はぁ、はぁ……なんだよ、結構キクじゃねぇか。ふっ……」

 

 私たちの声が届いたのか、なんとか蛮奇は意識を取り戻す。

 だが、その息は乱れに乱れ、絶え絶えであった。

 

「ば……ばん……蛮奇!」

「なんて声出してやがる……わかさぎ姫」

「だって……だって……」

 

 先のは鳩尾で鈍く重い音が鳴るほど強く当たったはず。

 それも頭に芳香の腕一発食らった後、鳩尾に自分の頭が当たったのだ。普通に芳香のパンチをもらうよりも相当なダメージが入ったはず。

 にも関わらず、赤蛮奇は、よたよたと立ち上がり、歩き始めた。

 私のいた、湖に向かって。

 

「私はろくろ首の怪奇赤蛮奇だぞ。こんくれぇなんてこたぁねぇ」

「そんな……私なんかのために……」

「友人を守んのは私の仕事だ」

「でも!」

「いいから行くぞ。皆が待ってんだ。それに……」

 

 だが、限界は近かった。

 赤蛮奇は前のめりになるように、再び、倒れたのだ。

 

「私は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に私はいるぞ!だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

 その指は、私の(帰る先)を示していた。

 

『蛮奇ィィイイイイ!!』

 

 私と、影狼の声は、湖に強く、強く木霊したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁにこれー」

「ぽよ?」

「バカが感染りそうだなー。諦めて帰ろーカービィ」

「うぃ!」

 

 

 










なぁにこれ

大事なこと(ry



なんで鉄血ってこうもネタにされるんでしょうねぇ。

あ、今回は酷いネタ回です(激遅)

追記:そういや第100回だったわ(笑)

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