東方桃玉魔 〜ピンクの悪魔が跳ねる時、幻想郷は恐怖に慄く〜   作:糖分99%

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いやー、いつのまにかextra13話目です。

なんかふざけた事しかしていない気がします(笑

紅魔館爆発とか、オルガネタとか、吸引力の変わらない桃色玉とか、TASネタとか、紅魔館爆発とか、下ネタとか(笑

まぁ、日常はかけたんじゃないでしょうか。




それでは……

















いい夢は、見られましたか?











ギャラルホルンと桃色玉

「おーおー偉大なハールトマンー、おーおー偉大なハールトマンー……」

 

 無機質で、機能的で、近未来な部屋で、特徴的な歌詞を口ずさむ者がいた。

 その部屋は完全な防音がなされており、しかも特に大きな声量で歌っているわけでもないので、部屋に響くことはなかった。

 しかし、その歌声はしっかりと聞こえる。

 

 その歌を歌う、ピンク色の髪の女性の名は、スージー。正しくは……

 

 

●○●○●

 

 

「『人間の里でスリ事件多発! 盗まれるのは柳葉道場の配布物』……か。文々。新聞もたまにはまともな記事を書くんだな」

 

 焼きたてのビスケットを次々頬張るカービィの横で、魔理沙は新聞片手に一面記事の見出しを読み上げる。

 新聞を読む魔理沙のテーブルを挟んだ向かいには、霧雨魔法店では珍しい客、メタナイトが出されたお茶を(どうやってか仮面の上から)啜っていた。

 

「まぁ、割と大ごとになっているようだ。柳葉氏は盗まれた者には慰めとしてお守りを渡しているそうだ」

「気前いいな。で、盗まれたのは確か……」

「小刀だ。見たところだと特に変哲はないな。遠目から見ただけだが」

「妖怪からの護身術を教える柳葉家か配布した小刀を盗る者……普通に考えれば人間が力を持つことを嫌う妖怪くらいだが……違うんだろ?」

「ああ」

 

 メタナイトは喉を湿らすためか、茶を一気に飲み干すと、その名を口にする。

 

「犯人はシャドーカービィ。ディメンションミラーから生まれた影のカービィだ」

 

 メタナイトが口にしたのは、鏡の国に残った英雄の影の名前。

 そして、幻想郷にてマルクとの決戦に駆けつけた者の名前。

 

「うわ、いかにも悪そう……って言っても、マルクとの決戦で駆けつけてくれた灰色のカービィだろう? いいやつなんじゃないのか?」

「そうだな。ディメンションミラーは邪気の部分を増幅した影を産み落とすが、そもそも邪気の要素が皆無なカービィから生まれたシャドーカービィはせいぜいいたずらをする程度に留まっている。いたずらっ子なカービィと思ってくれればいい」

「だが今回、いたずらってレベルを超えているよな。ここまで大騒ぎしているし、そもそも犯罪だし」

「しかも、どうも永琳殿のところからあの人化薬を複数盗み出し、人としてスリを働いているらしい。だから、何か理由があるのでは、と私は考えたのだ。ポップスターの方でもシャドーカービィを探しているが、全く捕捉できていない」

「ああそうか、幻想郷に来ている間はお前たちは寝ているのか……それで、どうするんだ?」

「あいつはオリジナルであるカービィとなんらかの繋がりがある。もしかしたら接触してくるかもしれない為、留意しておいてくれ」

「わかったぜ」

「ぽよ!」

 

 メタナイトはそれだけを伝えると、挨拶はほどほどに去って行った。

 残された魔理沙は少しだけ顎に手を当て、考えるそぶりを見せる。

 しかし考える時間もほんの少し。考えるよりも行動する。それがある意味魔理沙にとっての美徳であった。

 

「……よし、行くか! 人里!」

「うぃ!」

 

 

●○●○●

 

 

「……あら、いつのまにか茶葉切らしてる」

 

 茶箪笥をごそごそといじり、目的のものがないことを悟った霊夢は深く息をつく。

 

 別に茶が無くとも生きてはいける。

 だが、白湯を飲むというのはあまりにも寂しい。

 なにはなくともとりあえずお茶。これはある意味日本人としてのサガかもしれない。

 

 買いに行くか。

 

 小銭をジャラジャラと取り出し、がま口に補充して買い出しに行く。

 ついでに軽く布教でもしておくか。

 守矢神社の台頭はあまり快くはないものだし、ちょっとは信者を取り返さないと……

 

 ある種の決意を抱いた霊夢はひょいと縁側から外に出て、鳥居をくぐって人里へ向かおうとする。

 だが、その鳥居の影から現れた人影が、霊夢の行く先を阻んだ。

 

 博麗霊夢の名は幻想郷に広く知れ渡っている。

 当然、その強さ、妖怪に対する問答無用さもだ。

 そんな彼女の前に立ちはだかるとすれば、愚か者、もしくは彼女のことを知らない、もしくはそれでも止めねばならない理由があるものだ。

 そして、今霊夢の前に立ちはだかったのは、おそらく後者。

 

 額から生えた角、薄緑の長い巻き毛、特徴的な耳、赤い服。

 高麗野あうん。神社や寺を守る狛犬そのものである。

 それが鳥居の下で霊夢を止めたのだ。

 

「どういうつもり?」

「人里に向かう気ですか?」

「そうよ。お茶を買いにね。邪魔するならまた退治するわよ」

「守護獣狛犬を退治する巫女なんて聞いたことないわね」

「だって、私は早くお茶を飲みたいの」

「いけません。今は人里に近づいてはなりません」

「……なんでよ」

「守護獣……狛犬としての嗅覚が、私に全力で警鐘を鳴らしているのです」

 

 

●○●○●

 

 

「……よし、取り敢えず今日はここまでにしておこう。この問題は書き写して明日提出するように」

『はーい』

 

 人里にある寺子屋。

 そこでは子供達が今日も勉学に励んでいた。

 教鞭を振るうのは上白沢慧音。半獣半人だが、人として子供達に勉学を教えている。

 稗田阿求に私が教えた方が面白い、と言われてしまうほど授業は難解で退屈と言われるものの、生徒への愛情は強く、生徒もまたそれは理解していた。

 

「……みんな、書き終わったな?」

『はーい』

「それじゃあ号令をかけてくれ」

「起立!」

 

 日直の号令に合わせ、生徒たちが全員立ち上がる。

 

 ───この後は妹紅を呼んで鍋をつつくつもりだ。あの一件で軽く鍋にトラウマを持つようになったが……もう大丈夫だろう。

 

「姿勢、礼!」

 

 子供達は一斉に終礼として頭を下げる。慧音も同じように頭を下げる。

 

 ───今回はいい牛肉を仕入れた。きっと妹紅は喜んでくれるだろう。

 

 慧音は頭を上げ……

 

 

 

 

 

 パンッ

 

 

 

 

 

 膝の力を失い、崩れ落ちた。

 

 

 

 何が起きたか、わからなかった。

 ただ、妙に腹部が熱い。

 熱した鉄棒を当てられたかのような感覚。

 

「───────あ」

 

 見れば、腹部から止めどなく血が溢れていたのだ。

 

 そして……

 

「ふふふ」

「クスクス」

「フフ……」

 

 至る所から聞こえる、おかしいような、子供の笑い声。

 笑っている。笑っているのだ。慧音の愛する生徒たちが。

 慧音の目には、一番前の生徒の手に、金属光沢のある筒が握られているのをしかと見た。

 

「なん……で……」


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