東方桃玉魔 〜ピンクの悪魔が跳ねる時、幻想郷は恐怖に慄く〜   作:糖分99%

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ついに出会うぞ、主人公!

あと、タイトル変えました。この方がカービィが出るとわかりやすいですしね。
もちろん、この文言は星のカービィUDXの真格闘王への道に出てきたものです。

また、挿絵はハヤサカ提督様に描いていただきました。素敵な挿絵、ありがとうございます。


出会い桃色玉 ☆

 そう強気でいったものの、と河童の一人、河城にとりは独りごちる。

 

「なんだいありゃ。天狗をまとめて吹き飛ばす風なんて聞いたことがない。……神風の類か?」

 

 しかしその問いかけに答えるものはいない。

 

 仕方があるまい。

 幻想郷にとって、ソイツは未知の存在なのだから。

 

 未知の存在ほど恐ろしいものはない。

 未知の存在は、どんな性格かわからない。

 未知の存在は、どんな力をもっているかわからない。

 未知の存在は、どんな目的をもっているかわからない。

 未知の存在は、そもそも言葉が通じるのかもわからない。

 だから、最善の対応策がわからないのだ。

 

 天狗相手なら、下手に出ればまずこちらに実害は及ばない。

 河童相手なら、友好的に出れば良い関係を築けるかもしれない。

 なら、目の前の相手は?

 

 そう、未知であるが故にわからないのだ。

 

 

 だからこそ、血を流す道しか選べない。

 

 

 背負う大きなカバンから取り出すのは、水鉄砲。

 しかしただの水鉄砲ではなく、河童の技術によって水圧を高めた、殺傷能力の高い水鉄砲である。

 それを全ての河童が装備し、ソイツに向けて掃射する。

 いつもの遊びである『弾幕ごっこ』のような美しさを兼ね備えたものではない。

 まさに戦時の弾幕であった。

 

 その弾幕を受けるソイツは、再び渦を巻き出した。

 小さな竜巻状になる中、ソイツが狙いをつけたのは河童ではない。

 ランダムな軌道を描きながら、ソイツは文に向けて突進した。

 

 初撃は避ける。

 しかししつこくソイツは文をつけ狙い、二撃目、三撃目、と攻撃を加えた時。

 ゴウ! とその小さな竜巻は突如として巨大化した。その攻撃ばかりは、最速の文といえども避けられない。

 しかし彼女とて、風を操る天狗。

 大したダメージは負っていない様子で、すぐに体勢を整える。

 

 だが、当のソイツには変化があった。

 その小さな手には、それぞれ七つの色を持つ複数の宝石が握られていたのだ。

 元は文が持っていたのだろうか。それを見て慌てふためく文。

 そしてそれを取り返さんと、今度は自らソイツに飛びかかる。

 そしてソイツは文を迎え討つ……

 

 

 

 かと思いきや。

 

 なんとソイツはまた渦を巻いたかと思うと、そのまま何処かへと飛び去って行くではないか。

 近づこうにもその状態では近づけず、天狗と河童はみすみすソイツの逃走を許してしまった。

 

 

●○●○●

 

 

「あそこか?」

「いいやあそこよ!」

「そっちじゃねえって!」

「じゃあどっちよ!」

 

 妖怪の山高空。

 そこでは身一つで飛ぶ紅白巫女と、箒で飛ぶ白黒の魔法使いが言い争いをしていた。

 

 言わずもがな、霊夢と魔理沙である。

 言い争いの内容はご察しの通り。

 

 果たして彼女らはなんのために飛び出してきたのか。

 異変解決のためにやってきたのではないのか。

 おおよそ真面目にやっているとは思えない。

 しかし彼女らはこのペースで今までの異変を解決してきたのだから、なんともいえない。

 

 とにかく彼女らは何処に落下したか揉めているのだ。

 揉める前に探せと言いたいが、少々感覚がずれているのが幻想郷の住人である。

 愛すべきところ、と割り切るしかない。

 

「もういいわ! 私はこっちへ行く!」

「じゃあ私はこっちだな。」

 

 そして不毛な言い争いは、ついに二手に別れるという方法で解決されることになる。

 お互いに背を向け、自分の信じる方向を向く二人。

 そして『異変解決一番乗り』の称号をかけて一斉にスタートした。

 

 ……かに見えた。

 しかし示し合わせたように両者がスタートした瞬間。

 

「ぶっ!」

「んぃ!」

 

 霊夢の顔面に何かがクリーンヒットしたのだ。

 霊夢の顔面にあたり上にバウンドしたそれを、気がついた魔理沙は咄嗟に帽子で受け止める。

 

「な、なんじゃこりゃ。」

 

 そして帽子の中を覗いてみれば、そこにいたのは桃色の球体に、突起のような小さな手、赤い足の生えた、つぶらな瞳をもつナニか。

 ソイツは挨拶をするように片手をあげ、「ぽよ!」と鳴く。

 はっきりいえば、今までに見たことのない存在だった。

 

「おい霊夢。なんか面白いもん拾ったぞ。」

「いっつ……なんなのそいつ! いきなり人の顔にぶつかってきて!」

「落ち着け霊夢。単なる事故だ。」

 

 憤る霊夢をよそに、魔理沙は帽子からソイツを取り出し、モニュモニュ揉んでいる。

 するとソイツはくすぐったいのか、くねくねしながら笑っている。

 その笑顔からは、ひねくれた性格を持つ魔理沙でも悪意などの感情を見出すことはできなかった。

 まさに純粋無垢そのもの。

 

「こいつ、なかなかかわいいな。お前、名前はなんていうんだ?」

「んい? カービィ、カービィ!」

「へぇ、カービィっていうのか。私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ!」

「ぽよ?」

「……うーん、わからんか。」

「ちょっとあんた、何やってんのよ。ソイツよこしなさいよ。」

 

 魔理沙とカービィと名乗るソイツがじゃれ合う中、霊夢が険しい表情で詰め寄る。

 しかし魔理沙はカービィの柔らかな感触に夢中なのか、真面目に相手にする様子はない。

 

「なんだ霊夢、羨ましいのかー? あ、こいつは博麗霊夢。こわーい妖怪巫女だぞ。」

「うぃ。」

「そうじゃなくて! ソイツ怪しすぎでしょ! ソイツが結界を破ったに違いないわ!」

「根拠は?」

「勘よ!」

「だと思ったぜ。」

 

 霊夢の勘はよく当たる。

 その事は魔理沙も分かっている。

 しかし、そうだとしてもこの桃玉、カービィが『悪意をもって』破ったとは考えられなかった。

 それに受け答えからして、カービィからはまるで言葉を話し始めたばかりの赤子のような、そんな幼さが感じられた。

 

「だとしても……こいつは迷い込んだだけじゃないのか? なぁカービィ。」

「ぽよ?」

「分かってないわよね? どう考えても。……いや、それだけおつむが足りないとなると、悪意はないか……どこぞの地獄烏みたく。」

「ぽよっ! むい!」

「おい抗議してるぞ。なんか感じ取ったんじゃないか?」

 

 ぷくー、と頬を膨らませるカービィ。

 果たして何を基準にして言語を理解しているのか、いまいちわからない。

 ただ一つわかるとしたら、敵意がない事ぐらいか。

 

 すると魔理沙はおもむろに緑の唐草模様の手ぬぐい……つまり、古典的な泥棒がよく頭にかぶるほっかむりを取り出した。

 そして器用に端を箒の先にくくりつけ、籠状になったところにカービィを入れ込む。

 まるでゴンドラだ。入れられたカービィは子供のようにはしゃいでいる。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ちょっと、そいつ連れて行く気?」

「だってこいつ、面白そうだろ? 気になることもあるしな。」

 

 まるでどこぞの魔女の宅急便である。

 どうみても足手まといにしか見えなさそうだが、魔理沙は気にもしていないようである。

 霊夢は呆れつつ、結界を突き破ったものの着弾点を探すことにする。

 

 だがしかし。行動に移すその前に。

 

「見つけましたよ、桃色玉!」

 

 普段は絶対見せない鬼気迫る表情。

 それを浮かべながら、天狗達が飛来してきた。




何も知らない状態だと、カービィを疑うのは少々難しそうですね。
なにせ、常時あの顔ですから(笑)
罪の無さそうな顔してますらから(笑)
でもあいつ、ピンクの悪魔なんだよなぁ。

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