東方桃玉魔 〜ピンクの悪魔が跳ねる時、幻想郷は恐怖に慄く〜   作:糖分99%

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プリズムプレインズ

「すまん! ちょっと遅れたぜ!」

「うぃ。」

「ちょっとどころじゃないけどね。」

「まぁいいや。取り敢えず、敵はあいつだな!」

 

 挨拶もそこそこに、魔理沙は開幕マスタースパークを放つ。

 しかし隙の多いマスタースパークをそう簡単にドロッチェが受けるはずもなく、瞬間移動で躱してしまう。

 

「ここまで新手が多いと、さすがにうんざりするな。」

「諦めたらどうだ。ドロッチェ。」

「当然、断る。」

 

 メタナイトの停戦の提案を却下し、また爆弾を放つ。

 しかしそれは、また別の爆弾によって撃墜された。

 その爆弾は、まるで花火のような美しい爆発を見せた。

 それは、カービィが投げたもの。

 虚空から無尽蔵に爆弾を取り出し、箒の上から投下してゆく。

 ドロッチェはそれを瞬間移動で躱し、凍てつく光線で迎撃し、スターロッドの放つ星型弾で反撃する。

 

「っと! ここに来てまともな弾幕を見たな! しかもありゃスターロッドか!」

「ぽよ!」

 

 弾幕を避けるのは魔理沙の大得意である。

 だが、今はカービィという同乗者がいる。

 下手な機動をとればカービィは落下してしまうだろう。

 そのハンデが、魔理沙の額に冷や汗を浮かばせる。

 

 しかしカービィは、その魔理沙の苦労を敏感に感じ取った。

 自分が魔理沙の邪魔になっていることを悟った。

 だから、カービィは天より伝説を呼び出した。

 

 光より飛来せしもの。

 伝説と謳われた、ドラグーンを。

 カービィは箒より飛び降り、そして地表スレスレで乗り換える。

 そして、ドロッチェへ向け突き上げるように突撃した。

 

「させるか!」

「……通さん!」

 

 目の前にスピンとストロンが立ちふさがる。

 だがいとも容易く彼らを吹き飛ばす。

 

「まだじゃ! 舐めるでないぞ、カービィ!」

 

 しかしすぐさまドクがヤドカリのような巨大機械に乗って立ちふさがる。

 スピンとストロンへの衝突により若干速度が落ちていたドラグーンは、その爪に阻まれる。

 決して、二人の行動は無駄ではなかったのだ。

 だが、最初こそせっていたものの、ドラグーンの畏怖すべき加速力がものをいう。

 徐々にドラグーンの何倍もの大きさを誇るドクの機械は押されてゆく。

 そして、ついに大きく吹き飛ばされた。

 

 そのままその場で旋回して速度をつけると、ドロッチェへと突貫する。

 ドロッチェは瞬間移動により躱すものの、同時にばら撒かれた爆弾により若干のダメージを負う。

 

「くぅ! やはりオレの脅威となるか、カービィ!」

 

 忌々しげにドロッチェは叫ぶ。

 だが忘れてはならない。

 敵は、カービィだけではないのだ。

 

「オラァ!」

「なっ! 三叉槍か!?」

「私のことも忘れないでもらおう。」

「チィッ!」

 

 三叉槍が振り回され、ギャラクシアが剣閃とともに振り下ろされる。

 それをすんでのところで杖で受け止めたドロッチェは、スターロッドの力で弾幕を放つ。

 しかし彼らは引くことはない。

 

「この大妖怪、ぬえを舐めるなよ!」

「……そろそろ決着の時だ。」

 

 ぬえの背後からUFOらしきものが複数飛び出す。

 そして放たれる、殺生厳禁の弾幕ごっこではまず見られないほどの超火力かつ極太のビーム。

 そしてメタナイトは、その場で回転し、そして巨大な竜巻を作り上げる。

 恐るべき攻撃はこれだけではない。

 

「援護に入るぞ!」

「分かってるわよそのくらい!」

「行くよ一輪!」

「ええ! 雲山、頼むよ!」

「そろそろ宝塔を返してもらいます!」

「はぁあああ!」

 

 離れたところからの集中砲火。

 そして、上空では方向転換して突撃してくるカービィ。

 出来上がったのは、完璧な檻。

 

 だがそれでも……ドロッチェの闘志は衰えない。

 スターロッド、そして宝塔も掲げる。

 そしてそれは光り輝き、一際高密度な弾幕が発生する。

 巨大な星型弾、物理法則を超越した曲がるレーザー。

 それらがドロッチェを守るように周囲を回り出したのだ。

 

 弾幕を相殺し、瞬間移動でいなす。

 そして全ての攻撃が止んだ時、残されたのは黒煙。

 そしてその黒煙を割って、傷だらけのドロッチェが現れる。

 無傷ではない。だが見た目に反してダメージはそれほど受けているわけではないようだった。

 

「なんてしぶとい……!」

「ちょっとこれは面倒だぜ。」

「でもこのまま押せば……っ!」

「おっと、そうはさせないぜ。」

 

 遠くから弾幕を撃っていた者達の前に、復帰したスピンとストロン、ドク、そしえチューリン達が立ちふさがる。

 己が身を呈してでも、頭目を守る気だ。

 

「素晴らしい主従関係ですね……しかし、私とて引けません!」

「終わるのは、そちらだ!」

 

 白蓮と星が最初に突貫する。

 それに続いて、一輪、水蜜、霊夢、魔理沙も彼らに飛びかかる。

 

 そしてその奥では、ぬえとカービィが、ドロッチェと死闘を繰り広げていた。

 

 

●○●○●

 

 

 ナズーリンを木の根元に寝かせ、持ってきた狸特製の薬を塗りつけ、清潔な布で覆う。

 

「ふぅむ。中々無理したのう。さて、彼奴らは……まだ戦っておるのか。若いもんはようやるのぉ。」

 

 そして、未だ戦闘を続けるドロッチェ達の方を見上げる。

 

 その戦いぶりは目に優しいとは言いがたいもので、無数の星型弾が飛び交い、曲がるレーザーが束になって飛び、爆弾が撒き散らされるという始末。

 応ずる方も応ずる方で、UFOから極太のレーザーを射出したり、三叉槍で突き回したり、花火のような爆発物を撒き、そして不可思議な乗り物で突撃をかましたりと、もはや常人では何が起きているのかも理解不能だろう。

 

「にしてもぬえよ、お主も若くなかろう。無理するのぉ。」

 

 まるで全盛期の時のように戦う旧友を見て、少しばかりマミゾウは過去に想いを馳せる。

 

 だがそれも、僅かな時間であった。

 

 ドロッチェの振り回す藍色のスターロッド。

 その先端についた星の輝きが、まるで脈打つように光っているのだ。

 何が起きているのかはわからない。だが、つい先ほどまではそんな光を発していなかったはずだ。

 嫌な予感がする。

 マミゾウは確かに長く生きた分、強い。しかし狸妖怪とはたいてい弱い者達ばかりだ。

 マミゾウとて妖怪になりたての時は弱かった。

 だから、危険をいち早く察知する勘というものが必要だった。

 その勘が、久しぶりに働いたのだ。

 

 ナズーリンを抱えてその場から飛び退く。

 その時、マミゾウはひときわ大きな地響きを感じた。

 

 そして、地面は突如、火を吹き爆ぜた。

 

 

●○●○●

 

 

「……まずいな。スターロッドが異常な光を発している。」

「なんだって?」

 

 メタナイトが突然、重い声を出す。

 魔理沙はドロッチェのもつスターロッドを見てみれば、確かに異常に強い光を発していた。

 先ほどまで、こんな光は放っていなかった。

 

「おい、なんなんだありゃ!」

「わからない。」

「そりゃないだろ!」

「無茶言わないでくれ。私とてスターロッドの全てを知っているわけではない。そもそも、いつからあったのかすらわからない代物なのだから。……ただ、カービィ達が危険に晒されているのは間違いない!」

「っ! カービィ! 離れろ!」

 

 魔理沙はカービィに向け、叫んだ。

 だが、その声は届くことはなかった。

 巨大な地響きの音がなった瞬間、爆音とともに岩盤を吹き飛ばし、火柱が上がったのだ。

 その業火に晒されるドロッチェ、カービィ、ぬえ。

 そしてその業火が治る時には、三人は力尽き、爆発で開いた大穴へと落ちていった。

 

「カービィ!」

 

 魔理沙は箒にまたがり、穴に向かって飛ぶ。

 しかし、遅かった。

 魔理沙の眼下にあるのは、どこまでも続く底のない暗闇であった。




カービィ登場でスパッと解決すると思った?

残念! 次の章に続くのです!

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