東方桃玉魔 〜ピンクの悪魔が跳ねる時、幻想郷は恐怖に慄く〜 作:糖分99%
そして見てみれば日間36位という始末。
さらに少し時間を開いて見たら14位に。
……どうしてこうなった!?
おかしい……私個人が好きなもの(東方)と好きなもの(カービィ)をピ○太郎みたく『Oh!』したような私的な作品だというのに……!
なんだろう、凄まじいプレッシャーが……気軽に書けんぞこれ……迂闊に書けんぞこれ……
が、頑張ります
「カービィ! カービィ!」
「出てきなさい、カービィ!」
妖怪の山に響き渡る、二人の少女の声。
そう、霊夢と魔理沙である。
妖怪の山はその名が指し示す通り、妖怪の巣窟と化している。
なので二人の行為は周囲の妖怪を呼び寄せる大変危険な行為である。
だが、霊夢は幻想郷で最も有名、かつ要たる博麗の巫女。到底手出し出来まい。
魔理沙も霊夢と行動を共にするが故に、それ相応に名が広まっている。
名のある強力な妖怪ならば、腕試しに勝負を仕掛けてくることもあるかもしれないが、いずれにせよ、命の危険とは縁遠いものだった。
だからこそ、ここまで大胆な捜索もできる。
「……埒があかない。」
「ん? どうした霊夢?」
「このまま探したって埒があかないって言ってるの!」
霊夢は決して我慢強い性格ではない。
その強さも努力ではなく、天賦の才によるものが強い。
別に血の滲むような努力をして手に入れた力ではなく、それは努力をすればさらなる高みへと登りつめられる事を示していた。
しかし、その日はおそらく来ないだろう。
何せ、今の時点で『間に合っている』のだから。
「一番確実な方法で探すわ。」
「その心は?」
「神霊に聴く。」
「なんだそりゃ。また胡散臭いな。」
「巫女として当然の能力よ。それに、神霊は嘘をつかない。」
「残された足跡も嘘はつかないぜ? ほら、こののっぺりした足跡、間違いなくカービィだ。私は私で地道に探すぜ。」
我慢強いのは、どちらかというと魔理沙だろう。
魔理沙は非才な身であった。
元は商人の娘であり、魔法とは縁遠いものであった。
しかし何を思ったか、彼女は家を飛び出し、血の滲むような努力で今の力を身につけた。
しかし、もとより非才な彼女はこれ以上の力を身につけるのは難しいだろう。
それでも彼女は努力する。
それを美しいとみるか、愚かとみるか。
いずれにせよ、彼女らの生き方の違いは、カービィの捜索方法にも違いが出る。
精神を統一し、神霊の声を聴く霊夢。
足跡を黙々と辿る魔理沙。
やがて魔理沙は、カービィの足跡からあるものを見つけ出す。
「……人の足跡、か。天狗ではないな。」
そこにあるのは、靴を履いた人の足跡。形や大きさかして女性のものだろう。
そこら辺にいる人型の存在といえば天狗と河童だが、天狗は高下駄を履いているので、足跡は横一文字の特徴的なものになるので違うだろう。
とすると、河童の可能性があるが……ほとんどがカービィに気絶させられていたはず。
残っていた河童の可能性もあるが、カービィとその足跡が仲良く歩いているあたり、おそらくは違うだろう。
とすると、妖怪の山に巣食うまた別の存在の可能性が高い。
カービィと正体不明の足跡はしばし続いて行く。
そして、あるところで魔理沙の足が止まった。
「これは確か……厄神の家じゃないか。」
カービィと正体不明の足跡は、迷う事なく厄神、鍵山雛の家へと入っていた。
間違いない。カービィは鍵山雛と遭遇し、共に家に入ったのだ。
そう確信して、さらに詳しく見てみると、今度は家から出て行く足跡も発見する。
それもカービィと人……状況的に雛の足跡。その二人分だ。
そしてその足跡は山頂のあたりへと続いているようだった。
その方角に何があったか、魔理沙はしっかりと覚えている。
なぜそこへ向かっているのかはわからない。
しかし魔理沙の予想が正しいならば、そこは山頂ではなく、山頂へと続く山の中腹にあったはず。
そしてカービィとはぐれた時間を計算してみれば、体の小さなカービィでも既にそこに到着している可能性がある。
「なぜあそこに? いや……確かあいつは、椛の力を持っていたよな……」
椛は千里先を見通す力を持つ。
そしてカービィも、その力を得ている可能性が高い。
一体カービィは、そこで何を見たんだ?
いや、逆か?
何かを見つけるために、そこを見たのか?
カービィは天狗や河童を一通り一掃した後、逃げるようにその場を去った。
しかし思い返せば、何かを追うために急いでいるように見えた。
カービィは幻想郷で何かを探しているのか?
一体、何を?
カービィは……霊夢の予想が正しいなら、あの大結界を破った張本人ということになる。
とすると、カービィはあの大結界を破る能力を持っていたのか?
椛から能力を写し取ったように、外で大結界を破れるような能力を写し取ってやってきたのかもしれない。
そしてその身一つで大結界を破り、山に墜落した。
「……身一つで?」
魔理沙はこの事実に引っかかりを覚えた。
初めてカービィとあった時、何も荷物を持っていなかった。
外から中へ入る。それすなわち、未知の地へと足を踏み入れるということ。
何の目的があったかは知らないが、未知の地へ降り立つのに、何の準備もなく行く者がいるだろうか?
子供っぽいとはいえ、あの戦闘の様子を見れば中々頭は切れる様子。それに気づかないほど馬鹿なようには見えない。
なら、なぜカービィは荷物を持っていなかったのか。
カービィがあの大結界を破った張本人なら、あの様子を思い出すに、かなりの高空から落下したはずだ。
そしてあの輝きの強さから推察するに、破る時に相当な衝撃があったはずだ。
何となく見えてきた。
カービィは空から荷物を落としたのだ。
そしてカービィはそれを探すため、山を駆け回り、紆余曲折あって天狗と衝突した。おそらく、天狗が偶然カービィの落し物を拾い、そして天狗が強情を張って返さなかったのだろう。
その後天狗から落し物を取り返し、残りの落し物の在処を椛の能力で見つけ出した。
そして今、その落し物が、かの場所にある。
「まずい、まずいぜこりゃ。」
連中も中々食えない奴揃いだ。
しかも、変に幻想郷を気に入っているときた。もし、大結界が破られたその光景を目撃していたら、もしその犯人がカービィだと分かったら、何らかのアクションをとるはずだ。
慌てて魔理沙は箒にまたがり、魔力を爆発的に込めることにより、スタートダッシュを決める。
そして高度を上げ、目的地へと一直線に空を駆ける。
「別に助ける義理はないとは思うんだが……手をこまねいて見ているってのも、気分悪いんでな!」
そう独り言を呟きながら、速度を上げる。
しかし……
「っ! ……くっそ、遅かったか!」
魔理沙が唇を噛み、睨む先。
そこには色とりどりの弾幕が飛び交う守矢神社があった。
●○●○●
「ここなの、カービィ?」
「うぃ。」
もぐもぐと雛の家から持ってきたもち米のおにぎりを頬張りながら、カービィは頷く。
カービィと雛がたどり着いた先。
そこは雛が予想した通り、守矢神社であった。
神の一柱たる雛でも、ここに立つとえも言えぬ圧迫感を感じる。
何せ、この神社に住まうのは……
「……あ、カービィ!」
気づけば、カービィはおにぎりを律儀に包みに戻して置き、神社に向かって突っ走っていた。
あまりに、あまりに迂闊な行為だ。
さすがに一般人が来た時、かの者が姿を現すことはない。そこら辺にいる妖怪が近づいた時もほったらかしている。
しかし、強者や異質なモノに関しては、かの者は敏感だ。
そしてカービィは、妖怪とも獣ともつかぬまさに『異質なモノ』。
それのかの者が見逃すはずがない。
カービィを止めんと雛も追う。
しかし、その手がカービィを掴むよりも早く、凄まじい爆音が鳴り響く。
それは、巨大な多角柱……御柱が地面に勢いよく突き立った音であった。
そしてその天辺から、その者はこちらに問いかける。
「そこの桃色。幻想郷に侵入したのは貴様か? 天狗と河童相手に好き勝手やってくれたようじゃないか。」
こちらを見下ろすように御坐すその御姿は、まさに神に相応しい。
紫の髪を短く切り、注連縄を頭と背中に装備し、真紅のドレスの上に輝くは『真澄の鏡』。そして周囲に浮く無数の御柱。
そう、守矢神社が神の一柱、八坂神奈子である。
今回はなんだか魔理沙の名推理?回でしたね。
ここら辺は『鈴奈庵』第6巻を参照にしております。
第6巻の魔理沙は本当に冴え渡っていた……やっぱりあの子努力の人ですわ。