仮面ライダーアギト~The under Ground~ 作:龍騎鯖威武
気がつくと、彼は生活していた。
まるで、それがずっと続いていたように。生活の全てが理解できていた。
だが…過去が分からない。どこで生まれ、どこで育ち、どのように生きてきたのか。
彼の名は「ヒカル」。
この物語の主軸だ。
彼は生活を本能的なものにより、理解できていた。
種を植えると、野菜が育ち、果物が育つ。それらを採り、調理して食す。栄養が体に満ち、生きる活力となる。そうして人は生きていく。
それらは理解できていた。
それだけで充分であった。
なのに…。
「ヒカル!」
ここ最近、小さな少女がよく現れては、ヒカルに突っかかる。
彼にとって少女「シエル・メサイア」は、静かな空間に鳴り響く雑音だ。
「ほら、こんなところ引きこもってちゃダメよ!」
「…うん」
適当に返す。だが、その後に失敗だった事に気づき後悔した。
「もぉ…また上の空!このアンダーグラウンドも結構、良い所なんだから、外に出てみようよ!」
「あ…!」
野菜の水やりも中途半端であったのに、彼女の言葉には勝てず、手を引かれた。
彼が記憶を失って以来「空」というものを見ていない。
ここは「アンダーグラウンド」と呼ばれる、地下世界だ。以前は「公司」と呼ばれる組織が居たらしいが、今はほぼ壊滅。現状は平穏そのものらしい。
別の場所。
「ここね…地下世界」
二人の黒服の男女が地下に訪問する。傍らには巨大なトレーラーがある。
彼らの名は「歌葺陽太郎」と「八代愛華」。政府の要人である
「…せっかくの休暇だってぇのに、こんな場所で調査するって言うのかよ…」
陽太郎は意気消沈状態。なにせ、彼の役職的に休みは少ない。貴重な休みを奪われた上に、こんな重苦しい世界の調査を任されたからだ。
「はいはい、黙ってなさい!Gトレーラーに乗り込むわよ。外の酸素状態の確認が出来れば、あまり出なくてよろしい!なにせ、あなたはG3の貴重な装着員であり、わたしの唯一無二のパートナーであるの!」
「了解しました…」
早速、トレーラーに乗り込み、進行を再開した。
緑色のバイクをふかし、地下世界を自由気ままに移動している男が居た。
彼の名は「シハ」。
親なし、恋人なし、友なし、知り合いなし、荷物なし。
何も持たない自由人である。
だが…彼の体はそうも行かなかった。
「あぁ…また老化か…」
グローブを外して手を見つめると、まるで老人のようにシワだらけになっている。
これは彼の体に起こった現象による拒絶反応だ。
その形から、本人は「老化」と呼んでいる。
「だがまぁ…こんな楽しい生活は、これが無きゃ得られなかったしなぁ…悩みどころといったところか…」
彼は老化に対して嫌悪感も示しているが、同時に致し方ないと受け入れる様子も見受けられる。
その痛みに変えても、彼にとって得なものが存在するようだ。
そんな世界を傍観している青年が居た。
「…異物というものを隔離すれば、そこに異物が溜まる。浄化を始めるのが遅すぎたようですね」
彼は焦るような言葉を言うが、口調は全く焦っているようには聞こえない。落ち着き払った声だ。
彼の名は「トーマ」。
この世界における「神」と等しき存在である。
「まずは…貴方から、お願いできますか?」
後ろを見ると、そこに居たのは異形の存在。
アンノウンのジャガーロードが軽く頷いた。
「人とは、始祖の支配者を決める争いで勝ち残った私の子。神の祝福を受けた子を殺すというのは…悲しいものですね」
傍観し続ける青年は、無感情な様子で呟く。
「ですが…責めて愛せるうちに」
ふと、ヒカルは立ち止まる。
「どしたの?」
シエルが気になって尋ねてみると、ヒカルは崩れ落ち、頭を抱え始めた。
「ヒカル!?」
「…!」
頭痛だ。だが、倒れたり気を失うような激痛ではない。なぜか体から力が抜け倒れたのだ。
「…治った」
すぐに頭痛は治まる。
それと同時に…。
シィン…!
何かがヒカルの脳裏をよぎる。
表現する事は難しい。脳内で映像や音が再生されたわけではない。
ただ、行かなければならないという、強い感情に揺り動かされたといったようなところか。
「行かなくちゃ…!」
「ちょっと、どこに!?」
突如走り始めたヒカル。その速度は信じられないほど速く、シエルはすぐに見失ってしまった。
ジャガーロードは一つの目的を決めて、歩き続けている。
人の域を超えた人の抹殺という目的のため。
そこに…。
「ム…?」
ヒカルがやってきた。あれだけの速度で走ったというのに、息切れも無い。
彼は、頭の中で流れる感覚を頼りに構える。
すると、腰に赤いベルトと金色の石が埋め込まれた「オルタリング」が出現する。
「ハァァァァァァァ…」
ゆっくりと右腕を前に突き出し…。
「…変身!!」
そう叫んで、両サイドバックルを叩く。
彼の体は見る見る、金色の光に包まれる。
「…アギト…!」
ジャガーロードは忌々しそうに呟く。
光が消えると、ヒカルの体は人のものではなくなっていた。
金色の角と鎧、赤い瞳に黒い肌。
「仮面ライダーアギト」の誕生である。
「…アギトォッ…!」
「フンッ!」
さらに呟くジャガーロードに対し、アギトGFは構えながらゆっくりと動く。
まるで、長い間戦っている歴戦の戦士のような動きだ。
「グオオオオォッ!!」
「タアアァッ!!」
ドゴッ!!
ジャガーロードが襲い掛かるも、アギトGFは全く焦る事も無く避け、避ける際に敵の鳩尾に拳を叩き込んだ。
その威力は豪胆にして強力。ジャガーロードは腹を抑えて倒れこんだ。
「グウゥッ…!」
劣勢を感じてか、ジャガーロードは赤と青のジャガーロードを呼び出した。
3対1。
非常に不利である。
「フンッ…!」
少し離れた場所で、それを目撃した者が居た。
陽太郎と愛華である。
「あれは…。陽太郎、さっそくG3の力を見せ付けるときよ!」
「どっちの味方をするんだよ!?」
GトレーラーでG3装着の準備を始めながら、陽太郎は聞く。
「こういうときは、不利でヒーローっぽい方に味方すると道理は決まってるの!あの金色の角の味方をするわよ!」
「…本当に調査は大丈夫か…?」
小さく呟きながら、G3のスーツを着込み、各部位の鎧を装着していく。
そしてメットを装着し、形を整える。
「ちょっとブカブカなんだが…」
「オートフィット機能が付くまで、それで我慢して!GM-01も解除しておくわ!さぁG3!出動!」
さらに別の場所で、シハがアギトGFの戦いを見ていた。
「おぉ!お仲間か!」
彼はアギトGFを見るなり、嬉しそうに呟く。
「だが、多勢に無勢…。ここはひとまず、助太刀か?」
立ち上がり、腕をクロスさせて開く。その途端、シハのおちゃらけた様子から一転、鋭い目つきに変わる。
「変身ッ!!」
彼の隣に緑色の異形が現れる。そしてシハがどんどん消えていく。
シハは変身したのだ…「仮面ライダーギルス」へと。
「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!!!」
「クッ…!」
防戦に持ち込まれたアギトGF。なんとか反撃のチャンスを試みようとするが、相手は3体。どれかに集中すれば、別の固体から攻撃を受ける。戦法は残されていない。
そこに…。
ダァンッ!
「グウッ!?」
銃声が聞こえ、一体のジャガーロードが後退した。
「…?」
後ろを振り返ると、青い鎧をつけた戦士「仮面ライダーG3」が立っていた。
その右手には「GM-01・スコーピオン」が握られている。
「よぉ!手助けしてやるからよ!ありがたく思えよな!」
「…!」
どうやら、味方らしい。友好的な様子から、力を貸してくれるようだ。軽く頷く。
「グルゥ…!」
忌々しそうにジャガーロードが唸る。
さらに新手が現れた。
「ウオオオオオオオォゥッ!!!」
ドガアアアァッ!!
その者は青いジャガーロードに飛び掛り、地面に叩きつける。土が強く抉られる。
「ウガアアアアアアアアアアアアァッ!!!」
そこからジャンプしながら離れて距離を置き、アギトGFとG3の傍らに立つ。
「…仲間よ、力を貸す!」
彼も味方と判断し、アギトGF、G3、ギルスの3体が、ジャガーロードたちの前に立つ。
まるで雄雄しき戦士だ。
その姿に、ジャガーロード達は恐れおののく。
そして、動き出した。
『陽太郎!GG-02、使用許可!一気に片付けなさい!』
ギルスの踵から突起物が生え、G3はGM-01に追加パーツを組み合わせ「GG-02・サラマンダー」を組み立てて構える。
アギトGFのクロスホーンは2本から6本へと展開され、ゆっくりと構える。すると、彼の足元にアギトの顔を模したような紋章が現れる。
「ハアアアアアアアァッ…!」
「くらえ、この豹がぁ!!」
「ウオオオオォゥ!!」
ドォンッ!!!ガッ!!!
G3はGG-O2のグレネードランチャーを発射し、ジャガーロードの胸に命中する。
「ウゴオオォッ!?」
ギルスは踵をジャガーロードに突きたて、アギトGFは地面を強く蹴る。
「タアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!」
「ヴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!」
アギトGFのライダーキックと、ギルスのギルスヒールクロウが2体のジャガーロードに突き立てられた。
ドガアアアアアアアアアァッ!!!
ギルスとアギトGFは、敵を蹴った後、距離を置いてゆっくりと佇む。
すると3体のジャガーロードの頭上に、光の輪「エンジェルハイロゥ」が現れる。
アンノウンの死が訪れる瞬間だ。
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオォンッ!!!
大きな爆発が起こり、ジャガーロード達は跡形も無く消え去ってしまった。
爆発の音を聞きつけ、シエルがやってきた。
「あれは…!?」
目の前に居るのは、3人の仮面ライダー。アギト、G3、ギルスだ。
うちのG3は通信機に手を当てる。
「目標は撃破。これよりGトレーラーへ戻る」
通信を終えると、少し離れた場所に止めていた「ガードチェイサー」に跨り、どこかへと走り去っていった。
ギルスはアギトGFの肩に手を置いて言う。
「またどこかで会おうな。おれ達は同種だ」
短くそう伝えると、地面を蹴って飛び去った。
その場所に…。
「なんだよ、あれ…!?」
ある一人の少年「テイル・アシュフォード」がいることも知らずに。
残されたのは、アギトGFとシエル。
ずっと長い間、沈黙を続けていた2人。
それが1分なのか1時間なのか、分からなくなるほど長く感じられた。
しばらくして、アギトGFは踵を返して歩き去る。
「まちなさいよ!あなたは誰!?」
アギトGFはその質問には答えず、暗がりへと消えていった。
トーマはその様子を遠くから見ていた。
「彼らではダメでしたね…。しかし、これで諦めるわけにはいきません。アギトの誕生をこれ以上、増やさないためにも…」
自分の手下が敗れたというのに、まったく表情も口調も変えず、淡々と喋り続けていた。
続く…。
次回!
地下世界で、そんな事があったのか!
あんた…あの緑のヤツだろ?
G3に練氣銃の技術を取り込むわよ!
これ…アギトっていうのか…
エル達には…まだ早いですね。
第2話「運命の強制」
目覚めよ、その魂!
キャスト
ヒカル=仮面ライダーアギト
歌葺陽太郎=仮面ライダーG3
シハ=仮面ライダーギルス
シエル・メサイア
テイル・アシュフォード
八代愛華
トーマ=オーヴァーロード
あとがき
始めました!如何でしたか?
アギトといえば、3人のライダーの物語が主軸になってます。今回も、この3人が物語の中心になっていけるようにがんばっていきます!
さて、次回は翆が登場します!物語も早いうちに動かさないといけませんね…。
それでは!