仮面ライダーアギト~The under Ground~   作:龍騎鯖威武

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第3話「曖昧な記憶」

 

 

「フンッ!タァッ!」

アギトGFは靄がかかったような意識の中で、目の前にいる少女シエルに拳を繰り出す。

「やめて!わたし、あなたとは戦いたくない!」

それらをシエルは軽い身のこなしで避けていくが、心は焦っていた。

先ほどまで味方のような雰囲気であったアギトが、唐突に襲い掛かってきたのだから。

「ハアアッ!」

ガッ!!

「ああっ!」

遂に、避けきれなかった蹴りを受けるシエル。直撃ではなかったのが幸いだ。

たとえ能力者といえども肉体は人間に変わりは無い。下手に攻撃を受ければ、命に関わるだろう。今のアギトGFにはそれほどの攻撃力が備わっているのだ。

「うっ…く…あ、アギト…!」

シエルは、蹴りを受けた左腕を庇いつつ、アギトGFの名を呼ぶ。

それに対し、アギトGFは威圧感を放ちながらゆっくりと迫る。

右手を握り、振り上げる。

「…っ!」

シエルは目を閉じて顔を背ける。

その瞬間…。

 

「ウ…グアァ…!?」

 

アギトGFは頭を抱え始めた。今度は明確な痛みを伴っているようだ。

その痛みか本人の意思か、彼は正気を取り戻した。

目の前には、地面に膝をついている顔を良く知った少女。

それを見た後、彼は自分の手を見つめる。

「…」

顔をゆっくりと左右に振り、両手を握り締めながら歩き去っていく。

「待って…!」

シエルが呼び止めるも、アギトGFは立ち止まろうとしない。

「待ってよ!!」

痛む体を抑えながら立ち上がり、アギトGFの手を握って引き止めた。

「…!」

少しだけ驚いた様子で、アギトGFはシエルを見つめた。

「あなたは誰なの…?教えて」

シエルは彼の正体がどうしても知りたい。なぜかと言っても、それに対しての明確な答えが無い。

それでも、知りたいのだ。

人は生まれながらにして、知る事を欲する。そういうことにルーツがあるのかもしれない。

だが、アギトGFはその手をゆっくりと離し、再び踵を返して歩き去っていった。

 

 

 

少しだけ離れた場所でアギトGFは変身を解除し、ヒカルの姿に戻る。

「なんだったんだろう…あの光景は…」

ふと浮かび上がった映像。

シエルが彼に雷の攻撃を与えようとする姿。

「あの娘は…僕を殺すために近づいているのかな…」

あの光景が真実であるとするなら、導かれる答えは自然とそうなってしまう。

「やっぱり…要らない。いや…それどころか…」

不明瞭ではあるが、自分の持つ記憶から見えた手がかりを知り…。

 

 

 

シエルに敵意を抱く事になった。

 

 

 

シハは先ほどからずっとテイルから逃げようとしているが、どうしようもない。

「参ったな…あの水坊主…」

テイルの言葉は、明確ではない言葉が多すぎる。だが、それはいずれ明かしていけば良い。

それに、彼が自分を頼ってくれるのに悪い気はしなかった。

問題は、彼の能力だ。水を操る力を兼ね備えている。

シハにとって、それはかなり困った要素なのだ。

 

何を隠そう、シハは水が大の苦手である。

 

そんな水を使うテイルがそばにいるなど、耐えられそうも無い。彼に説明するにも、格好がつかなくてどうにも出来ない。

プライドを捨てたくないシハにとって、これは八方塞がりな状況であった。

何とか思いついた苦肉の策。

「おい、水坊主。こういう条件はどうだ?」

「何だよ?」

「お互いのプライバシーを尊重し、常に一緒じゃない。必要なときのみ、一緒に行動する」

「別に、離れなくてもいいだろ?」

想定した答えが返ってきた。だが本当のことは言えない。

「おれが困るんだ。受け入れられないなら、拒否だ」

「せっかく協力関係になっても、近くに居なきゃいざって時に…」

「なら拒否。じゃあな…ぐぅっ!?」

彼の前から消えようと策を練っていたシハは、突如、腕を押さえて苦しむ。

テイルはその腕を見て息をのんだ。まるで老人のようにシワだらけになっていたのだ。

「おい、あんた…」

「これか…?…まぁ、代償とでも言っておくか。ギルスの力の…」

苦しんでいるはずなのに、彼には余裕を感じられた。シハは脂汗を額に浮かべながら、笑っているのだ。

テイルには、彼のその表情が狂気にも取れた。

シハならば、あの怪物達を圧倒できる。これほどの男なのだから。

「やっぱ、只者じゃないな…あんた…」

テイルは、シハの姿にますます興味を抱く事となった。

「それは言えるかもな。だが、褒めても何も出ないぞ!」

言うが速いか、シハはテイルをおいて走り去った。

「あ、待て!」

 

 

 

とある古びたラボのような場所で機械をいじっているのは、翠と愛華である。

目的は、G3システムの強化だ。

「火炎系は、空気に触れると爆発する要領で作っています」

「科学燃料と似てるわね。この水流系や凍結系も気になるけれど…」

「GM-01に搭載するには、質量的に難しいかもしれませんね…。既に強力な弾丸を撃てるように、基盤が詰まっていますから…」

いろいろと案を出し合ったり、不安点の解消に努めたりしているようだ。

その間、陽太郎はテツの相手をしている。

「陽兄ちゃん!こっちこっち!」

「おうおう…!まったく、あのガキ共の前でも、このくらい振舞えよな」

ぶつぶつと呟きながらも、テツの遊びに付き合うあたり、やはり放って置けないのだろう。

自身の過去と重なるからだ。

「そういえば、あのときのペンダント。あれは何なんだ?」

「これのこと?」

首につけていた金色のペンダント。かなりキズや擦れがあり、相当古いものであることは理解できた。

「これ、気がついたときから持ってるんだ。翠兄ちゃんが赤ちゃんだったころのぼくを見つけたときから持ってたんだって」

「ありがちな話だな。大切なものか?」

テツの首から下がっているそのペンダントを弄りながら問う。

「よくわかんない。でも、もってないといけない気がするんだ」

「あっそ」

聞きたいことを聞くだけ聞いた後、適当に返事をしてテツの背中を押す。

「ほら、さっさと遊ばないと、メシまで遊ぶ時間が減るぞ」

「うんっ!」

テツは笑顔になって振り返り、再び陽太郎の手を握ったとき…。

 

「ウウウウゥ…!」

 

トータスロードが再び現れた。どうやら、先ほど逃がした者とは違い、金色の姿をしている。

「うわっ!またあの怪物…!?」

「逃げるぞ!G3無しじゃ、あいつらには太刀打ち出来ん!」

テツを抱えて、全力疾走する陽太郎。彼は運動神経がかなり高く、テツの手を引いて走るよりはこのほうがずっと早いと考えたのだ。

「逃げろ逃げろ逃げろ!!」

何度も言いながら走るが、トータスロードも人間などの能力とは大違いだ。どんどん距離が縮まる。

 

「変身っ!!」

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオォッ!!」

「ウガアアァッ!?」

ふと声が聞こえ、近くからギルスが飛び出し、トータスロードに掴みかかって投げ飛ばした。

「あれ、なに!?」

「あのときのミドリムシか…!とりあえず、あいつに任せる!」

様子を確認した後、すぐにラボまでの走りを進めた。

ギルスはそれを見送ると、トータスロードを睨んだ。

「よぉ、悪趣味な金色の亀さん。おれが相手だ!!ガアアアアアアアアアアアアアァッ!!」

 

 

 

ヒカルは家に帰り、野菜の栽培を再開していた。

「…この調子なら、今週中に収穫できるのかな」

全ての野菜は瑞々しく大きく、そしてなんとも美味しそうに成長していた。食べるのが楽しみである。

ふと…。

「う…うぅ…ヒカル…」

左腕を抱えて苦しそうにしているシエルが帰ってきた。

しかし、先ほどの事もあり、ヒカルはそれを見ると興味を持たないようにすぐに視線を野菜に向けた。

「帰って。さっき言ったでしょ」

冷たい一言を浴びせた。

こうすれば帰ってくれる。いつか倒さねばならないが、ここまで弱っていれば、それはいつかでも良いだろう。

今のヒカルは、そこまで冷酷な考え方をしているのだ。

「…うっ…ひぅっ…」

まだ離れないようで、声を漏らし続けるシエルに苛立ちを感じ振り返るヒカル。

「君は僕に近寄らないで…!!!」

怒鳴ろうとした瞬間、言葉が途中で喉に詰まった。

 

シエルは泣いていた。

 

いつもは天真爛漫といった少女であり、暗い性格のヒカルを外に連れ出そうと促す彼女が、年相応の子供のように涙を流している。

その姿を見たヒカルは…。

「…え?なんで泣いてるの?」

敵と認識したはずの彼女の様子に挙動不審になり、その理由を尋ねる。

「い、痛いの?」

その質問に対する答えは、首を左右に振るという形で返事をした。痛いことが理由ではないらしい。

「…い、家に行こう。ね?」

「ぐす…うぅ…」

彼女の肩をやさしく持って、家に入れた。

「(何やってんだろう…僕…)」

家のベッドにシエルを寝かせると、栽培した薬草などの液を染み込ませた湿布、包帯などを持ち、シエルの左腕の応急処置を始めた。

彼自身も、野菜の栽培中に怪我をすることはよくあり、治療などの技術もある程度は身についているのだ。

「ヒカル…」

「今回だけだよ。君の事はまだ嫌いだし、あのことも許してないから…!」

あの事というのは、ヒカルのときの事とアギトのときの事。それぞれ二つある。

一つは自分の心の癒しになってくれそうな犬を追い払った事。もう一つは記憶の中で自分に襲い掛かろうとしていた事。

アギトとしての事については、彼女に正体を隠しているために責められないが、犬の件は十分に責める事ができる。

「…ごめんね…」

「謝ったって許さない。治ったらすぐに出て行ってよ」

処置を終えると、ヒカルは近くに飲料用の水を置き、野菜の栽培に戻った。

そのとき…。

 

シィン…!!

 

脳の中で再び、何かがよぎる。

「敵だ…!」

ヒカルはそう呟いて栽培道具をかなぐり捨て、一目散に走っていった。

そのときの音を聞き、体をよろつかせながら外の様子を見ていたシエル。

「ヒカル…」

 

 

 

「ガアァッ!!ウワァッ!!」

ガギィッ!!ザァッ!!

ギルスの戦い方は野獣そのものであった。殴り蹴りだけに留まらず、爪で切り裂き、噛み付き、引き千切る。

野性の本能を惜しげもなく戦闘に向けている。トータスロードはほぼされるがままであった。

そこに…。

「待たせたなぁっ!!」

ガードチェイサーに乗って現れたのはG3だ。さまざまな武装をある程度改造した。まだ完全ではないが。

「愛華!」

【GM-01・フリーズ、使用許可!】

それとともに、GM-01がロック解除される。右手にとって構えると、銃口から冷気のようなものが漏れる。

「新技、食らえ!!」

バシュッ!!

「グッ!?」

青の弾丸がトータスロードに当たった途端、その体は見る見る氷漬けになっていく。それに気づいたギルスはとっさに離れた。

「よっしゃ!トドメは…!」

 

「タアアアアアアァッ!!」

 

背後からアギトGFがライダーキックの体勢でトータスロードに突進していった。

ドガアアアアアァッ!!

その蹴りは強くトータスロードに突きたてられた。

頭上にエンジェル・ハイロゥが浮かび…。

ドゴオオオオオオオオォッ!!!

大爆発を呼んだ。

「あぁっ!トドメ取られた!」

ギルスは不満そうにトドメを決めたアギトGFを見つめる。

「おい同類!トドメが一番肝心だってぇのに、横取りすんな!!」

獲物を取られたのが悔しいのか、アギトGFの胸倉を掴んで噛み付くように言うギルス。

だが、アギトGFは何も答えない。沈黙を保っている。

「なんか言えよ」

アギトGFはギルスの腕をゆっくりと離し、歩き去っていく。

「…同類、ちょっとまった!」

ギルスが呼び止めると、アギトGFは立ち止まった。

「この際こんな揉め事を回避するためにも、顔を明かしあおうぜ。境遇は似てるから良いだろ?」

そういうなり、ギルスは変身をとく。

G3とアギトGFは少し驚く。あんな野獣的な動きで戦う男であるのに、格好は野生的ではない、さわやかな印象のある青年だったのだから。

「おれはシハ、ギルスだ。次はそこの青メカ。顔を見せろよ」

G3は無線で指示を仰ぐ。

「どうするよ、愛華?」

【…いいわ。彼らは味方のようだし。今後協力関係を結べるかもしれないから】

返事に頷き、G3はメットを脱いだ。

そこには、少し目つきの悪い男がいた。だが、性格まで悪いようには見えない。シハはまじまじと見つめた。

「地上から来た、歌葺陽太郎。G3の装着員。よろしく頼む」

「おう、よろしくな。さて、最後は金のクワガタだ」

アギトGFはじっとしたままだった。しかし、思考ではさまざまなことが巡る。

もし顔を晒せば、厄介な事になるかもしれない。だが、彼らと協力関係を深めるならば、戦う機会が減るかもしれない。

結論から変身を解いた。

そこには少年のように幼い顔をした青年が立っていた。どことなく陰のある表情だ。

「僕はヒカル…そしてアギト」

 

 

 

それを遠くから見ていたシエルは目を見開く。

「ヒカルが…アギト…!?」

 

 

 

 

 

 

続く…。

 

 

 

 

 

次回!

 

                           記憶喪失ねぇ…

 

できれば、僕は戦いたくはない。

 

                          じゃあ、今まで戦った理由は?

 

これは、奥が深そうね…

 

                           水のエル…貴方が行きなさい

 

 

第4話「集結する戦士」

 

 

目覚めよ、その魂!

 

 

 




キャスト

ヒカル=仮面ライダーアギト

歌葺陽太郎=仮面ライダーG3

シハ=仮面ライダーギルス

シエル・メサイア
テイル・アシュフォード

八代愛華

テツ




あとがき
いかがでしたか?
いや、スランプ気味で書くのは遅いわ案は浮かばないわ…凹みます…。
ともかく、今回で3人の仮面ライダーが素顔を晒しました。これからは一緒に行動する事が多くなると思います。
次回は、水のエルを動かします。こいつとぶつける相手は…3人の中の一人です!
おたのしみに!
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