仮面ライダーアギト~The under Ground~ 作:龍騎鯖威武
「驚いたなぁ…青メカ…G3だっけ?あの中身がこんなワルっぽい顔の男なんてな。もうちっと誠実な男が出てくると思ったよ」
「こっちの台詞だ。野獣みたいな大男かと思ったら…なんだよ、その無駄にさわやかな顔は」
「妬みか?」
「違う!」
翠の家の机で言い合いをしているのは陽太郎とシハだ。それぞれ、仮面ライダーG3と仮面ライダーギルスであり、つい先ほど顔を見せ合ったのだった。
一緒に座っているヒカルは、全くと言って良いほど黙っていたのだが。というより、関わろうとしていない。
それを見かねたシハがヒカルに声をかけた。
「おい…えっと…ヒカル?」
「…なに?」
「前々からアギトに対して思ったんだけどよ。なんか言えよ。黙り込んでても、誰も何も分かんねぇよ」
シハは彼のような、黙っていれば何とかなると思っているような人間は嫌いである。ともかく、彼自身に人の思いを感じる能力があまりないために、言葉でのコミュニケーションを望んでいるのだ。にも拘らず、ヒカルは黙り込んでいた。
「特に言いたい事もないから…」
「じゃあ、おれの質問には答えられるな?」
「それは…良いけど」
彼らの干渉からは逃げられそうにもない。ヒカルはシハの言葉を受け入れた。
「なら…おまえは何時からアギトになったんだ?」
「君と初めて会ったとき」
「なんだよ、ついさっきじゃないか。おれなんか半年前だぜ?」
以外にも、ヒカルのアギトへの覚醒は半日ほど前の話なのだ。
「わたし達からも質問するわね、ヒカル君。あなたは何故、あの怪物と戦っているの?」
「…分かりません。なんだか戦わなきゃいけない気がするんです。僕自身、ここで生活する前の記憶がなくて…」
つまり、ヒカルは記憶喪失だ。彼が陰のある表情をしているのもそこから来ているのかもしれない。
愛華はあごに手を当てて首をかしげる。
「記憶喪失…思ったより複雑な事情を抱えてそうね、あなた。じゃあシハ君、あなたがギルスになった理由は?」
「おれも急にだったんだよな…。思いつくのは…」
そう言い掛けて、シハは口ごもった。彼のトラウマを呼び起こす事となったのだ。
シハの脳裏に浮かぶのは、大粒の雨が降りしきる夜。現れたのは、青い鯨のような怪人。
その怪人は淡々と告げる。
「御前達は…此処に存在する事は許されない。無意味な力有る者は、排除されるべきだ」
「なんなんだよ…!?」
槍を向けられ、抵抗手段のないシハは怯えきっていた。
「ムンッ!!」
その槍から水流を放つ。
「う、うわああああああああああああああああああぁっ!!!!??」
それに飲まれたシハは、様々な鉱物に体をぶつけて意識を失う。
初めて命の危険を感じた。
そして意識を取り戻したと同時に、シハはギルスの力を手に入れていた。
「…シハ君?」
「…やっぱない」
頭を振って、愛華の先の質問を否定した。答えれば、弱みを見せてしまう事になる。
自分の素顔はかまわないが、弱点をさらけ出す事が良い事とは思えない。そうであるとすれば、心から信頼している友か、心から愛する者に打ち明けるときのみ。
今のシハにそんな者は一人としていない。
「記憶喪失のアギトに、いつ力を手に入れたかわからないギルス。…これは奥が深いわね。それに、この地下世界の人間を襲う怪物」
ふと、愛華は怪物の名称を知らない事を思い出した。
その姿は人間の窺知し難い、動物と人を混ぜたような異形。アギトやギルスにもいえることだが、彼らには愛着が持てる気がした。
「アンノウン…とでも言うべきね」
愛華が決めた怪物の名称。
Unknown…直訳すれば「未知」「不明」等の意味を含んでいる。
何者なのか分からない怪人を呼ぶに相応しい名称であった。
「とにかく、彼らの正体も真の目的も分からない今、陽太郎、ヒカル君、シハ君の3人は協力し合って、アンノウンを退治する事」
「あの…その事なんですけど…」
ヒカルは申し訳なさそうに口を挟む。
「何?」
「その…僕、出来れば戦いたくはないんです」
以外だった。その証拠にここにいる全員が驚いた表情に変わる。
おそらくアギトはこの3人の中でも、特に強力な存在だ。姿を自在に変化でき、技も華麗であり、なによりも決定打が大きい。あのライダーキックを超える威力を持つ者は、現時点ではいない。
その彼が戦いを拒絶しているのだから。
「どうして戦いたくないの?」
「戦っても、何も得られないんです。最初は戦っていれば何か意味が見つかると思ってました。でも、何も見つからない。だから…」
「甘ったれたヤツだったんだな、アギトは」
口を開いたのは陽太郎だ。その表情は目つきが悪いがためにより威圧感のある表情となっている。
「おまえ、一番強かったから羨ましかったんだがな…。そんなシケたヤツじゃ…幻滅だ」
陽太郎は、アギトの強さに驚愕するとともに、さまざまな人々の助力がなくとも単独でこれだけ強い力を持つ彼に微かながら憧れを抱いていた。そんなヒカルがこのような考え方をしていたという事を知れば、すくなからず陽太郎はショックを受けたのだ。
「もう良い。G3システムとギルスでアンノウンは倒せる。おまえは引っ込んでいろ」
「ちょっと陽太郎!」「わ…陽兄ちゃん…!」
陽太郎はテツを連れて、どこかへと歩き去った。
「アギトとギルスは人と手を組む様子ですね。これ以上の傍観は危険です…」
トーマは後ろを見つめる。すると青い光が人らしき形を創り出し、鯨の姿をした怪人に変化する。シハの記憶の中にいる怪人と全く同じ姿だ。
「行きなさい。水のエル」
その後、済し崩し的に解散となりヒカルは帰路へとついた。
目の前に…。
「ヒカル…」
シエルが立っていた。
「…」
無言でシエルを少し睨んだ後、ヒカルは通り過ぎようとする。
「…ヒカルが…アギトだったのね」
その言葉で立ち止まった。
おそらく、先の話を聞かれたか変身を介助するところを目撃されたかのどちらかだ。結局、彼女にもアギトの正体が明かされてしまった。
「黙ってたのが、嫌だったの?」
「違うわ。…どうして、わたしに襲い掛かってきたの?」
返された質問はある程度は想像できた。相手は何もわからないような挙動をしていた事をおぼろげながら覚えている。
「君自身が一番分かってるはずだよ」
「分からないから聞いてるの!」
シエルは少し苛立ち気味に反論する。だが、それがマズかった事に気づき口を手で覆った。
それを見ていたヒカルはやはり睨む事をやめない。
「…僕、ほんの少しだけ記憶が戻った」
「え…!?」
その言葉にシエルは目を見開く。
「記憶の映像の中に、君が僕に襲いかかろうとしていた。君は僕を殺そうとして…」
「違う!」
ヒカルのネガティブな思想に異議を唱える。
「あれは…あのときは…!!!」
どうやら、その瞬間の出来事を彼女は知っているらしい。その真実を彼に伝えようとしたそのとき…。
「御前達はこの世に在ってはならぬ」
二人が振り返ると、水のエルがゆっくりと歩み寄っていた。
体格や声は男そのものだが、身なりはどこと泣く女性を思わせる風貌だ。その姿は何か人間の文化とは違う、べつの英知を感じるものであった。
そして彼が放つその威圧感。ただ歩いてきているのに押しつぶされそうな感覚に陥る。
「あれって…!?」
「アンノウン…!」
ヒカルはとっさに構え、変身しようとする。
しかし…。
「…っ!」
彼はそれをやめると、唐突に走り去った。
理由は先ほどの会話だ。戦っても何も得られないと感じたこと、陽太郎から貶されたショックで、戦いを拒絶したのだ。おそらく、ついさっきのヒカルならば迷いなくアギトになっていたのだろう。
「ひ、ヒカル!?」
水のエルはそれもかまわずに、どんどん歩いてくる。まず標的は、シエルになったようだ。
「シエル・メサイア。御前もこの世には必要ない」
「…ヒカルに手を出すって言うなら、わたしが相手よ!」
手から雷を創り出して威嚇するが、やはり全く反応は得られない。
「…フンッ!!」
右手にあった槍を翳すと、津波が生まれる。
「これは水…。泣き虫テイルや白龍と同じ…!」
その波はシエルに向かって一気に放たれた。
「おい!チビ!」
「えっ!?」
ドオオォッ!!!!
その瞬間G3がガードチェイサーに乗って現れ、シエルを抱きかかえて間一髪のところで津波を避けきった。
「危ねぇだろうが!!逃げろ!!」
「あ、ありがとう…」
戸惑いながらも感謝の言葉を述べるシエル。だが、次の瞬間…。
「そういえばあんた、わたしにチビって言ったわね!!」
「チビにチビって言って何が悪い!?早く逃げ…」
ドゴオオオオオオオォッ!!!
「ぐああああああああああぁっ!!?」「きゃあぁっ!」
言い争いをしているうちに、水のエルがG3に槍を突き立てた。その衝撃で吹き飛ばされるが、G3はシエルを守るように抱きかかえ、彼女は壁への直撃を免れた。
「人間には力を振るうつもりは無い。しかし邪魔をするのであれば、例外とみなす」
水のエルは終始、無感情な口調で呟き続ける。それが恐怖感を煽っているかのようだ。
「大丈夫!?」
「見ろ!!おまえが突っかかるから…あいつつ…」
【陽太郎、聞こえる!?】
通信の機能は破壊されていないようだ。問題なく愛華の劈くような叫び声は聞こえる。
「うっせぇな、聞こえるよ…。それより、損傷状況は?」
気になるのはG3システムがどこまで駆動できるかだ。この状況では一番重要なことになる。駆動できない場合、戦っても勝ち目はない。現在もあるのかはわからないが。
【損傷部は…胸部ユニット損傷率が80%、左腕部ユニット損傷率が45%、バッテリー残量は65%ってところね…まだ戦えそう?】
「ここまで減らされたのは初めてだな…。だが、まだ充分に戦える!」
まだ戦闘不能ではない。シエルを押しのけて立ち上がると両肩を二度ほど回転させる。
【その調子よ。GM-01、アクティブ!同時にGM-01・エレキ、使用許可!】
ガードチェイサーからGM-01を取り出すと、あたりから耳鳴りが起こった。GM-01の電流弾によるものだ。
「水には電気…ポ○モンでそう決まってるんだよ!」
「なに、ポケ○ンって…?」
「気にすんな。喰らえ!!」
ドォンッ!!バリイイィッ!!!
電撃の弾丸は水のエルに直撃し、全身に電流が走る。ダメージとは行かずとも、少しは足止めになるはず。その隙にこの少女を連れて逃げ出す。
そのつもりであったのだが…。
「地上の科学と地下の科学を、融合させたか」
「やっべ!全然、効いてねぇ!?」
全く、意に返していなかった。シエルはそれを見て思い出した。
「やっぱり、白龍と同じだ…!!」
以前、公司で2番目の実力者であった支配者「白龍」は、水の不純物を極限に取り除く事で電気を通さない水を精製して攻撃していた。それゆえに一度は攻撃に敗北を喫した。
だが、それをシエルはさまざまな戦いを通して手に入れた力で破ってもいる。
「あんた…なんて言う名前?」
「歌葺陽太郎、G3だ!」
今は、彼と力を合わせることが得策だろう。
「陽太郎、わたしは電気を操る能力者なの。力を貸して」
「能力者!?マジかよ!?…と、とりあえず信じるからな!!」
G3はシエルの提案に耳を貸し、通信を再び行う。
「GM-01・エレキ、まだ使えるか?」
次は翠が通信を介して返事をした。
【大丈夫です。でも、これが最後の一発。容量的にはこれが限界でした…】
再び、GM-01に電撃弾が装填される。
「一発あれば良い。えっと…チビ」
「シエル・メサイアよ!」
「はいはい、シエルね。合わせろ!」
二人はゆっくりと構える。目の前にいる水のエルは何もせずにじっと見つめている。
「発射!!」「はああぁっ!!!」
バリイイィッ!!!
電撃を纏った弾丸と電撃そのものが合体し、水のエルに向かっていく。
だが…。
「オオオオォッ!!!」
ドガアアアアアアアアァッ!!!
その電撃を受け止め少しだけ怯んだものの、槍の柄でそれを弾いてしまった。
「うそ…!?」「あれもダメなのかよ…!!」
策が尽きた。彼らの考えられる最大の攻撃であったというのに。
その一部始終を近くの物陰で見つめていた者がいた。
先ほど逃げたはずのヒカルである。あの後、気になってもとの場所に戻ってきていたのだ。
「二人とも…」
全ての策が尽きたようで、危機にさらされている。
「でも、二人とも、僕には関係ない…」
そう言って踵を返そうとしたが…。
「僕には…僕には…」
何かが彼を思いとどまらせる。それは…。
「僕には出来ない!!!」
良心だった。
腰にオルタリングが生まれ、構えを取る。
「変身っ!!」
眩い光に包まれてアギトGFとなり、左腰のサイドバックルを叩きながら彼らの元へと急いだ。
「どうする、シエル?」「…逃げるしかないわよ…!」
水のエルには勝ち目がない。ならば逃げるしかないだろう。
だが、彼が逃がしてくれるかどうかも怪しい。
そのとき…。
「ハアアアァッ!!」
青い光に包まれた人影が走ってくる。
「なに?」「あれは…」
その光が消えたとき、現れたのはアギトの新たな形態…。
「仮面ライダーアギトストームフォーム」であった。
「アギトォ…!」
「「ヒカル!」」
両手に構えた「ストームハルバード」を大胆に振り回しながら、アギトSFは水のエルに走り向かった。
「タアアアアァッ!!」
続く…。
次回!
あいつはヤバイぞ…!
トラウマってヤツか…
やっぱり、ヒカル…
あれは、何をしようとしていたの…?
ギルス…私が逃がした唯一の…
第5話「水の悪夢」
目覚めよ、その魂!
キャスト
ヒカル=仮面ライダーアギト
歌葺陽太郎=仮面ライダーG3
シハ=仮面ライダーギルス
シエル・メサイア
テイル・アシュフォード
八代愛華
翠
テツ
エルロード(水のエル)
トーマ=オーヴァーロード
あとがき
いかがでしたか?
今回で、ようやくアギトの基本形態を出し尽くす事が出来ました…!
さらに水のエルが動き出します。これから、一般レベルのアンノウンは出すかな…。
次回はギルスと水のエルとの対面です。ギルスと水のエルが因縁関係にしようと思ってます!
お楽しみに!