仮面ライダーアギト~The under Ground~   作:龍騎鯖威武

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第6話「壊れる象徴」

 

 

 

 

水のエルが振り上げた槍。

それはギルス目掛けて振り下ろされた。

テイルはヤケクソで…。

「…こんのおおおおおおおおおおおおぉっ!!」

水流を放つ。だが、水のエルは少し反応した程度で全く意に返していなかった。

水のエルはじっとテイルを見つめ…。

「御前の始末は…」

ドスッ!!!

「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!」

「この者の後だ」

劈くような絶叫。ギルスの腹部に槍が貫通していた。その槍と傷口の間からは、大量の血液が滝のように流れている。

ギルス自身も傷口の辺りから、焼けるような痛みを感じていた。

「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!」

痛みのあまりに上げる悲鳴。それは痛々しいものであり、テイルは不意に目を逸らしてしまった。

「…生命力が高まっている。槍の一突きでは死なぬか」

水のエルは感心したように呟く。実際、彼のこの行動はあわよくばギルスを葬るための一撃であったが、同時にギルスの生命力がどれだけのモノなのかを理解するために放った一撃でもあった。

結果的にギルスはこの一撃では死に至らず、ダメージを追う程度で済んだ。

それゆえに、痛みは尋常なものではない。ある意味、死よりも苦しいモノだ。

「だが幾度も攻撃を受ければ、その命も絶やす事になるだろう」

水のエルはトドメをさすつもりだ。その証拠に槍の先は心臓を狙っている。ここに突き刺さってしまえば、血液を循環させる期間を損失し、死に至ってしまう。

テイルは水流が効かないことを悟っているため、打開策を必死に探る。

それは…。

「ギルス!!」

バシャアアアアアアァッ!!

ギルスと自分を水流によって、どこかに流してしまう事だ。何処に向かうかはテイル本人でも分からない。水の流れが何処で止まるかは分からないのだ。

ギルスにとって水は恐怖の対象であったが、今は水よりも、水のエルが恐ろしい上に、痛みで意識が乱れている。この水に反応する事はなかった。

水のエルが反応を遅らせてた事が幸いし、逃げることに成功した。

「…フン」

追うことが叶わなかったものの、水のエルは鼻で彼らを笑い、姿を消した。

 

 

 

「おい、しっかりしろよ…!」

「う…うぐぁ…」

シハを担ぎ、なんとか歩いていくテイル。腹部からはおびただしい量の血が噴出している。

このままでは失血死してしまうかもしれない。

実際には、ギルスになっているために治癒力が高い。この程度で死に至ることは無いのだが、そんな事を知らないテイルは、彼を案じていた。

最初は彼の力を利用しようと思っていただけであったが、あの姿を見て何かが心揺れたのだ。

命が失われようとした場面。それが目に焼きついて離れない。他者の命が消える事に恐怖を感じた。

そこに…。

 

 

 

「あ…あんた!!」

 

 

 

見覚えのある少女がいた。

「泣き虫テイル!」「シエル!?」

シエルだった。隣にはおとなしそうにする青年が立っている。テイルは知らないが彼はアギトであるヒカルだ。

「その人…シハじゃないの!?」「シハさん…!」

シハの重傷に気づき、二人はすぐにテイルを手伝う。

「シエル…こいつを知ってるのか?」

「知ってるけど、説明は後!ほら、ヒカル!もっと力入れて抱えて!」

「わ、分かってるよ…!」

 

 

 

数日後。

あれからシハは翠の家に運び込まれ、治療を行っている。この街には医療の知識を持つものが幾人かおり、彼らがそれを職業としている。

ただ、シハの体は普通の人間とは違う。治癒力が高い代わりに治療は困難となっていた。

それでも元は人間だ。少しずつではあるが、シハは回復しつつある。

そして、シエルは久々に再会したテイルに話を聞いていた。

「まさか…あんたが生きていたなんてね…。しかもシハと顔見知りだったとは…」

「シエル、彼を知っているの?」

ヒカルは二人の関係を知らない。気になって話を聞いてみた。

「こいつはテイル・アシュフォード。あたしと同じ、元公司の人間で水使い。公司壊滅の日に瓦礫の中に落ちて行方不明になっていたけど。…今、生きてると分かって、ここにいるって所」

「簡単に死んでたまるかよ」

仲間であるようなのに、テイルは何処かそっけない。あまり良い関係ではないのか…。

「でも、平気そうね。少~しだけ、安心」

「う、うるせぇな…」

どうやら、そうではないらしい。見たところ、腐れ縁という奴だ。喧嘩や言い争いは耐えないが、なんだかんだ言って二人は仲が良い。ヒカルは安堵した。

「…?」

ふと、疑問に感じた。

 

このシエルとテイルの関係が良いと感じ、自分は安堵した。

 

それは何故なのだろうか。もしかすると、自分のことのように感じているのか…。数日前まで毛嫌いしていた彼女のことを…。

だが、嫌な気分ではなかった。むしろ、心が温かい。

もしかすると…これが、自分自身の戦う理由になってくるのかもしれない。

それならば、前のように迷う事は無い。答えはあるのだから。

 

 

 

愛華はG3の修理を続けている。

「あぁもう!派手に壊してくれちゃって!」

「仕方ねぇだろ!あの鯨野郎、滅茶苦茶な強さなんだからよ!!」

隣にいた陽太郎と大喧嘩をしながら、修理を続けるが、未だ完全な修復は出来ていない。

何しろ、水のエルは強敵であった。アギトが助けに来なければ、殺されていたのかもしれない。

「でも…陽太郎が無事なら大丈夫ね」

「あ?」

ボソッと呟いた一言が陽太郎に聞き取られており、その事について本人が聞きなおす。

「勘違いしないでよ!G3を装着できるのは、貴方だけなんだから!」

「どこのツンデレだよ…」

あきれ口調で、彼女の反応に対する感想を述べる陽太郎。

ムスッとした表情のまま、G3の修理とプログラムデータの復旧に急ぐ愛華。

「とりあえず、応急処置完了。それにしても…あのアンノウン、強すぎるわね…。ヒカル君とG3でも駄目だし、シハ君はあの状態じゃ、まだ戦えそうにもないし…」

そう考え、愛華はGトレーラーの奥にある倉庫の扉に手を置く。

「G3じゃ…ダメなのかしら」

「おい、おまえ…」

その倉庫の奥に何があるのか、陽太郎は知っている。

実は、それこそがG3システム最強の切り札である。陽太郎もそれを使う事を望んでいたが、愛華は断固拒否した。

密かに立てていた計画「PROJECT-G4」。そのスーツだ。

「でも、これは使わせたくないの。これを使ったら…」

「おれが死ぬかもしれないってか?」

試験装着でスーツを着込んだ際、陽太郎はそのスーツの絶大なパワーで危うく死に掛けた。

それ以来、そのスーツは愛華からこう呼ばれている。

 

「汚点」

 

人を守るモノが、命を奪うものなど、そんな事があってはならない。

故に、自分の開発したスーツのなかで最大の失敗作だと断言していた。

ふと、Gトレーラーの扉が叩かれる。開けると、翠とテツがやってきた。

「大変です!あのアンノウンが…」「ここに来るよ!」

どうやら、シハが嗅ぎ付けられたらしい。

「でも、今行っても…G3は…」

G3では勝ち目が無い事は重々承知だ。ヒカルことアギトの手を借りても勝てるかどうかは分からない。

ふと、振り返ると…。

「陽太郎…?」

陽太郎はスーツを着込み、G3のアーマーを自分で装着していた。

「無茶よ!今、G3を出したら…!」

「黙ってろってのか?大体、これはおまえの傑作の一つなんだろ。なら大丈夫だ」

愛華の静止も聞かず、陽太郎はメットまで装着してしまった。

「やめなさい!それに応急処置だけなのよ!いま、動いたら絶対に壊れるし、貴方の身も…!」

「ちったぁ、自分の相棒と作品を信じろ。G3システム、私用で出動!」

ガードチェイサーのリモコンでハッチを開け、勝手に走っていってしまった。

「陽太郎…!」

「…とにかく、ヒカル君に伝えます!」

翠はどうしようも出来ず、自分の出来うる手段である練氣銃を持ち、ヒカルの助けを呼びにテツと共に向かった。

 

 

 

水のエルの向かう先は一つ。翠の家だ。

あそこにはアギトとギルス、そして能力者が2人もいる。彼らのたまり場となっているために、水のエルは直接攻め込む事にしたのだ。

「よう、鯨野郎」

その声と共に、近くにあった建物の壁からG3がやってきた。

「…本調子でもないのに、私に挑むか?」

「そうでもしなきゃ、あのヒカルたちを殺すんだろ?そりゃぁ、挑むさ」

GM-01を構えながらGG-02を組み立て、それを水のエルに向ける。

やはり水のエルは動じない。それどころか特に止まる事も無く、目的地に向かって歩みを進めている。G3のことなどまるで興味が無いようだ。

「…気に入らねぇな、その感じ。おれは、アウト・オブ・眼中ってか」

「御前は能力者ではない。本来ならば抹殺対象外だ。例外はあるが、不必要に傷つけることは無いのだ」

彼の目的は未だ明確ではない。答えてくれないかもしれないが、駄目元でたずねてみた。

「なんのために、アギト達を殺す?」

「…例を挙げよう」

水のエルは杖を地面に突き刺し、G3の質問に答える事にした。

「御前達が「ガーデニング」と呼ぶモノを行う際、植木を美しく保つためにどうする?」

「そりゃあ…水やりとか、肥料を与えたりとか…」

思いつくことを挙げていたG3はあることに気づいた。

植木を美しく保つために行っている重要な事。

 

除草作業だ。

 

つまり、人間が人間以上の力を持ったものが雑草とたとえるならば…。

「もしかして、能力者みたいな人間を突飛した輩を…!?」

「我々の「親」は、人を愛している。だが愛するが故に「親」は自らの手を離れ過ぎた成長を望んではおらぬのだ」

どうやらアンノウンの行動原理は、人間が人間のままであるためらしい。

だが、そういう理由で命を奪う事はG3にとっては理不尽極まりない事だと感じた。

「あんた達の考え方、おれは気に入らない。やっぱ倒す!!!」

ドオオォッ!!

言うが早いかグレネードランチャーを発砲し、水のエルに攻撃を与える。

だが、水のエルはそれを受けてもまるで反応が無い。

「クソっ!頑丈すぎるだろうが…!!」

「神の御許に在る者にとって、御前達の技術などその程度だということだ」

ドガアアアアアアァッ!!

「ぐあああああぁっ!!」

淡々と言いながら、槍をG3に突き刺す。火花を散らして吹き飛ぶ最中、陽太郎の耳は金属がぶつかり続ける音が支配する。

「やっぱ応急処置らしいな…もう限界か…!」

 

「変身っ!」

 

その声と共に、アギトGFが走ってくる。クロスホーンは既に展開している。

彼は翠からこのことを聞き、いち早く駆けつけたのだ。

「ヒカル!」

「フンッ!タアアアアアァッ!!」

ジャンプしてG3を飛び越え、戦闘開始早々にライダーキックを放った。

ドガアアアアアアアアアアァッ!!!

「ムゥッ…!」

さすがにアギト最大の攻撃であるライダーキックを放った場合、無傷というわけではないらしい。その体は大きく揺らぎ、水のエルは地面を転がった。

「ほう…着実にその力は増しつつあるな」

「…!?」

だが、アギトGFにとってはその結果が信じられなかった。

まるで通常の攻撃を受けたようなダメージだ。水のエルは大して苦痛を味わっているわけではない。

「ならば…早々に摘み取らねばな!!!」

水のエルは槍を振るう。すると辺りの水がまるで意思を持っているかのように動き出す。

それはまるで大蛇のような動きであった。それがまるで千枚通しのように鋭くなり、アギトGFへ向かう。

「フッ…!」

しかし、アギトGFも無能ではない。その攻撃にすぐさま反応して避ける。それに再び水が襲い掛かる。それを何度も繰り返した。

「GM-01、GG-02、エレキ、私用で使う!」

グレネードランチャーに電気を纏わせる。これならば、幾分かのダメージにはなるはずだ。そうなる事を信じて…。

「喰らえ、鯨野郎おおおおおおおおぉっ!!」

ドガアアアアァッ!!!

放った。

アギトGFに集中していた水のエルは、その攻撃に気づくことにワンテンポ遅れた。

「ムッ…!?」

ドオオオオオオオォッ!!

弾丸がぶつかった瞬間、水のエルがいた場所は、まるで稲妻が落ちたような有様と化した。

その威力は凄まじく、アギトGFも少し体が後退した。

「お、おい、ヒカル…どうだ?」

「…」

G3の問いにアギトGFは首を静かに左右に振る。あのアンノウンが、まだ倒れるはずが無い。

そして予想通り、煙の中から水のエルがヌッと現れる。

「歌葺陽太郎。たった今より、御前を抹殺対象とする」

あまりの妨害に、水のエルは遂に堪忍袋の緒が切れたのだろう。

槍を構え、G3に向かっていく。

「ハアアアァッ!!」

アギトGFがそれを阻止するべく、行動に移すが…。

「邪魔者を排除してからだ」

ドガアアアアァッ!!

「グアアアアァッ!?」

意図も容易く、退けられた。

「く、くそ…」

G3には、もうグレネードランチャーの弾丸は残っていない。GM-01の弾丸のみだ。

それは水のエルにとっては豆鉄砲のようなものだろう。

だが…。

「クソッタレえええええええええええええええええええぇっ!!!!!」

ダンッ!ダンッ!ダンッ!

それでも抵抗すべく、その弾丸を放つ。

水のエルの身体に火花が散るが、それは彼にとって蚊に刺された程度なのだろう。まったく、反応が無い。

「…消えろ」

バギイイィッ!!!

 

槍を振りぬくと、G3の鎧はまるで硝子のように砕ける。

 

中からは陽太郎の体が現れた。

もう、G3は戦闘用の強化外骨格の役割を担えない。

「が…あぁ…!?」

それだけではない。陽太郎にも多大なダメージが残った。

アギトGFは変身を解き、陽太郎を抱えあげる

「陽太郎さん!しっかりして!!」

人間時のヒカルは非力だ。それでも必死に力を込めて傷だらけの陽太郎を連れて水のエルを逃がす。

「逃がさんぞ…」

水のエルはそれを追おうとするが…。

 

「待ってください」

 

ふいにトーマに止められた。

「…何故です?」

「本来の目的を忘れてはいませんか?アギトや能力者の排除を」

確かに、先ほどまではG3に対する怒りで、水のエルは行動していた。

「もちろん、アギトも…!!」

「いいえ、今の貴方では…アギトを滅ぼしても、それが愛の有る行為ではありません。ただの暴力です」

トーマの言葉は意を捕らえていた。故に言い返せず、彼に従った。

「…集まってきましたね。能力者とアギト…しかし、愛のある破壊でないと…」

逃げていくヒカル達の背を見つめ、トーマは憂いを帯びたような表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

続く…。

 

 

 

 

 

次回!

 

                       陽太郎…!

 

G4のパーツと…まだあるんだろ?

 

                       G3のアップグレード…?

 

人間の科学…

 

                       G3-X…

 

出動!!!!!

 

 

 

 

 

第7話「人の英知」

 

 

 

目覚めよ、その魂!

 

 





キャスト

ヒカル=仮面ライダーアギト

歌葺陽太郎=仮面ライダーG3

シハ=仮面ライダーギルス

シエル・メサイア
テイル・アシュフォード

八代愛華

テツ

エルロード(水のエル)

トーマ=オーヴァーロード


あとがき
如何でした?
ここ最近、スランプですね…。なんか書くスピードがドンドン遅くなっていく…。
とにかく次回ですが…G3-Xが登場です。
お楽しみに!
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