仮面ライダーアギト~The under Ground~   作:龍騎鯖威武

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第7話「人の英知」

 

 

 

G3はもはや使い物にならない。

すべての部位に損傷があり、修復も不可能な状態にまで破損している。

だが、愛華にとってはそんなことはどうでもよかった。肝心なのは陽太郎の身だ。

「陽太郎…どうして無茶を…」

陽太郎は意識不明の重体であり、シハと共に治療を受けている。幸い、命に別状はないが…。

ヒカルが愛華の前にやってきた。愛華はコンソールを指で叩きながら、ため息をついている。どうやらヒカルに気づいていないらしい。

「愛華さん…」

「あ、あぁ、ヒカル君。どうしたのかしら?」

呼ばれて、ヒカルのほうを向く。少し取り繕ってみたが、無理をしているのがバレバレだ。現に愛華の様子を見て、ヒカルは心配そうな様子であるのだから。

「あの…陽太郎さんを助けられなくて…ごめんなさい」

彼は頭を下げた。

あの場にはアギトとして戦いに参加していたヒカル。しかし、水のエルの前には敵わなかった。G3を連れて逃げるのが精いっぱいだったのだ。

「いいえ…あなたは頑張ってた。それに陽太郎の無茶が一番の原因なんだから」

彼には全く非がない。愛華もそれくらいは理解できる。

「…人間って非力よね」

独り言のように呟く。しかし、ヒカルはそれを聞き返した。

「非力…?」

「わたしってさ、モニター越し以外であなた達の戦いを見たことがないの。陽太郎が怪我をすることくらい、百も承知なのに、ここから動こうとはしなかったわ」

その理由がわかる?…そう問いかけた愛華。しかし、ヒカルは理由がわからない。

首を振る形で返事をすると、愛華は自嘲気味に笑って言う。

「わたしが戦地に行くと、陽太郎はわたしも守らなきゃいけなくなる。司令塔がいなくなるからね。ただでさえ戦うことで精いっぱいなのに、わたしを守ることになれば負担が増える。だから、わたしは戦地には行けなかった。本当は…何度だって…行き…たかった…のに…」

途中からあふれ出る感情を抑えられずに、愛華はコンソールに突っ伏しておえつを漏らした。

彼女が突っ伏したことでカーソルが押され、「k」の文字が画面を侵食するように埋め尽くそうとしていた。

「なにも…できないの…!」

そういって涙を流す愛華に、ヒカルは何もすることができなかった。

 

 

 

それから3日後。

シハと陽太郎は目を覚ました。

両者とも体の傷は完全に癒えてはいないが、それでも普通の生活が送れる程度には回復している。

シハはギルスであるがゆえに自己治癒機能が優れていること、陽太郎はG3のアーマーの恩恵を受けて急所を外していたことが理由だ。

「あぁ…寝た…」

陽太郎は首の骨を鳴らしながら、むくりと起き上がる。

3日も動かしていないため、体中の関節が軋んでいる。少し痛いが、すぐに治るだろう。

同室で少し前に目を覚ましたシハは、両手を見つめる。その手は老人のような皺だらけになっていた。

しかし、シハにとってはそれよりも自分の手が震えていることが気がかりだった。

震えの原因は恐怖。そしてその恐怖は水のエルに対するものだ。

「あんたも起きたんだな?」

「…あぁ」

シハは返事をするが、両手から視線を外そうとしない。その両手が震えていることに気づいた陽太郎は、納得がいったように「あぁ~」と頷いた。

「なるほど、怖いのか」

「何…?」

「震えが止まらないんだろ?」

心を読まれていた。というより、気づかれやすい状態だったのかもしれない。

「あんた…あのアンノウンに因縁があるな?因縁っていうか…トラウマというか…」

「…なんでもかんでも、分かったように言うな。苛々する」

心の内をベラベラと喋られて、あまり好い気はしない。言葉を遮らせるために、少し凄みを効かせて言う。

そんなことをしているうちに、シハの両手は普段の状態にまで戻る。

「そんなことを言ってるってことは、図星だな」

「…あぁ」

疲れやダルさのために、もう言い返す気力もなく頷いた。

「ま、深入りはしないけど、今の俺たちじゃあの鯨のアンノウンには敵わない」

陽太郎は頭を掻きながら言った。

「でも、それは今の話だ」

「何が言いたいんだ?」

もったいぶったような言い方、さらにさっきの詮索もあって、シハは少々苛立って聞く。

 

 

 

「俺たちが最初に出会ったときのこと、覚えてるだろ?」

 

 

 

それは、3体のジャガーロードと対峙した時だ。3人は偶然とはいえ力を合わせてそれらを退けた。つまりは、アギト、G3、ギルスの3人で協力すれば、必ず水のエルは倒せるだろうという考えだ。

「ありがちな作戦だな」

だが、確かに3人が本格的に共闘して水のエルと退治したことは今のところ無い。可能性があるとすれば、そこしかないだろう。

「だが、そのためには…」

言いかけたところで扉が開き、ヒカルとシエルがやって来た。

「あ…陽太郎さんにシハさん!」

「目が覚めたのね!」

安心と喜びが入り混じった表所を浮かべる。笑顔であると言ったほうが的確だろう。

「こいつらにも協力してもらわないとな!」

「…なんのこと?」

唐突の言葉に、ヒカルは首をかしげた。

 

 

 

その日の夕方。シハ達が目覚めたことを伝えるために、ヒカルとシエルは愛華の所へ向かった。

普段はスーツを身に纏っている愛華は、珍しく作業着を着ていた。

ヒカルとシエルが顔を見せると、彼女は先日より明るい表情で振り返る。その顔には煤や汗がたくさん張り付いていた。

「あら、二人とも…」

「陽太郎さんたちが目を覚ましたんです。それを伝えに…」

「そう。わたしも準備が整ったところなの」

そう言って振り返った目線の先には…

G3のスーツがある。

 

 

 

だが、以前よりも変化している。

 

 

 

丸みを帯びた肩は角張った形に変化し、胸部も更に頑強なモノになっている。

さらにマスクの口に当たるパーツは呼吸がしやすい工夫もされている。

「あの…何をしていたんですか?」

「昔ね…凍結したけれどG3システムの強化計画があったの。「PROJECT-G4」って言ってね。その時に作られたスーツ「G4」から使えるパーツと、G3の破損していない部分をよせ集めて、最後にアンダーグラウンドの技術を取り入れて新しい強化スーツを作ったの。名前はそうね…」

 

 

 

「G3-Xとでも名付けましょう」

 

 

 

ヒカルはおずおずと話し始めた

「この前は…あんなに落ち込んでたのに、どうしてこんなものを作れるくらいに立ち直れたんですか?」

「そうね…まだ落ち込んでるわよ」

返答は意外なものだった。立ち直れた理由が聞けると思っていたが…。

「でも、陽太郎が目を覚ましたとき、あのまま何もしなかったら、きっと怒られていたわ。「相棒なのに、何サボってんだ!」ってね。それに、彼はわたしが何を言っても、きっと戦う。だからせめて、最高のバックアップで彼を送り出したかったの」

そう言って、彼女はG3-Xの肩を軽く叩く。ビクともしない様子が見ている方からでもよくわかる。

「僕達3人でもう一度、あのアンノウンに挑んでみるつもりです。今度はきっと…」

「あなた達なら大丈夫よ。きっと勝てる」

 

 

 

「水のエル。貴方には人を愛する気持ちが足りません」

トーマは彼を叱った。言葉の感情に起伏はないが、彼はそのつもりだった。

「しかしトーマ。彼らは人の理から逸脱している。アギトもギルスも能力者も…」

「歌葺陽太郎はそのどれにも該当しません。しかし貴方は彼を抹殺対象とした」

水のエルは異端たる者を倒すことに集中しすぎている。故に本来の目的を忘れている。

彼の管理を行う者として、トーマは彼を正さねばならない。

「光の力を持つものを庇うとなれば、彼も倒さねばならぬ相手…そうは思わないか…?」

「水のエル。人間は完全ではない故に、完璧は求められない。だが我々は、人間で言うところの「神」に値する。故に完全であり完璧でなければなりません。我々の目的は人間が我々の手を離れ過ぎて進化することを食い止めること。何があってもその目的に逸脱したことは許されません」

反論の余地がないのだろう。水のエルは何も言わず、踵を返して去っていった。

しかし彼は胸中で思っていた。

(人は科学技術で我々の望む形とは違った進化をしている…それも食い止めるべきではないのか…?)

 

 

 

さらに数日が過ぎ、シハと陽太郎は完全に治癒した。

トレーラーの中で愛華と陽太郎は話をしていた。

「おぉ…これがG3-X…」

「今のわたしにできる最大限のことをやったわ。あとはモニター越しからあなたを支援することくらいしか…」

わかってはいても、やはり申し訳ないという気持ちが有り、彼女は俯きがちに言う。

「サンキュ」

白い歯を見せて、陽太郎が笑った。

「陽太郎…?」

「さすがおれの相棒!そうしてくれると思ってたぜ」

2人は数年間、G3ユニットとしてG3システムの開発、実戦投入のためのテスト、正式に採用されるまでの検査、そして人類の脅威に立ち向かう等、様々な苦楽を共にしてきた。その中で芽生えた絆は深い。愛華は当初、陽太郎をG3システムを起動させるための要員としか見ていなかったが、それも変わっていった。

そうして、この2人は互いのパートナーとして出来うることを考えて、行動できるようになっていった。

「おまえは、おれに最高のサポートをしてくれた。なら後は、おれが最高の結果を出すだけだな!」

「…そうね。あなたならこのスーツのポテンシャルを最大限に発揮できるはず。気合入れて頑張ってきなさい!」

 

 

 

同時刻。

シハとテイルは、ヒカルの家の部屋で語り合っていた。

「正直、おれはシハの何も知らなかった」

「そう言ったばかりだろ…」

テイルの反省している様子に、シハは呆れながら答えた。

「おれ…確かに最初はシハの力を借りるためだけに近づいた。でもさ…こんな状況になったんじゃ、それだけって訳にはいかない」

「だから…?」

「おれもシハに力を貸す。多分…」

 

 

 

「シハ…あのアンノウンにやられたことあるんだろ?」

 

 

 

「アイツの事、ヤバイって言ってたし、戦う時も震えてた」

「やっぱり隠せなかったか…」

おそらく、他の連中にもうすうす感づかれているだろう。シハは想像した。

見せたくない弱点を見せてしまった。

「おれのこと避けてたのも、あのアンノウンと同じ水を使うから…」

「そうだよ。おれはこの力に目覚める前、アイツに殺されかけた。それがトラウマになったんだよ」

後ろを向いて、吐き出すように言った。

「そのことを知らなかったおれも責任がある」

「いや、おまえは悪くないさ。知りもしないことに責任をもつことはない」

テイルは自分に踏み込み過ぎたことを詫びているのだが、シハ自身はそれに日があるとは思えなかった。

今までの人間は自分の力を望むものが多かった。能力者がいる世界でここまで特異な力を持った者を良いイメージで見ることは彼にとっては当然だった。それが彼の能力ゆえにいろいろな危機に巻き込み、更には自分の命を救ってくれた。

「じゃあ…テイル、おれに力を貸してくれるか?」

「え…?」

「おまえが悪いと思っているのなら、それくらいしてくれ。そうすればおれも有難い。もしかしたら…アイツと戦う時、また竦んじまうかもしれないからな」

そう言って、老化から治ったばかりの右手を差し出す。

「…あぁ!」

その手をテイルは強く握った。

 

 

 

次の日。

水のエルは独断でヒカル達へ襲撃を仕掛けた。自分自身が考える「人の過ぎた進化」を食い止めるために。

津波と豪雨に包まれる町。

「さぁ、アギト達よ…。私に滅ぼされるが良い」

町は混乱状態となった。人々は逃げ惑い、隠れる。

だが数人だけ、水のエルに立ち向かう者達がいた。

ヒカル、シエル、陽太郎、翠、シハ、テイル。そして此処にはいないが愛華も陽太郎のサポート役としてGトレーラーにスタンバイしている。

「滅ぼされはしないよ」

「おれ達はあんたたちの勝手なお節介で殺されるほどヤワじゃない!」

「そういうこった。今度はそっちが怯える番だ!」

ヒカルは構えてオルタリングを生み出し、シハは腕をクロスして構える。

「「変身ッ!」」

二人は光りに包まれ、アギトGFとギルスへと姿を変えた。

そして…

 

陽太郎はすでにスーツを装備している。マスクを見つめ…そして装着する。

 

「G3-X…出動!!」

 

仮面ライダーG3-Xが新たに誕生した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

続く…。

 

 

 

 

次回!

 

                     GX-05…アクティブ!

 

水のエル…貴方は我々の同胞ではなくなった。

 

                     エルロード…そう言うのか…

 

貴方に任せましょう…

 

                     風のエル

 

 

 

 

第8話「風の怒り」

 

 

 

 

目覚めよ、その魂!

 

 

 




キャスト

ヒカル=仮面ライダーアギト

歌葺陽太郎=仮面ライダーG3

シハ=仮面ライダーギルス

シエル・メサイア
テイル・アシュフォード

八代愛華

テツ

エルロード(水のエル)

トーマ=オーヴァーロード



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