無能からのRe: Start.   作:NSK

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サブタイトルは、シンプルイズベスト。後悔はしていない。
※追記 5/4 「」内を少し修正しました。
誤字を一部修正しました。


3話 アラジンの能力

アラジンがアルベルトと魔法の特訓を始めてから、半年が経とうとしていた頃。アラジンの人生の障害となるモノが発覚する。

 

それは早い話『能力検査』というものである。その『能力検査』というのは、亜人大陸では義務化してある検査で、内容は文字通り能力を調べるだけである。能力検査と言っても、能力の正式名称は『スキル』なので、正しくは『スキル検査』である。

この世界においては、どんな人にも必ずその『スキル』というものはついていて、10歳頃になると血液を通して体に定着していく。ちなみに種族によっては『固有スキル』という種族特有の能力もあるのだが、それについてはここでは割愛。

 

アルベルトは魔法の特訓中に、アラジンにある違和感を感じた。アラジンは前世のこともあって、魔法の技術、知識の飲み込みが早かったので途中までは気づかなかった。

それは、彼が10歳になって半年経っても、『スキル』があるように見えなかったことだ。

例えば、アルベルトであれば、『演算』『魔力操作』『魔力探知』などといったスキルがあり、そのスキルがあって彼は大陸内で魔法に限って最強となれたのである。魔力操作であれば、魔法の威力、制御の向上があったりする。

だが、アラジンにはアルベルトのように魔法がすごいとか、そういった特別高い能力が、何もあらわれてないのである。孤児院内ではアラジン以外の子は皆、スキルが判明しており恵まれている子もいれば、普通の子もいた。

 

そしてアルベルトは、能力検査をしないかという話題をアラジンに持ちかける。というよりもセレナが、アラジンだけがスキルが判明していないので不安に感じ、アルベルトに話題を出すように言ったのだが。

 

「なぁ、アラジン。明日は特訓は休みにして能力検査に行かないか?お前まだやってなかっただろ?」

 

「そういえばそうですね。能力がなんなのか少しワクワクしますね」

 

「あ、あぁ。そうだな」

 

アラジンは笑顔で答えていたが、アルベルトはある不安が頭によぎった。

 

(さて、明日の検査でどうなるのやら…なんか嫌な予感が離れないなぁ…)

 

 

アラジンが住んでいる孤児院は『デュートリア』という国の中にある街の一角にある。デュートリアは亜人大陸の中では大きめの国で、大陸内では中心部のような位置づけになる。そのため、物流が多く裕福な国なので、種族問わず様々な人が来ることも多い。また、国内には、亜人大陸の最大の特徴である『デュートリア学園』があるため、アラジンはある意味恵まれた環境にあるといえる。

ちなみに学園の周りには『学園街』と呼ばれる街があり、そこは学生が不自由なく過ごすことが出来るように様々な施設や店が置いてある場所で、さらには一般開放もされているので国の中では一種の観光スポットにもなってたりする。

そしてアラジンとアルベルトは、その学園街の中にある施設を訪れる。その施設には『診療所』という看板がたっていた。アルベルトは診療所の扉の前に立つと、ノックもせずに開ける。

 

「おっす、邪魔するぞー」

 

すると、中には白衣を纏った20代ぐらいに見える男性が椅子に座って本を読んでいた。かなり不機嫌な顔をしていた。

 

「ノックもせずに入る礼儀知らずはどこのどいつだーって、なんだアルベルトか、何の用だ?」

 

「なんだとはなんだ、折角親友が訪れたというのに」

 

「腐れ縁の間違いだろうが…って、となりのそのガキは誰だ?」

 

男性は「まさか結婚?いやこいつに限ってそれはありえない…」とぼやきながら、アラジンを観察するように見つめる。

 

「あぁ、紹介が遅れたな。こいつはアラジンだ。俺が勤めてる孤児院の子な」

 

孤児院と聞いて男性は納得したような表情を見せる。

 

「あぁ、なるほどね。お前そういや以外と世話焼くの好きだったっけか」

 

アラジンは初めて会う人なので、挨拶はした方がいいだろうと感じ、挨拶をする。

 

「はじめまして、えーと…」

 

「俺の名前はカウノス・ドーラーだ。よろしく」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

挨拶が終わるとアルベルトは、本来はカウノスが言うセリフを言ってくる。

 

「コイツのことはカウノスって呼べばいいぞ」

 

「なんでお前が言うんだよ、普通俺が言うべきセリフだろうが…まぁ、言う手間が省けたからいいけどよ」

 

カウノスは頭を抑えながら「コイツは昔から変わんねぇな」と考えてたが、言ったらめんどくさそうなので口にはしなかった。ちなみにアラジンは「この人はいつもマイペースだな」と考えていた。よく魔法の訓練の際に振り回されている。

 

「で、とりあえず何の用だっけ?ガキだから能検か?」

 

ちなみにだが、一部の人は能力検査を能検と略して呼ぶ。軽い豆知識。

 

「そうだ。とりあえず見てやってくれ」

 

「本当は予約して欲しかったんだが、まぁ今日は誰もいなくて暇だからサービスしといてやる」

 

アラジンはそれを聞くと、事前に調べておけばよかったと思い、申し訳ない気持ちになった。

 

「なんか申し訳ないです」

 

「ガキが変な気つかうなっての。こういう親切は素直に受け取っておけばいいんだよ。あとタメ口でいいよ、なんか落ち着かないし」

 

「じゃあ遠慮なくそうさせてもらいます」

(口は悪いけど、この人優しいなぁ)

 

「カウノスって、口は悪いのに良いこと言うよね。あとアラジン、俺にもタメ口でいいぞ」

 

「やかましいわ!!てめぇはちょっと黙ってろ!!」

 

このように、アルベルトは思ったことをすぐに口に出すタイプなので、アラジンは「言わなきゃいいのに」と思うことがよくある。魔法以外は少し残念な人である。

 

「じゃあ、とりあえずコイツは放っておくとして、検査するぞ。」

 

カウノスはそう言うと、立ち上がって近くの棚からアラジンにとって見覚えのある道具を取り出した。

それは採血道具だった。アラジンは内心、「ファンタジーを期待していたこの気持ちを返せ!」とか考えていた。

 

「流れを説明すると、血液をとって調べて、10分待てば結果が分かる。以上」

 

(説明雑だなオイ…)

 

「まぁ、分かると言っても魔法に向いてるとか、剣術に向いてるとかしか分からないからな。気楽に受ければいいよ」

 

「了解ッス…」

 

軽い説明をした後、カウノスはアラジンの腕から注射器(ファンタジーのフの字も入ってない道具だった)で血を取り出すと検査を始めた。検査だけは魔法を使っていたので、『一応』ファンタジー要素はあった。アラジンにとっては軽い救済である。

待ってる間にアラジンは、アルベルトとカウノスの関係を聞いていた。

 

「アルとカウノスって友人なの?」

 

「友人っていうか、腐れ縁みたいなもんだな。気づいたらずっと一緒にいることが多いし」

 

「二人っていつ出会ったの?」

 

「ここの近くに学園あったろ?あそこに入学した際にクラスで同じになってな。そっからまぁ関係が始まったというか、そんな感じだったかな?」

 

アルベルトはうろ覚えらしく思い出そうとしていると、作業中のカウノスから声がかかる。

 

「だいたい合ってる。けど、一つ付け加えるなら貴族の連中に一泡吹かせる際に親しくなっただな」

 

「え、貴族に何してんの…」

 

「いやまぁ、ちょっと何かと相手を見下すウザイ奴らがいてな。そいつらをちょっと黙らせようと、アルと軽く遊んでやっただけの話だよ」

 

カウノスは平然と『遊んでやった』と言っているが、これはあくまでアルベルトとカウノスの実力が化物じみてたから言えることなのである。その貴族は普通に中級魔法は使えるので、そこそこ実力はある方。要はこの二人がすごいだけの話。

 

「あったなぁ、そんなことも。あれは結構楽しかったよな」

 

「まぁその後学園長に怒られたがな」

 

その後二人はゲラゲラと笑っていたが、アラジンはその様子を見て「あ、鬼畜がいる」と考えていた。

 

 

 

 

 

そんな風に昔話をしている間に検査は終わっていた。しかし、結果を知っているカウノスは複雑な表情をしていた。

 

「さて、とりあえず結果は出たが、良い知らせと悪い知らせがある。どっちから聞きたい?」

 

アラジンとアルベルトは顔を見合わせると、アルベルトは「お前が決めな」と言うので、アラジンは先に悪い知らせを聞くことにする。

 

「じゃあ、悪い知らせの方で」

 

「わかった。じゃあ、言うぞ。お前のスキルは『道化師《クラウン》』だ。これが何を意味するか分かるか?」

 

「おもしろそう」

 

「シリアス展開になるかと思ってたのに、雰囲気ぶち壊しだなおい、ってアルベルトお前笑い事じゃねぇだろアホ!」

 

アルベルトはアラジンの発言が少しツボに入っていた。

 

「す、すまん。だっておもしろそうって言うとは思わなくてな」

 

「それで、シリアス展開ってことは『道化師』ってあまりよろしくない感じなのか?」

 

カウノスは軽く咳払いをすると話を戻す。

 

「まぁ、あまり言いたくないがそういう認識で間違いないな。んで、その理由も説明するからよく聞いておけよ」

 

 

まず『道化師』というのは、『格闘術』、『剣術』、『魔力操作』といった技術系のスキルを模倣することが出来るのが特徴。一見、かなり強そうに見えるがあくまで『模倣』であり、完全な性能は出すことはできない。わかりやすく例をあげると、ゲームが体験版までしか出来ないということ。さらに、『道化師』には最大の難点があり、一部のスキルを除き、スキルを習得できないのである。普通ならば、『剣術』、『格闘術』などは習得することが出来るのだが、『道化師』の場合は模倣までしかできない。ゲームで言うと、製品版ゲームをインストールできない感じになる。

そんなわけで、『道化師』は一般世間では『無能』というレッテルをはられることとなる。『無能』というのは能力がない、習得できないから、『能』力が『無』い、『無能』という意味だ。

 

ちなみにゲームの例えはアラジンなりの解釈である。余談。

 

「とまぁ、こんな感じだ。理解したか?」

 

「まぁなんとなく」

 

(今更だけど、俺がここの言語を理解出来るのは『道化師』のおかげになるのかな?ってことは多分『言語理解』は習得出来るタイプかな?)

 

アラジンの予想は正しい。彼は頭が良いので、『言語理解』は無意識のうちに習得していた。『道化師』があったからというのも一つの理由だが。

 

アルベルトは今の話を聞き、もともとアラジンのことはすごいとは思っていたが、改めてすごいと感じていた。

 

(模倣レベルで俺についてこれるとか、コイツ一種のバケモノだろ。だが、おもしろい。ここで心が折れてなかったら訓練は続けてやるか。さて、アラジン。お前はどう受け止める?)

 

「前向きに考えるなら、それってオールマイティってことだな」

 

「まぁ、考えようによってはそうなるな」

 

「あと俺はスキルで無能か、どうかを判断するやつは三流だと思うな」

 

三流という言葉をアルベルトとカウノスは聞いてから、しばらくポカーンとした後、二人は目を合わせ盛大に笑った。

 

「ハーッハッハッハ!!三流か、そうか三流か!!その考えはなかったな!!」

 

「え、俺なんか変なこと言いましたっけ?」

 

「いや、むしろ良いこと言ったよ。中にはスキルで見下す連中もいるからな!そいつらに今の言葉を聞かせてやりたいくらいだぜ!なぁ、アルベルト?」

 

「おうよ!!まったく、流石は俺の教え子だな!!」

 

「いやそれは関係ないだろ…」

 

アラジンは思わずツッコミをいれた。

そして同時に、もう一つのことを思い出す。

 

「そうだ。良い知らせって一体何ですか?」

 

「ん?あぁー、すっかり忘れてた。すまんすまん。良い知らせってのは、固有スキルで『精霊の加護』があるってことだ。これはエルフにある固有スキルで、お前は見た感じハーフエルフだな」

 

「え、そうなの?」

 

「え、知らないの?」

 

正直、アラジンは捨て子なので自分の種族のことは何も知らなかった。まぁ、当然といえば当然でもある。

しかし、カウノスは知らなかったので、アルベルトは軽く説明をする。

 

「あぁ、コイツは捨て子だから自分の種族とかは知らないんだよ」

 

「あー、そういうこと。ってそういう大事なことは先に言えよ…」

 

「いやー、察してくれるかなぁって思ってた」

 

「俺はそこまで便利じゃねえわ…まぁ、とりあえず『精霊の加護』について説明すると、詳しくは知らんが精霊が見えたりとか、風属性の魔法が強化されたりするのが主だな。」

 

(精霊?あぁ、ゴミでも舞ってんのかと思ったが、アレ精霊だったんだ…)

 

実はこれまでアラジンは何度か精霊を見ていたのだが、その頃は精霊だと思ってなかったので風に舞うゴミだと思っていた。

 

「あ、あとお前ハーフエルフだってこと身内以外には話すなよ?ハーフエルフって人間やエルフに疎まれてる種族だから、差別を受けるかもしれないからな」

 

「ご丁寧にどうも」

 

「まぁ、幸いお前にはエルフの身体的特徴は大きくは出てないから、早々バレるなんてことはないと思うが、念のためな」

 

アラジンはハーフエルフといっても、耳が人間よりほんの少し長い程度なので、パッと見でバレることはない。

そして検査も終わったのでアラジンとアルベルトは帰ろうとすると、カウノスに呼び止められる。

 

「オイコラ、診断料払えや」

 

「「あ」」

 

どうやら、二人揃って忘れていたようだ。ちなみにこの世界のお金というのは銅貨、銀貨、金貨の三種類だが、金貨はなかなか手に入るものではないので、持ってるとお金持ちと言われる。

診断料は銀貨15枚だった。ちょっと高い。アルベルトは財布から15枚出すと、「もってけどろぼー!!」と投げやり気味に払った。その後、カウノスからデコピンをくらっていたので、アラジンは軽く呆れていた。

 

 

 

 

 

その後、二人は帰路につきながら、今後のことについて話していた。

 

「そういや、アラジンって学園に興味ある?」

 

「もちろん、行ってみたいとは思ってる。でも金貨5枚っていうのがちょっと問題なんだよなぁ…」

 

「あぁ、まぁ確かに高いな。けどあそこは年齢とかそんなに規制あるわけじゃないしな。そう考えると納得もいくもんだよ」

 

デュートリア学園は10歳からなら誰でも入学は出来る。が、お金の用意などは時間がかかるので、だいたいは12〜15歳になったときに入学することがほとんどだ。

 

「何かお金稼げる方法ってないかなぁ…」

 

すると、アルベルトはあることを思いつく。

 

「そうだ!冒険者登録してクエストで金稼げばいいんだよ」

 

「冒険者登録って子供でも出来るの?」

 

「10歳からなら誰でも出来る。まぁちょっと試験を受けないとダメだけど実技試験だから大丈夫。ちなみに無料で受けれるぞ」

 

アラジンは、お金を稼げる可能性があることがわかり、少し安堵していた。

 

「今はまだ昼だが、とりあえず今日は帰るぞ。登録は明日でもいいだろ」

 

「それもそうだね」

 

「そしてアラジンよ。お前が仮に学園に入学したとして、見下す連中は必ず出るだろう。そしたら、お前はどうする?」

 

アラジンは軽く鼻で笑い、笑顔で言い切る。その表情には、強い意志がこもっていた。

 

「俺は、一般世間で言う『無能』にはなるつもりはないよ。だから、そんな連中が来たら実力で見返してやります」

 

これは、アラジンが『無能』という障害に立ち向かっていく強い意志だった。

 

「…そうか。それを聞いて安心したよ。この調子なら、セレナ達に報告しても不安になることはないだろうな」

 

そう言うアルベルトの表情はどこか嬉しそうだった。

 

「じゃあ、そういうわけで明日からもビシバシ鍛えてくださいね?」

 

「おうよ。弱音を吐く暇も与えないからな、覚悟しとけよ?」

 

「望むところだ!」

 

アラジンとアルベルトは軽く拳を合わせる。

そしてこの日を境に、二人は『師弟』の関係となった。

 




この世界における無能はちょっと意味が違うんだけど、ちゃんと伝えられただろうか。あとスキルの説明わかりやすかったか不安っす。
次はお金稼ぎの話になるかな。
そんなわけで次回もよろしくです。
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