学者と獣   作:新宿のオーサー

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二話

男は街を歩いていた。

向かう先の宛などない。

設備の整った拠点を手放すのは惜しかったが、場所を特定された拠点を使うつもりにもなれなかった。

前回はなんとかなったが、ランサーと男の戦闘力はかけ離れている。

拠点に仕込みをしても、その差は埋まらないだろう。

獣ならば対処も出来るだろうが気まぐれがいつまで続くのか分からない。

そういう事情で男は泣く泣く新しい拠点探しをしているのだ。

サーヴァントに出会さないか内心ビクビクしながら。

幸いなことに金の心配はない。

アトラムの屋敷にあった物をごっそりと持ってきていたのだ。

想像以上の大金に男は軽く引きながらも、ありがたく頂戴したのだった。

項垂れながら歩いていると前方から走ってきた誰かにぶつかってしまった。

 

 

「あっ、すみません」

「こちらこそ。僕の方も不注意だったよッ……!?」

「どうかしましたか?」

「いや、なんでもないよ。それよりも、急いでいるようだったけれどいいのかい?」

「あっ、そうでした!それでは、これで。本当に申し訳ありませんでした!」

 

 

制服を着た少女は男に謝罪して走り去っていった。

 

 

「ふう、今が日中で良かった。夜だったら致命的だったね」

 

 

少女の後ろ姿を眺めながら男が独りごちた。

先程の少女はクラスまでは分からないが誰かのマスターであったようだ。

敵の接近に気付かない等、戦場であれば致命的だ。

男は出くわした相手が聖杯のルールを守り、日中は戦闘をしない人物であった幸運に感謝した。

最も、少女の方は気付いていない様であったが、そのサーヴァントはそうではないだろう。

最悪の結末を想像して冷や汗を流す。

 

 

「まあ、素敵なレディだったから、こんな状況じゃなければ、むしろ夜に出会いたかったのだけれどね」

 

 

 

 

 

日が暮れても、男の新たな拠点探しに進展はなかった。

そもそも、ここは御三家によって管理されている土地であり、めぼしい場所はほぼ押さえられているのだ。

簡単に拠点が見つかるはずもない。

 

 

「困ったね。どうにもできずに日が暮れてしまった。これじゃあ、いつ敵に遭遇するか分かったもんじゃないね」

 

 

言霊とでも言うのだろうか。もしくは、現代風に言ってフラグと表現しても良いかもしれない。

ともかく、起きて欲しくない想像とは往々にして実現するものであり、今回もその例に漏れずに男の方へ慌ただしい足音が近づいてきた。

 

 

「下手なことを言うものじゃないね。どうしたものかなあ」

「あ、アンタは!」

「やあ、また会ったね。それにしても、君はいつも慌ただしいね。それに、今朝の君とは少々口調が違うようだ。こっちが素かな?」

 

 

足音の正体は男が今朝会った少女と、赤い外套を身に纏った白髪で色黒の男だった。

男は気さくな様子を装いつつもこの状況を切り抜ける策を必死に考えていた。

 

 

「うん。きっと君の目的は僕じゃないだろう?察するに、この先でぶつかってる大きな魔力かな。僕に構わずに行ってくるといいよ」

「そうして、後ろを見せた隙を突くつもり?」

「嫌だなあ。そんな訳無いじゃない。僕は見ての通りとんでもなく弱いからね。気にする必要はないよ」

「へえ、そんなに弱いんなら倒してから向かうのもアリよね」

「いやいや、僕なんかに構うのは時間の無駄だって。一刻も早く目的地に向かうべきだよ」

 

 

お互いに笑顔だがその内心は警戒で満たされている。男は自分の弱さを認識しているが故に、少女は未知のサーヴァントが醸し出す不気味さ故に。

しかし、場の膠着はすぐに崩れた。

先程までぶつかり合っていた魔力が収まりを見せ、その一方がこちらへ高速で向かってきたからだ。

 

 

「ッ!」

「これは、ちょっとまずいね」

 

 

突風が吹き、金髪の剣士が赤い外套の男に斬りかかった。

男は自分と少女の前に壁を発生させて風から身を守った。

 

 

「うん。無事なようだね」

「あ、アンタ……」

「僕は女性を護る紳士を自認しているが、今回は打算だ。という訳で、白髪の兄ちゃん、君のマスターは僕が護り傷ひとつ着けないことを確約するから気張って僕を護ってくれ。別の言い方をすると、君のマスターの命が惜しければ僕の事を護るがいいッ!」

「……言ってて恥ずかしくないの?」

 

 

迫真の表情で宣言する男に少女があきれる。

見方によっては敵のサーヴァントに人質に取られた状況だが、男の様子からどうにも危機感が持てなかった。

そんな少女の目線を男は意にも介さずに壁を作成し続ける。

白髪の男はやれやれといった様子で金髪の剣士に相対する。

あの男は信用は出来ないがそれに意識を割いていては金髪の剣士を相手取れないと諦めたのだ。

金髪の剣士と白髪の男は急加速して、斬り結ぶ。

金髪の剣士の不可視の剣と白髪の男の二振りの短剣が火花を上げて金属音を響かせ、両者は拮抗する。

しかし、それは少年の声により崩れた。

 

 

「止めろ、セイバ-!」

「なっ、正気ですか、シロウ!?」

 

 

赤髪のシロウと呼ばれた少年が令呪を使用して金髪の剣士を止めたのだ。

その事に金髪の剣士は不満そうにして、怒りも滲ませている。

差し迫った危機が去ったことを感じとり、男は安堵のため息を吐いた。

 

 

「助かった?助かったよね!やったー生き残った!今回はマジで死ぬかと思った!まあ、僕は幽霊だから正確にはもう死んでるんだけどネ!」

「…………アンタねえ」

「それで、なんとかなったみたいだけど、どういう事情だい?その顔を見るに、君達ってもしかして知り合いかい?」

 

 

男の予想通り、少女と少年は知り合いだった様で少女を確認した少年が驚きの声を上げた。

その後、紆余曲折あって少女と少年は同盟関係となったようだが、その様子を男は、平和に解決するのは自分の安全に繋がるから大変結構だとにこやかに眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事があった翌朝、衛宮家は賑やかに食卓を囲んでいた。

 

 

「何故、貴方が自然に交ざっているのですか?」

「何か問題があるのかい?」

「そうだぞセイバー、昨日決まった事じゃないか」

 

 

メンバーは、衛宮士郎、セイバー、男。

いつもは間桐桜と藤村大河がいるのだが、二人とも用事が有るらしく不参加だ。

男が加わっている理由は昨日、

 

 

『話がまとまったところで、相談があるのだけれど、どちらか僕を住まわせてくれないかい?』

『ハア?』

『僕って戦闘力皆無なサーヴァントだろう。だから、ここは一つ同盟と言うことで何とか』

『アンタ、何言って―――』

『いいぞ』

『衛宮君正気!?』

『正気ですか、シロウ!?』

『いや、初対面なのに住まわせてほしいって頼むくらいなんだから困ってんだろ、じゃあ、別に良いかなって』

『本当かい、シロウ君だったかな?ありがとう!』

 

 

こんなやり取りがあったからだ。

当然、その後、少女とセイバーが猛反対したが、家長の決断は揺るがなかった。

そうして、この形に落ち着いたのだが、セイバーは未だに納得できていなかった。

 

 

「それにしても、シロウ君の料理は旨いね。誰かから習ったのかい?」

「ありがとう。特別誰かから習った訳じゃないな」

「貴方はもう少し遠慮というものを」

「いや、僕は生活費をシロウ君に払ってるからね。朝食を頂く正当な権利が有るからね」

「そうだぞセイバー」

 

 

正しいのは自分なはずなのに何故か自分が悪い様な雰囲気になり、セイバーはぐぬぬとなった。

そして、形勢不利と見たセイバーは起死回生のために話題を変えた。

 

 

「そもそも、貴方のマスターはどこにいるのですか?拠点ならばマスターが所持しているはずでしょう」

「もともとの拠点は襲撃にあってね。その日から僕のマスターは生死不明なのさ。まあ、魔力供給は続いているから生きてはいると思うんだけどね」

「セイバー……」

 

 

男がしんみりと答えた事によって士郎はセイバーに責めるような目を向ける。

 

 

(くっ、貴方を第二の切嗣と認識しましょう。一人称も僕ですし、切嗣が生きていたらこのくらいの年でしょうし。貴方を排除しない限り私の聖杯戦争に安息はありません)

 

 

男は完全にセイバーに目をつけられたが、彼女のマスターを味方に着けているので取りあえずの安全は確保されていた。

そんな裏を知ってか知らずか男はのんびりと茶を飲んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

衛宮士郎の登校時になって、問題が発生した。

セイバーが霊体化できない事が発覚したのだ。

セイバーのもとが生きている人間であることにより起きた障害であった。

セイバーはそれでも着いていくと言い張ったが、案の定守衛に止められ、苦肉の策として決定したのが、

 

 

「そんな目をせずに僕に任せてくれ。一宿一飯の恩を果たし必ず衛宮君を護りきろう。僕に戦闘力は無いが君が駆けつけるまでの時間稼ぎくらいならできるはずさ」

「いえ、私は貴方が一番危険だと思うのですが……」

「セイバー、そんな事言ったらダメじゃないか。それじゃあよろしく頼むぞ……ええと、なんて呼べばいいんだ?」

「好きに呼んでくれて構わないけど、学者《スカラー》が良いかな」

「オーケイ、スカラー、よろしく頼む」

 

 

去っていく二人をセイバーは危機感を募らせながら見続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「衛宮くーん、ちょっといいかしら?」

 

 

昼休み、士郎は少女に屋上に呼び出された。

その方法は周囲に誤解をさせるようなものであり、呼び出された士郎の顔は大いに引き攣っていた。

 

 

「で、アンタはなんでも、学校に来てるのよ!?」

「遠坂は何を怒っているんだ?遠坂も来ているだろう?」

「私が言ってるのは、なんでサーヴァントを着けずに学校に―――」

「護衛なら僕がいるよ」

 

 

遠阪が突然現れた男に固まる。

そして、次第に震えだして大声をあげる。

 

 

「なんでコイツなのよ!?」

「いや、セイバーは霊体化できないそうだから仕方なくだな」

 

 

士郎の言い分を聞いた遠阪は激怒した。

 

 

「ソイツは敵勢サーヴァントなのよ!いくら同盟を組んでるからと言ってそこまで信用するものじゃないのよ!聖杯戦争は、サーヴァントを狙うよりマスターを狙う方が簡単だからマスターは警戒心を強く持たなくちゃいけないのよ!そこら辺を分かってないでしょう!?」

「まあまあ、衛宮君も悪気があってした訳じゃないしそんなに怒らないであげてよ」

「アンタはどういう立場でそれを言ってるの!?」

 

 

捲し立てる遠阪を宥めるように男が言ったが、完全に火に油だった。

お前が言うな案件であることは一目瞭然であった。

 

 

「いやいや、でも実際、僕には衛宮君を手にかけるメリットはないよ。そんな事をすればセイバーちゃんに即殺されるだろうし、そうじゃなくても、君たちから狙われるだろう?前も言ったように、僕に戦闘力は皆無なんだから今の状況を手放すような選択はしないよ」

「アンタの言ってることが本当だって保証なんてないでしょう?それに、ただでさえアンタって何か怪しいのよね」

 

 

遠阪の言葉に男は傷付いたというような表情を浮かべて壁を張った。物理的に。

しかし、至極真っ当な意見である。

 

 

「まあ、いいわ。なんかアンタらに怒るのがアホらしくなってきたわ。そういえば、昨日は言い忘れたけど聖杯戦争に参加するなら教会に行きなさい。そこの言峰っていうエセ神父が聖杯戦争の監督をしているから、申請が必要なのよ」

「分かった、行っとくよ」

「君達、傷付いた初老にドライ過ぎないかい?」

 

 

壁の後ろから顔を覗かせた男に答える者は誰もいなかった。

 

 

「ところで、遠坂のサーヴァントのアイツはどうしたんだ?」

「え、えーっと……今朝、喧嘩して置いてきたのよ」

「警戒心を強く持たなくちゃいけないんじゃ無かったのか!?」

 

 

こちらもこちらでお前が言うな案件であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、士郎が帰宅しようとすると、中庭から女生徒の悲鳴が聞こえてきた。

慌ててその方向へと向かうと二名の女生徒が気絶していた。

駆け寄ろうとする士郎を男が制す。

 

 

「ストップだよシロウ君。どう見てもこれは罠だ。仮にこの学校に他のマスターがいたとすると、君の性格がばれている訳だから、これはそれを利用した君用の罠だと考えられる。現に今君は無策に駆け寄ろうとしたよね?」

「スカラー、それでも!」

「短い間だけど、君と共にいて君の性格はよく分かっている。だから、彼女らを助ける前に」

 

 

男が指をならして女生徒達の周りに分厚い壁を出現させる。

 

 

「せめて君の安全を護ろう」

「ありがとう、スカラー!」

「彼女らを助けたらなるべく早くセイバーちゃんを連れてきてくれ、それまでは僕が時間を稼いでいるよ」

 

 

士郎は男に礼を言って女生徒達に駆け寄った。

その後ろ姿に声をかけた男は壁の外に回り込んだ。

そして、林の中にゆっくりと足を踏み入れる。

少し歩いた後に不意に立ち止まって壁を出現させる。

次いで大きな金属音が鳴り響いた。

バラバラと壁が崩れて、その先に目隠しをした紫髪の女性が見えた。

 

 

「君がこの騒ぎを起こした犯人かい?ワオ、かなりの美人さんだね。この後、僕と遊びに行かないかい?」

 

 

男の軽口を無視して、目隠しをした女性は無言で這うように接近して斬りかかってきた。

男は壁を出現させて応戦する。

 

 

「反応が悪いね。トーサカちゃんといい、セイバーちゃんといい。みんな僕に冷たすぎないかい?やっぱり初老はダメなのかな?あと十歳若ければ僕ももっとイケてたと思うんだけど、やっぱり初老だもんねえ。なんで初老で召喚されたんだろうねえ」

 

 

軽口を叩きながらも木々の間を飛び回って撹乱する目隠しをした女性に対して、壁を大量に作成することで行動範囲を狭めて応戦する。時折飛んでくる攻撃も細かく移動することで避けている。

 

 

「荒事は苦手だけど、時間稼ぎくらいなら僕にもできる。君には士郎君を護ったという実績から、セイバーちゃんの信頼を得るための糧になってもらうよ!」

 

 

戦況は拮抗、いや、男の方が優勢かもしれない。

男に攻撃手段が有ればいくらか反撃もいれられたかもしれない。

能力の相性か地形か、要因は不明だがいつになく男が強気だった。

その状況に焦れたのか、男の態度が癪に障ったのか、目隠しをした女性はその目隠しに手をまわしてそれを取り外し隠された目を顕にした。

 

 

「あ、やべ」

 

 

その目で睨まれた後から男の動きが目に見えて悪くなった。

そこに紫髪の女性が高速で接近する。

男は悪あがきだとばかりに分厚い壁を目の前に出現させる。

そして、不格好なファイティングポーズをとって紫髪の女性を待ち構える。

しかし、待てども紫髪の女性が壁を破ってくる気配がない。

状況に既視感を覚えた男の耳に獣の唸り声が聞こえてくる。

それに安心してへたりこむ。

 

 

「また君に助けられてしまったね。それにしても、僕を二度も助けるなんて、君に一体何があって、どういう心境の変化が有ったんだい?やっぱり、それだけ焦がれる願いがあるのかい?」

 

 

せめて、壁で援護しようと目の前の壁を消し去る。

すると、獣が縦横無尽に飛び回る紫髪の女性よりも速く、広範囲に、素早く駆け回り攻撃を仕掛けていたのを確認できた。

あまりの速さ故に、紫髪の女性も魔眼で捉える事すら叶わない。

男は魔力の譲渡と、獣の邪魔にならないように、女性の近くに極小の壁を作成して細かく動きを阻害することで援護した。

 

 

「■■■■■■■■■■■■■!!!」

 

 

獣が咆哮して、速度を上げる。

紫髪の女性は徐々に体に掠り傷が増えていった。

紫髪の女性が何かを取り出そうとしたとき、士郎の声が聞こえてきた。

 

 

「セイバー、こっちだ!」

 

 

紫髪の女性は無勢を悟って撤退した。

今回の獣は後を追うことはせずに林の奥へ消えていった。

 

 

「スカラー、無事か!?」

「うん。いたって健康だよ。シロウ君も無事で良かった。さっきまで紫髪の女性のサーヴァントと交戦していたんだけど、君達の接近で撤退したよ」

「そうか、無事で良かった」

「ところで、あの二人はしっかりと助けられたかい?」

「ああ。スカラーのお陰だ、ありがとな!」

「……貴方は」

「しっかりとシロウ君を護りきれただろう?僕だってやればできるのさ」

 

 

男の無事を確認した士郎は安堵している。

そして、意外そうに見つめるセイバーに男は朗らかに答える。

今回の件で男はセイバーからの信頼を多少は勝ち取る事ができた。

何はともあれ自分の身を危険に晒してまで士郎を助けたことは認めざるを得ない事実なのだ。

それでも、セイバーには男の未知の部分がどうしても不気味に感じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

獣のステータス(参考値)

 

真名:?????

地域:?????

出典:?????

属性:?????

好きな物:?????

苦手な物:?????

 

ステータス

筋力:A+    耐久:B+

敏捷:EX    魔力:E

幸運:D     宝具:‐

 

クラス別スキル

?????

 

保有スキル

?????

 

 

男の宝具によって召喚された獣。

男の意思とは無関係に出てきて戦う。

今のところは男の危機に登場している。

この獣にとって男は自分の親であり自分を殺した人。

敏捷が非常に高く、ランサーも凌ぐほどだ。

(一話では、ランサーの仕切り直しスキルによって逃げられた)

また、地形によらずに敏捷を発揮し、足場が悪くとも速度は鈍らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オリ英霊の真名分かりますかね?

一応、隠すスタンスでいきますけどバレてる人にはバレてそうですね。

良ければ真名当てしてみてください!
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