HUNTER×HUNTER (題名未定)   作:リスボーン

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ごめん。
何が悪いかって、感想の返信では年内中に更新とか言ってたのに今2014年。
てのもありますが、一番は今回の話ヤバイ。
ヤケになってたら予想以上に凄いことになった。ある意味
ま、まあ大丈夫だよ。
てことで、今年初めの更新どぞ


決着

____あーあ、敗けちゃったか

 

 

 覚えのある気色悪い声が聞こえる。

 気がつけば俺は白が全てを支配する世界に居た。

 さっきまでのやかましい雑音や人も物も何もない存在しない。

 唯一何かが存在しているとすれば、せいぜい胡散臭いグラサン野郎ぐらいのものだろう。

 

 

「テメェ、何のつもりだ?」

 

「はははっ、何だい久しぶりに会ったてのに冷たいねー」

 

 

 空間が揺れ、先ほどまで居なかったはずのグラサンを掛けた男が現れた。

 手にはマシュマロの入った菓子袋を持っており、それを美味そうにほおばっている。

 ……実に不愉快だ。マシュマロ食っていること事にじゃねえ。何故、あのタイミングでこの世界に連れてきやがった。

 

 

「怒っているのかな? 大丈夫、安心しなよ。君は意識を失ってるだけでまだ死ん」

 

 

 言い終わる前に拳を顔面に叩き込んだ。

 だが何か得体のしれない不可視の障壁に阻まれているかのように拳は空中で止められた。

 

 

「御託はいい。さっさと俺を闘技場に戻しやがれ」

 

「……何を言い出すかと思えばそんなことか」

 

 

 グラサン野郎は指をパチンと鳴らすと、ソファを出現させて腰を下ろした。

 表情はやけに冷え切っていた。もちろんサングラスを掛けているため、実際には顔の変化などは分からない。しかしそれでもそう感じられる雰囲気があった。

 

 

「はっきり言うけど今の君じゃ勝てないよ。少なくとも本気を出していない君じゃあね」

 

「何だと?」

 

 

 そんなハズはない。俺は長髪野郎を倒す(殺す)つもりで戦っていたんだ。

 もちろん手加減をしていた訳でもねえ。放った拳は全てが常人の骨ぐらいなら軽く折れるレベルの威力だ。

 それでも効果がなかったのは単にアイツの使う曲芸が肉体を強化するものだったか、もしくはダメージを軽減するものだったからだろう。

 

 

「どう言う意味だ。答えやがれ」

 

「そのまんまの意味さ。説明するまでもないけど、このまま意識を戻しても面白くもなんともない。ヒントを上げよう」

 

 

 そう言うとグラサン野郎は____いつの間に出したのかは知らないが____グラスにワインを注ぎ、そして一気にに飲み干す。

 それから数秒が経ち、息を漏らしてから口を開いた。

 

 

「君は何のために戦っているんだい?」

 

「……ああ?」

 

 

 何のために戦っているだと?

 そんなものはもちろん決まっている。分かりきっていることだ。

 

 

「世界がつまらねえからだ。戦う以外に楽しむことがねえから俺は戦ってんだ」

 

「本当にそうかい?」

 

「しつけーぞ!! それ以外に何があんだよ」

 

「いやいや。それを知っているのは僕じゃない。君自身さ」

 

 

 意味が分からない。コイツが俺に何を言いたいのか、それともからかってるだけか?

 だが、どちらにしたってどうでもいい事だ。今はこんなグラサンに構っている暇はない。

 俺は戻って戦うだけだ。それ以上もそれ以下のこともない。

 

 

「時間を無駄にした。さっさと戻せ」

 

「まあいいよ。一応ヒントをあげたんだから、せいぜい頑張りなよコウ君」

 

「さっさとしろよ」

 

 

はいはい、とグラサン野郎は先ほどの顔とは打って変わった表情で薄くほほえむと両手を広げ____

 

 

「それじゃあバイバイ、また会おうね」

 

 

 パアン。手のひらを打ち合わせて乾いた音を響かせた。

 瞬間、視界は黒く染まった。

 

 

□              □                 □            □

 

 体が痛ぇ。さっきまでは痛みも何も感じなかったが、意識と共に徐々に戻ってきているのか。

 こんなのはいつぶりだろうか。久しく味わうことの無かった刺激が体中を駆け巡っているようだ。

 目を開けると、そこに居たのは何人かの会場の役員。恐らく試合の継続が可か否かを判断するためにきたんだろう。

 

 

「目を覚ましましたか。続行は……」

 

「どけ」

 

 

 一言だけ吐き捨て、立ち上がり跳んだ。その際にアバラ部分激しく痛みが走った。骨が数本折れているようだが、別段問題じゃない。

 リングに着地すると、一人の男が視界に入った。

 誰かは説明をするまでもない。

 

 

「待たせたな。さあ、次ラウンドと行こうじゃねーか」

 

 

 俺が声を発すると、対して野郎は薄く笑みを返してきた。

 

 

「まさか虎鮫拳を喰らってまだ立ち上がれるとはね。正直驚きだよ、だけど____」

 

 

 そこで言葉を止め、奴は構えた。

 どうやら審判が戻ってきて、試合続行の宣言を上げるようとしている。

 

 

「試合続行を可能と確認。 始め!!」

 

 

 止まっていた試合が再び動き出した。

 拳を固め、足を動かし、そして突き出す。野郎はそれを左手で受け止めながら、首元辺りを狙った手刀を放った。

 

 

「チッ!」

 

 

 咄嗟に首を捻って躱したが、かすった頬から血が飛んだ。

 これがもし狙い通りの部位に当たっていたら喉を潰されたかもしくは頭部が落ちるかどっちかだ。

 やはり最初とは比べ物にならないほどのスピードとパワーが今のこいつにはある。安易に結論を出すのはどうかとは思うが、まず間違いなく曲芸は『肉体強化』の類だ。

 だとしたらまともににやるのはやばいか。

 

 

「どうしたんだい。また、動きが鈍いのは作戦かな?」

 

「そうだと言ったらどうするよ」

 

「楽しみに待っているよ」

 

「そうかよ」

 

 

 迫ってきた拳を両手でガードするが、重い。腕が軋み、衝撃を殺しきれなかった俺は八メートル分吹き飛ばされた。そこに間髪いれず追打を入れようと長髪野郎は距離を詰めに掛かる____

 俺はこの短い間だが、一つだけコイツのことが分かった気がする。コイツは単純な野郎だってことが。

 

 

「素手での戦闘は飽きただろう? コンクリを喰らえ!」

 

 

 向かってくる野郎へ、強引に引き剥がしたプレートで直に殴る。

 プレートは当たると粉々に砕け散ったが、奴は若干よろめいたのは分かった。素早く粉塵に紛れながら後ろに回り込み、無防備な背中に拳を叩き込む。

 一発では効果がない。ならば二発、三発、四発……。

 

 

「いつまで何もないところを殴っているんだい?」

 

 

 唐突に聞こえた声。それが俺を正気に戻した。

 塵の霧が晴れると、さっきまで殴っていた場所に何もないことをようやく認識した。

 それと同時に起こる悪寒。聞こえた声は後ろからした。つまり、野郎が今いるのは俺の____

 

 

「う、おおおおお!!」

 

 

 上半身を百八十度回転させながら拳を放った。だが、届かない。

 それより先に下から登ってきたアッパーが胸に突き刺さり、俺の身体を軽く浮かした。

 

 

「ぐおっ!」

 

 

 血が逆流して、口の中が血で満たされる。

 不味い。このままではあの時の二の舞を踏むことになる。

 痛みで動かない身体を無理に捻りながら、両手をクロスさせてガードしたが、地に足が着いている時とは違い、空中では踏ん張りようがない。

 受けたよう衝撃を殺すことも弱めることもできず俺の体は重力を無視して、後方にある壁まで叩きつけられた。

 

 

「ガッ、ハ!」

 

 

 視界が霞む。

 右腕は何とか無事だが、今ので左腕の骨が完全に逝った。その他にも色々とやってしまったかもしれない。

 ロクに力が入らない足で立ち上がるが、不安定だ。次の攻撃を繰り出すどころか躱す事も難しいか。

 

 

「君は故意に動きを鈍くしたと思っているのだろうが、それは間違いだ」

 

 

 一歩ずつ野郎は近づいてくる。

 

 

「体は既に限界を迎えていた。そんな状態で、いや、はっきり言おう。元から勝ち目は無かった」

 

 

 三メートル差まで来ると歩みを止めた。恐らくここまでが奴の射程圏内。

 この距離ならばどこに動こうが仕留められる自身があるからこそ、ここで止まった。

 

 

「君が倒した三人は念に対して未熟だった。もちろん私ですらもまだ、その域を出ていない」

 

 

 流暢に語っていやがる。勝ちを確信し、もし抵抗をされたとしても一瞬でカタが着くと考えているからこその余裕があるのか。

 ここからの逆転など微塵も考えちゃいない、確固たる自信が。

 

 

「私は強くならなければいけない!! そのために君を倒す必要がある」

 

 

 構えを取った。曲芸を放つための溜の動作。

 一撃でも喰らえばあの絶大な攻撃力の前にひれ伏すしかない。

 さっきのは当たり所がよかったのかどうかは知らないが、あれだけで済んだ。

 だが、今回はそうもいかないだろう。

 

 

「選択肢をやる。ここで降伏(リタイア)しろ。さもなくば……」

 

 

 長髪野郎のするどい眼光が俺に向けられる。

 残された道は自ら負けを認めるか、それともここで二度目の虎鮫拳とかいうなんちゃら拳法を喰らうか。

 どちらにしても、奴の中では既に俺の敗けは確定ってことか。

 やれやれ。舐められたものだぜ、と言いたい所だが今回の場合その通りだ。

 そもそも俺は最初にぶっ飛ばされた時点で敗北を認めていた。

 それでもやり続けたのは単に、こんなに楽しいのを終わらせたくなかっただけの話。

 まだ動けるから続けた。そして今はまだ、俺は動ける。

 

 

「『窮鼠猫を噛む』って、ことわざ知ってるか? 猫に追い詰められ鼠が、切羽詰って猫に噛みつくっていう例え文句だ」

 

 

 拳を握れる。足を動かせる。眼はまだうざったらしい挑発を捉えている。

 これだけできれば後はどうでもいい____

 

 

「せいぜい気を抜くなよ。テメェはまだ俺に勝ってねーんだからよ」

 

 

 よく分からない感情が湧き上がってきやがる。

 喜びとか退屈とかそんなものじゃあない。もっと、ゾクゾクするものだ。

 ____そうか。

 これが『楽しい』って奴なのか。

 

 

「……さっきまでの発言は撤回しよう。苦しまないようにこの一撃で決めてやる!!」

 

「やってみやがれ……ッ!!」

 

 

 言葉の切り目が開始の合図。

 同時に飛び出し、そして

 

 

____拳は交差した

 

 

 

 

 




明けましておめでとうございます。
今年も末永くお願いします

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