魔法少女救命計画   作:先詠む人

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これでどうにか自分で決めたルールの一話につき一万字ルールを守ったってことで勘弁してください。お願いします。
後やっぱり見てくれる人が9時投降だと8時投降よりも少ないので8時に戻すことしました。

※グロ注意です。お気を付けを。


19th stage 決して消えぬmemory

◇ ふわふわ~ ◇

 

「あれ?誰か呼んでるのお?」

 

 ふわふわと白い綿菓子のような雲がどこまでも続いている世界で雲と同じ物質で作られた天蓋の下に置かれたクッションに頭を預けてソファーに身を託してごろ寝していた少女は目の前を一瞬だけ過ぎて行った擦れるような声に気付いて首を傾げた。

 

「呼ばれたのなら行かないとね~」

 

 クッションをポンと叩いて少女はソファーから身を起こす。

 少しだけ移動するといつものきしみながら開く大扉を抜けて雲で作られた小道を通り抜ける。声が聞こえた気がする方へと進んでいくと雲しかない世界が徐々に変わっていき、最終的にコンクリートで造成された床の前に中から鍵のかかった扉の前へとたどり着いた。

 

「あれえ~、入れないの?」

 

 血のように真っ赤な色で<KEEP OUT>と書かれた扉の向こうから「助けて」と擦れるような声で聞こえてくる気がするのだけれどその扉に鍵が閉まっているせいで中に入ることができない。

 

「う~ん、どうしよっか~」

 

 少女は首をかしげて髪の毛の先を飾っているそれへと話しかけた。

 

 

◇ ガシャット!! ◇

 

 

『んく……』

 

 目を開けると、そこは見覚えのありすぎる天井だった。

 

(………またか……。)

 

 これまで何度も見てきたこれに内心うんざりしながらその時を待つ。

 その時はいつも通りすぐにやってきた。

 

『加賀美大我君だね?』

 

『おじさんだぁれ?』

 

 扉を開けて入って来るなり頭に包帯を巻いた状態で()()()()()()()動けないように固定されている俺の元へ一直線に入ってきた無精ひげにスーツ姿の男は、()()()()問いに対してこう答えた。

 

『おじさんはね。刑事さんなんだよ。』

 

 今となっては嘘だと即座に断言できる。なぜならその時刑事と名乗ったその男は、鞄から大きなカメラを取り出しながらそう名乗ったからだ。

 病室で起きた殺人現場に現場入りした鑑識でもない限り、ましてや刑事が病院に入院している殺人と全く関連のない事故の被害者にカメラをもって入室するわけなどないのだから。

 

『けいじさん?』

 

 けいじさん?と問う俺の様子をカメラでパシャリと一枚撮ってからその男はカメラを鞄にしまいこむ。

 

『そうそう、刑事さん。それでね君に見てもらわないといけないことがあっておじさんはここに来たんだよ。』

 

 カメラを鞄の中にしまってから男はそう言いながら再び鞄をあさり出し、その中から数枚の写真を取り出した。

 

『これを見てくれるかな?』

 

 そして男はそう言いながらその写真を動けない俺でも見えるようにベッドの上に鎹のように置かれている机の天板の上に置いた。

 

『?』

 

 人を疑うということを知らない幼い俺はその写真を何の気構えもなく見てしまった。……そう、見てしまったのだ。

 

『ッ!?』

 

(ウェッ!!おぇぇぇ)

 

 後遺症の一つだったのかそのころやけに記憶力が上がっていたせいで今でも鮮明に写真に写っていたものの記憶を見てしまい吐き気を覚える。

 その並べられた写真に写っていたのは捻じれたり焦げたりして損壊した遺体(もの)!遺体(もの)!!遺体(もの)!!!

 

 机に並べられたそれらの写真に写っていたのは……俺以外のクラスメイトの遺体だった。

 

『あ……あぁ……あぁあぁ………』

 

 見慣れた顔がグロテスクなものへと変わっているものを見せられたせいで心拍が一気に跳ね上がり、それを感知した医療機器たちが一気にアラートをかき鳴らす。

 当時の俺は『幼い俺が『自分以外のクラスメイト全員が事故に巻き込まれて死んだ』ということを知るのはさすがによろしくないだろう。』と言う医師たちの判断で事故があったことも何も聞かされていなかった。

 

 だからこそ、その写真に写っているものを認識し()たくなくて首を必死にそらそうとするがそれは医師たちが幼い俺が寝返りを打つなどして閉じた頭の傷が開いてはよくないという判断で首を動かせないように固定されている(とその時は聞いていたが、後で本当の理由を聞かされた)せいで全く視線を外せない。

 ならば目を閉じようと瞼をぎゅっと閉じると

 

『お前にはそれを見る義務があるんだよ!!』

 

 と目の前の男が俺の顔のすぐそばに写真を突き付けた状態で強引に力技で俺の瞼を開かせた。

 当然、どアップで遺体の写真を見せつけられることになる。

 

『んんんーーーー!!!!!』

 

 声にならない悲鳴を俺は上げた。その顔を見て男は

 

『そうだ!その顔だ!!』

 

 そう興奮しているかのように歓喜の声を上げながら写真をパシャパシャと数枚撮り、俺の耳元に口を近づけてから

 

()()()()()()()()()()()()()()()。お前だけが死んでおけばよかったのさ。』

 

 と言い残して最後にパシャリと俺の顔を撮影してから部屋から小躍りで離れていった。

 

 その後の俺の記憶は不鮮明だ。実際今俺が見ている世界もぐにゃりぐにゃりと歪み、遠近感も狂っている上に昼間のはずなのに真っ暗に近い。

 どうも退院してから母親に聞いたことによるとアラートに気付いて病室に駆け込んだ看護師が見たのは『ごめんなさいごめんなさいぼくがいきててごめんなさい…』と、狂ったように零しながら目の焦点が合っていない俺だったという。

 

 当然、何があったのか看護師も医師も慌てて把握しようとする。しかしその時の俺の様子がどう見ても正常ではないことは明らかだったため、看護師たちは俺に直接何が起きたのか聞くのではなく病院の監視カメラなどを使って原因を探ることにしたそうだ。

 結局、あの男が原因だということは俺をのことを見ていた看護師たちの必死の調査ではなく、とあるルートからすぐに判明したらしい。

 

 とあるゴシップ記事をたくさん載せてその広告費を稼いでいるサイトに俺のことが書かれている記事が載っているのを看護師さんの娘である早紀さんが見つけて母親に教えたことでわかったそうだ。

 早紀さんは看護師志望だったこともあり、母親の手伝いをするという名目でちょくちょく病院にやってきては母親に俺の面倒でも見てやってくれと頼まれていたことで俺となんだかんだと面識があった。

 

 年の離れた弟、とでも言えばいいのだろうか。そのような感じで俺が退院するまでに間放課後から面会時間終了までずっと俺の面倒を見てくれており、後遺症で耳が聞こえず、しかも動くことができないようにされていた俺のためにと自分の家でもう読まなくなった絵本をたくさん持ってきてくれたり筆談で俺とお話ししてくれたりしていた。

 

 話は戻りその件のサイトだが、俺のことを否定的に書き上げた上に「死ねばいいのさ。」とか「なぜ、このガキだけが生き残ったのかわからない。」などと書き連ねてまでいた。

 たまたま学校の友人からそのサイトのことを教えてもらってみている際に最新記事としてアップされたその記事を見た彼女は、『これって大我君のことかなぁ?』と疑念を持った状態で記事を最後の方まで読み進めたらしい。

 

 そして彼女は記事の最後の方にこんな文章と写真が掲載されていたことでそのガキと書かれている少年が俺のことだと確信したそうだ。

 

『だからそのガキんとこに行って伝手を頼って手に入れたもの見せて壊したったwww』

 

 と言う文章とともに目が虚ろになった包帯ぐるぐる巻きの頭をベッドに固定されているぶかぶかな薄水色の患者服を着たどう見ても小学一年生の少年の写真がそこにあった。さらに掲載されているその写真はモザイクも何もかけていない無加工のもの。プライバシーもモラルもどちらのかけらも一切その写真にはなかった。

 

 早紀さんはそれを見てすぐにURLを保存して、それをメールに添付して自分の携帯に送ってから病院へ直行した。

 早紀さんから『大我君のことで大事な話で緊急性がある!!』と言われて一旦他の人に自分の仕事を任せて母親である看護師さんがそのサイトを確認。それを見てからこれは刑事事件になるんじゃないかと医師と相談したうえで警察に通報したらしい。

 

 警察はその通報を受けてサイトを確認するなどして事実を確認したところ、他にも男がハッキングなどの違法行為の数々を行っていたことが判明し、すぐにそのサイトを閉鎖するようにサーバー管理の会社へと連絡。

 警察からの要望だったということと、元々そのサイトに載っていた記事の中の何点かが芸能人の写真などを勝手に使っていたことで問題になっていたらしく、サイトそのものは即座に閉鎖された。

 そしてあの男はと言うと、ずいぶんと長い間逃げ回っていたそうだが結局逮捕されたらしい。罪状が何だったかとかはそのころの俺の心は完全に死んでて全く反応もしない状態になっていたそうだし、その当時のことを誰も話そうとしないから知らない。

 ただ、『君が大人になるまでは絶対あうことはないと思うよ』と俺が退院する際に医師が伝えてくれたその言葉だけは覚えている。

 

 そのサイト自体は即座に閉鎖されたことで記事そのものは見れなくなった……はずだった。

 しかし、一度ネットワーク空間に出回ったものは一生消えることはないという言葉はまさしくその通りで、記事と写真のコピーがネット上に大量に出回ることになった。

 恐らく小学校に復帰したときに他の親たちが俺のことを知っていたのはそのことが原因の一端でもあったんじゃないかと思う。

 

 それで話が終わっていれば別に一部の頭のおかしい大人がモラルのへったくれもない行為を行ったことで逮捕されたで済んだのかもしれないが、俺の脳にはその時のことが原因である(イメージ)が深く刻みこまれてしまった。

 

 永遠に続く赤黒い地面。それが遠くまで永遠に続いている。そして真っ赤な液体の中にその地面は沈んでおり、液体の粘度はとてもねばねばしている。

 その中に俺は沈んでいて、水面へと必死に手を伸ばすけれど両方の足首にに鎖を嵌められて、その先が地面に食い込んでいるせいで上がることができない。

 幼稚園の頃に同じ幼稚園の年上の子たちの悪ふざけによってプールでおぼれたときのように必死に空気を求めて暴れても呼吸することができないからむしろ苦しくなって……と言うタイミングでいつも目を覚ます。

 

 元々頭が割れたあの事故以来俺が悪夢としてこのイメージを見て夜中に繰り返し錯乱して暴れたために、俺の頭は固定されていた。

 俺が寝返りを打つからうんぬんと言う固定していた理由は少しでも俺にかかるストレスを少なくしてあげようと医師たちが気を使って言ってくれていた方便だったのだ。

 なら身体のほうも固定していた方がいいのではないかと言う人もいるのかもしれないが、その頃の俺は死に掛けたせいなのか眠りが浅く、頭を少しでも動かすと目を覚ましていたらしい。

 その度に寝かせるわけにもいかないから俺が眠ってから看護師たちが俺が起きないようにこっそりと体を固定し、当直の看護師が朝になったら固定を外していたらしい。

 高校に入ってから母親からそのことを聞いた俺は当時迷惑をかけたわけだからバイト代で買った菓子折りをもって経過観察(何の経過観察なのかわかっていなかったが)として病院の精神科に受診したときにナースセンターにまだ務めていた早紀さんのお母さんを含めて伺ったりもしたのだった。

 

 話は戻るが、そんな状態が逆にあだとなり、俺が虚ろな目で何も反応しなくなってから約半月、精神科の医師も手伝ってやっとこさある程度回復してきた時点でその刻み込まれたイメージによる爆弾が爆発した。

 

 赤黒い地面として悪夢で見ていたその地面を構成しているのがクラスメイト達の激しく損壊した遺体に。

 地面につながっていた鎖の先を遺体が握りしめている様子に。

 

 そして

 

『お前が死ねばよかったんだ~』『なんでお前が生きているんだ~』

 

 そんな怨嗟の声が聞こえるようになった。

 

 あの事故が俺に与えたのはいつかは目立たなくなる体の傷だけではなく、心にいつまでも残る深い傷だった。

 錯乱が収まらない限り傷が治ったとしても退院させるのは危ないという医師の判断で俺は本来の予定日よりも大分遅れて退院することになり、結局小学校に復帰したのはそろそろ2年生にもなるかと言う時期だった。

 

 そう言った経緯を経て俺は小学校に復帰したのだが、それからも地獄は続いた。

 違う事故で瀕死の状態だったとはいえ、”1年3組で唯一生き残ってしまった生徒”と言うレッテルが張り付いてしまった俺の扱いをどうするか学校側も困っていたらしい。教師ならば別の学校に飛ばすなどすれば別にそれほど問題にはならない。私学であるならばその生徒を退学にすれば煙を断つことが簡単にできると自己保身に走る大人たちは考えるだろうが、彼らからしたら運の悪いことに俺が通っていた小学校は公立校で、小学校は義務教育の一巻であった。

 そのため学校から追い出すといった行為を取ることもできず、その結果俺をどう扱うのか困り切っていたというわけだった。

 学力に関しては錯乱しない昼間に俺が院内学級で色々と教わっていたために何も問題などなく、そちらを理由として特別な処理をすることもできない。

 そうして悩みに悩んだ挙句、自分の利権に汚い大人たちが選んだのはそしらぬ顔で俺を普通の学級に放り込むことだった。

 

 2年生に上がって長い空白期(ブランク)を超えた状態で久々に学校に向かった俺を待っていたのは壮絶ないじめだった。

 教室に居れば同じクラスメイトからハブられるどころか「こっちに来んな死神が!!」と怒鳴られ、いやになって図書館に行けば上級生に蹴られ、殴られ、しまいには箒で叩かれて追い出される。

 休憩時間中にトイレに行けば個室に放り込まれてトイレから出られないように個室の扉を塞がれ、トイレに閉じ込められる。

 机には上級生によってさかさまに置かれた空の花瓶と大量の死ねの文字が乱舞していた。

 このどう見ても異常な事態を見てすぐに止めるべき先生もモンスターペアレントが怖いと見て見ぬふりをし、こんなのおかしいからどうにかしてくれと言う俺の親の訴えもすべて教育委員会に行く前に握りつぶした。

 

 そんな中「逃げてたまるか」の一心でどうにかこうにか学校に通っていた俺を親は心配そうに見ていたが、その心配はついに現実のものになる。

 

 俺が絞殺されかけたのだ。

 

 これには親も激怒し、直接教育委員会にまで行ってからこれまで俺が学校で受けてきた行為すべてとそれに対する学校の態度を訴えた。

 その裏付けをとるために病院に行って診察を受けた俺が言われたのは

 

『これほどまでひどい目にあってよく生きてますね。その生命力は素晴らしいことだよ。でも我慢しちゃいけないんだからね。』

 

 の言葉だった。

 医師の診察によると俺の身体はパッと見ることができるだけでも青あざ(親に心配をかけたくなくて必死に隠していた)が数十か所。しかもレントゲンを撮ってみたら骨にひびが入ってから治ったように見える形跡がいくつも見られたらしい。

 そうした医師による「この子には暴力が振るわれていた」という裏付けが取れたタイミングで俺を絞殺しようとしやつらの親が子供を連れて家まで謝りに来た。

 しかし、その内容は謝るというよりも自分の子供と自分の保身を考えて大事にしないでくれと頼んでいるようにしか見えず、しかも俺を殺そうとしたリーダー格が『死神なんだから殺さないと俺らが死ぬだろうが!!俺らは正義なんだぞ!!』と言い出してそれに追随するかのように騒ぎ始めたことで親の、特に親父の表情が固まった。

 

『大我は一旦母さんと出てなさい。』

 

 そう言って親父は俺を部屋から連れ出させ、そのまま俺は母親と一緒に近くの図書館へと歩いて行った。

 図書館にしばらくの間いて、それから家に帰ると謝りに来ていた親と俺を考察しようとした奴らの靴は玄関になかった。

 

 居間に入ると親父がものすごい形相でどこかに電話しており、ガンッ!!と受話器を電話にたたきつけた。受話器を叩き付けてからしばらくの間肩で親父は息をしていたが、それからこっちを向いて

 

『大我、よく聞けよ。』

 

 と、俺に前置きをしてから

 

『もうお前はあの小学校に行かなくていいからな。今、別の学校に行けるように手配してるからな。』

 

 とだけ告げてから母親に何か一言二言言って出て行った。

 

『ほへ?』

 

 未だに精神的に幼い俺には親父が言っている言葉の意味がいまいちわからなかった。

 しかし、話はとんとん拍子に進む。運よくもともと俺の家があったのは二つの小学校の校区の境目付近だったこともあり、俺は近所にある別の小学校に転校することになった。

 

 しかし、違う学校とはいえ近所。校区が近いこともあるために別の小学校の生徒同士が遊ぶこともざらではない。それを頭に血が上っていた親父も含めて誰も気づけなかったことが次の悲劇を呼んだ。

 

 転校先の学校でも虐められていた俺が今度は3階の窓から突き落とされたのである。

 最も、突き落とされたのは結果のほうであり、突き落とした側としては俺を怖がらせてやろうというつもりだったのだろうが……

 実際、突き落とした側の瞳と俺の目線は俺が2階から張られていたゴーヤネットでバウンドするまでに交わった。そしてそのときに見たその瞳は驚愕に包まれていたからだ。

 本来俺が通っていた小学校の窓は事故防止のためにすべて鉄柵がつけられている。突き落とした側としてはその策に引っかかるだけで済むだろうから大丈夫だろうと些細な考えで行動したのだろうが、俺が突き飛ばされた窓についていたその策は長年の雨風が原因で壁とのつなぎ目がボロボロになっていた。

 そんな状態の柵に体当たりのような勢いで人間がぶつかったらどうなるのか。答えは柵が吹き飛んで外れるだ。

 

「あ」と思う瞬間()もなかった。突き飛ばされて窓枠から身を投げるような形で宙へ放り出された俺はそのままゴーヤネットへとダイブすることになった。

 数回のバウンドの後に校庭へと投げ出され、痛みのせいで起き上がることすらできずに唸る。

 たまたま職員室で俺が落ちてくるのを目撃した先生が慌てて職員室から飛び出してきて俺はそのまま病院へと運ばれることになった。

 勿論このことはすぐに学校中に知れ渡り、その事件が起きたのが終業式の日だったため夏休み明けにいなくなった俺のことを死んだと考えた一部生徒により俺を突き飛ばした奴も「人殺し」と虐められるようになったらしいが、その後どうなったのかは知らない。

 

 最終的に俺は近所じゃだめだ、また殺されかけないということで学校があるエリア自体を変えるということで相談は落ち着き、夏休み中にそれまで俺が通っていた地区から遠く離れた地区にある小学校へ俺は通うことが決められて処理が進んだ。

 

 そこで漸く俺は虐められることなく日々を過ごすことができるようになったのである。

 

 ただ、その転校前の夏休み。

 図書館に本を返しに行っていた俺はあのバス事故の被害者遺族たちの団体に囲まれてそのまま商店街の一角にある事務所へと力づくで連れ込まれた。

 

 そして今、夢と言う形で地獄を追体験されられ続けていた俺は幼い俺の中に入れられてナイフを持たされている。

 そのナイフは銃刀法で所持することが禁止されているようなサバイバルナイフとかではなく、普通に100均とかで売ってそうな果物ナイフ。

 

 『お前が死ねよ!』『あんたが死んだらうちの子が生き返るかもしれないじゃない!!!』『返して!!!うちの子を返して!!』『お前が自分で自分を()()()!!!』『早く死ねよ!!』

 

 周囲から巻き起こるはどす黒い感情に染まった怨嗟の声。この幼い俺の身体の周囲を囲むのは陽炎のように揺らめくおどろおどろしい影と今はなり果てているあの被害者遺族たち。

 そして陰から手が伸びてきて俺の腕をしっかりと握りしめた。

 

『いいから死ねよ!!』

 

「嫌だ!!!」

 

 俺の抵抗に対してその影はそう言いながら強引に俺の首筋にナイフの刃を近づける。

 これが夢だと頭ではわかっていてもこの恐怖は決して夢なんかに思えず、俺は力いっぱい引きはがそうとする。

 

(もう……いいんじゃないかな……)

 

 必死に抵抗する中で自分の中からそんな弱弱しい声が聞こえた。

 

(助けたいと願っても助けようとした側から殺されかける。死んだらきっと楽になるよ……?)

 

 その囁きはまるで悪魔の誘惑のよう。このささやきが言う様に実際ここで死ねば楽になれるのかもしれない。

 こんな他者(ひと)に傷つけられ続けて、これからも傷つけられ続けるかもしれない人生、終わった方が良いのかもしれない。

 

 ふっとそんなことを思って手に込めていた力が弱まる。それを好機ととらえたのか影は勢いよく俺の首をナイフで掻っ切ろうとし

 

(あぁ、でもやっぱり……()()()()()()なぁ……)

 

 と考えたとしても一度抵抗する力が抜けたナイフの刃は首を斬るために動き出しており、ナイフが肉に食い込むような感触を斬られる側として感じていたその時だった。

 

「ちょっと待ったあ!!」

 

 そんな覇気のない声とともに()()()()()、光が世界に満ち溢れる。

 

「魔法少女ねむりん参上!!もう大丈夫だからねえ!」

 

 某頭がぬれたら力が出ないアンパン(それがし)の必殺技みたいに拳を突き出した状態で部屋に突っ込んできた少女は俺をそのまま助け出し、逆光の中でそう言いながら俺の頭をなでた。

 

 血のような赤と死を司るような黒によって染め上げられていた世界が、光によって白く染まっていく……




感想、評価を楽しみにしています。

さて、彼女にどう動いてもらおうか……
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