魔法少女救命計画   作:先詠む人

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 大変お待たせしました。
 活動報告を見てもらえるとわかるんですが、先に無印最終話とLimitedにつながる話、Re Loadingを書いていたので遅くなりました。
 久しぶりの投稿になりますが、これからもよろしくお願いいたします。

 FINALは年内に観に行こうと思っていますが、パンフレットが残っているかが不安です。

 銀の鍵を手に入れたのでFGOのクリスマスイベントの今年分は本腰入れないとヤバいかな……



22th stage そのpain(いたみ)を知れ

「ノーミスクリアで…………運命を変えるぜ!!」

 

 エグゼイドに変身した状態でガシャコンブレイカーを構えたまま水着の痴女、スイムスイムにとびかかる。

 スイムスイムはその攻撃を避けようともしない。それもそうだろう。彼女の魔法は

 

「……無駄なのに。」

 

「チッ!」

 

 事実上の物理攻撃無効と言ってもいい「どんなものにも水みたいに潜れるよ」と言う名前の物質透過の魔法なのだから。

 上段から振りかぶって光を放ちながら放った渾身の一撃は、スイムスイムが魔法を発動したことで大きく空振りに終わることになった。そのまま不敵な笑みを浮かべながらスイムスイムは手に持った武器で俺を再度切り裂く。

 

 胸の装甲から火花が散り、そのまま持っていたガシャコンブレイカーを取り落としてしまう。

 ライダーゲージが音を立てながら減り、3分の1減ったところで止まった。

 

「くッ!!」

 

 どうにかあの魔法を突破できないのか。確か原作だとリップルがなんか手りゅう弾的なので衝撃波を出して………()()()?

 

「あ」

 

 そのタイミングで思い出した対スイムスイム攻略法を行うために右手を横に突き出し、あるものを装着する。

 

<GASHAKON BUG VISER!!>

 

「?無駄だってわかりきってるのに」

 

 俺が何を考えているのか、そしてこの武器の特性を知らないスイムスイムはこちらへとゆっくり歩いてくる。

 その表情は無表情のままだが、口の端がわずかに楽しそうに歪んでいた。

 

(大方、こっちが手も足も出ないから嬲り殺せるとでも考えているんだろうが……)

 

 心の中でそう呟きつつクラウチングスタートの体勢から一気にスイムスイムの方へと飛び出し、バグヴァイザーのボタンを叩く。

 ボタンを叩くのと同時に突き出しているバグヴァイザーの先端部に紫色の光がともり始めた。

 

「うぉおおおおおお!!!!」

 

 雄たけびをあげながらスイムスイムとの距離を詰める。

 

「………」

 

 そんな俺を見て特攻とでも判断したのか、スイムスイムはゆったりと持っている武器、ルーラを構えた。

 

 そして一瞬の後に互いの距離はゼロになる。

 

 ガキン!!ガギャギャギャギャギャ!!

 

 甲高い音と、大量の火花が散った。そして……

 

 

 

 ギュィィィィィイイインン!!!

 

 

 ()()()()()()()()は止まることなく高速で振動を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇  ◇

 

「うそ……だろ……」

 

 俺の目の前で広がっている光景を俺は信じられなかった。

 

「……」

 

 横にいるリップルも驚いたのか珍しく目を見開いて固まっている。

 

「あぁあああああああああああ!!!!」

 

 ブシャァアアア!!と言う噴出音とともに絹を裂くような悲鳴が上がる。

 それに続くかのようにカロンと音を立ててスイムスイムが持っていた武器が、そしてぼとりと言う鈍い音とともに手のひらから肘までアームカバーで覆われた()()()()()()()()が床に落ちた。

 

 たいがが変身したあのピンク色の戦士が持っている紫色の武器はさっきまで一度も見ることはできなかったスイムスイムの血で真っ赤に染まっていた。

 

「これでわかるだろ………俺の……勝ちだ。」

 

 仮面越しでもわかりそうな底冷えするような声でたいがはスイムスイムを抑えつけて首筋に武器の先端を当てる。

 

「いたい……いたいイタイイタイタイいたいぃぃぃぃいいいいい!!!!」

 

 これまで魔法の影響でか”痛み”と言う感覚と無縁だったからか、それとも有利だと思っていた相手の攻撃でいきなり腕をちぎられたからか、それともそのどちらもが原因なのかはわからないが、スイムスイムは目を見開き、恐怖に顔を染めながら悲鳴を上げていた。

 

「おいたいg」

 

 俺を殺そうとしていた相手とはいえ、あまりにもやりすぎじゃないかと思って声をかけようとしたその時だった。

 

「スイムちゃん!!」

 

 そう叫びながら犬っぽい魔法少女、確かたまだったか。そのたまがとびかかるかのようにたいがに襲い掛かる。

 

「!」

 

 たいがはその攻撃に恐らく無意識にだろうが、反応してしまい一瞬だけ武器を持ったままの右手を突き出そうとし、慌てた様子でその武器を盾にするかのように構えなおし、後ろに跳んだ。

 攻撃がかわされたような形になった襲い掛かったたまの爪が床に当たった瞬間、その床が50センチメートルほど消し飛んだ。

 

「あ!?」

 

 驚いた声がたいがから洩れる。そのままたまは穴の中に飛び降りていき、結局たいがは穴の向こうでスイムスイムが床へと沈んで逃げるのを見送らざるを得なかった。

 

「だぁ………やっちまった……」

 

 ぼやくかのようにたいがは頭を掻きながら周囲を見渡す。しかし、此処にいるのはもう俺たちだけで、先ほど乱入してきたたまももうここにはいない。大方既にスイムスイムを回収してどこかへ逃げているだろうと思う。たまは確か前にルーラから『逃げるのだけは一流だがそれ以外がてんでだめだ。』って怒られているのを見たことがあるから多分余裕で逃げ切っているだろう。

 

「でも……」

 

 そんなことを考えながらたいがの方を見ているとたいがが変身した戦士はそう言いながらこちらを見た。そして自分に言い聞かせるかのように

 

「ま、いっか。俺の願いは()()()()()()()()()し。」

 

 そんな意味深なことを言いながらたいがは腰につけていたバックルについている扉を閉め、

 

<ガッチョーン!!>

 

 そんな音声が鳴ったのを確認してからピンク色のゲームカセットのようなものを外した。

 

<ガッシューン!!>

 

 そんな電子音とともに桃色の粒子に纏っている装甲が分解されて消えていく。その下にあったのは何か背負っている重荷が取れたかのような印象を与えるたいがの顔だった。

 

 

 

 

 ◇  ◇

 

(博打に近かったけど……まぁ、成功してよかった…)

 

 変身を解除したことで一気に軽くなった右手を開いたり閉じたりしながら考える。

 俺がしたことは結構シンプルなことで、ガシャコンバグヴァイザーのチェーンソー部分を、チェーンソーモード状態で突き刺したまま回転させただけだ。

 スイムスイムの魔法はぱっと見無敵な最高の魔法に思えるが、その実衝撃波、及び光などに当てられると魔法が解除されるという欠点を持っている。

 本来ならこの弱点はルーラ一派と森の音楽家 クラムベリー戦で判明する物なのだが、原作知識をある意味で悪用してここで使わせてもらった。

 チェーンソーみたいに鎖などで回転する物が高速で回転すると当然振動が起きる。バグヴァイザーの自体にはエンジンが組み込まれていないから本物のチェーンソーに比べて振動は起きないのだけれどそれでも結構すごい振動が手に来るのは前に使ったときにわかっていた。

 だからまず最初にルーラとバグヴァイザーを競り合わせ、それをそのままスライドするような形でスイムスイムの右肩に突き刺す。

 その時、スイムスイムは魔法を使ってダメージをなくそうと考えると予想できたから予想通りのその行動に刃自体を体の奥深くに簡単に刺すことが簡単にできた。そしてその状態でチェーンソーを高速回転させる。

 すると突き刺さっているその場所から振動が発生し、中からの衝撃波で魔法が解除され、そして豆腐を切るかのように肩をスパンと切り落としたというわけだ。

 ただ、此処だけを見ている人がいたら俺のことを相当サイコパスな野郎だって考えそうで怖い。

 

 正直、あの時一回死に掛けたからか何故か無性に破壊衝動に包まれてたというかなんというか……簡単に言ったらすべて壊してやるぜ!!て中二病みたいな思考に即時につながったというか……

 

 そんなことを考えながら二人の方を見る。すると二人そろってジリっと後ろに下がった。

 

「え?ちょっと…」

 

 そう声を駆けながら一歩寄ると二人もまた一歩下がる。二人が俺を見る目はあの時の俺を殺そうとしたあの連中のように化け物を見るかのような目だった。

 

「………」

 

 大方自業自得な部分が多いんだろうけど……それでも悲しい気持ちになりつつ、そんなことを考えながら俺はオレンジのガシャットを起動する。

 

JET(ジェット) COMBAT(コンバット)!!>

 

「……変身」

 

 そうポツリとつぶやいてから握ったジェットコンバットガシャットを内側のスロットに差し込んで扉を開く。そして

 

「……じゃあな」

 

 そう告げてから背中から宙へ飛び出した。

 

 高速で下から上へと上がっていく景色を尻目に俺の周りにオレンジ色の光でできた円が発生し、その最中にオレンジ色のワイヤーフレームで構成されたジェットコンバットガシャットの半透明の部分に描かれている絵柄を宙に投影したものを潜り抜けて俺の身体はコンバットゲーマーレベル2へと変わっていた。

 

 そしてそのまま空を飛ぶ。

 行く当てなどない。ただ、空を飛んで無意識のうちに進路を山の方へと向けていた。

 

 ◇  ◇

 

「くっ!!」

 

「あなたの実力はその程度ですか?以前私に見せたあれは使わないのですか?」

 

 突き出した拳をあっさりと避けられ、その上で丁寧な口調で煽られる。

 目の前で踊るかのようにこちらの攻撃をさばく死神が言っている”あれ”と言うのについてはある程度予想がついている。きっと前に戦った時に私の記憶、そして意識がない状態でなっていた化け物のことだろう。

 だけど、あれはなろうとしてなったものじゃなくて、あの黒い巫女服の女性に何かをされた結果なったものだからどうしようも思いつかない。

 

 あのいけ好かないカラミティ・メアリが立てていた作戦に乗る形で魔獣を殺し、それでみんなに事実を突き付けようと思っていたけれど魔獣じゃなくてとんでもない奴に目をつけられてしまった。

 

 あの時武器を落としてしまってから一度も変身を解いていないせいで大剣が今私の手元にはない。

 今私の手持ちとして言えるのは午前中に迷子の子供の親を見つけた時に母親からもらった飴とさっきまで着ていた服ぐらいだ。

 とはいってもその服は急にクラムベリーに襲われた際に無理な動きをしたせいでもうほとんど服としての体をなしていない布切れと言ってもいい状態になってしまっている。

 以前変身した状態で魔法少女が好きな人たちのオフ会に行ってみたときのような事態になっているがあの時と違って服を急に誰かが着せてくれるなんてことは全く起きていないためにあの時以上に社会的に危機だ。

 魔法少女としての服はカラミティ・メアリがアジトにしているあのホテルに置いてきているから今着替えたくても着替えようがない…

 

「服を気にして戦えないとでも言いたそうな顔をしていますね。」

 

「!?」

 

 考えていることを見透かされた!!そう思いながら放たれた突きを躱すとブチブチブチと布同士をどうにかつないで全裸になるのを防いでいた糸からとても嫌な音がする。

 

 マズイこのままじゃ服が完全に破れる。そう内心冷や汗をかいたその時だった。

 

「現代日本でストリップはまずいだろストリップは。」

 

 そんな呑気そうな声を挙げながら乱入者は現れ、私の視界は急に真っ暗になった。

 顔にかぶさったものを払いのけるとそれは透明な袋にきれいにたたんだ状態で入れられた私の魔法少女としての衣服で、さすがに鎧は入ってなかったが全裸になるよりはある意味でありがたかった。

 

 慌ててその袋を掴みながらその場を離れようとする。当然クラムベリーはそれを防ごうと追いかけてくるが、それを防ぐかのように男が立ちふさがった。

 

 男は右手でもじゃもじゃとした髪をかき上げながら左手を私とクラムベリーの間に通せんぼでもするかのように突き出す。

 

「すまない、恩に着る。」

 

 そうとだけ告げて私は急いで近場の物陰に隠れた。

 

「………なぜ邪魔をするのですか?」

 

 後ろでそんなクラムベリーの声を聞きながら急いで服を着替えようとする。あの男が一体なぜ私のこの魔法少女の服を持っていたのかはわからないが、今は兎に角社会的に死ぬのを避けないといけない。

 社会的に死んでしまったら私が目指す正義の騎士どころの話じゃないからだ。

 

「それが()()()の望みだから。」

 

(俺たち?)

 

 聞こえてくる声の複数形のその言葉に引っ掛かりを覚えるも急いで服を着て飛び出す。丁度その時

 

<デュアルガシャット!!>

 

 聞き覚えがありすぎる電子音と読み込み音声らしき音がして、その上で私の足元を青色のグリッドで構成された波が走り抜けた。それは憎き魔獣の持っている何かが放つ音であるのと同時にグリッドが足元を奔るのはあの魔獣が姿を変えるときに起きる現象だ。

 その音とグリッドの発信源はさっきの男からだった。

 

<The strongest fist!! What's the Next Stage! >

 

<The strongest fist!! What's the Next Stage! >

 

<The strongest fist!! What's the Next Stage! >

 

 そしてそれに続くかのように聞き覚えがない音が繰り返し流れてきた。流れてくる音の感じはあの魔獣が使っているあれと似ている。

 その時に気づいた。男はあの時魔獣が落としてカラミティ・メアリが拾って改造してみたのはいいが使えずにどこかに放置していたものを腰につけているということに。

 

「…まさか」

 

 ぽつりと零す。そしてそれを裏付けるかのように男は腕を右前で交差し、左手を素早くひきつけつつ右手で大きな弧を描き体そのものを右から左に重心ごと動かして左側にCの字を描くかのようなポーズをとる。そして

 

「この展開は心がたぎるぜ。……MAX大変身!!」

 

 そう告げるのと同時にあのバックルについている扉を開いた。

 

<ガッチャーン!!マザルアーップ!!>

 

<♪~><赤い拳 強さ!! 青いパズル 連鎖!! 赤と青の交差!! PERFECT(パーフェクト) KNOCK(ノック) OUT(ア~ウト)!!>

 

 男の周りに赤と青の光で描かれた円が浮かび上がり、そして男の後ろに格闘ゲームのタイトル画面のようなものとパズルゲームのタイトル画面のようなもの二つが浮かび上がってそれが男の背後で一つになる。

 そして男の前には赤と青、一つの長方形をトランプの絵札のように斜め半分にその二色で割った光の壁が浮かび上がり、それにパズルのピースのような絵と炎が移動しながら上半分には赤い色をした格闘家のような絵が、そして下半分には青い何か変な頭をした上半分の格闘家の色違いのような絵が出て、それが男にかぶさるのと同時に男の姿が魔獣のように変わっていた。

 そして目が光る。

 

 頭は太陽のような形をしており赤と青の二色で太陽の放射を表しているように見える。

 肩の装甲は右の方は赤、左の方は青で染められており、首元から走る金色のラインで体全体の装甲の色を2色に分けているようにも見える。

 そしてインナースーツの色は黒だ。

 

「『PERFECT(パーフェクト) PUZZLE(パズル)』と『KNOCKOUT(ノックアウト) FIGHTER(ファイター)』。レベル50(フィフティ)同士の2つのゲームが混ざって一つになった。その名も『PERFECT(パーフェクト) KNOCKOUT(ノックアウト)』。だから今の俺は仮面ライダーパラドクス、レベル99(ナインティナイン)だ。」

 

 男はクラムベリーに説明するかのようにそう言ってから

 

「やっと動き出せたたいがんとこに行く前に準備運動させてくれよ。」

 

 説明の際に顔の前を左から右へ横切る様に動かした右手でパチンっとフィンガースナップをしながらクラムベリーの元へと駆け出した。

 

「邪魔しないでくれませんか!」

 

 クラムベリーはそう言いながら駆け出した勢いのまま殴り掛かる男が変身したパラドクス?とやらの攻撃をさばいていく。

 その一方でパラドクスはラッシュを続けながら

 

「邪魔するさ!!」

 

 と答える。

 右、左、蹴り…まるで格闘ゲームに出てくるキャラクターのような動きを素早く行うパラドクス。

 それを必死の形相でさばき続けるクラムベリーも大概だと思うが、そこまでクラムベリーを追い詰めるこの男はいったい何者なのだろうか。

 そう思いながら見ていると戦局に動きがあった。

 

「マジュウゥゥゥウウウウ!!!」

 

 そんな叫び声が聞こえてパラドクスが一瞬周囲を警戒するかのように固まったその瞬間クラムベリーは一瞬の隙をついて距離を取り、そのまま逃げだそうとする。

 

「あ、待て!!」

 

 それに気づいたパラドクスが叫ぶも、クラムべりーはそのまますさまじい速さで逃げ去って行ってしまった。

 

「チッ……まぁ、過ぎたことは仕方がない。この局面もパズルが動いたということにしておくか。」

 

 そんな意味が捕らえづらいことを言いながらパラドクスは腰につけているバックルの扉を閉め、バックルから青い大きな何かを引き抜く。

 

<ガッシューン!!>

 

 そんな音声とともに赤と青の粒子が散りながらパラドクスの姿は様々な色合いのコードが走っている黒いコートを着たもじゃもじゃ頭の男の姿に戻っていた。

 

「……さて、体もそこそこあったまったし行くか。」

 

 男はそう言って私の方を見向きもせずに山の方へ歩き去って行く。私はそれを見て一瞬だけ呆然としていたが、すぐに気を取り直して

 

「おいお前!!」

 

 と声をかけた。すると男は

 

「なんだ?」

 

 と、こちらへと振り向いて反応した。その無機質なようにも見える瞳に一瞬だけたじろぐも、言いたいことを言う。

 

「お前はいったい何者なんだ!!魔獣の仲間なのか?それとも」

 

 そこまで言ったところでだった。

 

「もし、俺がその魔獣とやらの仲間だとしたらどうするんだ?」

 

 たったの一瞬で数メートルあったはずの距離が詰められ、口をふさがれる。私の瞳を見つめるかのようなその瞳の奥に全てを見透かされるような感覚を抱かされた……が、それも一瞬。即座に周知が上回り、振り払う。

 

「お前をここで倒す!」

 

 そう言いながら構えたが、目の前の男はカラカラと笑いながら

 

「倒す?お前が、俺を?」

 

 そう告げ、

 

「無理に決まってるだろ。」

 

 さっきまで笑っていたとは到底思えないほど感情が乗っていない声、そして表情で私に告げた。

 

「変身していない俺の動きにすら対応できてないのに、その上さらに抗体すらも持っていないお前が俺を倒せるわけないだろ。」

 

「抗体……?」

 

 男が言っている意味が分からず、反芻することしかできない私の前で男は告げる。

 

「お前が俺を倒せるとしたらそれは大我を倒すことができるぐらい強くなってからだからな。」

 

 そうとだけ告げてからこちらに背を向け

 

「じゃあまた遊ぼうな。」

 

 と言ってから赤と青の粒子をまき散らしながら姿を消した。

 

「………」

 

 私は無言のままその場に立ち尽くす。頭の中には魔獣への恨み、そしてあの男のせいで感じた羞恥がないまぜになってぐるぐるとかき混ぜられていた。

 

「くっ…」

 

 プツプツと体の奥底から何かが湧き出てくる感覚がやってくる。

 

「ぐっ……」

 

 それは奥底にとどまることを知らず、徐々に紫色の粒子となってあふれだしてきていた。

 

「Grrrrrrr……」

 

 そして喉から洩れるのは既に人の声にあらず。

 

(あぁ、スノーホワイト。私はもう君の横に騎士として立てないかもしれない。)

 

 そんな風に冷静に考える微かな思いとは裏腹に荒れていく感情と連動するかのよう腕が、足が、そして体全体が出現した紫色の粒子に包まれる。

 

 

 

 

 

 出現した紫色の粒子は卵を形作るかのように上は鋭く、下は広く、その表面を均一にしていく。

 そして、数秒後…紫色の粒子によって(かたど)られた卵の中で赤い二つの光が点った……

 そのことに誰もまだ………気づかない。否、気づけない。

 

 

 

 

 

 

 ◇  ◇

 

「なぁリップル……」

 

 たいがが背中から飛び降りて行ってから数秒ほどたって俺は傍らに立つリップルに語り掛ける。

 

「……なんだ。」

 

 リップルがそう答えるのを待ってから

 

「俺たち、たいがに対してひどいことしちまったのかもな…」

 

 そうこぼすとリップルは

 

「知らない。けど、礼を言い損ねた。」

 

 とだけ言ってから遠くの山間から昇り出した朝日が目に染みたのか目をしかめた。

 

「帰ろう。もうすぐ朝になるし人が来る。」

 

 そう言ってさっき突き飛ばされたときに俺が落とした箒を取りに行く。

 

「……そう……だな。もうすぐ朝になるもんな…」

 

 俺はそう自分自身に言い聞かせるようにしながらリップルが持ってきた箒に乗った。

 

「ちゃんと掴まれよ。」

 

「……ん。」

 

 後ろに横向きに乗るリップルにそう声をかけてから箒を空へと走らせる。

 山間の隙間から光り輝く太陽は、俺たちがこの夜を生き抜いたことを証明しているのと同時にその赤い色は目の前で起きたあのショッキングな光景を連想させた。

 

 

 

 ◇  ◇

 

「はぁっ……はぁっ!!」

 

 瓦礫が大量に積み重なる町の中を駆け巡る。

 

「どこだ……どこにいるんだ…!!」

 

 爆発と火災、そして銃声が鳴り響くせいで大混乱の最中の町を駆けまわり続けて既に何時間も経っている。

 

「連絡は……ない…か」

 

 連絡が入ってないか祈る様につけた携帯の画面には普段通りの画面しか映っておらず、彼女が僕がした連絡を見ていないことを証明していた。

 

「くそっ!!」

 

 既に足は限界を超えている。一睡もできてないせいか今すぐにでも倒れそうだ。

 

「……気張れよ僕!!」

 

 一瞬ひざから下の力が抜け、ふらついたその足を自分の手で強くたたき、すぐに動き出す。

 

 さっき見た時計の時間を考えるともうすぐ夜が明ける。

 今日の仕事は休もう。仕事よりも彼女と、おなかの中にいる子供の方が大事だ。

 

「やみくもに探していて見つからないなら……公園にいるのか?」

 

 この近辺の緊急時の避難所は確か中央公園だったはずだ。ならもしかしたらそこにいるのか?

 僕は公園へと限界を超えそうな足を引きずるかのように公園へと向かった。

 

 公園の中にはたくさんのけが人や夜の女性、そして白いスーツを着た男性たちなどが集まっていてスーツを着た男たちが周りの人間に必死の形相で指示を出してけが人の治療などができるように場所を作ったりしていた。

 

「つばめー!!どこだー!!」

 

 人が集まっている中を擦れそうな声を無理やり出しながら回る。それでも返事はない。声が擦れすぎて聞こえないんだろうか。だから僕は近くにいた煤まみれの特攻服を着ている男性の肩を叩いて

 

「すいません。この公園に着ている人の中に妊婦はいませんでしたか?」

 

 と聞いてみた。

 

「いや、知らないな。……ちょっと他の面子(メンツ)に聞いてみるから待っていてくれ。」

 

 男性はそう言ってスマホを操作し始め、どこかに電話し始めた。

 

「あ、かけるか?今大丈夫かお前?」

 

『……』

 

「公園?なら都合がいい。お前つばめの姐さん知ってるよな。」

 

『……』

 

「知ってるならなおさらだ。お前つばめの姐さん見てないか?」

 

『……』

 

「見てない?わかった。もし見かけたら声かけてくれや。今旦那さんが捜しに来てるから。」

 

『まじか!!』

 

「お前声でけーよバカ!!」

 

『……』

 

「わーったわーった。旦那さんに(とつ)したいにしても今はやめとけ。と言うか、この状況でお前はその考えしか出んのか。」

 

『……』

 

「それじゃあ後で見つけたら連絡くれや。」

 

 そういって男性は通話を終える。

 

「にしても、こんなところで会うとは思ってもみなかったぜ室田のおっさんよ~。役所の仕事か?」

 

 通話を終えるなり彼は僕にそう話しかけてくる。

 彼は僕が以前つばめと市役所の仕事で初めて会ったときにつばめが率いていた「燕無礼棲(エンブレス)」と抗争していた暴走族のグループの一人だ。

 抗争していたとはいえ、彼女たちにぼっこぼこにされた結果それなりに仲は良い?と言うような関係に落ち着いたらしく、僕とつばめが結婚したときに式を挙げようということになった際に祝いの品と言う名目で一升瓶をもって自身のグループの数人を率いて乱入してきたことがある。

 

 そう言った関係性なのもあって彼はつばめが妊娠していることも知っているし、僕が市役所勤務だということも知っている。

 因みにさっきの電話の相手は多分僕にとつとかそんなことを言っていたことから結婚式の時に「つばめをかけて勝負せぇやぁ!!」とか言ってつばめ側の友人として参加していた”元”「燕無礼棲(エンブレス)」の少女たちと今目の前にいる彼とその友人に即座にぼこぼこにされて追い出されていた少年のことだろう。

 

「仕事じゃないよ。」

 

 僕は彼の質問に答える。

 

「昨日の夜に仕事から帰ったらつばめが居なくてね。その少し前から市街地でこの爆発騒ぎじゃないがおきていたんだ。だから巻き込まれてないか心配になってずっと探しているんだよ。」

 

「まじか~。姐さんどこにいるんだろうか……連絡は?」

 

「したよ。けどまだ返ってきてないんだ。」

 

「姐さんのことだからさすがに連絡を無視するとかはないだろうから……電源が切れてるとかかねェ…」

 

「そうだといいんだけどね。と言うよりも既に家にいてくれたら一番いいんだけど。」

 

 僕がそうこぼすかのように言うと

 

「そりゃそうだ。それだとただの笑い話で済む。」

 

 彼はそう言って笑った。

 

「そうだね。……僕はもう少し町の方を探してみるよ。それじゃあこれで。」

 

「そんじゃ俺も声かけて回ってみるわ。」

 

 そんな彼の笑顔を見ながら僕は再び歩き出す。

 

 公園を出てすぐにビルの隙間から差し込んできた朝日がまぶしい。そう思ったそんな時だった。

 

「!!」

 

 スマホが振動する。急いでスマホを手に取り、確認するとそれはつばめからの電話だった。

 急いで電話に出る。

 

『ごめん。心配かけさせたみたいだね。』

 

 第一声がそれだった。

 

「本当だよ。今どこにいるの?」

 

 安心からか一気に力が抜けたせいで転ぶのを避けるために近くのビルに背中を預け、通話を続ける。

 

『家だよ。ところで昇一は今どこにいるの?』

 

「公園だよ。つばめがここにいるのかと思ってさ。」

 

『公園に?なんで?』

 

「町の方で爆発騒ぎがあったんだ。その関係でみんな公園に避難していたんだよ。ところでつばめはどこにいたのさ。」

 

 僕は話しながら家の方へと足を向けた。

 光が差す方へ。




 感想、評価などよろしくお願いします。

 来年にその世界に大量の被害と、迷惑を生んだ伝説のヒモが帰って来るそうです。
 金と時間があれば観に行きたいかな……とは思います。
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