前回の投稿が十月……そして今が四月。
正直なところ、本当に申し訳なかったです。
ここまで放置するつもりではなかったのですが……
とりあえず生存報告も含めて、短いですが投下します。
それと後書きにお知らせがあるので、目を通して頂けると嬉しいです。
何事もなく夜が明け、ラーグリスへと向かう馬車は朝方に予定通り出発した。
この後も特にトラブルがなければ昼前には到着できるらしい。
「あーでもこの辺にも生息してるらしいのよね……マジックイーター」
「ひっ……!」
「怖がらせるようなこと言うなよお前……」
暇を持て余したであろうロザリーがそんなことを言ってからかってくる……冗談に聞こえないあたりが怖くて仕方ない。
「大丈夫よ、もしまた奴等が来てウィズを食べてもちゃんと助けてあげるから」
「あれ、私が食べられるの前提なの? できれば食べられる前にどうにかして欲しいんだけど……」
また口の中に放り込まれるのは勘弁してほしいのだが。
しかし本当にまた奴等がきたらどうしようか……魔法は効きにくいとなると攻撃するより足止め系の魔法で支援に回った方が良いのだろうか。
けどまた大群で来られたら対処しきれないだろうしどうしたものか。
何か他に良い手がないものかと頭を捻る。
一番良い手として、接近される前に爆裂魔法で一掃するというのがあるが、爆裂魔法は魔力の燃費がよろしくないので、使えても数発が限度な上、その場を仮に爆裂魔法でしのいだとしても、その後何かがあった時に魔力切れで動けないなんて洒落にならないのでこれは最終手段だ。
「……あ、そういえば」
さらに頭をひねっていると、あることを思い出した。
「……なにそれ?」
ポーチから取り出した物体……昨日商店街で買った魔道具を見るなり、何故か二人の顔はしかめっ面になった。
「なんでそんな顔してるの……? えっとこれはね、モンスターを追い払うことができる魔道具なんだって!」
何故こんな便利なものを今の今まで忘れていたのだろうか。
この魔道具を昨日のマジックイーター相手に使っていたらあんな事にはならずに済んだかもしれないというのに。
「ふーん……一応聞くけどど、具体的にはどうやって追い払うの?」
「えっとたしか……ケイブバッドっていうモンスターの鳴き声を再現した音声を流すらしいんだけど」
「なんだやっぱりガラクタじゃない、捨てましょう」
ロザリーは自分の手から魔道具をひったくると、それを馬車の窓の外へ……
「ちょ、ちょっと!? なんで捨てようとしてるの!?」
一体この魔道具の何が不満だと言うのか。
というかそれ結構高かったので捨てるのだけはやめてほしいまじで。
「あのね、確かにケイブバッドの鳴き声は外敵から身を守る為のものよ。けれどその鳴き声ってのが、まるで金属を爪で引っ掻いたような鳴き声なのよ。しかも鼓膜が破れるんじゃないかっていうくらいの大音量でね……」
……あれ、つまりこれって。
「もしこの魔道具を使って効果が本物なら確かにモンスターを追い払えるでしょうね、その代わりその場にいる全員が地獄のような苦しみを味わう事になるわ……そういうわけだからこのガラクタは捨てた方が世のためよ」
「ま、待って! 確かに使い所は……あまりないかもだけど、いつか! いつかきっと役に立つ日がくるから捨てないで!」
「ええい何よその根拠のない自信は!? 大体前から思ってたし、この際だから言っとくけど、あんた魔道具に関してのセンスがおかしいどころかどっか大切なものが抜けてるわよ」
「ひ、酷い!?」
まぁ確かに個性が強すぎる魔道具ばかり買っている気はするが、どれも正しい使い方をすればきっと役に立つ物ばかりなはずだ。
決してガラクタなどではないはず。
「……もしかしてウィズ、そのポーチにまだ何か入ってるなんてことないわよね?」
「うっ」
しまった。
無意識的に自らのポーチに注意を向けてしまっていたようで、ロザリーに勘付かれてしまった。
「ね、ねぇロザリー……なんでそんな両手を構えてにじり寄ってくるの……? い、いやぁ! やめてー!」
「お、おい二人とも! こんな狭いとこで暴れるなって!」
馬車が止まった。
そして結局出発前に買った品々は、自分のポーチから一つ残らず消え失せた。
「ねぇブラッド、心なしかウィズのくせ毛がさっきより垂れ下がってるように見えるんだけど」
「奇遇だな、俺もそう思う。あと原因は間違いなくお前が馬車の窓から魔道具を投げ捨てたからだぞ」
「あれは正しい判断よ、言っとくけどあたしはゴメンだからね、死因が仲間の買った魔道具の誤爆だなんて」
「……確かにそうだな、洒落にならんなそれ」
「二人とも聞こえてるからね!?」
流石に誤爆で死ぬかもだなんて言い過ぎではないだろうか。
……確かに何回か危険な目に合わせてしまったこともあるかもだが。
そしてそこまで考えると、ふっとある疑問が湧いてきた。
「ね、ねぇ……私の買った魔道具が役に立った時も……あるよね?」
「……街に入ったら少しぶらついてみないか? 荷物もそんなないし問題はないだろう」
「そうね、久しぶりの故郷だものね。家に帰る前にそこら辺観光しても良いわよね」
「む、無視しないで答えてよぉ!」
馬車を降りて、目前に見える街の入り口らしきところへさっさと歩いていく二人を慌てて追いかけながら講義の声をあげる。
しかし自分の声が届くことはなく、気が付けば既に街の中へと入ってしまった。
「おぉ……」
そして無意識に、小さな感嘆をこぼした。
街の入り口となる門をくぐれば、そこには美しい街並みが視界いっぱいに入ってきたのだ。
アクセルの街も綺麗なところではあるが、ここの街も負けていないとばかりに芸術性かつ機能性に優れていそうな建物が綺麗に建ち並び、そこらを行き交う人々の活気も凄まじく溢れているのが遠目でも良くわかった。
さらに極め付けと言わんばかりに、街の中心部らしき所には、とても大きな女性の姿を模った銅像がここからでもよく見える。
その奥には……教会だろうか、それらしきものも見えた。
遠目からでもあんなにはっきり見えるということは、どちらもかなりの大きさなのだろう。
「……もしかしてさ、ウィズのあのくせ毛って神経通ってるとか?」
「あー、確かに。なんかみょんみょん動いてるからね、明らかに」
そんな二人の言葉を背に、街の舗装された道を歩き出す。
それにしても何を言ってるのだろうか、髪の毛に神経が通っているわけないし、風が吹いたりしない限り勝手に動き出す事なんてあるわけない。
「……そういえば、ここって結局どんな街なの?」
「んー、見てわからない? あの大きな像を見れば一目瞭然なんだけど」
と、街の中心部にある大きな像を指差すロザリー。
……どっかで見たような見てないような。
「あっと、そういえばウィズって世間知らずだったわね。あれはエリス様の像よ」
「エリス様?」
エリス様というと、ロザリーが信仰しているエリス教の女神様の名前だったはずだ。
その女神様を象った像があんなにも目立つ所にあるということは……
「そう、ここはエリス教団が集い、エリス教の発祥地でもある聖地。ラーグリスよ!」
ほうほう……エリス教の発祥地とな。
「じゃあここって、エリス教団にとって大事な場所なんだね」
きっとロザリーがあそこまで熱烈にエリス教なのは、エリス教団の聖地であるこの場所で育ったからなのだろう。
「あれ、そういえばブラッドもここの出身なんだよね? エリス教じゃないのは何か理由があるの?」
「あぁ、別にここで生まれ育ったからと言って、全員が全員エリス教ってわけじゃないんだよ。とは言っても、街の住人の八割近くが当てはまるんだがな」
成る程、別にこの街で住むためにはエリス教に入らなければならない……というわけではないらしい。
よく宗教国家とか耳にするけど、この世界ではそんなものはないのだろうか。
「そんな強制するような悪どいことは、エリス教は絶対にしないわよ」
エリス教『は』か……ということは、そういう事をしているところもあるのだろうか。
「そうだな……アクシズ教辺りだと、ちょいと周りとは違う感じはするな」
「アクシズ教?」
以前ロザリーがポツリとこぼしていたような気がする名前だ。
「その……アクシズ教って、エリス教と仲が悪かったりするの?」
「そうね……けど仲が悪いというより、あっちから一方的に絡んでくるのよ。一応エリス様の先輩にあたる女神様が元締の教団だから、本来は手を取り合っても良いと思うんだけどね……」
ロザリーは少し悲しそうに、どこか呆れたように言う。
確かに、先輩と後輩という関係の女神様同士なら、仲が良い感じはするのだが……それとも女神様は関係なく、単に教団の人の性格とかが関係しているのかもしれないが。
「ちなみに、アクシズ教の本拠地であるアルカンレティアっていう場所もあるぞ。ここから正反対の位置にあるが……」
「アルカンレティア……そこはどんな街?」
「そうだな……水と温泉の都って言われてるくらいだから、綺麗な湖とか、温泉とかが有名だな」
「温泉……!?」
なにそれ凄く行ってみたい。
異世界の温泉がどんなのか物凄く興味がある。
「ねぇ、この街出たら、アルカンレティアに直行しない?」
「いやよ」
「えぇ!?」
まさかの即答からの拒否である。
「ぶ、ブラッドは……? 私と温泉入りにいかない……?」
「え、それ混浴ってこと……い、いや! 俺も正直行く気はしないな。できるならアクシズ教とは関わりたくないし」
なんでだ、そんなに酷いものなのだろうかアクシズ教とやらは。
こうなったら時間を見つけて一人で行くのも手かもしれない……しかし未知の恐怖が少し躊躇わせる。
「何しょげた顔してんのよ、この街だってアルカンレティアに負けないくらい良い街なんだから。ほら、夕方になるまで名所巡りするわよ」
何やら少しムキになっているロザリーに手を引かれ、三人で街を練り歩いて行く……
あぁ、何でだろうか。
この光景を夢にまで見ていた気がするのは。
何不自由なく、大切な友人と何気ない毎日を過ごすこの光景。
とても心地の良いものだ。
しかし、どこか物足りなさというべきか……何か大事な事が抜けている気がする。
……嗚呼、でも今は精一杯今を楽しもう。
それが『私』の夢だったと思うから。
ちょっとお知らせがあります。
本来この小説は、20〜30くらいの話数で完結させるつもりだったのですが、予定を変更して20話くらいで完結させます。
なので話がさらにハイスペースで進むので、ご注意です。
具体的に言うと、予定してた1章分を丸々カットします。
誠に勝手ですが、ご了承して頂けると幸いです。