この素晴らしい世界に祝福を! ウィズの冒険   作:よっしゅん

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というわけで番外編となります。


この仮面の悪魔に相談を!
相談屋はじめました


 

 

 

 

 

「ち、ちょっと待ってください『バニルさん』! わざとじゃないんです! 確かにバニルさんに黙って仕入れたのは謝りますけど、私だってやればできるって事をバニルさんに知ってもらいたくてですね……あ、お仕置き光線の構えでジリジリとにじり寄って来ないでください! それ地味に痛い……ひゃああああ!?」

 

 全身に冬場の静電気が流れたかのような、そんな痛みが一瞬走った。

 

「この我輩とあろう者が抜かったわ! この妙に頑丈で少し焦げただけの腹ただしい店主の特殊能力を舐めておった! まさかあれだけの大金を一瞬で使い切るとは……!」

 

「わ、私としては良かれと思って……品質に間違いはありません、売れるんです! きっと売れるんです!」

 

 目の前で苛立ちを隠せないでいる悪魔の友人に、必死の弁解をする。

 

「こんな高価な石ころが売れてたまるか! 万年金欠の駆け出し冒険者しかいないこの街で、一体誰がこんな物を!」

 

 バニルさんは、足元に積まれた、私がつい先日取り寄せた大量のマナタイトをまるで親の仇のような形相で見ながら言い放つ。

 

「マナタイト自体は売れ筋商品だが、なにゆえ最高品質のマナタイトなどを買い占めたのか理解出来ぬわ! 一つ数千万もするマナタイトなど誰が買うか! そんな物を買うくらいなら、同じ使い捨てアイテムであり誰にでも簡単に使える、魔法が封じられたマジックスクロールを大量に買うわ!」

 

「し、品は最高品質なんです、大事にとっておけば、いつか通りすがりの大魔法使いが、これは良い物だと買い占めてくれたり……」

 

「そんな奇特な大馬鹿者がいてたまるか! ああ、なんて事だ……あの金を元手にこの街にカジノを造り、あぶく銭を手に入れるはずが……このポンコツ店主め! なぜだ!? なぜ汝は働けば働くほどに赤字を生むのだ! その忌まわしい呪いはどうにか解呪出来ないのか!?」

 

「わ、私は特に呪われているわけでは……」

 

 そういえば昔、仲間たちにも似たような事を言われたような気がする……別に呪いとかかかってないのに。

 

「……くっ、なぜ我輩はこのような世にも奇妙な店主の下で金を稼がねばならぬのだ……人間だった頃の汝はもっとこう、誰もが注視し自ずと従う、そんなカリスマを持つ優秀な人間だったはずなのに……!」

 

「えっと……冒険者時代は色々と訳がありましてですね、特にバニルさんと出会った頃は何というか……常に気を張り詰めてないと自分が何なのかわからなくなりそうだったので……どちらかというと今の私が素というかですね……その、ごめんなさい」

 

「つまり本来の汝は脳内が常にフワフワしている天然店主であったか……『ウィズ』、小遣いをやるから十年ほど旅をしてこい。その間に我輩が、この店をアクセル一の魔道具店に……」

 

「嫌ですよ、私だけ仲間外れにしないでください!」

 

 そもそも十年分の小遣いがあるのなら、お店の為に使うのが道理ではないのだろか。

 

「なに、少しだけ長い休暇と思えば良い、赤字だらけとはいえ我輩がこの店に来るまでは一人で頑張っておったのだろう? ならば十年くらい休んでも良いのではないか? その気になれば、この世界中の温泉という温泉を堪能できるやもしれんぞ」

 

「お、温泉……」

 

 その言葉にぐらりと心が揺さぶられた。

 正直に言おう、私は温泉というかお風呂が好きだ。

 この前も知り合いのある人達と一緒に『アルカンレティア』に行ったのだが、あそこの温泉は実に最高だった。

 

「うっ……そ、その手にはのりませんよ! というか、ずるいですよバニルさん、そうやって私の好きなもので釣ろうだなんて……あなた悪魔ですか!?」

 

「うむ、紛れも無い悪魔なのだが……」

 

 しかし私は屈しない。

 悪魔の囁きなんなに負けない!

 

「と、とにかく大丈夫ですよバニルさん。なにせ私達には寿命がないじゃないですか……地道にコツコツと稼いで、いつかはアクセル一……いえ、世界一の大商会を目指して頑張りましょう!」

 

「……我輩が店主をやれば、それも不可能ではないのだがな」

 

 と、何やら小声で言うバニルさん。

 残念ながら内容は聞き取れなかった。

 

「その暁には、あの時交わした契約通り、手に入れた莫大な資金と私の魔法でバニルさんに世界一のダンジョンをプレゼントしますから!」

 

 そう、それが私とバニルさんの契約なのだ。

 

「私は一人でお店を盛り上げたいんじゃないんです、大切な仲間や友人と一緒に盛り上げたいんです。私も新商品を考えてみたりと、頑張りますから! ……というわけで、まずはこのカタログにある商品を見てくださいバニルさん! ほら、これです! 売れると思って見本を取り寄せておいたんですが、早速一緒に試してみましょう!」

 

「また汝は勝手な事を……それで、その子供が喜びそうなバネのおもちゃはどんな魔道具(ガラクタ)なのだ?」

 

 どこか呆れたような様子を見せながらも、ちゃんと聞く姿勢をするバニルさん。

 これは名誉挽回のチャンスだ。

 

「これはですね、『カエル殺し』って呼ばれる魔道具なんです。ジャイアントトードっていうモンスターがこの街の近くに沢山いるじゃないですか? そこでこれをジャイアントトードの近くに置くと、餌と勘違いして食べちゃうらしいんですよ。するとこの魔道具に封じられていた炸裂魔法がジャイアントトードを木っ端微塵にするというとても素晴らしいものなんですよ!」

 

「ふむ……ちなみにそれは一ついくらなのだ?」

 

「はい! 二十万エリスです!」

 

「よし、ガラクタだ。もし見本のみならず大量発注しているのならすぐに取り消せ」

 

「えぇ!? なんでですか!?」

 

 何故だ、一体何がダメだったというのだろうか。

 バニルさんに詰め寄り訊ねてみるものの、答えてはくれず。

 遂には紙とペンを持ち出し何かを考えながら書き始める始末だった。

 

 無視され続けるほど辛いものは無いので、何とかバニルさんの機嫌を取り戻そうと奮闘していると、店の来店を知らせるベルが小さく鳴った。

 

「おじゃまー! この美しい女神『アクア様」が今日も遊びに来たわよー!」

 

 ……あぁ、お茶の用意をしなくては。

 一瞬お客さんかと期待したが、彼女はお客さんと呼ぶべきなのか怪しいところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇウィズ、このぴょんぴょこ動くバネのおもちゃは何? ちょっと興味深いんですけど」

 

「あっ、さすがはアクア様、お目が高いです! それはですね……」

 

 未だに無視を決め込むバニルさんに機嫌を直してもらおうと奮闘していると、先程来店した彼女……女神アクア様がそう聞いてきた。

 なので先程バニルさんにしたような説明をアクア様にもすると、感嘆の声をもらした。

 

「凄いわ! あの憎たらしいカエルもこれさえあれば怖くないわね!」

 

「そうでしょう!? この魔道具のお値段は二十万エリスです! これでカエルの繁殖期だって怖くありません!」

 

 商品に興味を示したアクア様に、ここぞとばかりに売り込もうとする。

 

「あの強敵が屠れるのなら、これは買いかもしれないわね。私は『ゼル帝』を買ったおかげで手持ちがないから、『カズマさん』におねだりしてみようかしら」

 

「ぜひお願いしますアクア様! きっとカズマさんも、この魔道具の素晴らしさを分かってくれるはずですから!」

 

 やはりこの魔道具はガラクタなどではなかった。

 だってこんなにも興味を示してくれるお客さんがいるのだから!

 

「用もないのにちょくちょく茶を飲みに来るタカリ女神よ、ウチの欠陥店主が勘違いするので、調子に乗らせる言動は謹んでもらおう……というか貴様は一体何なのだ? 毎日毎日そんなに暇を持て余しているのなら、あの貧弱な小僧に構ってもらうがいい」

 

 すると黙り込んでいたバニルさんがようやく顔を上げ、アクア様にそう言った。

 というか欠陥店主は酷くないだろうか。

 

「なによ、最近はこのお店に迷惑かけてないはずよ? こないだまでは混んでたこのお店も、今は見ての通り客なんて来ないしいいじゃない。それにカズマさんたら、暑いから外に出たくないって言って部屋中にフリーズの魔法をかけて引きこもってるのよ? 涼しくなる夕方頃じゃないと起きてこないから、それまでの間暇なのよ」

 

 成る程、道理でここ最近毎日のように遊びに来ていたわけか。

 確かにこの時期の外の気温はだいぶ高くなるし、カズマさんの気持ちもわからないでもない。

 

「で、あんたはさっきから何してんの?」

 

「新たな儲け話を考えているのだ。なにせ、そこの茶飲み店主の手により我が成り上がり計画がパーになったからな……実は、このままでは今月の家賃すら危うい状態でな。最悪、我輩がよその店でバイトをする必要すらあるのだ。貴様も神を自称するのなら、日々散財店主に悩まされている迷える我輩に道を示してくれてはどうか?」

 

 さ、散財……わざとじゃないんです、良かれと思って……

 

「神を自称だとか、あんた私に喧嘩売ってんの? 神の叡智をタダで授けてもらおうだなんて虫が良すぎるんじゃないかしら……そうね、確実に儲かる素晴らしい案があるけど、教えてくださいってお願いするのなら考えてあげてもいいわ」

 

「そんな案があるんですか!? ぜひ教えてくださいアクア様!」

 

 これこそがまさに神の導きというやつだろう。

 

「ふふ、まあ聞きなさないな。女神であるこの私が降臨したからには、いずれ魔王は倒されるでしょう。すると平和になった人類は人口も増加の一途をたどり、数百年もすれば人の住める土地も足りなくなるわ。そこで、土地転がしよ! 土地転がしをするの! 今の内に土地をたくさん買っておくのよ! これは不死であるあんた達にだけ可能な手よ!」

 

「凄いですアクア様、それなら確実に儲かります! バニルさん土地です! 土地を買いましょう!」

 

 なんと、まさかそんな手があるとは盲点だった。

 

「落ち着きなさいなウィズ、私は確実に儲かる案が一つだけとは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったわねウィズ、これで資金は調達できたわ!」

 

「えぇ、そうですね。あとはこれを使って土地を買えるだけ買っちゃいましょう!」

 

 いくつかの素晴らしい案をアクア様に出してもらったが、確実性を重視して最初の土地転がしの案を実行することにした。

 その為の資金もあちこちからお金を借りた。

 利子もバカにはならないが、これも未来の投資のためだ。

 

「さすがは私ね、こんな素晴らしい案を考えるなんて! これでカズマさんも私の事を見直して『アクア、いえアクア様、今まで貴女様を馬鹿にしてすみませんでした』とか言ってくれるに違いないわ!」

 

 と、やけに上機嫌なアクア様は、あまりの気分の良さにダーッと走り出す勢いで私のお店へと向かう。

 その段々と遠ざかっていくアクア様の後ろ姿を見送りながら、私は自分のペースでのんびりと歩く。

 

「……あれ、そこの人、もしかしてウィズ?」

 

「え?」

 

 すると突然すれ違った赤い髪の女の人に、私の名前が呼ばれた。

 

「えっと……」

 

「あ、もしかして忘れちゃった? 昔はギルドの受付越しによく会ってたじゃない」

 

 昔ギルドで……?

 ギルド……受付……赤い髪。

 

「……あ、もしかしてサン!?」

 

「思い出してくれた? 久しぶり、あなたが王都に行くためにこの街を出て行ったときぶりね」

 

 そうやって笑顔を見せてくれる彼女の顔は、確かに昔よりは老けていたものの、面影が残っていた。

 

「わぁ久しぶり、元気にしてた?」

 

「まぁね、実は私もウィズが居なくなったあと他の街に移動したのよ。そこで結婚して、娘も一人授かったわ」

 

 なんと、それはそれはめでたい事だ。

 

「じゃあアクセルには住んでなかったの?」

 

「えぇ、私もこの街に戻ってきたのはつい昨日なのよ。実は娘がこの街の冒険者ギルドで働いててね、その様子を少し見に来たってわけ」

 

 成る程、私はこの街に戻ってきてからそこそこの時間が経つが、通りで今の今までサンに会うことがなかったわけだ。

 

「そういうウィズは? 風の噂だと単身で魔王城に乗り込んで命を落としたとかそんな噂があったから心配してたんだけど……」

 

「あ、あはは……死んではないけど、冒険者はもう引退したよ。今はこの街でお店を構えてるの」

 

 嘘です、実はもう死んでいるようなものです。

 魔王城に乗り込んだのも強ち間違いではないです。

 

「そうなの……まあ元気そうで何より……何か昔と比べて色白というか、顔色悪くなってない?」

 

「き、気の所為だよ……」

 

「そう? ……というかウィズって今いくつ?」

 

「え? 今年で三十歳だけど……」

 

 リッチーになったのが二十歳のとき、それから十年経っているので三十歳だ。

 

「そうよね……私が今年三十三歳だからそうなるわよね……なんか見た目が物凄く若く見えるんだけど、何か特別なケアとかしてるの? あったら教えて欲しいんだけど」

 

「え、特にはしてないよ……?」

 

 そりゃリッチー化により肉体的な老化は止まっている為、私の肉体は常に二十歳のそれなのだから当然のことだろう。

 

「ぬぅ、何もしてないのにその若々しさとか……この世は理不尽ね」

 

「そ、そうかな……?」

 

 強いて言うならアンデッド化だが、当然そんなものをサンに進めるわけにはいかない。

 

「おっと、ごめん娘を待たせてるんだった。今度会う時はゆっくり食事でもしながら昔話でもしましょう」

 

「うん、またね」

 

 手をひらひらと振ってサンを見送る。

 予想外の展開に心を躍らせる。

 

「……昔か」

 

 ふとかつての仲間たちのことが頭に浮かんだ。

 あの時以来一度も会ってないから、少し寂しくなった。

 

「ああでも、私がリッチーになってるだなんて知ったら怒るだろうなぁ」

 

 例えばアークプリーストの仲間、アクア様のように出会い頭に浄化魔法を放ってきそうだ。

 まぁそのアクア様も、ここ最近は私に浄化魔法を放ってくることが無くなってきたのだが、その代わりバニルさんに矛先が向いている気がする。

 

「……あ、アクア様を追いかけなきゃ」

 

 もしかしたらはしゃぎ過ぎて、道の真ん中で転んで大泣きしているかもしれない。

 ほんの少し歩くペースを早め、帰路に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 店の前に着くと、何やら中から声がした。

 一瞬いつのまにか出掛けていたバニルさんが戻ってきたのかと思ったが、バニルさんの声ではなかった。

 

「この馬鹿が! どうしてお前はいつもいつも余計なことばかりするんだよ!?」

 

「うえええええ! だ、だって知らなかったんだもの! しょうがないでしょ!? むしろ褒めてよ! 私はウィズの為を思って提案しただけなの! 褒めてよ、アクア様偉いって褒めてよ!」

 

「褒められるかぁ! お前下手したらこの店が破綻するかもしれないんだぞ! いいのかウィズが路頭に迷っても!?」

 

 と、何やら物騒な会話がする。

 この声は先に帰ってたアクア様と……

 

「カズマさん、来てたんですね。今お茶淹れますから」

 

 彼女の冒険者仲間、いや保護者と言った方が良いだろうか。

 名を佐藤和馬、通称『カズマ』と呼ばれる少年がいた。

 おそらくアクア様の帰りを気にして迎えに来たのだろう。

 

「いや毎回言ってるけど、客に茶を出す魔道具店なんて無いからな。というかウィズもちょっとこっちに来い」

 

「え、な、なんですかカズマさん……?」

 

 ……そうして泣き噦るアクア様と一緒に、コンコンと土地についての説明を受け、ようやく私達の間違いに気が付いたのであった。

 

 

 

 

 

「本当にうちの馬鹿が迷惑をかけた……すまんウィズ」

 

「い、いえ……気付かなかった私にも落ち度はありますし、アクア様も私の為を思っての事でやったわけですから……」

 

「そうよ! わざとじゃないもの! 私は悪く……いたぁい! 二度も、二度もぶったわね!」

 

「うるさぁぁぁい! 殴って何が悪い!? くだらない事ウィズに吹き込んだせいで、借りてきた金の利子がとんでもないことになったのは何処の誰のせいなんだ!?」

 

 そう、カズマさんの説教を受けた後、すぐに今日借りてきたお金は全て返してきたが、借りた額が額な為今日一日分の利子だけでもかなりのものになってしまった……そしてその利子を払えるだけのお金は今のお店の経済上的に払えるわけがない。

 

 そしてカズマさんはアクア様を引きずって帰っていった。

 帰る前に、この埋め合わせは必ずこのアホ女神にさせるから……といっていたが、一体何をさせるつもりなのだろうか。

 

「帰ったぞ留守番店主よ。汝に、悪魔に友人認定されたというのに微妙に喜ぶ奇特な娘を紹介しよう!」

 

 程なくして、バニルさんが帰ってきた……見覚えのある女の子を引き連れて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く汝という生き物は……その行動力の良さは褒めてやれるが、その結果が悲惨な事になるとなぜ予測できない? やはり呪いか? 解呪できないとなると、我輩でもお手上げだ。やはり汝は二十年ほど旅に出るのが吉だ」

 

「十年増えてるじゃないですか!」

 

 さすがに嫌だ、ウィズ魔道具店が二十年後にはバニル魔道具店という名前になっているのが。

 

「……はぁ、まぁ良い。あの憎たらしい女神の保護者が埋め合わせをすると言っておったのだろう? あの小僧が考える事だ、多少の負債くらいはカバーできるのは間違いないだろう。それよりポンコツ店主よ、そろそろこの店の看板に『女神出禁』と付け足すべきではないのか?」

 

「それじゃあアクア様が可哀想ですよ、せっかく来てくださっているんですから」

 

 私がそう言うと、バニルさんはふむ、と声を漏らしてから言った。

 

「前から疑問に思っていたのだが、汝はあの女神が憎くはないのか?」

 

「はい? アクア様を……ですか?」

 

 何故そんな事を聞くのだろうか。

 

「あの女神だろう? 汝をこの世界に転生させたのは。奴のせいで汝の人生は狂った……ともいえるのではないか? 中途半端な転生のせいで汝は己について苦しみ続け、結果としてリッチーとなって未だこの世界に囚われている。全ての大元の原因は、あの女神にあり、汝はそれを憎むべき権利を持っているではないか」

 

 ……確かに、その通りかもしれない。

 

「そうですね……時々ふと思うときはあります。もし普通にこの世界に転生してたら、もっと違う人生を歩んでいたのではないか、今よりも幸せな人生を過ごせていたのではないか……って」

 

 しかし、それはもしもの話。

 起こり得なかったイフの物語だ。

 

「でもきっと、私の人生……『()』の物語は最初から決まってたんだと思います。私はそれに対して今の所は文句は無いし、受け入れていますので、誰が悪いだとかは決め付けたくないんです……それに彼女は、『彼』をこの世から解放してくれました……それだけで『お詫び』としては充分です」

 

 それに彼女はどうやら私の事は全く覚えていない様子だ。

 覚えていない相手にとやかく言っても仕方がないだろう。

 

「……そうか、ならば我輩から言うことはもう何もない。早い所契約を完了させ、汝もこの世からとっとと解放されるが吉……想い人が待ちくたびれてしまうぞ?」

 

「ふふ、私も結構待たされてましたから、次は彼の番です。少しくらいなら彼も待ってくれますよ……」

 

 それにやるからには楽しくやらなければ損だ。

 

「というわけでバニルさん、今月の赤字を打開すべく、新しい商品をいくつかマークしておきましたので一緒に見ていきましょう!」

 

 

 

 

 




『原作』
基本的に今回の話に至るまでのお話は、原作と大体同じ通りに進んでいます。
なので番外編は、この仮面の悪魔に相談を! をウィズ視点で進めていくものとしてお考えしてくださると読みやすいかなと思います。
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