この素晴らしい世界に祝福を! ウィズの冒険   作:よっしゅん

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ちょっと話の流れが無理矢理感満載の、めちゃくちゃになってしまいましたが、こうでもしないと話がなかなか進まないので……申し訳ないです。


この駆け出しの街でパーティメンバーを!

「はいよ、サンマの塩焼き定食だ」

 

「ありがとうございます」

 

 冒険者ギルドの中、酒場の方のカウンター席で1人で座っていると注文した料理が店主の手により目の前に並べられていく。初クエストが終わり、自らが引き起こした騒動も落ち着きを取り戻したのか今では外に出ていた冒険者達が戻ってきており、それぞれの仲間と飲みあってる。

 結局自分がやりましたと言い出せずにこうして、腹の減りを満たそうと料理を注文してみた。メニューにカエルの唐揚げとかスモークリザードのハンバーグとかよくわからないのが大半だったため、サンマの塩焼き定食という自分の世界にもあった名前の料理を選んだのだ。

 

「わぁ、美味しそう……」

 

 目の前に並べられた料理をみて思わず口に出てしまった。お腹が空いていたためか、匂いだけで食欲がそそられる。

 

「そうだろう?今朝畑でとれたてのサンマ使ったからな!」

 

 カウンターの向こう側に戻った店主らしき人が自慢げにそう言う。

 

「へぇ、それはわざわざありがとうございます……あれ、今なんて言いました?」

 

「え?今朝畑でとれたてのサンマ使ったからなって……」

 

 うんうんなるほど……今朝畑でとれたてのサンマか。……畑?

 

「あの、畑って……」

 

「ああ!どこでとったのか気になるのかい?実はギルドの裏に調理用の食材を栽培する畑がついこの間できてな。これならわざわざ他から取り寄せることが少なくなって楽になったもんさ」

 

「そ、そうですか……」

 

 きっと裏の畑とやらに池とかあるのだろう。そこでサンマを養成でもしてる感じなのだろう……池でサンマって育てられるのか?いやでも畑って……

 うん、もういいや。食べよう……あ、普通に美味しい。後でおかわりでも頼もうかな……

 

「あー疲れた、まさか急にジャイアントトードを狩りに行く羽目になるなんて……今日はのんびりする予定だったのに」

 

「まぁでも臨時収入が入って良かったじゃないか。これで前言ってた装備買えるんじゃないか?」

 

 ふと、後ろからそんな会話が聞こえてきた。しかもその会話はだんだんと近づいてきている。声からして男と女の会話だ。

 

「それはそうなんだけど……でもさブラッド。やっぱりあたし達2人じゃあいい加減きつくない?さっきだって危うくカエルに捕食されそうだったんだけどあたし」

 

「それはなロザリー、お前が勝手に前に突っ走ったからだろ?ボーナス報酬欲しさにあたしが多く倒すんだー……とかなんとかいって」

 

「……いやでもさ、それを差し置いても2人だけじゃこの先きついよ!せめて後1人パーティーメンバー欲しいよ……」

 

「うーん、確かにその通りなんだが……もう一回募集かけてみるか」

 

 会話をしていた男女2人はやがて、自分の隣のカウンターの椅子に腰をかけてそれぞれ店主に注文を始めた。

 ちらりと横目でその2人を観察してみると、男の人の方は腰に片手剣のようなものと背中に小さい盾を背負っているのをみると剣士系の冒険者だろうか。女の人は男の人と比べて軽装備で、腰のベルトに小さい杖……確かワンドと呼ばれるものをぶら下げていることから魔法職の印象を受ける。

 そんな自分の視線を感じたのか、隣に座っていた女の人の方もこちらに視線を向け目と目があう。

 

「……あっ!確か今朝すごい魔力値叩き出してアークウィザードになった人でしょ!?」

 

 しばらく見つめあった後、突然指をさされながらそう言われた。

 

「え、あ、はい……どうも……?」

 

 女の人の隣にいた男の人もそれを聞いてこちらに視線を向けてくる。少し気恥ずかしさを感じていると突如女の人に手を両手で握られる。

 

「あの!あたし達のパーティーに入ってくれませんか!?」

 

「えっ」

 

 ものすごい剣幕でそう言われ、正直軽く引いてしまった。ていうか、顔近い。

 

「おいやめろってロザリー。この人若干お前に引いてるぞ……すいませんうちの連れが」

 

 両肩を掴まれ引き剥がされるロザリーと呼ばれた女の人は、納得いかなそうな顔をして男の人に言い放つ。

 

「だってブラッド!フリーのアークウィザードが目の前にいるんだよ!?誘わない方がおかしいって!」

 

「頼むから時と場合を考えてくれ、いきなりじゃ誰だって混乱するだろ?そもそも上級職のアークウィザードが、ソードマンとプリーストしかいない駆け出しのパーティーにいきなり入る方がおかしいからな」

 

「うっ……」

 

 ブラッドという男の人にそう言われ押し黙ってしまったロザリー。まぁいきなりで少し驚いたが、よく考えたら他の冒険者とのコミュニケーションはこの人達が初めてだ。ここは後の事を考えると自己紹介ぐらいはした方がいい気がする。

 

「えっと、とりあえずお互い自己紹介しませんか?……私はウィズリー・リーンっていいます」

 

「俺はブラッド、それでこっちはロザリーだ。一応2人でパーティー組んでるんだ」

 

「その、さっきはごめんなさい……この街で最初から上級職になる人なんて滅多にいないらしいからつい……」

 

 2人の話を聞く限り、2人はパーティーを組んでいるがもう少しメンバーが欲しいと思っていて、何回かメンバー募集をかけたが一向に新メンバーが増えないとのこと。

 それにしてもパーティーか……確かに女神様から強い能力をもらってはいるが、1人では限界がある。さっきのゴブリン討伐のクエストだって、能力なしじゃ成し遂げることすらできなかっただろうしこの先1人で魔王を倒せるとは思っていない。近いうちに自分もパーティーを組むべきだろう。

 ……というかこの人たちのパーティーに入ってもいいんじゃないか?自分はパーティーが欲しい、あちらも新しいメンバーを欲しがってる。お互い得をする状況だ。

 

「あの、じゃあ私をパーティーに入れてくれませんか?」

 

「えっ!?ほんと!?」

 

 バッと伏せていた顔を上げ、こちらに飛びついてくるロザリー。

 

「え、えぇ。私も1人じゃ無理なことありますし……あの、顔近いです」

 

「やったぁ!ほらブラッド、言ってみるもんでしょ!?」

 

 ロザリーがブラッドに自慢気に言う。しかし、対してブラッドはロザリーのように喜ぶそぶりをしておらず、目をつむったまま何か考え混んでいるようなそぶりだった。

 

「……ブラッド?」

 

「1つお聞きしてもいいですか?……ウィズリーさん、貴女はなんで冒険者になったんですか?」

 

「「え?」」

 

 唐突にそう話を振られて自分だけでなくロザリーも同じ反応を示す。

 冒険者になった理由か……普通に考えれば、あっちの世界で死んでしまったから女神様に転生させてもらって、その女神様の助言でなったわけだが……正直に言っても頭のおかしい人扱いされるのはごめんなので違う訳を話した方がいいだろう。

 

「……魔王を倒すためです」

 

 嘘は言っていない、女神様に転生させられて魔王を倒してくれた直接言われたわけではないが、わりと本気で魔王を倒すことを自分は考えていた。願いの件もあるが、こうして特別な力をもらったのだ。この力はこの世界の人の役に立てようと思う。

 

「そうですか……なら貴女をパーティーに入れることはできません」

 

「…………」

 

「はぁ!?ちょっと何言ってんの……?」

 

 まさか断られるとは思いもしなかった。しかし確かによく考えれば、パーティーメンバーが欲しいと言った直後にじゃあ自分入るよ。なんて言っても同情で入ってもらったみたいにとられる可能性がある。

 この世界は自分から見たらゲームのような世界だ。しかし似ているというだけで、まぎれもない現実だ。モンスターと戦うことは、いってしまえば命のやり取りをしているのとなんら変わりはないのだ。そしてその命のやり取りの中で唯一信頼できるのが仲間……いわゆるパーティーメンバーだ。お互いがお互いのことを知ることで互いの命を守りあう、それがパーティーというものだ。同情でできたようなパーティーはパーティーとは呼べない……きっと彼はこう言いたいのだろう。

 

「え、あっいえ違います。そんな理由ではなく……まぁそれもあるかもしれませんが俺が言いたいのは別のことでして……」

 

 自分なりに考察した内容を話してみたが、どうやら違うらしい。

 ……なにこれ恥ずかしい。1人で深読みして確信していた自分が恥ずかしい。

 

「えっと、俺たちは見ての通りソードマンとプリーストだけのパーティーです。そんな弱小パーティーに貴女みたいなアークウィザードが加わってくれれば俺としても大変嬉しいんです……けどだからこそ、こんな弱小パーティーに貴女が無理に入ることはないんです」

 

 なるほど……と何となくだが彼の言いたいことがわかってきた。

 

「アークウィザードならこんな駆け出しの街ではなく、王都でも多少のレベルと経験があれば十分に活躍できます。もちろん俺たちも最終的な目標は魔王討伐ですが、貴女が魔王討伐を目指す以上、俺たちのパーティーに入るよりもっと格上のパーティーに入った方がより魔王討伐への近道になるはずです」

 

 つまり彼が言いたいのは、自分達のパーティーに入ってしまえばそれは宝の持ち腐れになるだろうから、もっと強い人とパーティー組んだ方がいいよ。ということだろう。

 

「…………」

 

 そんなことはない。そう言いたかったが彼の言ってることも間違ってはいない正論だ。強い人と強い人同士が力を合わせれば、それは魔王討伐への近道となる。この世界がゲームではない以上、のんびりと魔王軍に殺されるのを待っているわけにはいかない。ここはそんな世界なのだ。

 

「その、そういうわけですからうちのパーティーに入るのはやめといた方がいいと思います」

 

 ブラッドの言葉にロザリーも納得したのか、今では拗ねているように見える。

 

「……確かに、そうですね」

 

「……あ!そういえば明日の昼ごろ、王都に拠点を移す冒険者パーティーがこの街を出発するそうです。確か後衛職が少ないパーティーなので、アークウィザードが入りたいって言えば受け入れてもらえるはずですよ」

 

 お互い少し暗い雰囲気になったところ、ブラッドが雰囲気を変えようとそんな話を持ち出してきた。

 

「多分その辺でお世話になった人に挨拶して回ってるか、街の方で準備してるはずなので今から行けばまだ間に合いますよ。最悪明日、昼前に馬車屋のところにいけば会えるはずです。特徴は目立つ鎧を引き連れている女性の方なのですぐわかりますよ」

 

 王都というのはどんな場所なのかは知らないが、話の流れからして強い冒険者が集まるところでもあるようだ。確かに強いところで強いモンスターを倒していけばそのぶんはやく強くなれる。もしその王都とやらでパーティーを組めるのなら、より効率的に魔王へとたどり着けることだろう。

 

「なるほど、色々とありがとうございます」

 

 気がついたら定食は食べ終えてしまったので、店主にそのぶんの代金を払って席を立つ。ちなみにお金の通貨はサンに教えてもらったのでもうバッチリだ。

 2人の冒険者にお礼と別れを告げてから、冒険者ギルドを出る。すでに太陽が真上より少し下にずれているため、おそらく昼と夕方の中間らへんの時間帯なのだろう。このままでは日が暮れてしまう、それまでにある目的を果たさなくてはならないため、少し早歩きをする。

 サンに書いてもらった手書きの地図を頼りに街を歩いていくと、ちょうど曲がり角を曲がろうとして、突然何かにぶつかった。

 

「いたっ!」

 

 さらにその何かとはどうやら硬いものでできていたようで、思わずそんな声を出してしまい、痛みを訴えている額を手で押さえる。軽く涙目になりつつも自分がぶつかったモノの正体を暴くため前を見上げる。

 

 そこには大きな大きな鎧が立っていました。

 

《おい、いってぇじゃねぇか。いったいどこに目ん玉つけてんだよ!俺の格好良いスーパーボディに傷がつく……じゃねえ……か。ってなんだ、よく見ればかわい子ちゃんじゃねぇか。すまないな、怪我してねぇか?何なら俺の中に入れてやるから癒してやろうか?》

 

「え……えぇ?」

 

 目の前の鎧にあっけをとられてると、男の声が頭の中で響く。多分この目の前の鎧が喋っているのだろうが、声の伝わり方がおかしい。耳に入ってくるのではなく、頭に響いてくるのだ。

 その鎧は銀色の金属でできているのか、太陽が反射して輝いている。さらに所々に金色の装飾が施されておりより一層豪華に見える。さらに左手の方には鎧と同じく、銀と金で装飾された盾のようなものを持っていた。鎧の繋ぎ目なんて1つも見当たらず、まるで博物館に飾ってあるような芸術品のような鎧だった。

 

《……ふむ、なかなかいいじゃないか。顔も美人というよりあどけなさがあって可愛らしいし、胸もなかなか、それにその頭のてっぺんにあるアホ毛が良い感じにチャームポイントとして働いている……ただちょっと若々しすぎるのがなぁ……」

 

 鎧が自分の全身をまるで品定めするかのように見ながらそんな声が頭に響いてきた。こちらもジロジロと見て観察していたから人のことは言えないが、なんだか気持ちが悪いのでやめてほしい。

 

「おいアイギス、勝手に前に進みすぎるなと何度言えば……」

 

 この鎧への対応に困っていると、鎧が来たであろう道から今度は女性が現れた。

 20歳くらいだろうか、高身長に整った顔立ちをしていて目つきが鋭いその女性は凛々しい印象がある。長いであろう黒髪もポニーテールと呼ばれる髪型にしていてより美しさを引き立てていた。

 そんな女性が鎧に何かを言ってから、こちらに気づいたのか視線を向けてくる。

 

「…………」

 

 先ほどの鎧と同じようにこちらの全身を見てくる。しかし鎧のようないやらしい視線ではなく、何かを確認するかのような視線だった。

 

「あの……なにか?」

 

「……あ、いやすまない。この辺ではみない私の故郷にあったような服装だったのでな。つい懐かしさのあまりジロジロと見てしまった」

 

 服装って、この学生服のことだろうか。

 

「申し遅れたな、私は美国鈴菜というものだ。冒険者でソードマスターの職についてる。それでこっちの鎧はアイギスだ」

 

《正しくは聖鎧アイギスだけどな。愛称はアイギスさんでよろしく!あ、でもどうしてもっていうならアイギスくんとかでも……ゴフォ!》

 

 

 突然アイギスと呼ばれる鎧の人が女性に蹴られて地面に沈んだ。

 というか……みくにすずな?

 この世界に来てまだ半日ほどだが、名前はほとんど自分の世界でいう外国の人の名前に近い人ばかりだった。しかしこの人は明らかに日本人のような名前だ……よくみてみれば、顔立ちも日本人のようだし、もしかしたらこの人も日本から転生して来た人なのかもしれない。女神様の話からすると転生して来た人は自分以外にも居そうな口ぶりだったしありえない話ではない。

 

「えっと、ウィズリー・リーンです。今日冒険者になったばかりの駆け出しアークウィザードです」

 

《ならウィズりんって呼んでいい?ウィズりんかわいいよウィズりん……いたたたたたた!ご主人痛い、痛いって!鎧だって生きてる!虐待は許されない行為だと思います!ぼ、暴力はんたーい!!》

 

 地面に倒れたまま、美国に踏まれるアイギスは痛がってる割にはどこか嬉しそうにしているのは気のせいだろうか。

 

「すまないな私の連れが……もしかしてこいつに何か不快なことでもされたりしたか?」

 

 不快なことというと、いやらしい目つきで見られた事だろうか。まぁ別にそれほど被害があったわけではないので、曲がり角でぶつかっただけですと答える。

 

「そうか、怪我をさせてなくてよかった……ところで君はアークウィザードなのか?」

 

「あ、はい。まだ駆け出しですけど」

 

 冒険者カードの職業の欄を見せると、納得したかのような顔をする美国さん。

 

「……今日冒険者になったばかりと言っていたな、ならパーティーはまだ決まってないんだろ?良かったら私のパーティーに入ってくれないか?」

 

 ここで初のパーティー勧誘というイベントが起きてしまった。というか目立つ鎧を引き連れた女性……もしかしなくても、この人がブラッドの言っていた冒険者なのかもしれない。

 

「私のパーティーは明日からより高レベルの相手を求めて王都に向かうことになってる。ただ、パーティーメンバーがこの鎧と私を合わせて4人しかいないうえに、後衛職が少ない。そこでアークウィザードの君が入ってくれたらとても心強いんだが……」

 

 冒険者生活初日にして、おそらく腕が立つであろうパーティーからの勧誘。断る理由なんてどこにもないとは思うが……

 

「お誘いは嬉しいんですけど……まだレベル2ですし、冒険者としての経験なんてまったくないんで足を引っ張ってしまうかもしれませんよ」

 

「構わないさ、流石に素人を危険なところへ連れ回すような真似はしない。王都に着いてからもしばらくは難易度の低いクエストを受けるつもりだし、君が私たちと同じレベルと経験を積むまではちゃんとみんなでカバーはするつもりだ」

 

 うーん……それならいいかなと思うのも確かだが、同時に不安もあるのも確か。いくら女神様から大量の魔力をもらったと言っても、いってしまえばそれだけだ。例えば背後からモンスターに奇襲なんてされたら今の自分では対応するのは無理だと思う。カバーはするというこの人を疑っているわけではないが、絶対に安全とは言い切れないはずだ。

 ……となると、いきなり高レベルの場所に行くよりは、低レベルの場所で地道に経験を積んで行く方が安全なのかもしれない。けれどもせっかくの高レベルパーティーからのお誘いだしなぁ……

 

「……まぁ今すぐに答えを出せというのも無茶というものだな。なら、もし君が私たちのパーティーに入る気があるなら、明日の昼前までに街の入り口付近に停めてある馬車まで来てくれ。そうしたらそのまま共に王都に向かう。入りたくなかったら来なくても構わない……これでどうだ?」

 

 頭をひねって考えていると、そう提案された。考える時間をくれるというのだ、もちろん承諾した。

 

「そうか、なら明日もう一度会えることを願うよ。では、失礼する」

 

《あ、ちょっとご主人置いてかないで。今まで空気になってたからって置いてかないで!》

 

 美国さんの後をドタドタと追いかけるアイギス。

 ……もしパーティーに入ったらあの鎧もいるのかと思うと少し入らない方がいいのかなとも思えてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、こんにちはー」

 

 街の片隅にある小さな建物、そこに訪れた自分は挨拶と共にドアを開ける。ドアの上に鈴か何かをつけているのか、カランカランと音を出したドアをくぐるとそこには、沢山とまではいかないが、そこそこの量の衣服が壁に飾られてたりテーブルの上に置かれていた。いわゆるここは服屋というやつだ。

 現在自分が持っている衣服類はこの学生服だけだ。これでは明日の服がなくて困るので、サンにおすすめの服屋の場所をギルドから出る前に教えてもらいここに訪れたというわけだ。

 ……しかし本当にこの店営業しているのだろうか。入った時には店内に店員どころかお客も人っ子一人いないし、しばらく待ってみても一向に店員さんが現れない。

 

「あら、いらっしゃい」

 

「うぇひぃ!?」

 

 仕方なく店内の売り物を見ていると、突如後ろから声をかけられた。驚きながらも後ろを振り向くと、そこにはおばあさんがニコニコした笑顔で立っていた。

 ていうかめっちゃ心臓痛い、バクバクなりまくってる。

 

「おや?何処かで見た顔かと思ったら、今朝の子じゃないか」

 

 自分もそういうおばあさんの顔に見覚えがあった、確か冒険者ギルドの場所を教えてくれてお金まで恵んでくれた優しいおばあさんだ。

 にしてもいつの間に背後にいたのだろうか……気配どころか足音すらしなかったのだが。

 

「あぁごめんなさいね、ついつい昔のクセで人に近づくときは気配消しちゃうのよね」

 

 いや、どんなクセだよ。昔は人を暗殺する仕事でもしていたのだろうかこのおばあさん……うん、まさかそんなはずはないよね。

 

「それで、冒険者にはちゃんとなれたのかい?」

 

「え、えぇ。お陰様で」

 

 もしあそこでこのおばあさんに道を尋ねなかったら、登録手数料を払えずにバイトか何かをしていたことだろう。

 

「おっと、こんな年寄りと長話しにきたわけじゃないのよね。服を買いに来たんだろう?」

 

「あ、はい。3日分くらいの着替えを……その、下着も含めて」

 

「そうかいそうかい、何か気に入ったのはあったかい?」

 

 おばあさんに背後を取られるまで店内をぐるっと見回してみたが、やはりというべきか、自分がいた世界のような服はあまりなかった。デザイン性がもはや別物という感じがする……適当に上と下の服を買ってもいいのだが、せっかく買うならしっかりとした身なりにしたい。街中を歩いていて、いきなり「あの人の格好ダサくね?」とは言われたくないのだ。

 しかしここは異世界の服屋、先ほども言ったように自分がいた世界とは違う別物しかない。よってこの世界の服装のファッションというものをまだ知らないのだ。となると考えられる手は1つ……

 

「……実はどれも素晴らしいデザインなんでどれを買うか迷ってまして。このまま悩んでいても仕方がないので、良ければおすすめをいくつか見繕ってくれませんか?」

 

 他人任せという言葉があるのを知っているだろうか?その名の通り他人に物事を任せることだ。それを今こそ使う時が来たのだ。

 

「ふふ、そういうことなら任せときな。あまり繁盛はしとらんけど、最近の流行には遅れてはいないはずだよ」

 

 そう言っておばあさんは、店の奥へと消えていった。てっきりこの中から選んでくれると思ったのだが、店の奥におすすめのがあるのかな?

 またぐるぐると店内を見回って10分ほどだろうか、おばあさんがそこそこ大きい袋を持って現れた。

 ……また背後を取られるのではないかと内心ビクビクしていたのは内緒である。

 

「ほら、下着も含めて3日分の着替えだよ」

 

「ありがとうございます」

 

 袋を受け取り、お金を払おうとポケットに手を入れたところ、おばあさんになぜか止められる。

 

「いいよいいよ、今回は全部タダで」

 

「え」

 

 この世界の服の相場がどのくらいなのかは知らない。しかし3日分の服となればそこそこの値段になるはずだ。それをこの人は今タダでいいと言った……

 

「あのー……流石に全部タダっていうのは」

 

「いいのよ、その代わり今度からこの店をご贔屓にしてくれると助かるんだけどねぇ」

 

 なるほどそういうことか、ここで一度しかこないかもしれないお客にサービスすることで、常連にさせる。すると結果的にそっちの方が儲かるというわけか。見かけによらずなかなか図太いのかもしれないこの人。

 もし将来自分が店を経営することになったとしたら、このおばあさんを見習って初見のお客には何かサービスをしていった方がいいかもしれないな。

 ……もし魔王を自分が倒して、無事に男に戻れた時にはこの世界で店を構えてのんびり過ごす……そんな未来もありなのかもしれない。

 

「そういうことでしたら……ではまた来ますね」

 

「はいよ、気をつけていきな」

 

 袋を受け取り、おばあさんに一礼してから店を出た。

 外に出ると空は既に夕暮れ色に染まりつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今自分は、人生で1番躊躇をしている場面に陥っていた。

 おばあさんの店で服を買った……というよりもらった後、他の店でも雑貨類といった小物を買い漁り、この街の宿の一室を借りた。駆け出しの冒険者はいきなり宿に泊まることはないらしく、より値段の安い馬小屋で寝泊りをするらしいが、初日から幾らかのお金を手に入れた自分は惜しみなく1泊分の値段を払い宿に泊まることにした。これもおばあさんが無料にしてくれたおかげで、浮いたお金ができたからだ。これからはおばあさんのお店に足を向けて寝れないことだろう。

 そんなこんなで宿に荷物を置いて、自分が向かったのは街の一角にある風呂屋だった。日本でいうと銭湯という施設のことだ。自分が泊まった宿には風呂なんてものは備え付けられてないらしく、宿屋の店主に聞いたところこの場所を教えてくれたのだが……

 

「……どうするべきか」

 

 ここに何をしに来たのかというと、もちろん風呂に入りに来たのだ。しかしここで問題が1つあった……

 今の自分の体は、どこかのうっかり女神様のせいで女になってる。つまりこのまま風呂に入るということは服を脱いで、その体を直視してしまうことになる。思春期真っ只中の自分にとってそれはうれし……とても困ることなのだ。いくら自分の体だからといっても、女体をまじまじと見ることなんて許されるはずが……

 

「…………」

 

 ふと自らの胸部を見てみる。そこには見事な山が2つ……

 ゴクリと、唾を飲む音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 結局欲望に負け……いや負けたわけじゃないし、どうせいつかは通らなければならない道なのだ。これは仕方のないことだ。

 お金を払いさっそく女湯の方に行くと、迷わず脱衣所に入った。大丈夫、俺は今女の子。これで中に他の女性がいたとしても変態扱いされることはない。そう自分に暗示をして、ドキドキが5割、期待が5割の状態で服を脱ぎ捨て、脱衣所から湯船のある部屋への扉をゆっくりと開ける……するとそこには。

 

「……誰もいない」

 

 脱衣所で服を脱いだ時に、他の人の服がないことから既に察しはしていたが、見事に誰もいなかった……別に期待とかしてないから、期待とかしてなかったから。

 まぁいないならいないで好都合というものだ……

 

「こ、これは確認……確認作業だから仕方のないこと」

 

 誰もいないのに独り言で自分に言い聞かせる自分が少し情けないなと思いつつ、自らの胸部を触ってみる。

 

「や、やわらかい……」

 

 初めての感触に素直な感想を述べる。なるほど、男はみんな胸が好きという誰かの言葉は案外的を得ているのやもしれない。この弾力は癖になりそうだ。

 しばらく一心不乱で感触を堪能していると、なんだかだんだん頭が熱くなって、体が火照っているような感じがした。まだ湯に浸かってすらいないというのにどうしたことか……

 そしてふと視界の端にあった、壁に備え付けられている鏡をみてみる……そこには顔を真っ赤にしながら自らの胸を揉みしだいている自分の姿が……

 

「あああああああ!」

 

 誰かがそのまま忘れていたであろう、壁の端にあった水が張った桶を両手で掴み、そのまま中身を頭の上からかぶる。とっても冷たかった。

 

「はぁ……はぁ……何してんだろ俺……」

 

 頭どころか体も冷えてようやく冷静になってきた。

 本当に誰もいなくてよかった……うん。

 軽い自己嫌悪になりつつも、体と髪を洗ってから湯船に入る。程よい温度が程よく疲れた体に染み渡ってとても心地が良かった。こう見えても自分は結構入浴という行為は好きで、あっちの世界にいた時は親に頼んで各地の有名な温泉のために旅行に連れてってもらったりしていたのだ。その時のことを思い出しながら浴槽の縁に顎を乗せゆったりしていると、それは突然起こった。

 

 誰か入ってきたようだ。カラカラという音と共に脱衣所と浴槽があるここを隔てる扉が開かれていく。ここは街の人が共同で使える風呂なので、他の人が入ってくるのは別に不思議ではないのだが、入ってきた人になんだか見覚えがあるような気がしてついついその人物を凝視してしまい、あちらの方もその視線に気づいたのかこちらを見てきた。

 肩口くらいに揃えられた銀髪の女性は、ブラッドと一緒のパーティーのロザリーだった。

 まさかこんな所で再会するとは思わなかった……あ、というかなんかこっちに近づいてきてないか?や、まってください、さっきようやく落ち着いたばかりなのにまた意識しちゃう!

 そう思って頭では見てはいけないと考えているのに、体は正直なのか近づいてくるロザリーに目が釘付けになってしまい動けない。

 やがてお互い顔をはっきりと認識できるくらいの距離になり、やはりというべきか、男の本能には逆らえずにロザリーの胸部を……

 

 そこには真っ平らな壁しかなかった。

 

「あーやっぱりウィズリーさんじゃないですか、こんな所で奇遇ですね……って、あの……なんで期待はずれだったみたいな顔してるんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん、じゃああの後例の鎧引き連れた女性冒険者に会えたんだ」

 

 自分と同じように体を洗い終えたロザリーが自分の横に陣取る様に浴槽に入ってきた。しばらく世辞話を含めた話をして、今ではお互い敬語なんていらないほど仲を深めていた。

 というかてっきり同い年くらいかと思っていたが、ロザリーもサンと同じく18歳らしい。ロザリーの方も年下だとは思っていなかったらしく、自分の年齢を知ると突然自分の胸と自らの胸を見比べながら深いため息をつかれた。どうやら気にしている様だ。

 

「それで?その人のパーティーに入るの?」

 

「うーん……実はまだ迷ってて」

 

「どうして迷うのさ?絶対そのパーティー入った方が良いとあたしは思うんだけど」

 

 確かにその通りかもしれないが……それでも安全性を考えるとやはりこの街で冒険者としての経験を積んでからでも遅くないとは思う。

 

「まぁ後悔しない方を選びなよ、あたしはちゃんと後悔しないようにこうして冒険者の道を選んだんだから」

 

「ん?何かあったの?」

 

 そんな言い方をするということは過去に何か大きな決断をして冒険者になったということなのだろうか。

 

「あー……まぁそれほど大した理由ではないんだけどね。なんだと思う?あたしが冒険者になったきっかけ」

 

 ふむ、無難な答えだと、お金が欲しい、魔王を倒すとかだろうけど……胸を大きくしたかったからとか?

 ふと目線の先にロザリーの胸部を捉えたため、そんな変なことを考えてしまう。

 

「ねぇ、今なんであたしの胸みたの……?」

 

「みてないですよ」

 

「みたでしょ?」

 

「…………」

 

「せめてこっち向きなさいよ」

 

 大丈夫、胸の大きさだけが女性の全てではないし、一部の人には人気があるよ。なんてこと言ったらこのまま浴槽で溺死させられそうなのでやめておく。

 

「……あたしの家系はね、昔からエリス教を信仰してる家系でね。結構有名な教会で神官とかの仕事を代々受け継いでるのよ……」

 

 エリス教……?多分この世界の神様を崇めるための組織のようなものだとは思うが、無宗教な自分にはよくわからない。

 

「でね、本来ならあたしが父の仕事を受け継ぐ予定だったんだけど……弟に丸投げしてきちゃったの」

 

 少し悲しい顔をして続けるロザリー。

 

「別にエリス教徒であることや神官が嫌ってわけじゃないの、むしろあたしだって熱心なエリス教徒の1人なんだから……でもね、ある日幼馴染が冒険者になるって聞いて、なんでか知らないけどそいつのことが心配になってきちゃってね、色々あって結局そいつの後を追うようにあたしも冒険者になったの。もちろん両親には最初猛烈に反対されたけどね」

 

 そこも色々あって両親も最終的には折れてくれたからこうして冒険者になれたんだけどね。そう付け足すロザリーは先ほどの悲しい顔ではなく、笑いながらそう言った。

 

「でも今この瞬間後悔なんてあたしはしてない。冒険者になったことに後悔はしてない。だからウィズリー、貴女も後悔しない道を選べば良いと思うわ」

 

「……そうですね」

 

 後悔しない道か……王都に行くかこの街に残るか、どちらの方がメリットがありデメリットがないかを天秤にかけているだけなので、そんな大袈裟なことではないんだけど……まぁいいか。

 そろそろのぼせてしまいそうなので、ロザリーにお礼と別れ告げ外に出ると、既に日は暮れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……女物しかないんだけど」

 

 宿で一晩休み、次の日の朝。服屋のおばあさんから貰った袋の中身を広げてそんなことを呟く。部屋に備え付けられてるベッドの上には、明らかに女物の服が3着分……うん、まぁ男物くださいとは言ってなかったし当然といえば当然の結果なんだろうが。ちなみに下着の方も当然女物だった。

 ていうかこの世界にもブラジャーってあるんだ……てっきりサラシとかそういうものしかないと思ってたけど。

 しかしどうするべきか……いや、着るしか選択肢ないんだけどね。洗ってないシャツを着る趣味はないし。

 

「お、おぉ……!」

 

 とりあえず下着を着用してみたのだが、これは素晴らしい。実は昨日から胸の重みなのか少し肩などが痛かったのだが、ブラをつけるだけでかなり楽になった。なにこれすごい……

 着替え終わった後、宿屋から外に出る。昨日寝る前までこの街に残るか否がをかなり悩んだ結果、ようやく答えが出せたため、外に出たのだ。正直な話、女装して街中を歩いている気分なのでめっちゃくちゃ恥ずかしい。

 やがて目的地に着くと、そこには昨日会った黒髪の女性と、派手な鎧、それに男の人が2人馬車の前で荷物を積んでいたりの作業をしていた。

 

「おや……また会えて嬉しいよ」

 

 こちらに気づくや否や、声をかけてくる女性……美国さん。

 

「ここに来てくれたということは答えは出たようだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「来ないね」

 

「……来ないな」

 

 同じパーティーメンバーであり、腐れ縁のロザリーがジュースの入ったコップを両手で包みながらそう呟く。

 なにが来ないのかというと、新しいパーティーメンバーだ。昨日の午後からパーティー募集の張り紙をしたのだが、一向に志願者が現れない。まぁ当然といえば当然なのかもしれない……何せここ最近新人の冒険者があまり現れないのだ。駆け出しの街とは言うが、毎月ごとに100人新しい冒険者が増えると言うわけではない。せいぜい多くて10人程度がいいところだ。そんな新人不足の中、わざわざパーティーを変えたいという冒険者もいるわけがなく、こうしてたった2人のパーティーの俺たちは、暇を持て余しながら来るかもしれないという淡い期待を持って待ち続けているのだ。

 

「ねぇやっぱりさー、ウィズリーを入れてあげたほうが良かったんじゃない?調子に乗って格好つけちゃってさ……何が、『君はこのパーティーに入らないほうがいい』よ。」

 

「う、うるさいな……それがあの人のためでもあるのは事実じゃないか」

 

 実は昨日、俺たちのパーティーに入りたいと言ってくれた人がいた。だけどその人は、初めからアークウィザードになれるほど優秀な冒険者だった。だからこんな弱小パーティーに入ることはないと断ってしまったのだが……少し後悔している。

 ロザリーから聞いた話だと、あの後すぐに彼女は例の王都行きの冒険者パーティーに勧誘されたらしい。きっと今頃はあの人達と一緒に王都行きの馬車に乗っているころだろう。

 あまりにも暇なので、簡単なクエストでも受けようかと思い席を立とうとした……それと同時に後ろから声を掛けられた。

 

「パーティー募集の張り紙を見たんですけど、今お時間はよろしいですか?」

 

「ッッッ!?あ、はい!大丈夫ですよ!」

 

 一瞬何を言われたのか理解できなくて、理解できた瞬間喜びの感情が出てきた。まさか本当に来てくれるとは思わず、声が裏返ってしまった。ロザリーの方も目を丸くして、信じられないような顔をしている。どこかで聞いたことあるようなその声の人物を視界に入れようと後ろを振り向く……そこには。

 

「……え?ウ、ウィズリーさん……?」

 

 そこには昨日会ったばかりのアークウィザードの彼女が笑顔で立っていた。

 

「ど、どうして?王都の方に行ったんじゃ……」

 

「あぁ、それなら断ってきちゃいました」

 

 まるで問題なんて何もない、そんな風に答える彼女。

 なぜ彼女は凄腕の冒険者パーティーの勧誘を断ってまでここにいるのだろうか……そんな自分の心中を悟ったかのように彼女は言葉を続けた。

 

「単純な理由ですよ。冒険者をしている限り、必ず危険なリスクというものはつきものです。それならこの街で経験を積んでから、その危険なリスクとやらに突っ込んだほうがまだ安全ですからね」

 

 私は安全な方を選んだだけです。そう言う彼女に嘘を言っている様子は感じられなかった。

 

「……それでは、改めてお聞きします。私をパーティーに入れてくれませんか?」

 

「え!あ、えとその……」

 

 ロザリーの方をチラッと見てみると、笑いながらゴーサインを出してきた。

 ……まぁ彼女がそう言う以上、これ以上自分がとやかく言うつもりはない。それならばここは自分の心に正直に従うべきだ。

 

「もちろんです。俺たちのパーティーにようこそウィズリーさん!……そしてありがとうございます」

 

 そう言って右手を彼女に向けて差し出すと、彼女も右手で握り返してくれた。

 

「よろしくお願いします」

 

「!!……こ、こちらこそ……よ、よろしくお願いします……」

 

 笑顔で微笑む彼女の顔が目に入った途端なぜか胸が締め付けられるような、なんというか恥ずかしくなってきた。

 握手を解いてからも、その右手に残った彼女の手の感触がとても暖かく感じられた。

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