この素晴らしい世界に祝福を! ウィズの冒険   作:よっしゅん

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この魔道具でモンスターパーティを!

 

 

 

 親愛なるお父さん、それとお母さん。お元気でしょうか?

 まずは最初に、事故とはいえ親よりも先に逝ってしまったことを深く謝罪します。どうかこの不甲斐ない親不孝者の息子を許してください。そしてもう1つ、お2人に謝らなければならないことがあります。

 色々あって私は異世界で魔王討伐を目指すことになりましたが、その過程で私はあなた達の息子ではなくなってしまいました。ごめんなさい……あ、別に縁を切ったとかではありません。

 ただ、息子のムスコがなくなってしまい、息子から娘にジョブチェンジしてしまっただけなので安心してください。これも事故のようなものでしたが、幸いにも息子に戻る手段はまだ残されています。

 そして可能なら……こんな両親に迷惑をかけっぱなしの元息子、現娘ですが、可能なら私を助けてはくれないでしょうか?虫がいい話だとは思いますが、せめてどうか今のこの状況を乗り越えられるよう祈ってはくれないでしょうか?

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!く、食われる!」

 

「ロザリー!しっかりしろー!踏ん張れ、踏ん張るんだ!今こそ、脳筋プリーストの通り名に相応しい実力をそのカエル共に見せつけるんだ!」

 

 そう……この状況。

 

「ちょっっっとぉぉぉ!その通り名考えた奴と広めた奴あとで教えなさい!あたしがその通り名に本当に相応しいかどうかを、そいつらにも味わってもらって確かめてもらうから!」

 

 何十体といる異世界のカエルの大群から無事に生きて帰れるように……

 

「おりゃああああああ!」

 

「おぉすごい!カエルの口をこじ開けた!いいぞその調子だ!流石昔から鍛えてるだけあって筋肉女だな!よし、可能ならそのままの状態を維持しといてくれ。後で助けるから」

 

「は、はやくね!?流石にあたしもきついからね!?ていうかあんた今あたしのことなんて呼んだ!?」

 

 どうか祈ってください、お願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ改めて自己紹介しますか!あたしはロザリー、エリス様をこよなく信仰しているプリーストよ」

 

「俺はブラッド、一応パーティーのリーダーをしてるソードマンです」

 

 4人用のテーブルの向かい側の長椅子にロザリーとブラッドが座り、改めて自己紹介をしてくれた。

 

「ウィズリー・リーンです。駆け出しのアークウィザードをやってます」

 

 この世界の人は名前1つしかないのが基本なのだろうか。ファミリーネームを含めた自分の名前を聞いて特に気にしているような素振りをしてないところをみると、複数の名前を持っていることは珍しくはないと推測できるが……まぁ今は関係なことだし考えないでおこう。

 

「よろしくねウィズリー!ていうかウィズリーもブラッドも固いって。もっとお互い砕けた感じで良いと思うわよ」

 

 確かにそれは一理あるかもしれない……これからはお互いの命を預け合う関係になるのだ。敬語で話すより、親しい友人のような関係に近い方が信頼も厚くなるというもの。

 

「そ、それもそうだな……えっと、よろしく……う、ウィズリー」

 

「……よろしく、ブラッドにロザリー。それと私のことはウィズって呼んでくれてもいいよ」

 

 個人的には年上の方達に敬語なしというのは変な感じがするのだが……あちらが良いと言ってるのだ、それを無下にするのもどうかと思うので、ここは遠慮なくいかせてもらおう。まずは親しみやすいように愛称を2人に教えておく。

 

「そうか、じゃあ……ウィズ……」

 

 少しだけ恥ずかしそうにするブラッド。きっと人の愛称だとか、あだ名とかで呼んだことないのだろう。

 

「ちょっとブラッド。何顔赤くして鼻の下伸ばしてんの?もしかしてウィズの胸でもみて興奮したの?明日までに『年下の女の子の胸をみて興奮するソードマン』って街中に広めておいてあげようか?」

 

「や、やめろ!だいたい興奮なんかしてないからな!?」

 

「はっ……!?ま、まさかあんた……いつもあたしの胸をいやらしい目つきで見てたんじゃ……」

 

 ロザリーが自らの胸部を隠すように両腕で覆う。それをみたブラッドは……

 

「……ふっ」

 

「あっ!!」

 

 鼻で笑い、そんなブラッドに襲い掛かるロザリー。周りの人が気にも留めないところをみると、この2人のやりとりは日常茶飯事のようなことなのかもしれない。

 

「おうおう、また騒いでるのかお前らは……ん?嬢ちゃんみねぇ顔だな」

 

 止めるべきか迷っていると、いつの間にか近くまで来ていた若い男がいた。背中にやけにでかい大剣を持っているということは彼も冒険者なのだろう。

 そんな彼が、自分を見るなりそう聞いてきた。

 

「えっと、初めまして。昨日冒険者になりました、ウィズリーです」

 

 いちいちファミリーネームを言わなくてもいい気がしてきたので、これからは名前だけでいいだろう、そう思いながら目の前の男に挨拶をする。

 

「そうかそうか、俺はトーンっていうんだ。あっちで座ってる3人のやつらとパーティーを組んでる冒険者だ」

 

 トーンが指差した方を見ると確かに男2人と女1人が同じテーブルで飲み食いしていた。

 

「まぁよろしくな……ところでよ、もしかしてこの2人とパーティーでも組んだのか?」

 

 この2人とは、床の上で寝技をかけてるロザリーと、かけられてるブラッドのことだろうか。

 

「えぇ、ちょうどさっき組ませてもらいました」

 

「ほぉ……そりゃめでたいな。あいつらなかなかパーティーメンバー増えなくて、ここ最近は元気なかったみたいだからな……俺からも感謝しとくぜ。これからもあいつらをよろしくな」

 

 なんだこの人めっちゃ良い人だ。正直冒険者っていうのは荒くれ者がほとんどの集団というイメージがあったが、どうやら違ったようだ。

 というかこの異世界にきてからまだ1日しか経っていないというのに、出会った人たちはみんな自分に良くしてくれる良識のある人達ばっかりで本当に助か……いや、1人だけいやらしい目つきで見てくる人(アイギス)がいたな。

 

「ところでよ、嬢ちゃんは何の職業なんだ?」

 

「アークウィザードです……」

 

 不意にそう聞かれ素直に答えようとするが……

 

「アークウィザード!?……よし嬢ちゃん、あの乳くりあってる連中のパーティーより俺のパーティーに入らないか?入って欲しいな、いや入ってください」

 

「……けど……?」

 

 最後まで言い切る前に早口で言われてしまい少し戸惑う。

 あれ、この人さっきまで祝福してくれてたような気がしたんだけど……

 

「そこの将来ハゲそうな顔してるトーン!何いきなり手のひら返しで人様のパーティーメンバー引き抜こうとしてるのよ!ウィズも相手にしなくていいから!」

 

「あだだだだ!ロ、ロザリー!折れる、折れるから!ギブギブ!」

 

「別に折れても平気よ、何のためにあたしがプリーストで回復魔法使えると思ってんのよ?仲間の傷を癒すためでしょ?」

 

「確かにそうだけど!確かにそうだけど違う!仲間から傷つけられた傷を癒すって意味ではないと思うぞ!」

 

 うつ伏せになった状態でロザリーに馬乗りされ、腕と頭を床に押さえつけられているブラッド……おかしいな、記憶違いでなければブラッドはソードマン、ロザリーはプリースト。明らかに戦士職のブラッドの方が有利だと思うんだが……

 

「は、ハゲ……いや、まだ……まだ大丈夫なはずだ……」

 

 隣ではロザリーの言葉にショックでも受けたのか、少し震えて俯いてるトーンがいた。

 

「その、流石に加入してすぐに脱退するなんてことはできないので……ごめんなさい」

 

「あ、あぁ……そうだよな。すまんな、1人で舞い上がってて」

 

 それじゃあな、そう言って離れていくトーンの背中は少しだけ悲壮感が漂っていた……そんなにショックだったのだろうか。

 

「……とりあえず2人とも一旦落ち着かない?」

 

 ありとあらゆる挌闘技でブラッドを痛めつけるロザリーは、正直言ってプリーストには見えない。狂戦士(バーサーカー)と言われた方が納得してしまいそうだ。

 流石にこのまま眺めているわけにもいかないので、2人に……というよりロザリーに対して制止をかける。

 

「あぁ、そういえばこんなことしてる場合じゃなかったわね」

 

 立ち上がったロザリーは小声で何かを呟くと、ブラッドの体が微かな光に包まれた。多分回復魔法を唱えたのだろう。

 しかしいくら魔法で癒せるからといって、一方的に痛めつけるのは人としてどうかと思うが、彼女はそのあたりどう考えているのだろうか。

 

「いってぇ……お前ほんと昔から暴力的だよな。それでも聖職者なのか?」

 

「当たり前じゃない、私は立派な聖職者よ。さっきのは人の胸を『まるでアクセルの外の平原の様だ』ってバカにするから天罰を与えてやったのよ」

 

「……俺何も言ってないよな?」

 

 どうやらロザリーに胸の話をしてはいけなさそうだ……分けれたら自分のを分けてあげたいくらいだ、と言ってあげたいが、まぁそう言ったら言ったで胸をもぎ取られそうなので絶対に言わないでおこう。

 

「さてと……じゃあまずは親睦会を開きたい所なんだけど、せっかくなら何かクエスト受けて、資金調達といきましょうか」

 

 ブラッドの言い分を完全に無視して話を進めるロザリー。

 確かにパーティーでクエストというのは何だかワクワクしてくる。ブラッドの方も慣れっこなのか、ロザリーに対しては何も言わずに一緒にギルドの端の大きなボードへと歩みを進める。

 その大きなボードにはたくさんの紙が貼ってあった。言わずもがな、この紙にクエストの内容が書いてあって、このボードはそれを張り出すためのものだろう。

 

「うーん……何かいい感じの」

 

 ブラッドとロザリーもボードに目を集中させている。自分も張り出されている紙に順に目を通してみる。

 

「……アリゲイターの討伐、トビウオの捕獲、新しいポーションの実験体求む」

 

 こうしてみると本当に色々なクエストがある。グリフォン同士の縄張り争いを止めてくれ、なんて物騒なクエストもある。

 しかしどのクエストがいいのかさっぱりわからない……自分が最初に受けたゴブリン退治のクエストは難易度的には優しいものだとは思うが、こうしてみてみると聞いたことがあるような名前のモンスターから全く知らない名前もある。どのモンスターがどの程度危険なのかわからないのだ。

 何も討伐系を受けなくてはならないというわけではないが、報酬が書かれた欄をみてみると、やはり討伐系が良い金額をしている。今後のことを考えると資金はたくさんあった方が良いとは思うが……

 

「……機動要塞デストロイヤー?」

 

 その中で、他のクエストよりもズバ抜けて報酬金が高い張り紙を見つけた。

 機動要塞デストロイヤーを落とし穴にはめるための作戦を手伝ってくれる方募集……要約するとそんなことが書かれていた。

 

「ねぇ、機動要塞デストロイヤーって?」

 

 どうしてこのデストロイヤーとやらの依頼だけ報酬が高いのだろうか、そう気になったため2人に問いかけてみる。

 

「え?デストロイヤーはデストロイヤーよ」

 

「あーそういえば新しい作戦が出来たとか言ってたな……でもあのデストロイヤーのことだから、落とし穴に落ちてもジャンプとかしそうだけどな」

 

「確かに、あの八本脚でならやりかねないわね」

 

 どうやらデストロイヤーはこの世界では一般常識に部類するらしい。八本脚のモンスターか何かなのだろうか……

 

「まぁ今からじゃ作戦開始にまで間に合わないし、そもそもやりたくないけどね」

 

「同感だな、例えリザレクションが使えるプリーストがいたとしてもごめんだなあれは」

 

 そんなに危険な存在なのか機動要塞デストロイヤー。名前からして確かにデストロイな感じはするが。

 しばらく3人でどのクエストが良いのか話し合っていると、ギルドの職員らしき人がやってきて、ボードに新しいクエストの紙を張り出した。

 

「……お?ねぇ2人とも!これなんてよくない?」

 

 張りたてホヤホヤの紙を引っぺがして、自分とブラッドに見せてくるロザリー。

 

「ジャイアントトード10匹の討伐……報酬は20万エリスか。確かに美味しいクエストかもな」

 

 ジャイアントトード。確か昨日自分の魔法により、予定より早く冬眠から目が覚めてしまったモンスターの名前だったはずだ。

 

「ジャイアントトードってどんなモンスターなんです?」

 

 そう聞くと2人は少し驚いた顔をした。

 

「ジャイアントトードを知らない……デストロイヤーも知らないような口ぶりだったし、もしかしてどっか遠い田舎から来たの?ウィズって」

 

 どちらかというと割と都会の方に住んでいたので、田舎ではないと思うが遠い所から来たというのは合っている。

 

「ジャイアントトードは……まぁ簡単に表すならデカいカエルだな」

 

「そいつらは繁殖の時期になると体力をつけるために、エサの多い人里近くまで現れることもあってね、よく農家の人や家畜が行方不明になったりするわ」

 

 なるほど、要するに肉食のカエルか。めちゃくちゃ怖いんですけど……

 

「あとは打撃系の攻撃が効きにくかったりするけど、何よりそいつはね……」

 

「「食べると美味しい」」

 

 なるほど、美味しいのか。めちゃくちゃ食べたくないんですけど……

 ていうか酒場のメニューにあったカエルの唐揚げってもしや……

 

「まぁ大丈夫よ。しっかりと距離を保ちつつ1匹ずつ仕留めていけば捕食されることはないし、もし捕食されてもその間は動かないから、他の人に助けてもらえばいいだけの話よ」

 

「しかも結構経験値も貰えるから、このクエストは結構美味しいな……しかし昨日大量に狩ったはずなのにまだいるのか?」

 

 まぁいつかは通らなければいけない道だし、3人もいればどうとでもなるだろうとと考え、そのクエストを受けることにした。

 パーティーを組んでの初の依頼、少し不安もあるが楽しみでもある。

 

「あ、ウィズ。もしかしてパーティー組んだの?」

 

 クエストを受けるために3人で受付の窓口へ行くと、サンがいた。

 

「まあね……それでこれ受けたいんだけど」

 

「ジャイアントトード10匹ね……一応期限は5日あるから、焦らず慎重にやるのよ?そっちの2人も昨日みたいに突っ走って食べられないようにね」

 

「わ、わかってますよ」

 

「ちょっとまて、俺は突っ走ったりしてないぞ!昨日はロザリーが1人で……」

 

「あたしに『あいつを倒せば良い装備が買えるぞ』って煽ったのあんたじゃない」

 

「…………」

 

 後ろの方で微妙な空気が流れるなか、サンは話を続けた。

 

「今年はどうやらジャイアントトードが大繁殖してるらしくてね、昨日謎の爆音によって冬眠から覚めたジャイアントトードはまだまだいるみたいなのよね……まぁ駆け出し冒険者しかいないとはいえ、そんなに手強い相手じゃないし、冒険者の人にとっては美味しい獲物になるからむしろ喜ぶべきなのかしら?」

 

「つまりあたし達が今この美味しいクエストを受けられるのは、昨日の謎の爆音のおかげってわけね」

 

 謎の爆音により、冬眠から覚めた大量のジャイアントトード。そんな冒険者からしたら2つの意味で美味しい獲物のクエストを、こんな早い段階で受けられるのは例の爆音のおかげ……

 あれ?これってマッチポンプっていうやつなんじゃ……

 

「それじゃあ、気をつけて行ってらっしゃい」

 

 少し後ろめたい気持ちを持ちながら、サンに見送られてギルドを出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃああたしはあそこの防具屋で頼んだもの取ってくるから、お互い終わったら街の入り口で集合ってことで」

 

「わかった……じゃあ俺たちも行くか」

 

 店らしき建物の中へと入って行くロザリーをブラッドと2人で見送ってから、目的の場所へと2人で向かいはじめる。

 ブラッドとロザリーは昨日の臨時収入のお金で新しい装備を購入したそうだ。ロザリーは新しい防具、ブラッドは新しい武器を。

 せっかく買うならいい質のをと、2人は思い切って奮発してオーダーメイド製の装備を店で頼んだらしい。それらが今日の昼には完成予定されていたため、こうして依頼を遂行する前に受け取りに行くことになったのだ。

 そして自分はブラッドと共に武器屋に行き、自分用の武器を買うことした。魔法使いの武器といえば杖なので、杖を買うつもりだ。

 別に杖がなくとも魔法は発動できる……が、杖があった方が魔法の威力も上がるし、ないよりかはあった方がいい。

 そんなわけでブラッドと一緒に街を歩くこと数分、どうやら目的の場所へ着いたようだ。

 

「いらっしゃい……おう、お前さんか。ちょっと待ってな」

 

 店に入るなり、店主らしき人がブラッドにそう言ってカウンターの奥に消えていった。時間にして数十秒後、鞘に収まった状態の直剣らしきものを手に持って現れた。

 

「ほらよ、時間と金がもう少しあればもっと良いのが作れたんだがな」

 

「いえ、今の俺にはこれくらいが丁度いいですよ」

 

 受け取った剣を鞘から半分だすような形で眺めるブラッド。

 

「……そっちの奴は新しい仲間か何かか?」

 

 横で2人のやり取りを眺めていると、店主らしき人がこちらに視線を向けブラッドにそう聞いた。

 

「えぇ、今朝仲間に……それで実は彼女の武器も買いたいんですけど、魔法使い用の武器は扱ってますか?」

 

「あー……あるにはあると思うが、魔法使い御用達の専門店じゃないからそんな良い代物は置いてないぞ」

 

 どの道そんなにお金は持ってないので、今はとりあえず安物でもいいからと店主に告げると、またカウンターの奥に消えていった。今度は時間にして数分、木製の棒らしき物体を片手に現れた。

 

「あるのは店の奥で埃かぶってたこれくらいしかないな……」

 

 店主の言う通り、先端に小さい水晶玉のようなものが取り付けてあるその棒はどこか埃っぽかった。

 

「どうせ他に誰も買わんだろうし、千エリスで売ってやるよ」

 

「えっ」

 

 いくらくらいになるのか予想ができなかったため、いざとなったらブラッドから少し借りる手筈だったのだが、まさかの千エリス。これは安すぎる。

 

「遠慮しなくていいぜ。むしろ置き場所に困るし、かといって処分するのも勿体無いからな」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 財布から千エリスを取り出し店主に渡す。そして店主からは棒……埃かぶった杖を受け取った。

 しかし服屋のおばあさんしかり、なんだかサービスされっぱなしなような気がするのは気のせいだろうか。いや嬉しいのは確かだが……

 

「またのお越しをー」

 

 少し気が抜けたような店主の声を背中に受けながら店を出る。

 そして歩きながら70センチ程度のその杖の埃を落とすように、軽く片手で振り回してみたりする。案外重量があるのか、安定して振り回すことができた。もちろん周りに、特にブラッドに被害が及ばないよう少し距離をとってから振り回している。

 

「……器用なんだなウィズは」

 

 棒状の物を振り回すしてるうちに、昔近所の友達と棒切れでチャンバラごっこをよくしていた頃を思い出し、自分が会得している棒術の一端をブラッドの横で披露していると、賞賛の声がブラッドから聞こえた。そんなに凄いものではないので、マジマジと見られると少し恥ずかしいのだが。

 

「いやいや、普通に棒術芸としても食っていけるレベルなんじゃないか?素人の俺でも凄いと思えるんだぞ、それに周りの人もほら……」

 

 そう言われ辺りを見回してみると、確かにみなが自分に視線を向けている。それもその顔は驚きと感心のような表情をしている。

 ふむ……そんなに凄いのかな自分の棒遊びは。

 それを確かめるため、手だけでなく足も使った棒回しなどを披露してみると、周りからさらに驚愕と感嘆の声が上がった。

 ……悪い気はしないかもしれない。

 

「ウ、ウィズ?もう充分だからな……早く行かないとロザリーのやつが……って凄!?どうやってるんだその手足の動き!?」

 

 うん、悪い気はしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局10分ほどその場で棒術を披露してしまい、しまいには見物人の人達からおひねりが飛んでくるようになったくらいの時にブラッドに「もう行くぞ!」と言われ、そのまま手を掴まれてしまった。

 

「あ、あのブラッド?私が悪かったからそろそろ離してくれない……?」

 

「え?……あ、あぁすまない!」

 

 ぶっちゃけ今の自分(女の体)では、ブラッド(男の体)の歩幅に合わせることができず、手を掴まれたままなのでブラッドに連れて行かれるような形で歩く羽目になっている。なのでさっきから少し転びそうだ。

 詫びと共に手を解放され、再びブラッドの横を歩く形で歩みを始めた。

 

「……?顔赤いけど大丈夫?」

 

 ふと横のブラッドを見てみると、先ほどまで自分の手を掴んでいた己の手を凝視しながら顔を紅葉並みに染めていた。

 

「だ、大丈夫だ!ちょっと陽射しが暑くてな……」

 

 確かに風が程よく吹いていて涼しくはあるが、太陽の方も負けないとばかりに輝いている。この世界に季節の概念があるとするならば、今は春くらいの季節なのだろう。

 やがて大きな街道に出て、道の端には出店のようなものがいくつも並んでいた。おそらく商店街的な場所なのだろう。

 

「よっ!そこのお2人!冒険者の方とお見受けしますが、これから街の外でクエストに行かれますのかな?でしたらぜひぜひウチの店に寄っていってください、きっと役に立てますよ!」

 

 様々な店の人から呼び込みを受けながら歩いていると、自分とブラッドに向けて呼び込みをする声が聞こえたため、反射的に声の方向を向く。

 

「へぇ魔道具屋か、こんな駆け出しの街で魔道具の出店なんて珍しいな」

 

 木製のテーブルの上には、本のようなものだったり、小さい瓶に液体が入っているようなものがいくつか置いてあった。

 

「いつもは別の街で商売をさせてもらってるんですが、そろそろ営業場所を増やそうかと思いましてね。ならばライバルが少なそうな街でやらせてもらおうと今日から開店したというわけなんですよ」

 

 魔道具……つまりゲームでいうと特殊な効果を持ったアイテムのようなものだと思う。言い換えるならマジックアイテムだろうか。

 

「そちらの方は魔法使いの方でしょうか?それならこれなんてどうでしょうか?」

 

 まだこちらは何も言ってないのに商売を始めるあたりプロなのかもしれない。

 魔道具屋の人はテーブルに置かれた、多少の厚みがある本を一冊手に持った。

 

「これは……?」

 

「こちらの本にはなんとですね、この世界の魔法に関して示されてる辞書のようなものでしてね。『魔法辞典』というものです」

 

 魔道具屋の人が魔法辞典とやらの1ページ目をめくると、そこには『初級魔法 ティンダー』と見出しがあり、その下にはその魔法の説明らしきものが書いてあった。

 さらにめくっていくと、色々な魔法の名前と説明が書かれているページが続いていた。

 

「この街は駆け出しの冒険者の方が多いでしょう?右も左もわからない魔法使いの方は、『一体どの魔法から覚えたらいいの?』と悩みを抱えることでしょう。しかしそこでその悩みを解決するのがこの魔法辞典!この一冊さえあればどの魔法がどう役に立つのかがすぐにわかっちゃう優れもの!」

 

「おぉ……!」

 

 何それ欲しい……店の人の言う通り、右も左もわからない自分は取り敢えず爆裂魔法(威力がおかしい魔法)を最初に習得してしまい、結果があの騒ぎだ。

 しかもよくよく考えれば今爆裂魔法しか習得していない。これから討伐しにいくジャイアントトードに向けてその魔法を放てばどう言う結果が待っているのかは目に見えている。つまり爆裂魔法以外にも、しっかりとしたまともな魔法を習得しなくてはならないということだ。

 

「さらにこの辞典の1番後ろのページのこの光ってる部分を押すことで、ウィザード系の魔法だけでなくプリースト系や他の職業の魔法も知る事ができちゃうんです!ほら、本の中身が変わったでしょう?」

 

 光る部分を押した瞬間、辞典が一瞬光って本の中身がさっきとは変わっていた。

 

「今ならなんとこの辞典専用のブックホルダーと、収納魔法がかけられているこのポーチをつけてお値段たったの1万エリス!さぁ買い……」

 

「買います」

 

「ます……か。……え、あぁ!お買い上げありがとうございます!」

 

 これは買うしかない。買う以外の選択肢なんてあるのだろうか?いや、ない。

 すぐさまお金を渡し、商品を受け取る。

 腰に小さい革製のポーチと、ポーチのベルト部分には十字の形でホルダーに取り付けた辞典がぶら下がっている。さらには大き過ぎず小さ過ぎずの杖……見てくれは完璧に魔法使いなのではないだろうか今の自分は。

 

「に、似合ってるぞ」

 

 ブラッドに感想を求めてみたらそう返事が帰ってきた。その内トンガリ帽子やローブとかも手に入れた方がいいかもしれないと心に刻んでおく。

 

「……?店主さん、この魔道具だけやけに安いですけどどうしたんですか?」

 

 テーブルの上に置かれている品のうちの1つだけ、百エリスと他のものに比べてやけに値段が安いものがあった。それは六角形の形をした掌ほどの箱のような物だった。

 

「ああそれは確か……かなり前に紅魔族の魔道具職人と名乗る若い男が来ましてね。お試しとして自分の作った魔道具を置いてくれた頼まれまして……結局断りきれなかったので商品としては出してはみたのですが誰も買わなくて……」

 

「どんな魔道具なんですか?」

 

 売れないということは、その魔道具に何らかの問題があるとかだろうか。

 

「この魔道具は魔力を込めると、一定範囲内のモンスターを誘き寄せることができる魔道具らしいです」

 

「誘き寄せる……ですか」

 

「えぇ、作った本人曰く、例え姿を消すモンスターや土の中に隠れているモンスターだろうと誘き寄せる最高の魔道具と……」

 

 聞く限り便利そうな感じはするのだが、なぜ売れないのだろうか。

 

「ただ、私の普段商売している街の冒険者は誰も彼も高レベルの方が多いので、そもそもモンスターを誘き寄せるという行為自体をあまり必要とされていないようで……しかも魔道具を起動させるのに結構な量の魔力を必要とするので、下手したら使えない可能性もあり誰も買おうとしないのです」

 

 なるほど……それでこの値段というわけか。

 しかしここは駆け出しの街アクセル、たくさんの駆け出し冒険者が集まる街。そしてそれは自分も例外ではない。

 つまりこの魔道具が役に立つ日が来るのかもしれない。となるとここはやはり……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、遅すぎない?一体どれだけ待ったと思ってんの?」

 

 街の外へと繋がっている外壁の入り口に着くと、外壁の壁にもたれかかっていたロザリーが愚痴を漏らす。確かに少し待たせ過ぎたのかもしれない……反省しなくては。

 

「すまんすまん……ちょっと色々あってな」

 

「ふーん……ウィズにセクハラしてたとか?」

 

「……してないからな」

 

「え?何その間、本当に何もしてないんでしょうね?……おい、こっちを見なさい」

 

 ブラッドをからかうロザリーの格好は、ギルドで見た茶色のローブ姿ではなく、白を基本としたローブになっていた。

 

「ふふふ、どうよ?」

 

 自分の視線に気づいたのか、その場でくるりと一回転をするロザリー……うむ、ローブの下のスカートがふわっとなる感じがとても素晴らしかった。点数をつけるなら90点ぐらいだろう。ただ強いていうなら……

 

「もう少しお前に色気があったらなぁ、具体的には胸とか……ごふぉ!」

 

 ブラッドの鳩尾に強烈な一撃を加えたロザリーの顔は無表情だった……こわい。

 と、ちょっとした戯れあいも交えながら3人で街の外へと向かう。

 

「おーいるいる、本当に今年は大量発生してるのね」

 

 平原のあちこちには、でかいカエルが数匹飛び跳ねていたり、頬袋を膨らませながらその場に鎮座していたりもしている。あれがジャイアントトードか……本当にジャイアントなカエルだなと思いつつ、3人で近くの1匹だけで行動しているカエルに近づいていく。

 

「それでどうする?いつも通りの方法でやっちゃう?」

 

「いや、今回は……というより今回からは俺たちにも遠距離攻撃を行えるパーティーメンバーがいる。なら……」

 

 ブラッドがこちらを見る。それに頷きながら2人の前に立ち、前方に鎮座しているカエルと向き合う。

 そして魔法の詠唱を始める。

 

「そっか!魔法なら遠距離から一方的に攻撃できるじゃん!」

 

 魔法を発動する前には、詠唱をすると魔法自体が安定して威力が出しやすいと辞典に書いてあった。

 そして今詠唱している魔法はあの爆裂魔法……ではなく、上級魔法と呼ばれる魔法の内の1つだ。実はロザリーと合流する前に辞典を少し読んだのだ。そして爆裂魔法という同じ過ちを繰り返さぬよう、今度はまともな魔法をいくつか習得しといたのだ。

 暗記したての魔法の詠唱が終え、いよいよ魔法を放てるようになった。手に持った杖の先端をカエルに向け、魔法を放つ。

 

「『カースド・ライトニング』!」

 

 すると杖の先端の水晶部分から、闇色の電撃のようなものが発射され、瞬く間もなくジャイアントトードの胴体を貫いた。そしてあたりにドスンという音が鳴り響いた……ジャイアントトードが地面に倒れた音だ。

 ……良かったちゃんとまともな魔法で。

 

「す、すごい……これが上級魔法……」

 

「俺たちが数分掛けて倒すモンスターを一瞬でか……流石アークウィザードってとこか」

 

 これなら問題なさそうだ。2人の賞賛の声に素直に喜び、ようやく魔法で敵を倒す感覚を味わうことができてさらに内心喜んだ。

 え?爆裂魔法?あれはちょっと魔法の域を超えてると思うからノーカンで。ていうかあんな魔法近くでぶっ放したら絶対巻き添えくらうよね、自分も味方も。

 

「よし!俺たちも負けてられないな。ロザリー、支援魔法くれ」

 

「はいよ」

 

 それからは支援魔法を受けたブラッドが単独でジャイアントトードを倒したり、こちらの近くまで囮としてジャイアントトードを連れてきてもらって魔法を打ち込んだりの作業だった。

 お互い初めての共同クエストだというのに、チームワークバッチリなのではないだろうか。そんなことを思いつつカエル退治は順調に進んでいった。

 

「かなり順調じゃない?まだ1時間も経ってないのにもう6匹も倒せちゃったし。いやーもう全部ウィズ1人に任せちゃってもいいんじゃないの?」

 

「それでいいのかお前は……?」

 

 飛び跳ねて移動するという単調な動きしかできないジャイアントトードには魔法攻撃は効果的だった。ロザリーの言う通りやろうと思えば自分だけで10匹討伐は達成できるだろう。しかしそういうわけにもいかない。

 モンスターから経験値を得るためには、そのモンスターを倒すしかない。つまりプリーストであるロザリーは、浄化魔法でアンデッドや悪魔といったモンスターにとどめを刺すことで主な経験値を得ることができる。逆にいってしまえば、それ以外のモンスターから経験値を得るのは難しいということだ。誰かにモンスターを弱らせてもらって、動けなくなったところをとどめを刺すといった手段なら出来なくもないだろうが、よほど余裕な状況でない限りそれはできない。

 こういった理由があるのでプリーストは他の職業に比べてレベルが上がりにくいらしい。要するにこのままブラッドや自分がジャイアントトードを倒し続けてもロザリーだけがレベルが上がらないといった事態に陥るのだ。

 

「まぁいざとなればダンジョンに何日か篭ってアンデッドや下級悪魔狩りっていう手段があるから平気よへーき」

 

「ダンジョンか……確かにキールのダンジョンくらいならそろそろいけるか……?」

 

 どうやらこの世界にはダンジョンなんてものもあるらしい。この世界はどこまで自分の心をたぎらせてくれるというのだろうか。

 ダンジョンといえば最深部には大昔に封印された強大なモンスターとか、伝説の武器や防具とかが眠っていてもおかしくないのではないか?想像するだけで夢が膨らむ。

 

「それにしても……見当たらなくなったわね」

 

 ロザリーの呟きに反応して、あたりを見回してみる。ジャイアントトードは既に1匹も見当たらない。

 

「もっといるかと思ったんだけどな……地中に潜っちまったかな?」

 

「じゃあ今日はここまでにしとく?」

 

 期限は5日もある。明日になっても期限は4日、その間にジャイアントトードをあと4匹倒せばいいだけなのだ。

 

「えー、どうせなら今日中に終わらせたいんだけど……あと4匹ぐらいなら、少し粘ってればまた出てくるって」

 

 ここでロザリーが抗議の声をあげた。

 

「そうはいってもな……地中に潜ったジャイアントトードを引きずり出すにはせめて昨日の爆音みたいに大きな刺激が……あ」

 

「え、なに?何か良い手があるの?」

 

 どうやらブラッドは気づいたようだ。

 そう……その引きずり出す手段とやらをつい先程手に入れたことを。

 

「それは?」

 

 買ったばかりのポーチから、買ったばかりの魔道具を取り出す。

 

「ロザリーと合流する前に魔道具屋で買ってきたやつ。百エリスでお買い得だったから」

 

「百エリスって……ねぇその魔道具本当に大丈夫なの?絶対何か訳ありでしょそれ」

 

 訳ありというか売れ残りというか……まぁともかくこの魔道具の効能をロザリーに説明する。

 

「ふーん、モンスターを誘き寄せるねぇ……確かに今この状況では役に立ちそうだけど」

 

 問題はこの魔道具を使えるかどうかだ……起動するには大量の魔力が必要と言っていたが、まぁ自分の魔力(チート)なら大丈夫だろう多分。

 魔道具の側面にあるスイッチを押して起動させると、それは起こった。

 

「あひゅ……!」

 

「「ウィズ!?」」

 

 急な倦怠感が身体中を駆け巡り、足に力が入らなかったせいでその場に倒れこんでしまった。

 

「ちょっと急にどうしたの!?」

 

「いや、なんか急に力が抜けちゃっ……て?」

 

 なんだか揺れてる。自分がではなく、地面がだ……まるで地震のように揺れてるのだ。ブラッドとロザリーも異変に気が付いたのかあたりを警戒している。

 

「あ、なんかジャイアントトードが地面から……って、ええええええええ!?」

 

 ロザリーが叫ぶ。慌てて少し重い体を起こして自分もあたりを見回してみると……

 

「…………」

 

 次々と地面から飛び出してくるジャイアントトード達がこちらに向かって飛んできている光景が映った。しかも確実に10匹以上はいる。

 

「ち、ちょっと何よこれ!多すぎよ多すぎ!しかもかなり遠くの方の森からもゴブリンっぽいやつもこっちに向かってきてるんだけど!?」

 

 どうやらロザリーの視力はかなり良いらしい。羨ましいな、俺なんて視力強すぎてモンスターの大群がこっちに向かってきてる幻覚が見えちゃってるよ。見ちゃいけないものまで見えちゃってるよ。

 

「おいおい……もうこれ逃げ道ないぞ……」

 

 ブラッドが引きつった顔でそう呟く。

 

「う、嘘よね?夢よねこれ?きっと悪い夢……ひゃっ!?」

 

「あぁ!ロザリーがカエルに食われた!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、おかえりー。成果の方はどんな感じ……って、どうしたの3人とも!?」

 

 ギルドの扉を開けると、サンが箒片手に出迎えてくれた。しかし疲れはてた我々3人はその場に倒れこむ。

 

「はいこれ……」

 

「え?冒険者カード……?えぇ!?ちょっと何これ、ジャイアントトードの討伐数が24匹ってどういうこと!?10匹だけでいいのに、しかもゴブリンとか関係ないモンスターまで倒したみたいだけど何があったの……?」

 

 サンに説明する。魔道具を使ったらモンスターの大群に襲われたこと、何とかそれらを退けた事。

 

「そ、それは災難だったわね……でもよく無事だったわね3人とも」

 

 正直自分も生きていることに驚きだ。

 モンスターの大群に囲まれ、ロザリーが食われかけたりもしたが、何とかロザリーを救出して魔法で強引に突破口を開いてそのまま3人で仲良く街に全力疾走したのだ。具体的には『カースド・ライトニング』の魔法を撃ちまくった。その過程でジャイアントトードを10匹どころか20匹以上倒したのだが、流石に全部倒す事はできずに逃げてきたのだ。

 それでも一応依頼は達成はできたので結果オーライ……というわけにはいかないか。下手したら3人とも仲良く死んでたし。

 

「あぁ……あんなに全力疾走したのいつぶりだろうか」

 

「し、死ぬかと思った……エリス様、無事を感謝します……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウィズー、はやくそのクソ魔道具渡してよ。ぶっ壊すから」

 

「な、何も壊さなくても……」

 

「そんな広範囲にわたってモンスターを誘き寄せる魔道具なんて使い道ないわよ。なら壊すのが一番だと思うの、2度と同じ悲劇を繰り返さぬようにね」

 

「い、いつかこの魔道具が上手く役に立つ日がくる……かもしれないから、壊すのはやめて!やめてー!」

 

「ええい、予想外の抵抗を……!ていうかその抱え方やめてよ、胸で魔道具を覆うとか嫌味なの?あたしへの当てつけなの?」

 

「おいロザリーやめてやれよ、ウィズの言う通り壊さなくてもいいだろ?今後使わなきゃいい話なんだから」

 

 両手で魔道具を抱え、そのまま胸に圧迫させて取られないように抵抗する自分から魔道具を盗ろうとするロザリー。やがて無駄だとわかったのか、ギルドのテーブル席に座りなおした。

 

「はぁ……わかったわよ。そもそもあたしがあんな事言いださなきゃ悲劇は起きなかったわけだからね」

 

「まぁ全員無事で良かったじゃないか、それよりさっさと食べようぜ」

 

 あの後は、追加討伐で増えたクエスト報酬を3人で山分けし、3人で今日の疲れと汚れを落とすために銭湯へ行った。そして予め予定していた親睦会とやらを開くためにギルドの酒場に戻ってきたのだ。

 そして目の前のテーブルの上にはたくさんの料理が並べてあった。どれも美味しそうだ。

 

「こほん……それでは、新しいパーティーメンバーとクエストの達成を祝って……」

 

「「「かんぱーい!」」」

 

 ちなみに、この時出てたカエルの唐揚げはとても美味しかった。




『モンスターを誘き寄せる魔道具』
 姿を隠そうが何だろうが、問答無用で周囲のモンスターを誘き寄せることができる魔道具。ただし、莫大な魔力を必要とする上に、効果範囲が広すぎるので、あたりのモンスターほとんどを誘き寄せるためとても危険。
 製作者は紅魔族の若い魔道具職人。

『魔法辞典』
 その名の通り魔法の辞典。
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