「まずは助けて頂いてありがとうございます。破嵐万丈さん、ムエッタさん」
「構わないさ。元々君達に合流する予定だのだから」
「それにエフィドルグの愚行、元辺境矯正官ではあるものの、私個人としても捨て置く訳にもいかないのでな」
破嵐財閥の万丈についてはユリカやエルエルフも知っていたし、元エフィドルグのムエッタについても由希奈からの情報があった。
「君達に話さなくてはならないことがある」
「その前にあの侍はどうした?」
総士が剣之介が顔を出さなかったことについて言及する。
「すまない。今だけ二人きりにしてやってほしい」
ムエッタは僅ながらに笑う。
気を使われ二人きりにさせてもらって、クロムクロの中にいる由希奈と剣之介。
「何か……何年も会ってなかった筈なのに案外と普通だよねぇ」
久々に乗るクロムクロのサブシートに寛ぐ。
「ふ、普通なのか?俺は未だ現実味が無いのだが」
「夢でも見てる感じ?」
「幾度も同じ夢を見て、由希奈の事を思い出さなかった日は無かった程だ」
「そ、そう……」
照れながら頬をかく由希奈。
「由希奈。そなたを嫁にすると言った件、忘れてはおらぬだろうな?」
「も、もちろん」
「俺はこれから先も由希奈と共に過ごしたいと思っている。だからこそけじめをつけたいのだ。今一度言おう。嫁に来てはもらえぬだろうか。」
剣之介の台詞に由希奈は頬を赤らめながら微笑む。
「うん、いいよ。条件付きだけどね」
「む、条件?」
「えっと、祝言の……挙式?は絶対に黒部でやること。後はナデシコの皆に協力して戦いが終るまで死なないこと。わかった?」
剣之介は嬉しさのあまり由希奈を強く抱き締める。
「承知した。この戦が終わったら黒部にて、祝言を挙げよう!」
作戦室では未だに被害状況の確認や戦況の分析などが行われていた。
「このままでいい?」
「ええ。定時になれば味方の援軍が来て表を彷徨いているエフィドルグは片付くし、移動手段も確保できる。だから今のうちに報告しておきたい事があるのさ。特に艦長、君にね」
一瞬、表情が固まるユリカ。
「テンカワ・アキトくんの件だ。彼は剣之介くんやムエッタさんとも会っている」
「アキト……!」
「ゼル殿の事も話さなければいけないな……」
ムエッタはユリカをみる。
「黒部から来てる連中を呼び出してはもらえぬか?」
「わかりました!」
ユリカはまずルリに繋げて、所在確認をする。
「ソフィーさんとセバスチャンさんはそちらに向かわせました。由希奈さんとお侍さんの所在掴めません」
「つかめない?」
口を挟む伊奈帆。
「クロムクロの中です。この基地のカメラに映っていますね」
相変わらずの性能を持つ左目に対しては誰も突っ込んだりはしない。
「ならば直接わたしが」
ムエッタが右手に装着している端末を操作して、プロジェクターのように壁面へクロムクロ内の映像を出す。
「由希奈、剣之介……」
作戦室の気不味い空気が流れる。
「……おなごの方から接吻とは破廉恥であろう……」
「我慢出来なくて……」
「………………由希奈、実に言い辛いのだが」
「何?」
「見られていたようだ」
一瞬何がなんだか分からなかった由希奈だったが、血の気が引くのを感じてから急激に顔を真っ赤にする。
「なっ……なん、なぁ……なんで!」
「すまない由希奈」
モニターの向こうからムエッタが視線を外して謝ってきた。
「最悪……」