ノリコの部屋から引っ張り出されたゼロだったが、決してやられっぱなしでもなく、むしろ騎士ユニコーンとの切り合いに高揚している様子が見え始める。
大型体育館の中は小型マシンが訓練出来るようにある程度頑丈に作られているため、ゼロもユニコーンも互いに容赦なく技をぶつけ合った。
「サンダーバリアント!無に帰れ!」
「アカシックヴァインダーよ、我を護りたまえ!」
雷撃に怯むことなく防御姿勢のまま前に出るユニコーン。しかし。
「分かっているのだろう!いくら召喚士として優位にあるお前でも、騎士として剣士としての技量も経験も差がある事くらい!」
一瞬で騎士ユニコーンの背後に回り、横一線で弾き飛ばすゼロ。
「くっ……」
「自らの意思も誇りと言う戯言で偽りながら、偽善を名誉や正義感で正当化しようとする!昔からそれが気に入らなかった!」
聖竜騎士ゼロによる連続剣撃に、防戦一方になる。
「だから俺は騎士団を抜けて流浪の旅に出た!」
「……」
「スダ・ド・アカ・ワールドに脅威が現れれば自分達で対処するしかなかった……だがこの世界は違う!俺達のような小さな存在が必要かさえ疑問を持ちたくなるほど、世界を護る為の力が既に数多く存在しているんだ……」
「だが!俺は……それでもといい続けたい!」
意を決したのか、仮面に手を当てる。
突如として騎士ユニコーンの鎧が発光を始めた。
構わず雷龍剣を振りかざす。
「俺に騎士の在り方を説きたいのなら、力ずくでやってみろォッ!」
「……イイダロウ……!!」
ピタッとゼロが脚を止める。
ユニコーンの豹変。
白く美しい白銀の鎧が所々で割れ始め、細部から禍々しい真紅の焔のような灯りが次々と現れる。
「騎士ユニコーン、貴様……」
「グオオオオオオオオオォォッ!!」
一角獣のようだった角が先端から展開し、黄金の二本角を輝かせる。
体から邪悪な黒霧が吹き出し、騎士ユニコーンの眼は真っ赤に染まっている。
「貴様……失敗したな……」
騎士ユニコーンの’ビーストモード‘を見て複雑な面持ちになるゼロ。
「感情に任せるから、本当の光を掴めない。結局闇にのまれる……」
「ゼロさんもうやめて!」
離れてみていたノリコが突然大声をあげた。
「ノリコ!来てはいかん!」
訓練用マシーン兵器で二人の間に割って入ろうとしたノリコに対して騎士ユニコーンはマグナムソードを向ける。
「そこまでダァァッ!」
奇襲のような形で剣之介達が馬で騎士ユニコーンに激突する。
殆どダメージは無かったようで不意打ちをくらって一度体勢を整えるために距離をとる。
「あれがユニコーンさん……なのですか?」
ソフィーと由希奈が驚く一方、武装したセバスチャンとムエッタと剣之介が臨戦態勢に入る。
「我々で止められる相手とは思えませんな……」
ナイフを片手にしたセバスチャンはユニコーンに気圧される。
ゼロを含めた四人でユニコーンを包囲しようと動き出した、正にその時だった。
「グオオオオオオオオオォッ!」
ユニコーンがマグナムソードを振り回す。
四人共弾き飛ばされ、手の打ちようが無くなる。
「何をやっているんですかユニコーンさん!」
「……あれは……」
息を切らして走ってきたのは、銀仮面だった。
「あなたは……そんな姿で何をしてるんですか……それが秘めたる力だと言うのですか。今までの優しく逞しいユニコーンさんは偽りの姿だったのですか!」
「よせ!近付くな!」
ゼロの警告を無視して銀仮面は騎士ユニコーンに近付く。
「騎士としてのあなたの気高さを僕は尊敬していたのです。さぁ、いつもの顔を見せて下さい」
銀仮面がユニコーンに触れようとした瞬間に、マグナムソードが銀仮面を襲う。
「ぐはっ!」
銀仮面を突飛ばし、聖竜騎士ゼロが剣で貫かれる。
「全く……手のかかる後輩だ……おい、そこの仮面男。こいつに後で伝えろ。時の旅人として、’騎士としてではない、自分らしく、誇らしく生きろ‘とな……」
「……わかりました……」
突然、ゼロの体が光に包まれる。
騎士ユニコーンのアカシックヴァインダーが輝きを増した途端に、ゼロの体が強制的にカードにされる。
「グッ……アァッ……」
輝きが鈍くなり、騎士ユニコーンが倒れ伏す。
「力を使い果たして暴走が止まったと言ったところだろうか……」
ムエッタが刀を納めながら銀仮面に近付く。
「なぜ前に出た」
「……彼を友人だと思っているから……」
銀仮面ことスレイン・ザーツバルム・トロイヤードくんは、騎士ユニコーンをなんだか他人には思えないようで、二人の関係性は次回変化します。
現在エルトリウムで火星を離れて地球に向かっているのですが、そう簡単に帰れる訳もないわけで。