「界塚三佐、お話があります」
「なんでしょうか、ミスマル中佐」
ナデシコに合流し乗艦した界塚小隊の三名。伊奈帆は一人で通路を歩いているとユリカに呼び止められた。
「どうしてあなたが火星騎士の彼と一緒に行動してるんですか?」
「……乗艦前に情報はお渡ししていた筈ですが」
ユリカには既に‘エデルリッゾ’誘拐の件まで話している。当然、銀仮面の素性も。
「あなたとスレイン・トロイヤードが仲良く歩いているのを見ていれば気味悪がるのは当然です。例え情報を持っていても」
「仲良く見えたのなら心外です」
「もしかしてあれですか?昨日の敵は今日の友的な、ゲキ・ガンガーみたいな燃える展開があったりしたんですか?」
伊奈帆は左目に手を当てる。
「……奴と一緒にいるのは多少の私怨もありますが……目的のために利用出来ると判断して尚且つ戦力としての腕を知っていたからです」
軽くため息をついてから。
「ゲキ・ガンガーとか言う古いアニメについては存じません。恐らく僕には似合わない、見たら悪影響が出るだろうと」
「その左目が?」
「………えぇ」
伊奈帆はユリカと別れてから、食堂に向かう。
そこで出されたカレーが妙に旨い。
「そのカレーね、由希奈ちゃんが作ったんだよ」
厨房のホウメイという女性が教えてくれる。
「お口に合いましたか?」
トレイを運んでいる由希奈が居合わせる。
彼女はマナタに乗るとき意外は食堂の手伝いをしているらしい。
「はい。とても。何か隠し味でも?」
「隠し味を明かしたら隠してる意味が無くなっちゃいますよ」
伊奈帆はカレーを完食してから、再び由希奈に声をかける。
「……エフィドルグが?」
「間違いかと。五年前、富山に現れた奴らはあなた方が全滅させた。間違いないのですね?」
「はい。あのあと国連軍がエフィドルグの船を調べて先見隊の人数や行動範囲を確認しましたので」
数秒、伊奈帆は考えてから次の言葉を述べる。
「別動隊が来た可能性が高いですね」
「そんな……」
「現状、エフィドルグのグロングルが出現したとしても各国のスーパーロボットで対応出来るはずだと僕の左目が分析しています」
「は、はぁ……」
「今後に備えてあなたの仲間の力が必要になるかもしれません」
「それって……」
「青馬剣之介時貞」
由希奈は伊奈帆が食堂から出ていくのを見送ってから、天井を仰ぎ見る。
「……鬼は再びやってくる……か……」
ナデシコは竜宮島に向かっている。
ファフナー隊と合流後にオーブへ向かい、マスドライバーを使って宇宙に上がる予定だ。
突如、ナデシコの船隊が大きく揺れる。
「左弦後部デッキに被弾。グラビティエンジン出力低下!」
ユリカも伊奈帆も警戒を解いていた状況下での完全なる奇襲攻撃。
「ディストーションフィールド展開不能!」
「敵は!?」
機体の中で待機していたリョーコが先行して出ようとする。
「まだ出ては駄目です」
「ルリ?」
ルリが‘オモイカネ’と繋がり、電子の妖精の力を使う。
「強力なステルス性能を持つ艦艇に囲まれている……衛生軌道上からモビルスーツが一機……音速を超えている」
状況分析が進む中、ユリカが額から出血したまま走ってくる。
「ちょっと艦長、怪我!」
「後まわしです!総員、反撃準備。エステバリス隊は上空から来るモビルスーツを、界塚小隊はナデシコの護衛、残りは敵艦艇の撃退を」