ソードアート・オンライン ──月夜の黒猫──   作:夕凪楓

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期待も羨望もするに決まってる。君は、だって私のヒーロー。





Ep.100 だって私のヒーロー

 

 

 

 

 

 

 ────見渡す限りの、黒。

 上も下も、右も左も分からない。この景色が何処まで続いていて、有限なのか無限なのかも分からない。

 

 

 「……ここ、は」

 

 

 気が付けば、アキトは真っ暗な場所に居た。

 何もかもが未知だった。自分が何処に、何故居るのかも。

 立っているのかすらも分からない。その身は、形容し難い浮遊感を感じていた。

 

 

 「……俺、何して……」

 

 

 ここに居るより前の記憶が無い。

 気が付けば目の前が、真っ暗だったのだ。アキトは戸惑いながらも、懸命に脳の奥底から記憶を呼び起こす。

 そうして段々と映像が流れ始める。映る光景は朧気だが、自分が何をしていたのか、それが明確に分かる。

 

 

(そうだ……キリトの《ホロウ》と出会って……それで、アスナが俺を庇って……)

 

 

 キリトを模した《ホロウ・データ》との戦闘。親友の姿をした奴に剣を向ける事を躊躇ってしまったせいで、死にかけた事を思い出した。

 そして最後の記憶は、アスナが自身に覆い被さって、キリトの剣をその身に受ける光景。

 涙を流しながらも尚、笑いかけてくれる彼女の表情。

 そしてそこから先は、何も覚えていない。今、彼女はどうなっているのか、それを考えた瞬間、最悪の事態を想定して背筋が凍り付くのを感じる。

 

 慌てて辺りを見渡すが、何処も彼処も真っ暗で、人の気配は感じられなかった。アスナも、フィリアも、《ホロウ》のキリトすらいない。

 

 

(何処だここ……早く二人の所に行かなきゃ……!)

 

 

 けど、どうやって────

 

 

 「……?」

 

 

 すると、何かの気配に気が付いて、アキトは思わず振り返った。

 そこには、無が広がるこの場所で唯一、質量を持った何か(・・)が存在していた。

 思わず目を見開くアキト。だが、段々と冷静になり、よく目を凝らす。それは、触手のように大量に張り巡らされた、複数の黒い手だった。

 

 何人、何十人、何百人──何千人といるのかもしれない。犇めき蠢くそれらが、一挙にアキトに向かって手を伸ばしている。

 

 

 「……」

 

 

 一歩、一歩と、その黒い手の集合体に近付く。だが、どれだけ近付いても、手から先は見えてこない。その事実に疑問を抱く事無く、アキトは流れるように、自然とそれらに歩み寄った。

 

 

 「……あ」

 

 

 だが、距離が縮まる度に聞こえるのは、声。

 男性、女性、子ども、大人。老若男女問わず、アキトに囁く声がする。

 アキトは、ただその手を見つめた。

 

 

 ──── 憎イ、苦シイ、怖イ、寂シイ。

 

 

 別々に呟くその何かは、やがて一つの意志となり────戦え、殺せと、そう訴えてくる。 

 だというのに、何故か不快感も拒否感も無い。

 心に浸透していくような感覚が胸を襲い、身体が羽のように軽い。身を委ねてみれば、段々と気分が優れていくような錯覚に見舞われる。

 それは、自分があの偽物に憎しみを抱いた、という事なのだろうか。

 

 ここは、最深部。

 外の様子が分からない。アキトは、自分がどれくらいここに居るのか、それが分からなかった。

 長いようで、短いような感覚。五分もいないような気がすれば、何時間もここに居たような気もする。

 

 

 「……アスナと、フィリアは……?」

 

 

 思わず、問い掛ける。

 その手は、応えない。

 

 

 「……無事、なの?」

 

 

 不安気な声。

 それらはユラユラと、陽炎のように揺れる。

 

 

 「戦わないと、いけないんだ」

 

 

 アキトは、拳を握り締めるが、それは震えていた。

 

 

 「たとえ親友の姿をしていても、倒さなきゃ……分かってる、はずなんだ……なのに……」

 

 

 勇気が、出ない。

 

 

 ──── ナラバ、望ミ、求メロ。

 

 

 「え……?」

 

 

 アキトは、段々と俯いていた顔をハッと上げる。

 するとその瞬間、目の前で蠢いていた手の集合体は、花弁のように四方に広がった。

 そして、その中心から実のように一本の腕が伸ばされた。

 

 

 ──── この手を取れと、告げていた。

 

 

 その手を取れば、あの場へ戻れるのか。

 アキトの握り拳が段々と開き始め、ピクリと、その指先が動いた。

 

 

 ──── 求めるものを、与えてやるとその手は告げた。

 

 

 求めるもの────それは力。

 あの、偽物とはいえ、親友と同等の力を持ったあの《ホロウ》に立ち向かえる勇気と強さ。

 その悪魔の囁きは、今のアキトにとって、それは甘美に聞こえていた。

 全身が総毛立ち、口元が震える。気が付けば、片腕が段々と上がっていた。

 

 

 ずっと、キリトに憧れていた。自分には無い、他人を容易く救えてしまうであろう強さがあったから。

 アキトにとって彼は、理想の“ヒーロー”そのものだった。彼のような強さが欲しかった。彼のようになりたかった。

 大切なものを、自分の力で守り抜けるような、そんな強さをこの手に────

 

 

 そして、不相応にも夢を見た。

 いつしか、憧れるだけだった自分に別れを告げ、理想を越える事を。

 

 

 「……」

 

 

 腕を伸ばせば、夢が叶うのだろうか。

 欲しかったものが、手に入るだろうか。

 

 

 徐々に、段々と。

 理由も無しに、確信めいたものが生まれてしまう。

 

 

 この手を取れば、手に入る。

 力も、勇気も、大切なものも全て。

 

 

 「っ……」

 

 

 アキトのその腕が、その指先が。

 その闇と同化した手に、触れる────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ダメだよ、アキト」

 

 

 

 

 ──── 酷く懐かしい、声が聞こえた。

 

 

 

 

 「ぇ……」

 

 

 

 

 伸ばされたその腕が、思わず固まる。その瞬間、手首を優しく掴まれ、引き寄せられた。

 掴んできたその細い腕は、ありったけの力が込められていた。

 目の前の漆黒の腕達とは違う、自分と同じ色を宿した、優しい人の細い腕。

 

 

 思わず、視線が向く。

 視線の先の、その人影を視界に捉え、その瞳を見開いた。

 

 

 水色の装備。 

 短めの黒髪に、右目の泣きぼくろ。

 

 

 ────その姿を、アキトは誰よりも知っている。

 

 

 

 

 「……サ、チ」

 

 

 

 

 そこには、かつてアキトが大切にしていた少女が、守れなかった少女がいた。

 アキトに対して、勇ましい瞳を向けて。何かを言いたげな、そんな表情を浮かべて。

 

 

 「……久しぶり、アキト」

 

 「……なん、で、ここに……」

 

 

 挨拶をしてくれたにも関わらず、アキトは言葉に詰まって上手く喋れない。感動よりも先に、彼女がここにいる事実に困惑し、存在の理由を探している。

 そんなアキトの掠れた声を聞き取った彼女は、アキトを見据えて口を開いた。

 

 

 「アキトこそ、こんなところで何してるの」

 

 

 放たれた彼女の言葉には、怒気が孕んでいたように思える。

 アキトはその言動に思考が追い付かず、それを聞いて思わず聞き返した。

 

 

 「何って……戻って、戦わないと────」

 

 「その手を取ったら、戻れなくなるよ」

 

 

 彼女が指差す先を、アキトは振り返る。

 敷き詰められた黒い腕、四千人の負の感情が、懸命にアキトに腕を伸ばしていた。

 その中で、何本かの腕は震えていた。まるで、アキトを引き込めなかった事に対する悔しさと、少女に妨害された事による憤りから生じた動きだった。

 どうにかアキトに触れようと、数多の腕が一斉に伸びる。しかし、少女はそんな腕達とアキトの間に割って入った。

 

 

 「っ……」

 

 

 彼女はそれらを睨み付けると、アキトの腕を引き寄せる。そして、手を強く握って、反対方向へと駆け出した。

 いきなりの事で対応出来ず、アキトの身体はよろめいた。

 

 

 「え……なっ────」

 

 「アキト、こっち」

 

 「え、ちょっ、まっ」

 

 

 そうして、彼女に引かれるままにアキトは移動する。

 瞬間その背後の黒い腕達が伸び始め、サチとアキトを追い掛けてきた。

 

 

 「アキト、走って!」

 

 「え、で、でも……」

 

 「急いで!」

 

 「っ……う、うん!」

 

 

 彼女の焦りを感じ取ったアキトは、言われるがままに足を動かした。引かれるままだった時よりも身体が軽くなり、速度が増していく。背後の腕との距離が離れていく。

 それでも尚、サチと繋がれた手は決して離さない。固く、固くその手を結ぶ。

 手のひらを合わせ、絡め、しっかりと繋ぐ。

 

 

 「……」

 

 

 ────今も尚自身の前を走る、サチの後ろ姿。

 その頼もしい姿が、かつての怯えていた弱い彼女と重ならない。

 アキトは動揺で、思わず瞳を揺らした。

 

 

 「……」

 

 「……? 何?」

 

 

 じっとその背中を眺めていると、サチが視線を感じたのか振り返った。アキトは思わず目を逸らし、彼女を視界から外す。

 

 

 「な、なんでも……それより、何処に向かってるの……!?」

 

 

 走りながらで、上手く声量が調整出来ない。そのせいで思わず声が大きくなる。

 そしてそれは、目の前の少女も同じだった。

 

 

 「何処って……アキト、戻りたいんでしょ!」

 

 「そうだけど……どうやって! こんな、右も左も分からない場所で、一体何処に向かって……!」

 

 

 走りながら頭を動かす。見渡す限り、黒。

 進めているのかいないのか、ゴール地点があるだなんて到底思えない。不安が頭を過ぎる。

 このままではアスナとフィリアが、と最悪の未来を考えてしまう。

 

 何せ、聞きたい事が沢山あるのだ。

 ここが何処なのか。何処まで続いていて、広がっているのか。

 どうしてここに自分がいて、死んだはずのサチがいるのか。

 あの腕達はなんだ。あの声はなんだ。

 

 

 そうして不安に駆られるアキト。それでも、少女は不敵に笑ってくれた。

 そして、それはあまりにも懐かしくて────

 

 

 

 

 「大丈夫、信じて! 絶対に損はさせないから!」

 

 

 「っ……!」

 

 

 

 

 その一言で、アキトの中の何かが、カチリと嵌った気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─── あそこだよ、アキト!行こう、絶対に損はさせないから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、そうだ。

 

 

 前にも、こんな事があった。

 

 

 ────どうして、忘れてたんだろう。

 

 

 思わずアキトは、前を走るサチを見る。

 その駆ける姿と、前だけを向く勇ましい表情が、自分の知っている彼女とは違って見える。

 サチはただひたすらに、あの闇色の腕の集合体からアキトを守ろうと必死になって走っていた。

 この前後左右上下何処を見たって変わらない暗闇の中で、彼女は一体何処へ走っているのだろうか。

 

 

 「はぁ、はぁ……ここまで来れば、大丈夫かな……」

 

 

 どれくらい走ったかは分からない。長いような短いような、そんな感覚だった。

 けれど、振り返って見れば、あの漆黒の腕達は何処にもいなかった。

 

 

 「……一先ず、休憩しよっか。はぁ……」

 

 

 サチは漸く走る速度を落とす。引かれるがままだったアキトは、サチの減速に合わせて足を止めると、再び恐る恐ると振り返った。

 見渡す限り真っ暗な闇世界の中、この場所で初めて目にしたあの黒い腕の塊は、やはり見えなくなっていた。

 

 

 「……聞いても、良い……?」

 

 

 すぐ傍で息を整えるサチに、アキトは細い声で問い掛けた。

 

 

 「はぁ、はぁ……何?」 

 

 

 走った後の会話でお互いの声は荒く、必死さが表情に露呈する。

 サチのこんな声を、アキトは聞いた事が無い。自分を助ける為にそうなっているのだと思うと、自身が情けないと同時に心が熱を持ち、心臓が強く脈打った。

 アキトは振り返って、彼女が逃げている対象物を───黒い大量の腕達を見据える。

 今も尚変わらず、アキトを求めんと手を伸ばすそれらは、諦める事を知らないかのようだった。

 何故そんなにも、自分を望むのか。

 

 

 「……あの沢山の腕は、何だったの?」

 

 「……未練、みたいなもの……かな」

 

 

 だがそれらの気配は、サチとアキトが全力で走る毎に段々と遠のく。

 それと理解すると、アキトとサチも速度を落とし、二人とも走るその足を緩めた。

 遠くで蠢くそれらを眺めて、サチは呟く。

 息を整えつつ顔を伏せ、サチは小さく、それでも聞こえる声で言葉を紡ぎ出した。

 

 

 「……あれは、私達。この世界に怯えて、怖がって、そうして死んでいった四千人の────」

 

 

 ────怒りや、憎しみ。

 

 

 それは誰の心にも必ず宿っているもの。

 そしてそれが、どういう訳かアキトのアバターへと流出し、この現状が起きている。

 この世界が始まりを告げてからずっと、《カーディナル》に蓄積されていた、“負の感情”データの集合体。

 生きている者、死んでいった者達の恨み辛みが収束して生まれた、一つの意識。

 それらから生まれたのは、憎しみに身を任せ、全てを壊そうとする破壊衝動。

 その起源は痛み、嘆き、叫び、苦しみといったネガティブな感情。

 それは言わば、このSAOが始まってからプレイヤーが抱き続けてきた感情の塊。

 

 

 

 

 世界の“悪意”。

 

 

 

 

 ────ソレガ、君ノ望ミカ?

 

 

 

 

 アキトは、すうっと胸の中の靄が晴れたのを感じた。納得してしまったのだ。

 感覚的に分かる。

 目の前の手と、そこから紡がれる数多の感情。

 

 

 ────あの声の正体は、これか。

 

 

 そう、ここはアキトの精神世界。

 そして目の前のそれは、この世界で死んでいった四千人の負の感情、その集合体。

 死ぬ間際まで捨てきれなかった恐怖や憎しみが、凝り固まって出来てしまった擬似人格だった。

 

 

 この世界に、茅場晶彦に復讐したいと、そういった感情が伝わってくる気がした。

 

 

 それが悪いものなのかどうか、アキトには決められなかった。

 そこにはサチのものだって含まれているのではないか、そう思ったから。

 なのに彼女は、今こうしてアキトの手を引いて、あの魔の手から救おうとてくれている。

 四千人とは違う行為を、ただ一人の為にしてくれている。

 

 

 「……」

 

 

 アキトはふと、自身の手元に視線を落とす。

 そんな彼を見て、サチはキョトンとしながら声を掛けた。

 

 

 「? アキト……どうし……ぁ」

 

 

 だが、サチはすぐに気付いた。

 アキトの視線の先は、アキトとサチの、繋がれた手。逃げてからここまでずっと、互いに離さぬようにと固く、固く繋がれた、手。

 

 それは、先程の四千人もの意志を宿す、あの漆黒のものとは違う。温かくて優しい心を持った、想い人の手。

 

 

 「っ〜〜〜!」

 

 

 段々と顔を朱に染め上げるサチに反し、アキトはその細い手を見て懐かしむように笑った。優しく握り締め、その指先で肌を撫でる。

 サチは顔を赤くしたまま、手を握り続けるアキトを戸惑いがちに見ていた。

 

 

 「……あ、アキト……?」

 

 「……」

 

 

 ────彼女と、繋がれたその手。それが、かつての記憶を呼び起こした。

 

 

 「……前にも、君にこうやって引かれた事があったよね」

 

 「え……?」

 

 「ほら、二人でケーキ食べに行った時さ」

 

 

 キリトへの羨望と嫉妬が強かった、あの頃。

 サチに誘われて、赴いた、あの頃の最前線にあった高台の喫茶店。そこで、二人で笑って、景色を見ながら、話し合った事を、アキトは漸く思い出したのだ。

 サチは目を丸くした後、アキトの言った事を理解したのか、その表情を和らげた。

 

 

 「ぁ……覚えて、たんだ」

 

 「……ゴメン、違うんだ。ただ、思い出しただけ」

 

 

 あの頃の記憶は、今まで鮮明に思い出せていたはずなのに。

 死んでも忘れたくなかった、宝物のはずなのに。

 呼吸のように、心臓の鼓動のように。生きる上で、必要なものと化していたはずなのに。

 

 

 ────酷く、悲しかった。

 

 

 あの時見た景色が、とても綺麗だった。

 彼女と見た事で、それはかけがえのない思い出に変わったのだ。一人で見ていたら、それはきっと記憶にも残らず、ただの背景としていつか忘れ去られるものだった。

 

 

 「……どうして、忘れてたんだろう」

 

 

 懐かしむように、目を細める。

 色褪せてしまったというのだろうか。君と共に過ごした、あの濃密な日々を。

 その事実が、自分がどれだけ白状なのかを思い知らせてくれる。アキトは優しい笑みで誤魔化すも、その握り拳は僅かに震えていた。

 色々なものが、奪われていく感覚を感じて。

 

 

 このままいつか、全て過去になってしまうのだろうか。

 

 

 「……別に、忘れても────」

 

 「良いわけ無い」

 

 

 サチが馬鹿な事を言う前に、アキトはそう遮る。いつもそうやって、他人を優先するような考え方が、好きでもあり、嫌いでもあった。

 忘れる事が良い事だなんて、思えた試しは無かった。決して忘れてはいけない罪なのだと、アキトはあの日から胸に刻んでいたのに。

 

 

 「……けど、アキトも本当は分かってるんでしょ?あの“闇”が、アキトの怒りや、悲しみに反応してるって」

 

 「……」

 

 

 サチのその一言に、口を噤んだ。

 彼女が自身の目の前に現れた辺りから、アキトは朧気だった記憶を思い出していた。

 自分を庇って刺されたアスナと、剣を突き刺すキリトの偽物。その偽物に対する憎悪が、この空間を生んだ事。

 あの腕達────闇は、アキト自身に宿る負の感情を糧に動くのだと、アキトには検討がついていた。

 

 

 仲間が傷付けられ、怒りを増す度に。

 過去に想いを馳せ、悲しみを増す度に。

 それは侵食してくる、と。

 

 あの“闇”は、この世界の負の感情。募った怒りや憎しみだと。ネガティブな感情に反応し、破壊衝動をぶつけてくるのだと。

 過去に縋って後悔し続ければ、それを助長するだけだと。

 

 アキトは思う。自分はまさに、そんな“闇”の餌食だったろうと。

 仲間を守れない自分に憤りを感じ、過去を懐かしんでは後悔に苛まれ、仲間を傷付けられれば、憎悪が滲み出る。

 

 ならば。思い出す度に悲しみを抱く、黒猫団との思い出は、忘れてしまった方が良いと、そういう事なのだろうか。

 

 

 「……それでも、嫌なんだよ。腹が立つんだ。あの大切な思い出を、忘れそうになっていた自分自身が」

 

 

 今度は、サチは何も答えなかった。

 立ち止まったまま、アキトを先程のように導こうともしない。

 ただ、その場に立ち尽くしたまま。

 

 

 「っ……」

 

 

 何も言わない───言ってくれない彼女に、アキト顔を伏せた。非難の声を聞きたくなかったのか、顔を合わせられなかったのか。もしくは、そのどちらもか。

 

 

 「────アキト」

 

 

 その名が、呼ばれる。

 思わず肩が震え、心臓が跳ね上がる。何を言われるのだろうかと、彼女が口を開く一瞬で何通りも想像してしまう。

 避けた事への非難か。守れなかった事を責められるのだろうか。

 何にせよ、自分はもう嫌われてしまっているだろう。そう考えると、どんどん悪い方へと思考が変わる。

 しかし、彼女はただ笑顔で、その想いを口にするだけだった。

 

 

 「……それでも、思い出してくれたじゃん」

 

 「っ……」

 

 

 思わず、身体が震える。咄嗟にサチへ視線を向ける。

 彼女はとても嬉しそうな声で、そう告げていた。頬を赤らめ、こちらを見て微笑んでいた。

 

 

 「凄く……嬉しかったよ」

 

 「……サチ」

 

 

 その名を呼ぶ事しか出来ない。彼女が何より愛おしい。

 だからこそ、後悔しか頭を過ぎらないのだ。どうして自分は、彼女を守ってあげられなかったのか。

 自然と握り拳が強くなり、身体が震える。

 

 そんなアキトに、サチは近付いた。距離が近くなり、俯き下を見るその視界からも、サチの顔が見える。

 思わず顔を上げ、飛び退く瞬間、首から下げられた鈴の音が響くペンダントがキラリと飛び出した。

 サチは腕を伸ばして、それを撫で、懐かしむように笑った。

 

 

 「……まだ、付けてくれてたんだ」

 

 「……え?」

 

 「このペンダント」

 

 「っ……なんで、サチが、このペンダントの事を知って……?」

 

 

 瞳を揺らし、アキトはそう問いた。

 この胸に光る鈴のペンダントは、黒猫団が全滅して暫くした後、キリトからギフトメッセージで送られてきたものだったからだ。

 サチがこのペンダントの存在を知っているはずがない。

 なのに、サチは笑って応えてくれた。

 

 

 「えへへ、それね、私達が全滅したあの日、お金を稼いでみんなで買おうって決めてた物なんだ。あの時最前線だった30層のショップに売ってたやつで……きっと、キリトが買ってくれたんだ」

 

 「……なんで」

 

 

 サチから色々聞く度に、整理が追い付かない。

 どうして、あの日いつもよりも上層で狩りをしてまで、このペンダントを買おうと思ってたのかがまるで分からなかった。

 キリトからこれを送られてきた時、本気で意味が分からなかった。捨てようかとも思っていた。なのに。

 

 

 なのに、どうしてか手放せなくて────

 

 

 「アキトに、どうしてもこれを渡したかったんだ」

 

 「……どうして」

 

 「……あの日、もし無事に帰れたら、アキトに言わなきゃいけない事があったんだよ」

 

 「言わなきゃ……いけない、事……?」

 

 「うん。……少し、遅くなっちゃったけど」

 

 

 困惑しながら呟いた言葉に、サチは頷く。

『コホン』と態とらしく咳払いすると、アキトの前にピンと立つ。戸惑うアキトを見てクスリと笑みを零すと、そんな彼を見据えて告げた。

 

 

 

 

 「アキト、誕生日おめでとう」

 

 

 「っ……!」

 

 

 

 

 それを聞いた瞬間、アキトは胸のつっかえが取れたような気分になった。何もかもが解け、晴れたような気持ちになる。全ての謎が解けたような気がした。

 彼らが、いつもより上層で狩りをしていた、その理由が。

 

 

 「ぁ……」

 

 

 言葉にならない、声が放たれる。

 事実を突き付けられ、口元が震えて、思うように言葉にならない。

 サチは、そんな情けないアキトを見ても、赤らめた頬で笑うだけだった。

 

 

 「6月12日、私達が死んじゃったあの日、アキトの誕生日だったよね。初めて会った時に聞いた事あったし」

 

 「な、んで……っ、それ、じゃあ……みんなはずっと……俺の為に……っ!?」

 

 

 声の震えが収まらない。何をしても止められない。

 気を緩めれば、今にでも泣いてしまう気がした。彼女の言葉の意味を何度も頭の中で繰り返し、その事実に辿り着いてしまったから。

 

 

 「えへへ。キリトがアキトに渡してくれたんだよね。本当は直接渡したかったんだけど……私、あっさり死んじゃって……ゴメンね」

 

 

 照れて素振りも一瞬で、サチはすぐに悲しそうに笑う。それを見たアキトの瞳は、すぐに見開かれた。

 

 

 「っ……何、謝ってんだよ……謝るのは、俺の方だよ……!」

 

 

 その態度に、アキトは思わず声を荒らげた。彼女が、そんな風に謝る必要なんて、何処にもなかったから。

 彼女を不安にさせたのは、全て自分に非があったから。

 

 

 「だって俺はっ……俺はあの時、自分自身の都合でみんなの事を避けてたんだ……黒猫団に自分の居場所を見付けられなくなっていて……自分の醜さに耐えられなくて、その現実から逃げ続けて……サチの気持ちなんて考えずに、自分の事、ばかりで……」

 

 「……うん」

 

 「そうして一人になる時間だって、苦痛だった……だから、レベリングばかりしてたんだっ……何もしなかったら、どうしてもみんなの事を思い出すから……辛くなるから……ただ、それだけなんだよ……」

 

 

 いつからか、キリトに憧れた。

 キリトの強さを直に見て、肌で感じる度につくづく思うのだ。《月夜の黒猫団》には、キリトの強さが必要だと。

 周りはみんな、何処かそう思っていただろう。同じレベルだと思い込んでも尚、キリトからは強者の空気が纏っていたから。

 そうして周りがキリトを中心に集まっていくような錯覚に陥り、いつしかアキトは、自分自身の居場所をキリトに奪われたような気がしていたのだ。

 

 決定打は、サチが失踪した時に聞いてしまった、キリトとサチの会話。

 キリトの肩に頭を乗せ、縋るように泣くサチの姿を見て、アキトは思った。痛感してしまったのだ。

 彼女を守るに値する力を持つのが、自身では無いことを。

 

 そうして全滅までの間、サチに対して壁を作ってしまった。それに伴って、黒猫団のみんなとも。

 まるで、初めて出会った時に戻ったような感覚だった。そうして、一人取り残されたような気分でいると、自然と楽しかった頃を思い出してしまい、辛くなるだけだった。

 だから、何もかもを忘れられるレベリングに勤しんだのだ。たった一人で。それが段々亀裂となり、溝となり、そして────全滅の一途を辿った。

 

 全て、自分自身の心が弱かったせいなのに。そんな自分に、あの日黒猫団のみんなはプレゼントを考えてくれていただなんて。

 それすらも、黒猫団を殺したのは自分なのではと思わせる材料にしかならなかった。

 そんな自分に、彼らが贈り物をする必要なんて。

 

 

 「……うん、分かってる。でも、辛い想いをさせちゃうのは、やだな……」

 

 

 アキトの話を黙って聞いていたサチは、ゆっくりと口を開いた。

 

 

 「……」

 

 「アキトには、いつも笑顔でいて欲しいな。君はいつも人の事ばっかりで、自分の幸せは全然なんだから」

 

 

 そんな事、サチに言われたくない。

 そう思いつつも、聞き入ってしまう。

 

 

 「それでね……忘れるのが無理でもさ……私達を思い出して、笑っていて欲しいな……悲しむんじゃなくてさ。そうすれば、あの“闇”は寄って来ない。それに私は、もう……この場所にはいられないから」

 

 「……っ」

 

 

 突き付けられた言葉が、胸を突き刺す。

 自分が今、どんな顔をしているか。きっと、悔しげな、苦い顔をしているだろう。

 サチのその願いが、紡がれた言葉が、あまりにも報われなくて。切なくて、悲しくて。

 

 

 「君が私を思い出してくれれば、その瞬間だけ、私はこの世界で生きていられるような……そんな気がするの」

 

 「サチ……」

 

 

 気が付けば、景色が広がっていた。いつしか周りは、暗闇だけの世界ではなくなっていたのだ。

 何処かで見た事があるような丘、風に靡き揺れる芝生、目の前に広がる湖。

 そして、満天に広がる星々の煌めきと、月の輝き。

 アキトとサチ、二人してその夜空に瞳を奪われる。その光がキラキラと光を放ち、瞳を輝かせる。

 流れ星が、流星群の如く降り注ぎ、幻想的な世界を作り上げていた。

 

 

 「……綺麗だね。何か、願い事はしないの?」

 

 「……サチは?」

 

 「私はもう、願ったよ」 

 

 「……俺はいいや。今まで、一度も叶わなかったし」

 

 

 星から目を逸らし、俯くアキト。

 神にも、星にも願った。けれど、決して願いを叶えてくれはしなかったから。

 だから、信じないと決めていた。けれど、サチは違うようだった。嬉しそうに、魅入ってしまうような笑顔で、彼女は言った。

 

 

 「私ね、願い事って……自分の事を願うより、誰かの事を願う方が叶いやすいような気がするの。神様が、見守ってくれている……そんな気がしてさ」

 

 「……」

 

 

 サチが胸に組んだ両手を当て、願うような姿勢を取る。そして、アキトに笑いかけた。

 

 

 「だから私、きっとこれから先も何度も願うと思う。『アキトが笑って、幸せになれますように』って」

 

 

 ────何も、言えなかった。

 何処までも真っ直ぐなその願いに、アキトは返事をする事が出来なかった。他人の事だけを考えた、純粋な気持ち。

 それがとても眩し過ぎて、アキトは今にも泣きそうだった。再び俯いて、誤魔化すように小さく笑うしかなかった。

 

 

 「……すぐには……無理、かな……」

 

 「……ううん。少しだけだけど、私の願いはちゃんと届いてる。仲間に囲まれて笑っている君の顔を見れて、嬉しかった。……アスナさん、だっけ?」

 

 「……っ。見られて、たのか」

 

 「……フフッ」

 

 「……はは」

 

 「……」

 

 「……」

 

 「…………」

 

 「…………」

 

 「…………アキト」

 

 「……なに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……好きだよ」

 

 

 「……!」

 

 

 

 

 突然の言葉に、アキトは息を呑んだ。

 両手を後ろで組んで立っていたサチは、照れたようにはにかんでいた。

 

 

 決して、聞き間違いなんかじゃない。

 それは、ずっとアキトが聞きたかった、待ち望んでいた言葉。

 

 

 ────もう決して叶う事は無い、届かぬ想い。

 

 

 「……っ……ぁ……」

 

 

 アキトは目を見開いたまま動けず、ただサチを呆然と見つめていた。

 サチはそんな視線が恥ずかしいのか、目線を逸らす。その頬はほんのりと赤くて。それがとても、切なくて。

 

 

 「……へへ……ゴメンね。急にこんな……困らせると思って、ずっと言おうか迷ってたんだけど……やっぱり言っちゃおうって思って……」

 

 

 顔を真っ赤にしながら慌てる彼女を、同じく顔を赤らめて見つめるアキト。瞳を揺らし、口元が震える。これは夢では無いのかと、そう脳が叫んでる。

 サチはやがて深呼吸すると、頬の赤みが少しだけ引く。アキトを見つめる瞳を潤み、愛おしさが増すばかりで。

 

 

 「……後悔は、無い方が良いって思ったの。もう……二度と会えないかもしれない。これが最後かもしれない。だから、好きな人には好きだって……伝えられる時に伝えておきたいって思ったんだ。……本当は、生きてる内に……自分の口から言いたかったけどね」

 

 

 気付けば、サチの身体は小刻みに震えていた。

 

 

 「新しい家で……みんなでお祝いして……誕生日おめでとうって、みんなで買ったペンダント渡して……仲直り、して……それで、クリスマスまで頑張って生きて……好きって言って……」

 

 「……サ、チ」

 

 「……けれど、もうそんな機会は、二度と無いから……もう、会えるかも分からないし……だから……だか、ら……」

 

 

 泣くまいと我慢する彼女の、目では見えない涙。

 その仮想の涙を拭い去る術を、アキトは知らなくて。ただ瞳を揺らしながら、彼女の泣き顔を見る事しか出来なくて。

 思わず、アキトはサチに詰め寄った。途端に近付く距離。サチが驚きで目を見開く。涙に濡れた頬で見上げる彼女が、狂おしい程に愛おしくて。

 

 

 ────けど。

 

 

 口を開きかけたアキトを、サチは制した。

 

 

 「その先の言葉は、言っちゃダメだよ。私はこの気持ちを、伝えたかっただけだから……」

 

 

 サチはまるで、未練から解き放たれたかのように清々しい表情を浮かべて。

 もう何も思い残す事はないと、そう言っているみたいで。

 

 

 「……っ」

 

 

 同じ想いなのに。

 自分も、彼女の事が好きなのに。

 それを告げる事は叶わない。もう二度と、死んだ彼女に告白する事は出来ない。

 なら、なら今の自分に出来る、サチに言ってやれる一言。

 

 

 「……サチ……ありがとう……」

 

 

 ただ、感謝の言葉だった。

 こんな自分を好きになってくれて。想いを告げてくれて。見守ってくれて。助けてくれて。

 サチはその細い指で、自身の目元の涙を拭う。その指先の涙は、草木を撫でる風に運ばれ消えていく。星は、ただ輝きを放っていて。

 幻想的だからこそ、彼女とのこの出会いも、まるで夢幻みたいで。

 

 

 

 

 「……あっ……」

 

 

 「な、何……?」

 

 

 

 

 サチは、突如目を丸くして驚いたように声を漏らした。アキトはそんな彼女の反応に、困惑の表情を浮かべる。

 

 

 「っ……?」

 

 

 だが、すぐにその原因が分かった。

 アキトは、ハッと顔を上げる。その耳に、脳に、微かに響くその声を感じて。

 

 

 

 

 ────……キト……く……!

 

 

 

 

 「……声、が」

 

 

 

 

 ────……アキ……く……!

 

 

 

 

 何処からともなく、声が聞こえる。

 遠く、か細い声。けれど、確かに聞こえた、自分を呼ぶ声。

 大切な、仲間の声が。守らなければならない、護りたい人の声が。

 

 

 

 

 「……ア、スナ……」

 

 

 

 

 アスナ。キリトの恋人で、何度も自分を支えようとしてくれた人。頼れと言ってくれた、守ってくれた人。

 自分と同じで、大切な人を守れなかった悲しみで、自暴自棄になってなお、進むべき道を切り開いた、強い少女。

 身を呈して庇ってくれて、自分の為に涙を流してくれた優しい彼女。

 

 

 瞬間、その瞳にとある光景が広がった。

 それは、今のアスナとフィリアの現状を映し出しているのだと、瞬時に理解した。

 暴れる自分と、それに圧されながらも立ち回るキリト。不安気なアスナとフィリア。

 そこから一転し、頭を抑える自分を庇うアスナと、そんな彼女を殺そうとする《ホロウ》。

 

 

 そうだ。自分は、彼女を。

 現実に置き去りにしたアスナとフィリアを、助けに行かなければ。

 

 

 「……時間だね」

 

 「……サチ」

 

 

 アキトは、サチへと振り返る。彼女は、少しだけ、本当に少しだけ悲しげに笑った。名残惜しそうな声と共に視界に入れると、アキトまで寂しい気持ちになってしまった。

 

 

 「……行かなきゃね、アキト」

 

 「……うん」

 

 

 アキトは、今度こそサチに背を向ける。

 すると、そこには一本の光の筋が走っていた。満天の夜空を貫くように天へと昇る光の柱。

 ここを辿れと、そう言っているみたいで。

 ここを進めば、アスナの元へ行ける。そしてここを進み切れば、サチとは完全に別れる事になる。

 そう、感覚的に分かってしまった。

 

 

 

 

 ────これが、最後。

 

 

 

 

 「……なんだか、不思議だよね」

 

 

 サチが、背中越しにそう呟く。

 振り返ってはいけない。そう、思っていても。

 

 

 「……何がだよ」

 

 

 こうして、別れの挨拶を交わすでもなく、昔みたいななんでもない会話。それも、これが最後。

 

 

 「SAOに初めて来た時は、アキトとこんなに仲良くなるなんて思わなかったもん」

 

 「俺も、同じ事思ってた」

 

 

 臆病な自分に、手を差し伸べてくれたのは、同じく臆病で、弱い少女。そんな彼女に助けられ、今アキトは、こうしてここにいた。

 それは、今も変わらない。いつだって彼女の存在が、アキトを助けてくれていた。

 

 

 「……最初は、見ず知らずの俺に話し掛けてきたサチ達が、まるで信用出来なかったよ。囮にでもされるのかと思った」

 

 「あっ、ひどい」

 

 「……けれど……俺、みんなに会えて良かったよ。感謝してる」

 

 「……アキト」

 

 

 アキトとサチの距離は、これ以上近くならない。

 生きる者と、死んだ者。これが、その境界線。互いに、進むべき道は違う。

 こんなに近くに居るのに、共に在る事は叶わなくて。

 

 

 「それにしても……あの時は、まさかこんな風になるとは思わなかったよね……」

 

 「ああ……そうだな」

 

 「まさかあんな出会い方で、こんなにも──」

 

 

 

 

 こんなにも大切で、かけがえのない存在になるなんて。

 そんな事すらも、今となっては口に出しては言わないけれど。

 

 

 

 

 「……そうだね」

 

 

 

 

 言えないけれど。

 

 

 

 

 「……じゃあ、お別れだね、アキト。君は何も気にしないで良い。前だけを見て、真っ直ぐに進んでね」

 

 

 

 

 ────少しでいい。

 

 

 

 

 「……うん。じゃあ」

 

 

 

 

 刹那の時だとしても。

 

 

 

 

 「っ……ふーん……」

 

 

 

 

 ほんの一秒だって構わない。

 

 

 

 

 「……そんな、簡単に……っ……さよなら、出来るんだ……」

 

 

 

 

 少しでもこの時間が。

 

 

 

 

 「……サチが気にしないでって言ったんでしょ……」

 

 

 

 

 続いてくれれば────

 

 

 

 

 「そうだけど……そんなすぐに切り替えられると、何かフクザツ……」

 

 

 

 

 彼女の、涙が入り交じった声を。

 

 

 

 

 「……最後くらい、本音を言ったって良いんじゃないかな」

 

 

 

 

 頬を赤らめる、その仕草を。

 

 

 

 

 「っ……」

 

 

 

 

 この目に、焼き付けておく為に。

 

 

 

 

 アキトは、小さく歯軋りすると振り返る。

 サチの元まで歩み寄り、真っ直ぐにその瞳を向けた。彼女のその顔は、今まで見た事が無い程に、涙で濡れていた。

 これが、最後。その意味を、重く受け止めてしまった結果だった。

 

 

 「……サチ」

 

 

 アキトは、サチの前に立ち、ゆっくりと口を開く。

 サチはいつだって、自分の傍に居てくれた。彼女だって怖い筈なのに、それでも俺自分を気にかけてくれて。寄り添ってくれて。

 そして、今も変わらず自分の事を想ってくれてる姿を見て、胸が苦しくなった。

 だからこそ、彼女にしてあげられる精一杯を。

 

 

 「……俺、ちゃんと笑えるようになるよ。君に心配ばっかりかけてられないから。だから……その時が来たら、また会おう」

 

 

 右手を、ゆっくりと上げてサチへと向ける。

 小指だけを立て、彼女に差し出した。

 

 

 「────“約束”する」

 

 

 その為の指切り────

 

 

 「っ……うん。……また、会おうね……」

 

 

 サチから再び流れる涙。アキトはただ、苦い顔で笑う。

 そんな顔が見たいんじゃないんだ。だから、笑ってくれ。

 サチから伸ばされた手、その小指を絡めとる。そこからほのかに感じる熱が、胸を熱くする。

 

 

 お互いの指が、絡み合う。

 

 

 “また、会おう”

 

 

 それが、新たな“約束”。

 

 

 その約束が果たされないであろう事は、二人には分かっていた。

 こんな夢のような奇跡が、何度も訪れようとは思えない。

 

 けれど、それでもまた立ち上がる為に。誰も知らない未来を、無限の可能性を秘めた明日を、夢見る為に。

 アキトとサチは、約束したのだ。

 

 

 「っ……」

 

 「……え、へへ」

 

 

 アキトは視線を逸らさず、サチを見つめていた。

 涙を流しながらも、それでもあどけなく笑う彼女の顔を、仕草を、少しでもこの目に焼き付けておくために。

 二度と忘れない為に。

 

 過去を思い出しても、悲しむだけで終わらない為に。

 

 彼女はたった一人で、“闇”に覆われそうになっていた自分を救ってくれた。

 だからこそ、憎しみに心を囚われぬよう、自身で選んだこの道だけは────

 

 

 

 

 「……あ」

 

 

 

 指切りの指を離し、その距離が離れる。

 目の前の光の柱へと足を動かし、その手を伸ばす。そうしてサチの目の前から消え、アスナ達の元へと意識を跳躍させるその最中に、アキトは漸く思い出した。

 

 

 「……言いそびれちゃったな」

 

 

 アキトは小さく笑って、もう見えないサチの方角へと振り返り、口を開く。

 それは、音にはならなかったが、きっと伝わったのかもしれない。

 

 

 彼女は、笑って見送ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●○●○

 

 

 無音の世界で、風が吹く。

 それはとても冷たい風のはずなのに、何処か心に熱を灯してくれる風だった。

 見渡す限りの夜空、煌めく星々が見守る虚ろな世界の中心で、頬を撫でるその風は、黒いコートを翻す。

 

 

 目を瞑っていたアスナは、いつまで経っても剣が振り下ろされて来ない事で、思わず瞼をゆっくりと開く。

 すると、その瞬間だった。

 

 

 ギイィィイ────ン!!

 

 

 と、凄まじい金属がぶつかる音が辺りの空気を震わした。

 目にしたのは、《ホロウ》であるキリトが振り下ろした《エリュシデータ》とアスナの間に割って入った黒い背中。

 その剣を受け止め、その影はジリジリと立ち上がると、やがてそのまま《ホロウ》のキリトを弾き飛ばした。

 

 

 「ぁ……」

 

 

 アスナは、目を見開いた。

 感じた。感じてしまったのだ。温かくて、頼もしくて、そして何処か懐かしい背中。

 もうダメだと、そう思った時に必ず助けてくれる、ヒーローの背中だった。

 

 

 

 

 「『……悪い、アスナ。すっかり、遅くなっちまったな』」

 

 

 

 

 その冷たい風に靡き揺れる、少し長めの黒い髪。

 優しい笑みを浮かべる口元。そして、こちらを見下ろすも温かい、黒い瞳。

 一瞬だけだが感じた、懐かしい愛する人の姿。それが重なる少年は、キリトではない。

 だけど、それでもアスナは、感動で涙が溢れた。

 

 

 

 

 「けど……ただいま」

 

 

 「っ……ぅ、ぁ……」

 

 

 

 

 言葉にならない。

 どんなに取り繕おうと、とめどなく溢れる涙を堪え切れない。アスナは、それでも構わず、小さく笑ってみせた。

 小さくて細い。けれど、とても安心する大切な人の背中に向かって。

 

 

 

 

 ────その首の鈴が、綺麗な音色を奏でる。

 

 

 

 

 「おかえり、アキトくん」

 

 

 

 

 そう零した彼女の前には、正気に戻ったアキトが立っていた。もう、あの暴走状態は何処にもない。その理由を、アスナとフィリアが知る由もない。

 暗闇が広がっていたアキトの精神世界で、他でもないアキトのかつての想い人が助けてくれたのだ。

 

 

 「アキト……!」

 

 「ゴメン、フィリア。心配かけた」

 

 

 泣きべそをかいているフィリアに苦笑で返すと、アキトはすぐさまもう一本の剣を拾い上げ、アスナを守るように立つ。

 《リメインズハート》と《ブレイブハート》を手に持つその姿、かつてのキリトそのものだった。

 

 

 「っ……アキトくんっ、もう、大丈夫なの……?」

 

 「平気だよ。アスナが、守ってくれたから」

 

 

 そう言って、目の前の標的を睨み付けた。

 《ホロウ》キリトはアキトに跳ね飛ばされてからすぐに着地姿勢を取り、最低限のダメージに抑えたようだった。といっても、先程の剣戟の押収で、アキトとキリトのHPは、共に危険域に近い。

 一撃一撃が必殺になり得る。だからこそ、一瞬の油断が命取りだ。

 

 

 「……これが、最後だ」

 

 

 アキトがそう言い放つと同時に、キリトが地面を蹴飛ばした。

 

 

 一瞬で間合いに入り込み、その二本の剣はソードスキルの光を放つ。

 同じ《二刀流》を扱うアキトは、そのモーションとライトエフェクトの色でソードスキルを瞬時に見抜く。

 突進技《ダブル・サーキュラー》だと判明した瞬間、軸足回転で胸を逸らし、突き出された二本の剣を紙一重で躱す。

 

 

 「っ────」

 

 

 《ホロウ》はすぐさま視界の端にアキトを捉え、前に出した足の向きを捻って変え、アキトの元へと動きの進路を変更する。上体を一気に起こし、突き出していた二本の剣を同時にアキトへと右斜めに振り下ろした。

 アキトはそれを左手に持つ蒼い剣でしっかりと受け止め、そのまま薙ぎ払う。

 

 

 「っ……らあっ!」

 

 「────!」

 

 

 豪快な薙ぎ払いにキリトの身体は地面から離れる。どうにか着地しようと、どうにか態勢を立て直そうと空中で身を攀じるキリトに、アキトは一歩で詰め寄り、右手の剣を振り下ろした。

 《リメインズハート》はキリトの左肩を深く抉り、宙を舞うキリトのその身を落としてみせた。受身に失敗した《ホロウ》は背中から地面へと落下し、まるで人間らしい反応を見せた。

 

 今までで一番の手応えを感じた。

 だが、それもそのはずだった。今まで、キリトの姿をしていた《ホロウ》への攻撃に躊躇していたアキトが見せた、初めての攻撃らしい攻撃。

 アスナとフィリアも、驚いたようにその光景を凝視していた。

 アキトは息を荒らげながら、それでもその意志は固まったようだった。

 

 

 もう逃げない。前を向いて進むのだ。

 けれど、過去を捨て去るわけじゃない。決して切り捨てたりはしない。

 全てを背負い、そして、もう同じ過ちは繰り返さない為に。

 

 

 ────今の仲間を守る為に。

 

 

 

 

 「せああぁぁあっ!」

 

 「っ────!」

 

 

 

 

 立ち上がったキリトに向かって足を動かし、すぐさま剣を天に掲げる。キリトは目を見開いて、振り下ろされた《ブレイブハート》をこの世界最高峰の反応速度を持って躱す。

 筋力値と敏捷値に振り切ったアキトの高速の一撃を見切った瞳は、そのままアキトの攻撃の隙を容赦無く捉える。

 

 アキトの左脇腹に目掛けて《エリュシデータ》を突き出した。その剣は赤いエフェクトを纏い、光となって迸る。単発の突進技《ヴォーパル・ストライク》だ。

 アキトに防御も回避も許したりしない無慈悲な一撃。だが、その突きは無情にも空を切ったのだ。

 《ホロウ》であるキリトは、驚きで表情を固める。キリトの視界には、既に左足で地面を蹴って横に飛び、キリトの突きの起動から外れたアキトの姿があった。当然のように《ヴォーパル・ストライク》は不発に終わった。

 

 アキトはその隙を逃さない。

 反対の足で地面を蹴り、今度はキリトの元へ飛ぶ。その胸元目掛けて、お返しと言わんばかりに《レイジスパイク》をお見舞いする。

 だが、先程まで驚愕で身体を固めていたキリトはすぐに立て直し、アキトのその剣を容易く受け流す。

 流された身体は、そのまま前のめりへ。アキトのその背後を、キリトが見据える。

 

 

 「っ……アキトくんっ!」

 

 

 アスナが叫ぶのと、キリトの《ダークリパルサー》が輝くのはほぼ同時だった。背中を向けているアキトに対して、情け容赦無い《ホロウ》が牙を向く。

 水色の輝きを持って繰り出されるそれは、片手剣四連撃技である《ホリゾンタル・スクエア》。

 圧倒的な速度を持って、そのスキルが背後に迫る。

 

 

 ────だが。

 

 

 「っ……!?」

 

 

 キリトは、再び目を見開く事になる。

 アスナとフィリアも、焦燥だった表情を、驚愕のものに変えた。

 完全に死角、なのに。

 

 

 アキトはキリトに背を向けたまま(・・・・・・・)、キリトの《ホリゾンタル・スクエア》を躱し切ったのだ。

 

 

 「っ……はあああぁっ!」

 

 

 そんなキリトの一瞬の硬直を見過ごさない。アキトは一瞬で身体を反転させ、再び《レイジスパイク》を繰り出した。

 その一撃は、今度こそキリトを捉える。その頬を掠らせ、HPを減らす。

 キリトは堪らず、すぐさまバックステップを取る────同時に(・・・)、アキトは地面を蹴ってキリトに迫った。キリトが取ろうと思った距離は、アキトのステップで寧ろ縮まったのだ。

 まるで、キリトがそうする事を、分かっていたかのような速度。

 

 

 「せあっ!」

 

 

 アキトは《リメインズハート》を下から地面を削るように振り上げ、キリトの身体を斜めに斬り上げた。同様からか、キリトは受身も取らずに地面を滑り、摩擦で止まって倒れ込んだ。

 そのHPは再び減少し、キリトの体力は風前の灯火となった。アキトは荒い呼吸を整えて、獣のような瞳で静かにキリトを見据えていた。

 

 

 「……凄い」

 

 

 アスナは、今まで見てきた中で一番の強さを誇るアキトの動きに、ただそんな言葉を漏らす事しか出来なかった。フィリアも、何も言えずに瞳を揺らして、事の行く末を見守るのみ。

 

 

 アキトが正気を取り戻してからの回避は、キリトのような反射に基づくものではない。キリトが《ヴォーパル・ストライク》の構えになる前から──もっと言えば、攻撃の態勢を取る前から攻撃される位置が分かっていたかのような速度のものだった。

 そして次のキリトの《ホリゾンタル・スクエア》の回避に関して言うならば、アキトは背後を取られて何も見えていなかったはずで、彼からすれば明らかに死角だった。にも関わらず、まるで背中にも目があるかのような絶妙なタイミングで、キリトの技を躱してみせた。

 

 

 これは反射ではなく、予測だ。

 

 

 その御業の正体は、酷く曖昧。

 そしてその生い立ちは決して褒められたものではないのかもしれない。だが、それでもその力が今、目の前の《ホロウ》に引けを取らない力を生み出している。

 子どもの頃からゲームに費やした長い年月。

 その間に戦って来た、それぞれ攻撃パターンの違う何億もの敵。

 集中力が深まる度に研ぎ澄まされていく反応速度と思考能力。

 そして、この世界で見付けた“憧れ”に追い付きたいと、そう願ったアキトの想いが生んだ結晶であり、持って生まれた天賦の才。

 

 

 相手の動き、思考、攻撃パターン把握し、それに近い戦闘力を持つ敵のデータを長年培って来た戦闘経験記録から参照し、照らし合わせる事で、次に相手が行うであろうほぼ確立された未来の行動パターンを瞬時にシュミレーションして算出する。

 圧倒的な予測演算能力。

 ほぼ確定した未来を視る事が出来る、未来視の力。

 その“眼”を、アキトは持っている。

 

 

 これこそが、今まで眠っていたゲーマーとしての、アキトの真髄。

 

 

 

 

 システム外スキル《未来予知(プリディクション)

 

 

 

 

 「はああああぁぁぁあ!」

 

 「────!」

 

 

 アキトのその裂帛の気合いと共に、互いに地面を蹴る。

 同じタイミング、同じ速度、二人を結ぶ直線上の中心点で、二人の剣が火花を散らす。

 《二刀流》を手に、二本の剣が鍔迫り合いを起こし、刃の削れる音がする。

 足に力を込め、歯を食いしばって剣を押し込む。しかし、《ホロウ》のキリトは顔色一つ変えずに、こちらを潰そうと力を入れた。

 段々と詰められ、押し潰されそうになる感覚。死と隣り合わせの感覚を肌で感じる。

 

 

 「ぐっ……うぅ……!」

 

 

 ここで、止まるわけにはいかない。

 この場で戦えるのは、唯一自分だけ。世界で、たった一人だけ。

 一人しか、いないのだ。

 けれどその決意は、何でも一人でやろうとしていた以前のアキトとは違うものだった。

 

 アキトは事実、黒猫団を一人で守ろうとした。けどそれは断じて、彼らが弱いと感じていたからではない。

 生まれて初めて出来た宝物を、命に代えてでも守りたかっただけ。

 何も持たなかったアキトが、唯一手にしたものを、ずっと持ち続けたかっただけ。

 何も出来なかった自分が、唯一出来るようになりたかっただけ。

 むしろ弱かったのは自分で。

 そんな弱い自分を、強がって見せてただけ。

 

 けれど、今は違う。

 支えられ、守られてきた。頼っても良いと言ってくれた。

 それが仲間だと言ってくれた。

 だからこそ────

 

 

 

 

 「────っ!?」

 

 

 

 

 ────刹那、キリトの右側から細い影が迫った。

 

 

 キリトは咄嗟にアキトから離れ、仰け反る形でそれを躱す。

 その瞬間、キリトの体勢が崩れ、上体がよろめいた。

 

 

 「……!」

 

 

 アキトは思わず飛来物を確認し、そして目を見開いた。

 それは、白銀の細剣《ランベントライト》。アスナの持つ名剣だった。

 《ホロウ》のキリトは思わずアスナの方角を向いた。アスナは地面から立ち上がり、自身の剣を振り抜いたままの体勢になっていた。

 そう、彼女がここまで、《ランベントライト(自分の細剣)》を投げて来たのだ。

 

 

 

 

 「今よ、アキトくんっ!」

 

 

 

 

 必死さ垣間見得るその表情とその声を聞いて、アキトの口元から笑みが溢れた。

 アスナを見る事はせず、そのまま一歩でキリトの間合いへ踏み込んだ。キリトがアスナへと目を動かしたその瞬間を、アキトは見逃さなかったのだ。

 

 

 ────ああ、情けない。

 

 

 アキトは、苦笑しながらそう独りごちた。

 彼女達に、そして目の前の偽物にこんな姿を晒して、よくもまあキリトを越えたいなどと宣ったものだ。

 臆病が先行して、まるで戦えない弱腰の剣士、それが鍍金の勇者の正体。その鍍金を剥がしてみれば何の事は無い。ただ“憧れ”に希望を抱いた無知なる少年だった。

 こんな形で戦うだなんて。

 こんな形で、越えたかどうか知りたかったわけじゃなかった。

 

 

 昔も今も、自分は無力だ。

 大切なものを、一人で守る事も出来ず、あまつさえ自分は────

 

 

 守られていたのだから────!

 

 

 

 

 「っ!」

 

 

 

 

 ダン!と床を踏み締める音が響く。

 キリトは咄嗟にアスナから目の前の黒の剣士へと視点を切り替える。

 だが、もう遅い。

 さあ、ただ走れ。アスナが、想い人の《ホロウ》に剣を投げてまで作ってくれたこの隙を、決して無駄にはしない────!

 

 

 

 

 二刀流OSS三十二連撃

 《ブレイヴ・オーバーロード》

 

 

 

 

 七色の光が、辺りに迸る。

 それは、英雄を越える、その願いを込めた技。

 そして、大切なものを失わない為の、誓いのソードスキル。

 

 

 ────その御業、まさに“神速”。

 

 

 

 

 「はああああああぁぁぁぁああああっ!!」

 

 

 

 

 一撃、また一撃と迫るは、目にも止まらぬ剣戟。

 その輝きを纏った鮮やかな剣技は、まさしく《ソードアート》に恥じない動き。

 その全てがキリトの身体に吸い込まれ、残りのHPを一瞬で削り取り、やがて────

 

 

 

 

 キリトの姿をした《ホロウ》はポリゴン片となって、アキトの目の前で散っていった。

 

 

 

 

 ────それは、漸くこの世界最後の敵を倒した、その瞬間だった。

 

 

 

 








かなりの文字数ではありましたが、何があったのかちょっと分かんない、とか読めない、とかいう方々がいたかもしれませんので、補足で説明させていただきます。
一重に表現力のない私と落ち度ですが、何分素人です。今後も精進していきますので、どうか宜しくお願いします。
ざっくり言うと、『ネガティヴな感情の集合体が人格となって形成され、アキトの精神世界に現れてアキトを誘惑したが、サチ(?)が助けてくれた』という感じです。


それと、更新ペースが急激に落ちた事に対するお詫びも申し上げます。
そろそろ、ペースを上げていけたらと思っておりますので、これからもどうか宜しくお願いします。




























あ、コラボします(唐突)。


コラボ大歓迎ですので、アキト君を使って下さる方は是非私にご連絡ください。嬉しくて昇天します(*´ω`*)
いつかは、そういうのも読んでみたいですね。




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