ソードアート・オンライン ──月夜の黒猫──   作:夕凪楓

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別れを告げる、聖夜の鐘────







朽ちた理想

 

 

 

 

 ────どうして、あの時。

 

 

 

 

『ビーターのお前が、僕たちに関わる資格なんて無かったんだ!』

 

 

 

 

 ────この手を伸ばせなかったんだろう。

 

 

 

 

『待ってよ、ケイタ……!俺を、僕を独りに……しないでよ……っ!』

 

 

 

 

 ────彼だけでも助けられていたのなら、何か変わったのかもしれない。

 

 

 

 

『アキト……ゴメンな……僕は、もう……みんなが、いないと……』

 

 

 

 

 ────あの日の事を、今も夢に見る。

 

 

 

 

『……アキ、ト……』

 

 

『……嘘、みたいだ。夢みたい、だよ……こんな、一瞬で何もかもが、さ……』

 

 

 

 

 ────親友と、彼の大切な仲間達を一瞬にして奪った、あの日の自分の選択を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────今でも恨む。

 

 

 

 

 

 

 

 ●○●○

 

 

 最前線・四十九層主街区。

 

 キリトは、転移門広場で時計を見上げた。クリスマスまで、あと三時間だった。その重い腰を上げ、広場に集まるプレイヤーを一瞥する。

 イブを共に過ごそうという多くの二人連れの人々が、腕を組んだり、肩を抱いたりして歩いている。

 特に何かを感じる事も無く、キリトはその間を縫うように歩き、宿屋へと赴いた。

 長期滞在にしてあるその部屋は暗く、外の雪景色の影響かいくらか冷えていた。そんな事すら気にする事無く、キリトはベッドへと腰掛けた。

 備え付けの収納チェストから、これでもかという程に大量のポーションや結晶アイテムを取り出し、自分のアイテムウィンドウへと移動させる。かなりの量だ、これだけでも一財産。だが、その全てを使い尽くしても惜しくはなかった。

 

 ヒイラギの月────十二月二十四日の二十四時、つまりクリスマス開始と同時に、何処かの森にあるモミの巨木の下に出現するという伝説の怪物《背教者ニコラス》。倒せば、奴が背中に担いだ大袋の中に、沢山に詰められた財宝が手に入る。

 

 一ヶ月程前から、各層のNPCがこぞって同じクエストの情報をプレイヤーに語るようになったそれは、一度きりのイベントクエストの情報だった。

 いつもは迷宮区の攻略しかしない有力なギルドでさえ、多大な興味を示していた。《背教者ニコラス》とやらが持つという財宝が巨額のコルでもレアな武器でも、攻略の助けになるであろう事は明らかだからだ。それは、気前の良いクリスマスプレゼントのようにも見える。

 しかし、初めキリトは、その噂にまるで興味を示さなかった。ソロプレイヤーである自身では、そもそもそのボスにな勝てないだろうと思っていたし、金に困ってる訳でも無かったからだ。その気になれば、部屋が買える程に有り余っていた。それに、誰もが狙っているそのボスモンスター攻略に参加して、注目を浴びるのは御免だった。

 

 

 ────なのに、とあるNPCがキリトに告げたのだ。

 《ニコラスの大袋の中には、命尽きた者の魂を呼び戻す神器さえもが隠されている》、と。

 

 

 それ以後、キリトは他人から笑われようとも、狂ったようにレベル上げを続けてきた。強くなる事に、妥協をしなかったのだ。

 それが、自分が死なせた黒猫団と、独りにしたアキトに出来る、唯一の事だと思ったから。

 それは、償いなんて綺麗なものじゃない。アキトはもう自分に、何の期待もしていないだろう。

 その事実が、キリトの顔を歪ませる。悲痛な叫びを抑えようと噛んだ下唇からは、ゲームにも関わらず血の味がする気がした。

 

 

 「……」

 

 

 ────もう、半年も前になる。

 黒猫団を死なせた、あの忘れる事など許されない程に濃い、後悔の記憶。

 アキトとの関係を修復する為にみんなで考えた“計画”。そのついでに新しい家具を買おうと赴いたいつもより上の層。ダッカーが徐に開けた宝箱。あの時、しっかりと自分の考えを口にしていたら。

 

 

 開けた宝箱から鳴り響くアラーム、三つあった小さな入口からモンスターが怒涛の押し寄せ、黒猫団はパニックに陥った。

 全滅の危険を瞬時に感じ取り、全員に転移結晶を使うよう叫んだ。だが、そこはクリスタル無効化エリアだった。その時点で、もう全ては決まっていたのかもしれない。

 ダッカーが死に、テツオが死に、ササマルが死んだ。築き上げて来た大切な場所を、失うのは一瞬だった。

 

 

 この瞬間、キリトは完全に恐慌し、焦燥と恐怖を織り交ぜて剣を振りまくった。自身のレベルを偽る為に制限していた上位ソードスキルを、効率など一切考えずに滅茶苦茶に繰り出して、モンスターの群れを四散させ続けた。なのに、その数は減らず殺到し続け尚、宝箱は鳴り続けていた。

 

 

『────サチ!』

 

 

 その手を、伸ばした。

 けど、その距離はあまりにも遠くて。物理的な距離とは別に、何か違う遠さを感じた。

 彼女はモンスターに背中から襲われ、その場から崩れ落ちる。その波に呑み込まれてHPを全て失うその瞬間に両手を握り、縋るように、懇願するように座り込んで。

 

 

 ────キリトが伸ばしたその手に、彼女は応えてくれなかった。

 

 

 ────その時、代わりに彼女から聞こえた言葉の一部が、今もこの胸に響いて消えてくれなかった。

 

 

 

 

『……アキ、ト……アキト……!』

 

 

 

 

 死にたくない、そんな想いから溢れた救いの願いは、決してキリトに向けられたものじゃなかった。

 

 

 

 

 ────俺が、自分のレベルとスキルを仲間に隠してさえいなければ。

 

 

 

 

 前線に上るのを止めさせ、宝箱を無視させ、罠に嵌った後でさえ全員を脱出させる。その全てが、俺には出来たはずなのに。

 

 

 そして、気が付けばあれ程いたモンスターの姿はなく。

 

 

 黒猫団の姿も、誰一人いない。

 

 

 虚ろな世界に取り残されたかと思える程の孤独感の中、キリトが初めて目にしたのは────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────片腕を失い、数多の傷を負った親友の、絶望に染められた顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どう帰ったのかは覚えていない。気が付けばアキトの姿はなく、自分が立っていたのは、みんなと共に過ごした宿屋だった。一人ポツリと、仲間の帰りを待っていたケイタが座っていたそのテーブルの上には、新しいギルドハウスの鍵が置かれていた。

 そのデザインが、以前みんなでホームを探している時に見たものと違っていた。その理由をケイタから聞いた時、キリトは自身がした事、その罪の大きさに気付かされたのだった。

 焦燥、恐怖、身体に走る鳥肌が抑えられない。思い浮かぶのは、自分が居場所を奪った時の、アキトの表情。

 

 

 彼が黒猫団に抱く想いを、自分は知っていたはずなのに────

 

 

 彼の居場所を、俺が、奪った。

 

 

 俺の矮小で独善的な、嫉妬から生まれた欲望のせいで。

 

 

 それに気付いた時、人としての何かを、自分は既に捨てているような気がした。ケイタが自身の目の前で消えた、その時に告げられた言葉は全くの真実だった。キリト自身が、何よりもそれを痛感した。

 自分が黒猫団のみんなに関わりさえしなければ、彼らは今も安全なミドルゾーンで堅実にレベル上げをしていたはずだ。高効率過ぎるパワーレベリングを施していたキリトは、それが彼らの為になっていると誤魔化し続けた。

 彼らに実力以上のレベルを与えておきながら、情報を分ける事を怠った。このデスゲームで生き残る為にまず必要なのは、レアなアイテムや装備でも、高いステータスでも、まして高いレベルでもない。いつだって、必要充分な情報だった。それを、分かっていたはずなのに。

 

 アキトは、彼らを油断させないようにと、何度も釘を刺して戒めていたというのに。自分は、彼らに頼られている事実に浮かれ、快感を得る為だけの道具として黒猫団を見ていたに過ぎなかったという事実を、今回の事で浮き彫りにされた。

 自分は初めから、アキトに負けていたのだ。彼はいつだって、誰に対してもヒーローで、そんな彼から自分は、奪うだけだった。

 起こるべくして起こった事件。守ると、そう彼女に告げたはずなのに。アキトにそう、言い切ったのに。

 

 

 ────俺は、この手でサチを殺したんだ。

 

 

 《蘇生アイテム》。眉唾物でしかないそれに縋るしかない自分は、道化に見えるだろうか。だが、それでいい。自分に相応しい末路だ。

 彼女を生き返らせる事が出来たなら、自分は彼女に、自分の掲げた誓いを言葉にする事が出来る。

 そしてアキトに、自分の抱えた思いを、伝える事が出来る。

 あるかも分からないそんなアイテムをただひたすらに求めるのは、ただアキトとサチの為でしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●○●○

 

 

 《背教者ニコラス》が出現するというモミの巨樹。

 それが何処にあるのか────それが、このイベントの報酬を狙う多くのプレイヤー達の間での最大の懸案だった。キリトはレベリングの合間で、その場所を既に特定し、そこである事に確信を持っていた。

 何人もの情報屋から樹の位置座標に赴いては確かめ、それがモミではなくスギだったり、というのを繰り返し、漸く見付けたのだ。現実世界の自宅の裏手にモミの木があった為、探すのに手間は掛かったが判別するのは容易かった。

 

 三十五層のフィールド《迷いの森》の一角。数ヶ月前、そこに赴いた際に、一本の捻じくれた巨木を見付けていたのだ。如何にもな形状で、何かクエストか始まるかもと調べ、何も起きなかったのを覚えている。思い返してみれば、あれこそがモミの木だった。

 つまり、今夜あの木の下に、《背教者ニコラス》が出現する。

 それだけ分かれば、後はもう何もいらなかった。

 

 

 「……」

 

 

 キリトは三十五層に転移し、その光に目を瞑る。前線と比べると、その広場はあまりに静まり返っていた。主街区に見どころも無ければ、中層を根城に戦うプレイヤーの主戦場ともずれている。当然かもしれない。

 農村風の造りの街並みの中、それでも尚何人か見えるプレイヤーの目を避けるよう、街区を早々に出た。

 雪積もる道に轍を作りながら、何度も何度も背後を振り返った。尾行者がいないか、内心ヒヤリとしていた。雑魚モンスターの相手をしている時間も惜しく、精神的な余裕もなかった。誰もいない、それさえ分かれば、あとは全力で走り始めた。

 ここ最近、ずっと無茶なレベリングを自身に施し、その為に培った敏捷ステータスの恩恵はかなりのものだった。その足は羽同様に軽く、ほんの十分ほどで《迷いの森》の入口へと到達した。長時間寝てない為に鈍痛が頭を襲う。だが、そのお陰で眠くはない。戦闘時に倒れる事はないだろうと、自嘲気味に嗤った。

 

 マップを広げ、モミの木がある辺りを見据えると、そこへ至る道を逆に辿る。ルートを脳裏に刻み付け、顔を上げた。夜の闇に包まれた静寂漂う森の中に、ゆっくりとその足を踏み入れた。

 道中、避け切れない戦闘は何度かあったが、特に問題にはならなかった。

 

 しかし、十二時まであと十分もなかった。準備していた際のあの宿で、アキトや黒猫団のみんなと過ごした日々に想いを馳せ、気付けば時間に遅れていた。

 だが現時点で、目的地の一つ手前のエリアにまで来ている。加えて、この層は誰もマークしていないのは知っているので、イベント開始時間に遅れても、ボスが倒されている事は恐らくない。

 

 

 一番乗りで、たった一人で、ボスと戦う事が出来る。

 

 

 ────自身が今立つこの森は、身を置けばそれだけ孤独を強く感じた。

 

 

(……アキト、待っててくれ)

 

 

 親友だったプレイヤーの、その名を呼ぶ。

 アルゴから逐一情報を買っては、アキトの行動を把握していたキリト。彼もまた、この《蘇生アイテム》というあやふやな噂でしかないアイテムの為にフラグMobの出現場所を探しているらしいのだ。

 けれど彼は黒猫団が全滅してから以降、何処かのギルドに所属する事もなければ、野良でパーティすら組んでいない。

 ならば、もし仮に出現場所をキリト同様見付けられたとしても、一人でボスを倒そうとするのではないかという疑念が頭を過ぎる。

 もしそうなら、そんな事はさせられなかった。どの口が、とすぐに卑屈に嗤う。

 

 ────死ぬかもしれない戦いなのだ。なら、そんな戦いこそ、この愚かな自分の末路に相応しい。

 

 死の可能性が非常に高いボスモンスターに、たった一人で戦う。けれど、キリトのその心に宿るのは恐怖ではなかった。それが胸に到来する気配すらなく、それに疑問すら抱かない。寧ろ、心の何処かではそうなる事を望んでいたのかもしれない。

 彼女の命を呼び戻し、アキトに謝って。もしそれが叶うなら、と。それだけで救われる気がした。その戦いで死ぬのなら、それは唯一自身に許された死に方なのではないかと、そう思えた。

 大切な人から、大切な居場所を奪い、破壊した自分の最後に────。

 

 死んだって構わない。この命の意味を、自分は模索する必要などないのだ。あの時のサチの問いに、意味など無いと答えた、自分の言葉を、今こそ真実にする事が出来る。

 この無意味なデスゲームで、彼らは無意味に死んだ。意味を奪った自分は、彼らと同じように、誰の目にも留まらない場所で、誰にも知られぬように、記憶に残らぬように、いかなる意味も残さぬように────死ぬのだ。

 

 生き残れたら、その時はきっと、《蘇生アイテム》が真実となるだろう。根拠は無い。でも、サチは死の世界から舞い戻り、彼女にこの想いを伝える事が出来るのだ。

 漸く。漸く────

 

 

 

 

 「っ……」

 

 

 

 

 ────瞬間、背後から気配がした。

 すぐさま飛び退り、背中の剣の柄に触れる。振り返ったワープポイントから現れた集団は凡そ十人程。その先頭に立つのは、見知った顔だった。

 侍のような軽鎧に、刀を腰に収めたバンダナ男。

 アキトに出会って、自分の利己的な性格に罪悪感を感じる度に頭に過ぎったその顔が────クラインが、目の前にいた。

 周りのメンバーは、恐らくギルド《風林火山》。メンバー全員の表情からは緊張の色が見える。最後のワープゾーン前に立つキリトの周りを囲うように、ジリジリと近付いて来た。

 キリトはただ、クラインの顔だけを睨み付けるようにしながら見て、震えるような声を放った。

 

 

 「……()けてたのか」

 

 「まあな。こっちにゃ、追跡スキルの達人いるんでな」

 

 

 頭を掻きながら、クラインは頷く。

 

 

 「……何故俺なんだ」

 

 「お前ェが全部のツリー座標の情報を買ったっつう情報を買ったんだよ。そしたら、念の為に四十九層の転移門に貼り付けといた奴が、お前ェが何処の情報にも出てないフロアに向かったっつうじゃねェか」

 

 

 そんな場所から、既に尾行されていたのか。自身の間抜けさが嫌になる。

 そんなキリトを見てクラインは少しだけ黙った後、言葉を続けた。

 

 

 「オレは、こう言っちゃなんだけどよ、お前ェの戦闘能力とゲーム勘だけはマジで凄ぇと思ってるんだよ。攻略組の中でも最強……あのヒースクリフ以上だとな。だから……だからこそなぁ……こんなとこで、お前ェを死なす訳にはいかねぇんだよ、キリト!」

 

 

 静寂なる森で、クラインの言葉は嫌に耳に響いた。伸ばした右手はキリトを差しており、叫ぶように告げた。

 

 

 「ソロ攻略とか無謀な事は諦めろ!オレらと合同パーティを組むんだ。蘇生アイテムは、ドロップさせた奴の物で恨みっこ無し、それで文句無えだろう!」

 

 

 ────うるさい。

 

 

 そう思った。コイツは何も分かってないのだと、怒りすら覚えた。クラインのその言葉が、自分の身を案じてのものだと、信じる事がもう出来なかった。

 ただ、自分の《蘇生アイテム》を狙った、一人の敵としてしか────

 

 

 「……それじゃあ……それじゃあ、意味無いんだよ……俺独りでやらなきゃ……」

 

 

 変わらず握る剣の柄。その力が強くなる。まともな判断が出来なくなっていたその頭で、キリトは彼らを睨み付ける。

 

 

 ────全員斬るか。

 

 

 ずっと、後悔していた。アキトに出会ってからは、それが顕著だった。初心者であるクラインを、置いていったあの時を。彼が今、こうして逞しく生きていてくれて、心の底から良かったと、そう安堵していた。

 けれど、数少ない友人を斬り殺してでも、手に入れたいと思った。レッドに堕ちてまでも独りで目的を果たす事を、本気で考えていた。

 それは無意味かもしれない。だが無意味でいい。これ以上、意味を見出す必要などない。そう、脳内で遮る。

 もうそろそろ零時を過ぎる。いち早くボスのいるフィールドへと行きたかった。誰もマークしていない為一人で戦えると思っていたが、彼らが尾行して来たのなら話は別だ。

 剣を抜けば、もう止まれない気がした。震えながらに掴む柄を見て、クライン達は武器を構えつつも僅かにどよめく。

 

 

 「っ……お前ぇ……!」

 

 

 キリトがやろうとしている事を本能的に察したのか、クラインは苦しそうに顔を歪めてキリトを見やる。

 しかし、キリトの右手はぶるぶると震えるばかりで、心の中でせめぎ合っているのか、中々剣を抜かない。クラインはそんなキリトを悲しげに見て、構えた刀を再び下げた。

 

 

(……もし、アキトだったら……コイツらを斬って進んだだろうか……)

 

 

 それが、キリトが震えながらに考えていた事だった。最後の最後まで憧れ妬み、結局勝つ事も超える事も出来なかった親友。自身のヒーロー像を持つ少年、アキト。彼なら、この場をどう切り抜けただろうか。

 説得しただろうか。一緒に戦った末、ラストアタックボーナスを掠めとっただろうか。それとも、アイテムをドロップしたプレイヤーを強襲しただろうか。

 

 

 

 

 ────この場の全員を、斬り潰しただろうか。

 

 

 

 

 「……」

 

 

 アキトという人間を、誰よりも近くでつぶさに見てきたキリトだから分かる。それは確信で、断言出来た。

 たとえ大切な仲間の為だとしても、自分の行動を邪魔するプレイヤー達に阻まれたとしても、アキトはその剣を決して殺人には使わないであろう事を。

 名前も知らない誰かの危機にいち早く飛び出し、助ける為に力を貸す彼が、誰かの危険を自ら作り出すはずはないのだと、そんな分かりきった事をを考えて、キリトは小さく笑う。

 けれど、自分はアキトじゃない。誰かの為に頑張る彼の姿に憧れた結果、辿り着いた末路は似ても似つかない。今はアキトと似た雰囲気を纏う自身の容姿でさえ、嫌いになりそうだった。

 

 

 ────なら。自分はアキトじゃないのなら。この剣を抜いて、斬って、進んでも良いのではないだろうか。

 全ては、親友と、サチの為。なら、ほんの少しの犠牲はきっと、仕方無いのでは────

 

 

 

 

 「……っ!?」

 

 

 「なっ……」

 

 

 

 

 ────瞬間、そのエリアに新たな侵入者が姿を表した。

 

 

 キリトとクライン達は慌ててその場を飛び退き、テレポートして来た集団を凝視する。

 

 

 そして、その数に愕然とした。今度のパーティーは十人どころの話ではなかったのだ。一瞥しただけでもクライン達の三倍はいるだろう。

 キリト同様、クラインも呆気に取られており、キリトはそれを見て苛立ち含む声を投げた。

 

 

 「お前らも()けられたな、クライン」

 

 「……ああ、そうみてぇだな……」

 

 

 距離にして凡そ五十メートル。離れた位置に現れたその集団は、キリトと《風林火山》を無言で見つめていた。その中には、キリトがここ最近レベル上げで篭っていたアリ谷で頻繁に見かけた顔触れが何人も存在していた。

 クラインの隣りにいた剣士が、クラインに顔を近付けて告げる。

 

 

 「アイツら、《整竜連合》っす。フラグボスの為なら一時的にオレンジ化も辞さない連中っすよ……!」

 

 

 クラインが驚くと同時に、キリトも静かに舌打ちする。そのギルドの名は、キリトもよく知っていた。現時点でトップの《血盟騎士団》と並ぶ名声を誇る、攻略組の中でも最大のギルド。

 個人のプレイヤースキルやレベルはキリトよりもかなり下だろう。だが、この人数相手に勝てるかどうかは分からなかった。

 

 

 時計は既に零時を過ぎている。本当なら、今頃ボスが現れているはずなのに。

 

 

 ────だが結局、もう一人でボスを倒す事は出来ないだろう。そんなに多くのプレイヤーが集まってしまったのだ。出し抜こうとした結果、回り回って上手くいかなくなってしまった。

 なら、もう同じなのではないだろうか。ボスにしたって大ギルドにしたって、殺されるならばそれが無駄死にである事に、きっと変わりはない。なら、少なくとも友であるクラインと戦うよりは、ずっと賢く、マシな選択肢ではないだろうか。

 

 

 ────なら、もう考えるのはやめよう。

 

 

 キリトは、遂にその背に担ぐ剣を抜こうと手を掛けた。もう、何もかも面倒になってきていた。

 そうだ、ただの殺戮を行うだけの機械になればいい。ただ滅茶苦茶に剣を振り、プレイヤー共を八つ裂きにする機械に。

 やがて、壊れて止まるだろう。

 

 

 

 

 「クソッ!クソったれが!!」

 

 

 

 

 ────しかし、そんなキリトの手を押しとどめたのは、隣りのクラインの叫び声だった。

 苛立つように武器を構えると、キリトの前に立つ。それに合わせて、《風林火山》の面々が、キリトの前にクライン同様、壁のように立った。

 キリトが目を丸くして見ていると、クラインが背中を向けたまま怒鳴った。

 

 

 「行けっ、キリト!ここはオレらが食い止める!もう時間は過ぎてるが、お前ぇのゲーム勘は間違いねぇ!ボスはぜってぇ、この先にいる!」

 

 「クライン……」

 

 「お前ぇが一番乗りだ!行ってボスを倒せ!だがなぁ、死ぬなよ手前ェ!オレの前で死んだら許さねぇぞ!ぜってぇ許さねぇぞ!!」

 

 

 時間は過ぎてる。けれど、誰も目を付けていないこのフィールドにいる勢力は三つ。その中で二つが戦闘を開始せんとしている中で、唯一動けるのは、キリトだけ。

 いるのは間違いない。なら、間違いなくキリトが誰よりも早くボスに向かう事が出来る。

 

 

 「……」

 

 

 キリトは、クラインに感謝の言葉を告げる事無く背を向けて、最後のワープゾーンに足を踏み入れた。

 

 

 

 

 ────零時は、とっくに過ぎていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●○●○

 

 

 

 ────雪と同じ色のコートを、小さな風が翻す。

 

 

 少年は雪の中を、ただひたすらに歩いていた。

 サクサクと雪原を踏み締めるその足は、幾分か冷たい。今も尚変わらず振り続ける白い結晶の冷たさを前身で感じながらも、視線の先は変わらず森の奥。

 35層フィールド《迷いの森》。目指すは一点、ただ一本の巨木。求めたものが、そこにはある。ここまでかなり長かった。ずっとこの時を待ち望んでいた。漸く、それがこの手に入るのだ。

 それさえ分かれば、後はもう何も要らない。今度こそ、誰かではなく、自分がこの手で。

 

 そこは、一面が雪に覆われた、まさに銀世界。雪が木々に積もり、空気が凍る。寒空は雲で覆われているが、所々隙間から覗き見える空は、嫌なくらい星々で煌めいていた。

 景色と同化する程に白いコート纏うその少年の背中には、対照的に黒い刀が収まっていた。刀特有の反りが無く、片手剣のように真っ直ぐで、刃から柄までが純黒に染まっていた。

 初めての仲間が、初めてくれた宝物。限界まで強化し続けてここまで使って来たが、そろそろお別れなのかもしれない。

 しかし、もう構わない。今から倒す醜悪なるボス、そいつを一緒に倒してさえくれれば、もう役目は終わるだろう。

 

 周りには誰もいない。どうやら、一番乗りの様だ。

 この手の競走イベントは、誰が想像している場所で起こるとは限らない。出し抜く事が常なこのゲームで必要なのは、開発者の意図を読み取り、そしてイベントの出現場所のヒントを読み解く事。結果として、誤った場所で討伐隊を組んでいる他のプレイヤー達を出し抜き、彼は漸くここまで来た。

 誰もが、モミの木の特徴を知らないと見える。この時ばかりは有難かった。《迷いの森》など、誰もマークしていない。ならば、尾行でもされていない限り誰かと出くわし競走する事になる心配は無い。尤も、有名なプレイヤーなら兎も角、アキトは名も無きソロプレイヤー、追跡するものなどいないだろう。

 ならば、この状況は少年にとって最高の形だ。誰にも邪魔されずにボスを倒し、欲しいもの全てを我が手に出来る。

 

 その少年────アキトは、虚ろな瞳を抱えたまま、ただ目の前の巨木を見上げた。周りに他の木は殆ど無いその四角いエリアは、一面が真っ白で輝く。

 目に見える全てが、ただ一面の雪。何処までも広がる雪原。誰もいないその場所は静寂を纏い、この世界にいるのは自分だけなのかもしれない、そんな孤独感を抱かせる。

 

 

 ────そこはまるで、生きとし生ける全ての生命が死に絶え朽ちた、名も無き墓標の雪の丘。

 

 

 「……」

 

 

 視界端の時計はイベント開始時刻から五分前。アキトは特に何をするでもなく、ぼうっと視線の先にある巨木を見つめる。ここへ転移して来たばかりなので、その巨樹はまだかなり先だ。その為小さく見えるが、それに近付こうと、アキトはゆっくりとその歩を進めた。

 木に近付く度に、その雪に足跡を残す度に振り返り、自身が歩んで来た道を見る。すると、半年前の記憶が蘇るのだ。

 

 

 傷だらけのまま、片腕を失いながらも目指した先にあったもの。

 いや、そこには何一つ残っていなかった。あの時、自分は彼らに対して何を思っていたのだろうか。

 キリトに、自身のヒーローに、どんな感情を抱いていたのだろうか。

 

 

 今ではもう、それすら思い出せない。

 ただ、その現実を受け入れるのにかなりの時間を使ったという事だけ。

 ダッカーが死に、テツオが死に、ササマルが死に、サチが死んだ。そして、それを知ったケイタが、自分の前で死んだ。

 自分を置いて。孤独にされて。手を伸ばしたけれど、それは届かなくて。

 一人、独りになった。その孤独感が、今も尚この身体を襲っている。嘆くべきは、恨むべきは、呪うべきものは何なのだろう。

 

 

 漸く意識を取り戻して初めて見たキリトの顔。後悔、焦燥、懺悔、そんな感情が綯い交ぜになっていて、必死にこちらに何かを訴えかけていた事は覚えている。しかし、そんな彼の声が、一切聞こえない。

 ただ、二人だけのギルドになったそのギルドホームは、もう誰の帰りも待ってはくれていなかった。

 

 

 あの時どうしてああしなかったのだろうと後悔しても、その何もかもが遅過ぎた。たらればの決意など過去の出来事に何の干渉も出来はしない。もう消え去った大切なものは戻らない。

 もう、二度と────

 

 

 俺が、いけなかったのだ。全て、俺が悪かったと、後になって嫌になるほど後悔が続いた。

 

 みんなの為にと思っていた行動は、きっと全て裏目に出ていたのだ。もっとキツく注意すれば良かったのだろうか。いや、初めからみんなにアイテムや装備などを配分していなければ良かったのだ。

 みんなを守る為だといって、一人で夜中にレベリングした事で、チームバランスはきっと少しずつ崩れていたのかもしれない。彼らが慢心した一因に、きっと自身も存在していた。

 キリトが他のプレイヤーより一回りや二回りも優れている事を知っていた。なのに、仲間だからと、そう言って彼らに何も伝えなかった。初めて出来た親友だから、失いたくない。そんな自分勝手な感情が邪魔をして、キリトの身分隠蔽に協力していたのだ。

 みんなが全滅するまで、彼があの攻略組の《ビーター》だなんて、知りもしなかった。知ろうとも、してなかったのだ。

 俺が、彼の事を考えて行動出来てさえいれば────

 そんなキリトが、強いヒーローが、自分の代わりにみんなを守ってくれる。そう、期待してしまったから。

 彼に、キリトにきっと、その重荷を背負わさてしまったのかもしれない。自分勝手な妄想や理想を、キリトに押し付けた所為で、彼にプレッシャーを与えていたのかもしれない。

 

 

 その全てを懺悔し後悔しても、もう遅いのに。そればかりが頭を過ぎる。

 どうすれば良かった、なんて今更過ぎた。

 けれど、ああしていれば良かったと、そんな後悔は、分かっていても止められなかった。

 

 

 意地を張って、黒猫団のみんなを避けなければ良かった。そうすれば、最後の日だって笑い合えたし、もしかしたらみんなを助けられたかもしれない。

 自分の本当の気持ちを、強がる事無くみんなに話せていれば良かった。呆れられ笑われても、彼らなら最後まで見捨てず付き合ってくれたかもしれない。

 キリト一人に背負わせなければ良かった。二人揃えば最強、そんな言葉の通り、二人でみんなを守っていれば良かった。そうすれば、キリトとだってもっと仲良くなれた。あの日も二人で守れたかもしれない。

 サチに気持ちを伝えれば良かった。たとえ駄目でも、前に進む切っ掛けに、ヒーローみたいになれる切っ掛けになったにもしれない。

 

 あの日から今までずっと、黒鉄宮へ赴くのを忘れた日は無い。彼らの名前が、存在が記された場所は、最早あの場所にしか存在せず、アキトはまるでお墓参りのように、何度も何度も向かった。

 あそこに好んで行くようなプレイヤーは少なく、アキトは毎日そこへ入っては、その日にあった事を話す毎日が続いた。

 声も届かぬ遠い場所にいる彼らに、自分の声が聞こえているかは分からない。なのに、ただ狂ったように、何も映していない瞳で、実のない話を繰り出していた。

 そして、そうする度にそんな瞳から溢れるのは、一筋の涙。ただ声が聞きたい、それだけなのに。誰もいない事をただ突き付けられて。

 

 

 ────けれど、今日でそれを終わりに出来るかもしれない。

 

 

 大切だった彼女を黄泉比良坂から呼び起こし、もう一度会えるかもしれない。その時こそ、この想いを伝えられるかもしれない。

 

 

 もう、キリトに────仲間にばかり頼ったりしない。他人任せになんてしない。

 

 

 自分の大切なものは、今度こそ自分の手で守る。ただヒーローに憧れ、妬むだけの日々に別れを告げる。

 

 

 もし、それが出来ずに死ぬのなら、きっと自分は黒猫団のみんなの元へ行けるだろう。

 

 

 

 

 「……」

 

 

 

 

 ────独り。

 

 

 

 

 ただ一人、巨木の前の道無き道を歩く。その身体は、冷え切っていたが、構いやしなかった。

 身体を循環する血液の流れまで、寒さで凍ってしまうかもしれない。心臓も凍り、やがてその動きを止めるかもしれない。

 雪景色と同化する白いコート。背中から漆黒の刀を抜き取り、力無く引き摺る。

 

 空は粉雪が舞っており、辺りは一面が雪野原。引き摺った刀から雪へと、一本の細い線が出来ていた。そして同じく足跡も続き、歩いた後ろに道は出来ていた。

 

 

 「────」

 

 

 その瞳は、酷く虚ろ。

 どこかを見ているようで、どこも見ていない。これから向かう先の事、欲しいものはあるけれど、明確な目的すらも曖昧で。

 何か、大事なものが欠落していて。

 

 

 「……あーあ」

 

 

 また、こうしてたった一人。自分だけが残る。

 何度願っても、神様は自分の願いだけは叶えてくれない。

 無慈悲で残酷で、どこまでも非情で。

 

 

 

 

 ────瞬間、視界の端で、時計が零時を告げた。

 

 

 

 

 同時に、何処からともなく鈴の音が鳴り響く。アキトは特に驚く事もせず、歩む足すら止めはしない。ただ、その視線の先にある捻くれたモミの巨木へと、ゆっくり近付いていて。

 そして、その視線を梢の天辺へと上げる。

 

 暗闇の夜空、上層の底を背に延びるのは、二筋の光。

 

 焦点を当てれば、奇怪な形をしたモンスターに引かれた、巨大で歪んだソリだった。

 

 そのソリが巫山戯た音色の鈴を鳴らしながらモミの巨木の真上に来ると同時に、ソリから何かが飛び降りた。黒く巨大な影が、こちらへと迫る。

 

 

 「────」

 

 

 アキトはただ、その足を止めた。微動だにせず待ち受ける。自身とモミの巨木の間に綺麗に着地したソイツは、周りの雪を盛大に蹴散らし、風は頬を撫で髪を巻き上げる。

 アキトは臆する事無く、ただ視界に居座る異物へと目を向けた。

 

 自身より三倍程の背丈を持つ異形の怪物。腕が地面に擦れてしまう程に長く、気持ち悪い程の前傾姿勢の人型のモンスター。焦点の合わない小さな赤い瞳が輝き、長く伸びた捻じれた灰色の髭は腹部まで来ている。

 そして何より不快なのは、赤と白の上着に三角帽子。ソイツが、サンタクロースの姿を模しているところだった。右手には片手斧を持ち、左手にはプレゼントが入っているであろう汚れた袋を下げていて、如何にも醜悪なサンタクロースだった。

 

 

 《背教者ニコラス》

 

 

 「っ……」

 

 

 そのモンスターの定冠詞は、アキトが求めて止まないものを持つとされる、ボスだった。アキトの口元が、僅かに震える。

 

 

 ────その刀を、強く握り締めた。

 

 

 その背教者は焦点の合わない瞳で、白いコートの少年を見下ろしていた。少年はそんな巨大な背教者を見上げるだけで、表情一つ変えない。

 冷たく虚ろな瞳で、その背教者を見つめていた。

 そんな少年が面白くないのか、その背教者は少年に向けて大きく咆哮を繰り出す。辺りは振動で雪が飛び、木々が揺れた。

 けれど、少年だけは、全く動かない。ただ真っ直ぐ目の前の、《背教者ニコラス》を見ていた。

 

 

 瞳が揺れる。漸く、見付けたのだ。

 

 

 大切な人を助けられるかもしれない可能性を手にした、凶悪なモンスターを。

 

 

 その事実が、アキトを揺さぶる。息を荒くさせ、瞳孔を開かせ、身体が震え────

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────嗤った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……よお。半年間、お前だけを目的に生きてきた……!」

 

 

 

 

 まるで、何処か歪んでる。けれど、意識は至って正常だと、彼自身は思っている。でも、もうとっくに彼の心はボロボロで。

 ボスとの戦闘経験などほぼ皆無のアキト。それでも、逃げるどころかアキトは刀を抜き取った。その笑みは歪み、瞳はギラつく。

 

 

 

 

 「ボスって、一人で倒せるものなのかな……もしかしたら、死んじゃうかもな……ああ、そうだ……強くなる……“おまじない”があったっけ……なんて名前の話だったっけなぁ……はは」

 

 

 

 

 ────まあ、どうでもいいか。

 

 

 

 

 その巫山戯た態度すら、少年の心が壊れている事を示す証拠に他ならない。

 もはや、自暴自棄の先に位置するその行いは、少年アキトの心を満たすには充分だったのかもしれない。

 

 

 少年は、狂ったように嗤った。

 

 

 閉じた瞳を再び開く。

 

 

 カチリと、何かが嵌る音がして、

 

 

 父が別の意味をくれた、その言葉をゆっくりと唱える。もう、守るものは無いこの身に、存在理由なんて無いけれど。

 

 

 目の前のボスを倒す為なら、暗示もまじないも、チートだとしても、どんな手でも使ってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それが、本当の意味では決しておまじないなんかじゃなく────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「──、───────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────自身を呪う、言葉だったとしても。

 

 

 

 











雪の中、一人きりで歩く。


そんな彼は、ある日全てを失って、もう何もかもが嫌になっていた。


けれど、私は知っている。


彼は誰かの為に、どうあっても頑張ってしまう人。


人一倍傷付いて、他人に一生懸命になれる人。


守るべきものの為に、何よりも強く在ろうとした人。


そんな彼に、もし、何かを残せるのなら。


きっと、この願いを伝えよう。













次回 『私のヒーロー』


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