ソードアート・オンライン ──月夜の黒猫──   作:夕凪楓

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この世界に来る前のアキトの一人称を「俺」から「僕」に変更したいと思います。
変化の程を際立たせるためですので、ご了承ください。もう一つ理由はありますが、この場は伏せます。
まだ変えてない部分も多いですが、推敲した後、変えていきます。
この世界に来た時点では、アキトは「俺」ですので、それもご了承くださいます様、今後もよろしくお願いします。その理由も、今は伏せます。
予想は出来ると思いますし、大した変化ではないので、気にしないで貰えると嬉しいです。

それと、この作品では、<ホロウ・フラグメント>でのヒロインキャラのイベントをあまり加えない方針で進めています。

キリトだからこそ紡げる物語で、アキトはキリトとは違いますので。
それは建前で、本当は早く完結したいだけなんですけどね……書きたい話まで長い……!
勿論、書くエピソードもあります!お楽しみ下さい!

長くなりました!それでは、どうぞ!



Ep.43 80層到達パーティ

 

 80層<カーリアナ>

 

 その街は、沖に上がった海底遺跡を彷彿とさせる街並みだった。

転移門の周りは湖に囲まれて、その場所と街を左右の橋で繋いでいる。

建物毎の間は小さく、幾つも連なっている。木々の見た目は、さながらハワイを想像させるものだった。

上層に上がる度に層が狭くなり、その街も始まりの街と比べれば、随分と小さく見えた。

少し遠くを見れば、そこはもう階層の端、壁がある。この場所は、この街は、この80層の一番端に位置するのだろう。

 

 

「アキトさんっ、この層のアクティベート、済ませて来ました!」

 

「……おう」

 

 

 シリカはピナと共にアキトの元へと駆け寄り、屈託の無い笑顔を見せる。

アキトはそれを見て一言そう返すと、その少女から視線を逸らす。

 

 

 現在攻略組はその<カーリアナ>に足を踏み入れていた。

つまり、79層のフロアボスは、滞り無く討伐する事に成功したのだ。

79層のボスは蛇のような体を持った、3つの頭を持った龍だった。その3匹の連携には、敵ながら目を見張るものがあり、序盤は苦戦を強いられた。

ブレスや噛み付き、尻尾による打撃、動きの素早さもあって、対処に遅れる事も仕方無し。

 だが、今回は新しく攻略組に参加したシリカによる活躍が大きかった。

その身軽な動きは、龍の頭の1匹1匹を上手く翻弄し、攻略組のメンバーは、それを機にボスに攻撃を当てる事が出来たのだ。

その翻弄振りに、3頭が仲間割れし始めた時は流石の攻略組も唖然としていたが。

 今回は、なんとピナの活躍も大きかった。

というのも、最近街中のクエストでは経験値が足らなくなったらしく、リズベットやリーファと街の外でモンスターとの戦闘に赴いた際、ピナに助けてもらったとか。

詳しく聞くと、中ボスクラスのモンスターとの戦闘で危険な状態になり、止む無く転移結晶を取り出した所、それをピナが食べてしまったそうだ。

その際、ピナの体が強く光り、ボスに向かって凄まじい威力のブレスを発射して、その場を離脱出来たらしいのだ。

シリカはそれが気になって、街中で色々と調べに走っていた所、どうやらティムしたモンスターは、鉱石などを食べさせると、その種類によって色々な効力を発揮するという情報を掴んだのだ。

シリカは自分で考えて、検証し、今使える鉱石をピナに食べさせ、攻略の援助に回していた。

 

 結果として、今回の討伐においてのピナのブレスは、ほんの僅かではあるが、目に見えてボスのHPゲージを減少させたのだ。それも運良く、ボスのトドメの段階で。

よって、LAボーナスはシリカに譲渡され、暗黙のルールに従って、次の街のアクティベートを一任されたのだった。

 

 76層に来たばかりのシリカは、レベルもそれほど高くなく、誰の力にもなれなくて歯痒い思いをしてきた筈だ。

それでもめげずに街中で出来るクエストを着実に熟し、こうして攻略組としてみんなの役に立とうと頑張っていて。

シリカはとても嬉しそうだし、ピナもそんな主人の役に立てた事が嬉しいのか、目を細めながらシリカに頬擦りしていた。

 

 アキトからしてみれば、目の前の幼い少女に危険な目にあって欲しくない。出来る事なら、76層の街から出ずに、ゲームクリアを待って欲しかった。

だけどそれはアキト自身のエゴでしかなくて、当のシリカ本人は自分の意志で此処に立っている。

 それを止める術は無いし、それが彼女の気持ちなら、アキトは精一杯応援する事しか出来ない。

 

アスナを守り、シリカやリズベットを守り、クラインやエギルを守り、攻略組を守り、プレイヤーを守る。

この世界のプレイヤー全てを救う事は、きっと出来ない。

だからこそ、危険な行為は全て排除したい。そんな道理は通る筈は無い。

この目の前の小さな少女を守る事しか、自分には出来ない。

 

 

「おう、みんな。お疲れさん」

 

「あ、皆さん!」

 

 

 シリカとアキトのすぐ近くに声がして、それを見ればいつものメンバーが近付いて来ていた。

アスナとリズベットは並んで歩いており、その後ろからクラインとエギルが続いている。

 

 

 ……酷い絵面。

 

 

「おうアキト、お前さんも」

 

「……ああ」

 

 

 クラインやエギルがアキトの元まで歩いて来て、そしてその足を止める。

笑ったその顔を直視出来ず、アキトはシリカの時同様にその目を逸らした。

エギルはそんなアキトの態度に気を悪くする事は無く、やがてフッと息を切らすと<カーリアナ>の街並みを見渡した。

 

 

「……とうとう、80層だな」

 

「ホント、漸くって感じよね」

 

 

 エギルの達観したような発言に、リズベットはそう答える。

ここまで来るのに2年かかったのだ、そんな言葉を出てくるだろう。

 実際、ゲーム開始時は絶対にクリア出来ないと誰もが思っていただろうし、だがそれでも、この世界から出たいと感じていた筈だ。

 

 

「10の桁が上がると、節目って感じがするわね」

 

「ああ、10の位の数字が変わると、もう少しって感じがするもんな」

 

 

 アスナのその言葉は、まさしく共感を得ていた。クラインはその言葉に、腕を組みながらうんうんと頷いていた。

 浮遊城アインクラッド。その城は、上層に行けば行く程狭くなっている為、ボス部屋を発見する速度も最初の比ではなくなっている。

戦力も上がってきている。攻略速度もその分だけ上がっていく筈だ。

 ゲームクリアは確実に近付いている。攻略組の彼らも一時は崩壊しかけたが、きっとその思いを確信に変えつつあるだろう。

 自分達は、ゲームをクリア出来る、と。

 

 

 ────そう考えた瞬間、突然、地面が揺れた。

 

 

 「っ!」

 

 「きゃっ!!」

 

 「ひゃあっ!?」

 

 「な、なんだ…!?」

 

 「じ、地震か?」

 

 

 その大きな揺れに、一同は驚愕の色を見せる。

空に浮かんでいる筈のこの城が、グラグラと大きく、確実に揺れていた。

 突然の事でシリカは尻餅をつき、リズベットも前のめりに倒れた。

アキト達は倒れまいと、どうにかバランスを取りつつも、この揺れに困惑を隠せない。

 やがてその揺れは小さくなっていき、段々と消えていった。

攻略組の各々は、その地震という未知の体験にざわめいた。

 それはアキト達も例外ではない。暫くの沈黙の後、リズベットが最初にその口を開いた。

 

 

 「……ビックリしたわね」

 

 「アインクラッドで地震なんて初めてじゃない…?」

 

 

 リズベットに同調して、アスナが困惑気味にそう言った。

 誰もが過去を振り返り、今までで地震という現象があったかどうかを模索した。

 その結果、地震を経験したのは、アインクラッドでは初めてだという結論に至ってしまった。

 クラインはアスナにその考えを伝えた。

 

 

 「確かに記憶にはねえな……昔のMMOじゃあ地殻変動イベントとかあったけどな。こういうイベントを切っ掛けにして、新しいマップが解放されたりしたんだよ」

 

 「そうなんだ」

 

 「ちょっと期待しちまうな。ただまあ、底意地の悪い改変じゃなきゃいいが……」

 

 

 その表情はその頃のゲームを思い出したのか、段々と嬉々としたものへと変わっていく。そんなクラインに、アスナも笑顔で相槌を打った。

 その線は有り得なくもないが、今はアインクラッド自体が不安定な状態だ。システムに不備が多い。

だから、良い事ばかりだとは限らないのだ。

 そんな話に期待を含ませるクラインを余所に、リズベットが溜め息を吐きながら、この街から見える迷宮区のある柱を、どこか遠い目で見上げていた。

 

 

 「……それにしても、結局ログアウト出来ないままここまで来ちゃったわね……」

 

 「今のペースを考えたら、100層到達もそんなに遠くはないんじゃないかな」

 

 「最初の頃と比べると、凄くハイペースですよね」

 

 「そりゃこんだけ攻略をこなしてりゃ、要領も良くなってくるってもんだよ」

 

 「だが、慣れた時が一番危ねぇからな。気を付けろよクライン」

 

 「分かってるって」

 

 

 アスナ、シリカ、クライン、エギルの順に、会話を弾ませていく。彼らを傍から見ていたアキトは、自分のその握り拳を強くした。

 残り20層。ゲームクリアまで後僅か。

だけど決して油断はしない。ゲームをクリアする、その瞬間までは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●○●○

 

 

 場所は変わって、エギルの店。時刻はもう遅く、空は暗くなっており、そろそろ夕食時だった。

 その店は、夜という事もあってプレイヤー達で賑わっていた。いつも夜はそうなのだが、フロアボスをまた倒したからだろうか。その賑やかさは、いつにも増しての大盛り上がりだった。

 

 そして彼らも、その例外ではない。

 

 

 「これで全員揃ったかな?」

 

 

 クラインはそう言うと、自身のいるテーブルの周りにいるプレイヤー達を見渡す。

 アスナ、ユイ、シリカ、リズベット、リーファ、シノン、エギル。そして、カウンターに不機嫌そうに座っているアキト。

全員が集まっている事を確認し、クラインはゴホンと、わざとらしく咳をした。

 

 

 「……んじゃ、そろそろ80層到達パーティを始めたいと思います!思い起こせば2年前……俺は一流のプレイヤーになろうと……」

 

 「あんたの話はどうでもいいから、さっさと乾杯しなさいよ」

 

 「ひでぇ!まだ話のさわりも語ってないってのによ!」

 

 

 長いくだりになりそうなクラインの話を一蹴し、溜め息を吐くリズベット。

クラインも不満たらたらだが、その顔をやがて笑みにして、凛と立ってグラスを掲げた。

 

 

 「まあいいか……それじゃみんな、かんぱーい!」

 

『『『かんぱーい!』』』

 

 

 クラインの掛け声に一同が合わせ、そのグラスを静かにぶつける。だが、その掛け声に合わせたのはいつものメンバーだけじゃない。周りにいたプレイヤー達も、クラインに同調して、それぞれの仲間達でグラスをかち合っていた。

 クラインはそれを見て嬉しいそうにグラスの中のドリンクを口に含んだ。

みんなも、グラスを手に取り、その顔に笑みを作りながら、アスナとエギルの作った料理に手を伸ばす。

 呑気なものだが、たまにはこういう趣向も悪くは無いだろう。こうして自身を労うのは大切な事だと思う。

 この80層到達パーティは誰が企画したのかは分からないが、反対する者はいなかった。皆が楽しそうに食材やドリンクを買い、こうして集まったのだ。

 

 

 ただ一人、言わずがもがな、乗り気でない者もいるが。

 

 

 「……」

 

 

 アキトはいつものカウンターに座り、やはりいつもの様に傍から彼らを眺めていた。

 当然ながら、このパーティにも加わるつもりは無く、部屋で寝ると決め込んでいたのに、帰り道に待ち受けていたのは、リーファとシノン、そしてユイだった。

 ユイは、言ってしまえばアキトにとっては天敵に近い。あの表情で頼み込まれてしまえば、とても断る事は難しい。

クライン達はそれを知っていて、リーファとシノンに根回しをしていたのだとアキトが気付いた時には既に遅く、現在不本意ながらカウンターでドリンクを飲んでいた。

 

 

 「よおアキト!80層到達おめでとうさん!」

 

 「……何か用か」

 

 

 こちらに近付いてきたのはクラインだった。アキトがカウンターに置いてあるそのグラスに、自身のグラスをぶつけた後、そんなアキトの表情を見て顔を顰めた。

 

 

 「なんだよ、折角のパーティなんだ、もっと楽しめよ。あれから2年……こうして今の今まで生きてられるなんて感慨深いじゃねぇか」

 

 「……」

 

 

 確かにそうだ。何度も死のうと思ったのに、今もこうして生きている。

死ねないという事は、生きなきゃいけない理由がある。そんな気がして、死ぬに死ねなかった。

 今はもう、自分から死ぬ気なんてただの一欠片だってありはしないが、自分が今この瞬間まで生きているというのは、半ば驚きに近かった。

 少し間違えれば、自分はどこかで死んでいた。色々な事が積み重なって、今のアキトがいるのだ。

 今も、自身の目的の為に生きている、生きていられてる。だから、クラインのその言葉が耳に残った。

 

 

 「これからもよろしく頼むぜ、アキト!残り20層もさっさとクリアしちまおうぜ!」

 

 「……」

 

 「アーキトッ!楽しんでる?」

 

 

 クラインの言葉に何も言わずに黙っていると、リズベットが間に割って入ってきた。

 アキトはいきなりの事で体を震わせ、リズベットはその反応を見て笑うと、クライン同様にアキトのグラスに自身のグラスをぶつけた。

 2人共、先程の乾杯に参加しなかった自分に不満なのだろうか、そう考えていたら、リズベットがアキトの座るカウンターテーブルに何も無い事に気付き、アキトをジト目で見つめ始めた。

 

 

 「なーに?あんた全然食べてないの?料理持ってこようか?」

 

 「要らない」

 

 「何でよ?こんな機会滅多に無いのよ?」

 

 「無くても困らない」

 

 「一流シェフのアスナ様が直々に作っている料理だから、美味しいに決まってるわよ?」

 

 「あの程度、自分で作れる」

 

 「……そうだった、あんた料理スキル持ってるのよね……」

 

 

 頑なに拒むアキトを説得しようにも、取り付く島もない。

リズベットはどうしたものかとクラインを見て、クラインも困った様にリズベットを見た。

 だがその瞬間、その2人の間を抜けてアキトに向かっていった人物を見た途端、2人は途端に笑みを作った。

いや、ニヤけ始めたと言ってもいい。

彼女なら、アキトが折れると確信していたからだ。

 

 その人物──ユイは、アキトの座る席まで駆け寄ると、こちらを見ていないアキトに向かって口を大きく開いた。

 

 

 「あ、アキトさんっ…!」

 

 「っ…」

 

 「あの……これ、凄く美味しいですよ!」

 

 

 アキトはその声のする方を向き、その場に立っていたユイを困惑気味に見下ろす。

 ユイはそう言うと、持っていた皿をアキトに向かって差し出した。その細くて小さい手を精一杯伸ばし、その目はアキトを見つめていた。その皿にはたくさんの種類の料理が一度に楽しめるように、小分けにして幾つもまとめて載せられていた。

 アキトはまたしても図られたと感じたのか、リズベットとクラインに視線を向ける。当の2人は知らぬ存ぜぬといった様子で持っていた料理にありついていた。

 周りを見渡せば、アスナ達もこちらを見て微笑ましく笑っていた。しかし、その瞳の幾つかは『断るな』と目で言っているのが丸分かりだった。

 誰だって、こんなに幼い少女の皿を、要らないと拒むのは気が引けてしまう。

 アキトもその例に漏れず、渋々その皿を手に取った。

 

 

 「……まぁ、じゃあ……頂くわ。ありがとな」

 

 「っ…は、はいっ…!」

 

 

 アキトは周りに人がいたのもあって、ユイにいつもの感じで振る舞えない。だが、ユイにはそれでも伝わった様で、顔を真っ赤にしつつ、嬉しそうにアスナの元まで駆けて行った。

 女性陣の極一分とクラインはニヤニヤしながらこちらを見ているが、アキトは気にならないといった様に無視を決め込んで、ユイの持ってきた料理を口に含んだ。

 美味しかった。

 

 

 

 

 暫くの間、アスナ達やそれ以外のプレイヤー達が賑わい、パーティの中盤といったところで、エギルが厨房から顔を出した。

エギルに続き、アスナも出てきたが、その表情は幾分か暗い。

 

 

 「おいみんな、こっちの料理も食べてみてくれないか?」

 

 

 その言葉で、彼らはエギルの持つ皿の大きさにその目を見開く。

エギルは厨房からこちらに移動し、ヅカヅカとみんなが集まるテーブルに近付いた。

 その皿に乗っているものが気になったのか、リズベットが身を乗り出す。

 

 

 「なになに?今度はどんな料理なの?」

 

 「美味いもんを用意したぜ。期待してくれていいぞ」

 

 

 エギルは自信満々に胸を張ると、その皿をドカリとテーブルの真ん中に置いた。

それは、現実世界では有名な、懐かしい形をした料理だった。

 シリカとリーファは目を輝かせ、シノンは遠目で見るも、その顔を豊かなものにした。

 

 

 「あっ、ピザだ!」

 

 「うわぁ……懐かしい……」

 

 「きゅるぅ♪」

 

 「へぇ…美味しそうじゃない」

 

 「まあ、この世界に存在する素材で作ったものだからな……ピザの味が再現出来ているかは各々の判断に任せる。でもアスナに手伝ってもらったから、美味さにおいて間違いは無いだろう」

 

 

 そう発言するエギルの後ろで、アスナは未だに曇った表情をしており、アキトはそれが気になっていた。アスナはチラチラとエギルを見ており、つられてアキトもエギルを見る。

 みんなはピザに視線が行っている為に気付いてないが、エギルのその瞳が、今までに無い程に爛々と輝いており、アキトは悪い予感しかしなかった。

 そのエギルの視線の先には、ピザに手を伸ばそうとするクラインがいた。しかしエギルは、そのクラインを静止した。

 

 

 「おっと待ってくれ」

 

 「ん、何だ?」

 

 「実はな……余興も含めて、一つ趣向を凝らしてみた」

 

 

 エギルの言っている事が理解出来ず、彼らは皆首を傾げる。

 エギルはその笑みを絶やす事無く、嬉しそうに口を開いた。

 

 

 「この中の一切れに、激辛が混ぜてある」

 

 

 その一言で、アキトはぶわっと汗が出たのを感じた。

やはり、考えていた悪い予感が的中してしまった。その嫌そうな顔は、誰一人として見られる事は無かったが、アキトの本音がその表情に表れていた。

 

 

 「味見はしてないから、どれだけ辛いか分からんが、まあ《圏内》だからな。死ぬ事はねえだろ」

 

(馬鹿なんじゃないの)

 

 

 エギルのその阿呆みたいなセリフに嫌気がさし、アキトは彼らから顔を逸らして手元のドリンクを飲む。

 その背中からは、嬉々とした声と、不安そうな声が聞こえた。

 

 

 「へぇ、楽しそうじゃねーか。誰が激辛ピザを食べちまうか、やってみようぜ!」

 

 「どれだけ辛いんだろう……」

 

 「うん……ちょっと怖いかも……」

 

 

 クラインのその発言は、まさにエギルのやりたい事を射たものだった。

 リーファとシリカは、未だ一切れも欠ける事無く目の前に鎮座している激辛ピザに背筋を震わせる。

そんな彼女達に追い討ちをかけるべく、アスナが不安そうに口を開いた。

 

 

「作るところ見てたけど、半端ない量の辛味パウダーをまぶしてたわよ……」

 

 「何で止めなかったのよ……」

 

 「凄く楽しそうだったから……」

 

 

 アスナはシノン共々、その表情を暗くする。そんな2人の隣りで、リズベットが一人、テンションを上げていた。

 

 

「運試しだと思えば良いのよ!寧ろ当たればラッキー、くらいの気持ちでね!」

 

「ラッキーか……それならよ、激辛を食べた奴は誰でも好きな奴に好きな事命令して良いとか、どうだ?」

 

 

 そのクラインの発言に、各々が僅かばかりに反応する。

エギルは変わらず楽しそうに見守っており、リズベットは呆れた表情でクラインを見ていた。

 

 

「あんた……いつもそういう遊びばっか考えてそうね」

 

「おいおい!別にやましい事を考えてる訳じゃねーぜ!誤解すんなよ!美味しいもんを作ってもらうとか、レアアイテム探しを手伝ってもらうとか、色々あんだろ!」

 

 

 クラインの言う通り、その命令、言わばお願いの範囲は広い。

激辛ピザ一切れを食べるだけで、好きな人に色々なお願いが出来るのだ。

 

 

「一緒に買い物に付き合ってもらうとか、レベリングを手伝ってもらうとかも?」

 

「成程……そういうお願いも、ありか……」

 

「きゅるぅ?」

 

「素材を集めてきて欲しいとかもねー?」

 

 

 各々が当たった時の事を考える中、アスナはピザの枚数を数えていく。

その様子を、ユイは近くで眺めていた。

 

 

「えーと、8ピースだから、確率は8分の1ね」

 

「参加する人は誰ですか?」

 

 

 ユイがそう言うと、彼らは一斉に名乗りを上げ始めた。

クライン、シリカ、リーファ、リズベット、シノンの順で手を伸ばす。

 

 

 「当然俺は参加だな!」

 

 「あ、あたしもです!」

 

 「うーん、あたしも!」

 

 「んじゃあ、あたしもー」

 

 「私も、やってみようかな」

 

 

 続けてアスナと、そしてユイも手を伸ばした。

 

 

 「私も挑戦する」

 

 「私もやってみます」

 

 「ゆ、ユイちゃん!?大丈夫なの!?」

 

 

 アスナだけでなく、周りも困惑気味にユイを見つめる。

だがユイは気合い満々といった表情で、両手にガッツポーズを作っていた。

その瞳も、真剣そのもの。

 

 

 「はいっ、大丈夫です!私、やりたいです!」

 

 「……前にユイちゃんが辛いものを食べた時、凄く渋い顔をしてたような……」

 

 

 アスナがそう言いつつも、ユイは参加する事に決まったようだ。

みんながテーブルを囲んだ状態で、その手を伸ばしていたが、ふと、誰もがそのピザを見て首を傾げた。

 ピザの枚数は8ピース。参加する人数は、今のところ7人。

エギルは参加しないと見ると、1ピース余るのだ。

 

 彼らは揃いも揃ってカウンターを見た。

エギルがピザを持って厨房から出てきてから、一度たりとも発言していない黒の剣士を。

 

 

 「……アキト?」

 

 

 その輪の中から、シノンがポツリとその人物の名前を呼ぶ。

彼は壁の花となる事を決め込んだかの様に黙り込み……というか、こちらを見ていない。

ひたすら壁しか無い場所を視界に収めつつ、グラスを口に持っていく。

 その背中を、一同総出で眺める。

 アキトはシノンの発言すら無視して、壁をひたすらに見つめていた。

だがそれも適わぬと思ったのか、アキトはくるりと彼らを見て、さもいつも通りといった表情で口を開いた。

 

 

 「……俺はパス」

 

 「声凄い震えてるけど」

 

 

 リズベットのその指摘すら反論せず、アキトは再び視線を逸らす。

そのいつもと違い過ぎる様子に、彼らは不安がった。

 

 

 「何よ、ノリが悪いわねー」

 

 「作った本人にでも食わせとけ。そして反省しろ、自身が作ってしまった、その拭う事の出来ない罪にな」

 

 「ピザ一切れで大袈裟でしょ……」

 

 

 シノンがそう呆れた様に溜め息を吐く横で、アスナがアキトを見つめていた。

 アキトのその様子に、何か、引っかかりを覚えていた。

いつもならもっと過激に文句を言う所だっただけに、アキトのその言霊の鈍さを不思議に思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─── ゲホッゲホッ…ゲホッ! …おい、閃光…テメェこれ辛過ぎるぞ…ホントに料理スキルカンストかよ!───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……もしかしてアキト君、辛いの苦手だったりする?」

 

「っ…別に…興味無いだけだ」

 

 

 アキトのその体が、僅かに震える。

その反応は正解と言っているのが丸分かりだった。

 アスナは覚えている。アキトをキリトだと無意識に感じながら、彼の為に作ったサンドイッチの事を。

 辛いのが好物であるキリトに合わせて作ったもので、22層でユイが食べた時は、その辛さに顔を顰めていた。

 アキトはアレを食べた時、物凄い顔をしていた事を思い出し、アスナはその考えに至ったのだ。

 

 リズベットは良い事を聞いたと言わんばかりにその顔を悪い笑みに変える。

ゆっくり、ゆっくりとアキトに近付いて、揶揄い混じりに呟いた。

 

 

 「へぇー…アキトって、辛いもの苦手なんだ〜…?カレーは甘口じゃないと食べられないタイプ?」

 

 「……」

 

 

 アキトはそんなリズベットを視界に入れまいと頭を動かす。

 だがその後ろで、今度はクラインやリーファ、シリカも口を開いた。

 

 

「オメェ、ユイちゃんが参加するのに、それはちょっとカッコつかねぇんじゃねぇか?」

 

「へぇ……アキト君、辛いの苦手なんだ……」

 

「私も辛いのは少し苦手ですけど……アキトさん、食べるの嫌がる程なんですね……」

 

 

 アキトは反論すらせずに無視を決め込んでいた。バツが悪そうな顔をしていたのを、彼らは見逃さない。

だけど、そんなアキトを見て微笑ましく感じていた。

 どんな事でも良い、アキトの事を知る事が出来て嬉しかったのかもしれない。

 自分達は、76層に来てからのアキトしか知らない。攻略組の為に汚れ役を買って出る様な優しい人間である事は、この場にいる彼らは理解していた。

 だけど、それだけ。それだけでは、彼の人となりは分からない。何が好きで、何が嫌いで、どんな事が趣味か、プライベートの事を聞いても良いのか。

 辛いものが苦手。そんな子どもの様な可愛い一面を知れて、なんとなく嬉しく感じてしまうのは、仕方が無い事だった。

 

 

 そんな風に考えられているとはつゆ知らず、アキトはそんな彼らの言葉を聞いて、心の中で反論を重ねる。否、反論では無い。彼らの発言は、既に心の中で肯定済みだった。

 因みにアスナの予想通り、アキトは辛いものが大の苦手である。

カレーはリズベットの言う通り甘口、寿司にワサビは絶対に入れない、唐辛子に辛さは必要無い、そんな思考の持ち主だった。

 アキトにしてみれば、寧ろ参加しようと腕を天に伸ばす彼らの方が不思議だった。

 最初の方で凄く不安がっていたのに、何故腕はそんなにそびえ立っているのだろうかと。

 

 だが、そんな目で見られる筋合いは無い。

リズベットが未だに笑っているのを見て、アキトはフッと息を吐いた。

 周りにどう思われても構わないが、弱く見えてしまうのは頂けない。

今まで強がってきたのだから、道理は貫かなければならない。

 

 

「……やるよ」

 

「え?どうしたのよ急に」

 

「うるせぇ、さっさと始めるぞ。そのお喋りな口に激辛ピザが入った瞬間が目に浮かぶぜ、ポンコツ鍛冶屋」

 

「な、何ですってぇ!?」

 

「そんな挑発に乗っちゃうのね……」

 

 

 アキトの切り替えの速さに、シノンは苦笑いを浮かべる。

 だが、アキトの参加を喜ぶ者もいる。参加してない人間に命令するのは気が引けた。

これならば、合理的にアキトに命令を下す事も出来るのだ。

 アキトは、テーブルを囲う彼らの輪に混じり、彼らを見渡す。みんながピザに視線を落とす中、一人、小さく儚げに笑った。

 

 

(……気、遣わせてるよね、やっぱ……)

 

 

 理由は分かっている。この前の、《ホロウ・エリア》で取り乱したあの事件。

 アスナはクラインから聞いたと言っていた。今日の彼らの視線や反応を見ていれば分かる。

 彼らは一人残らず、自分の事を心配してくれていたのだと。

このロシアンルーレットの参加だって、みんなでやれば盛り上がるといった、エギルの計らいだったのかもしれない。

申し訳なさを感じるし、それがありがたくも感じる。

 彼らといると、また失った時の事を考えてしまっていけない。必ず守ると誓ったのに、出来なかったらのタラレバを考えてしまう。

それは、自信の無さの表れで、そんな考えは成功する確率を低くするものだ。

彼らの気持ちに、少なからず応えなければいけない気がした。

 

 

 「さあ、誰が激辛を食べてぶっ倒れてくれるかな」

 

(趣味悪っ)

 

 

 けど、やはり辛いのは苦手だった。

 

 

 こうして、各自好きなピースを手に取り、全ての準備が整った。整ってしまった。

 アキトは今までに無いくらい嫌そうな顔をしており、両隣りにいるシノンとアスナはその見た事も無いアキトの顔に思わず笑ってしまう。

 そんな中、クラインの言葉で、その体を引き締めた。

 

 

 「準備はいいみたいだな……みんな、いっせーので食うぞ」

 

『『『……』』』

 

 「激辛が当たれば、誰かに好きな事をしてもらえる……いいな……それじゃいくぞ!いっせーの!」

 

 

 「あーんっ!!」

 「はむ!」

 「んむ……」

 「あむっ!」

 「ん……」

 「もぐもぐ……」

 「……」

 

 

 一斉にピザを口にする彼ら、みんなひたすらに口をもぐもぐと動かすが、誰も何も言わず、その沈黙を保っていた。

 今のところみんな平常心を保っており、ピザを良く噛み締めている。

 アキトはそのピザがとても美味しく感じた瞬間、激辛では無かった事による幸運を、ピザ諸共噛み締めていた。

 他の女性陣は、辛くない、辛くない、とピザを何度も口に含みながら、やはり辛くないのか首を傾げていた。

 

 

 ───なら、激辛を引いたのは人物は言うまでもない。

 

 

 

 

 「……む!? ぐ!? んんんん!! か、かれえええええええぇぇぇぇ!!」

 

 

 クラインはこれまで見た事も無い程に顔を赤く染め上げ、辺りを走り回り始めた。

 喉が痛むのか、瞳からは涙が溢れ、むせ返っていた。

 その彼の絶叫に、彼らだけでなく、周りのプレイヤー達も驚きで体を震わせた。

 

 

 「んがあああ!! か、辛すぎる!おい、これ限度ってもんが……あああああ!!ヤバイ、頭痛がしてきた、アキト!!水くれ……ゲホゲホ!」

 

 「あ、ああ……」

 

 

 その凄まじい表情に、アキトは皮肉を言うのも忘れて水の入ったグラスを用意する。

 その間、アスナとシノンはそのクラインの顔を困惑しながら見つめ、リズベットは引き気味で見ていた。

 これをつくったエギル本人も、涙が出る程に大笑いしていた。

 

 

 「ははははは!! 良いリアクションだぞクライン!」

 

 「エギル〜!お前なんてもん作りやがった……あああ!舌が痛え!あ、アキトすまねぇ!んぐっ……んぐっ…んっ……はぁ……」

 

 

 辛さで悶えるクラインの元に、アキトが水の入ったグラスを持ってきた。

 クラインはそれを引ったくる様に奪うと、一気に飲み干した。

 アキトはそれを眺めながら、先程までのクラインの暴れ回っていた時の表情を思い出す。

 

 赤く染まる顔、焦点の合わない瞳、そこから溢れる涙に、24歳という歳で暴れ回るその様子。

 およそ公共の電波じゃ放送出来ないような顔で(自主規制)

 

 

 「ちょ、ちょっと当たらなくて残念って思ったけど、やっぱり当たらなくて良かったかも……」

 

 「うん……危なかった……」

 

 

 あまりに辛そうに振る舞うクラインを見て、当たらなくて良かったと尻込みするシリカとリーファ。

 その他の彼らも、そんな2人に同意見だった。エギル恐るべしと、みんなして未だにクラインを見て笑っている巨漢を見つめた。

 

 暫くして水を飲み干したクラインは、未だにキツイのか表情は暗めだが、やがてキリッとその瞳を光らせた。

 

 

 「うう、ひでぇ目に遭ったぜ……だが当たりは俺様よ。ここからが本番だからな!」

 

 

 そう、このロシアンルーレットで激辛を引き当てた者への報酬が、クラインにはまだ残っていた。

 クラインの口元は次第に弧を描し始め、女性陣達は身震いした。

 

 

 「ふはははは!さーて……誰に何をしてもらっちゃおうかなー!」

 

 

 そんな態度を180度変え、テンション高めのクラインのその気持ちの悪いねっとりとした声(言い過ぎ)に、アキト含め、この場にいる人間が汚物を見る様な視線をクラインに向ける。

 

 

 「ひょっとして……あたし達物凄いピンチなんじゃ……」

 

 「だ、大丈夫よ……人並みの良識はある筈よ……多分」

 

 

 リズベットの言葉に、そう返すアスナ。だが、言い切れない部分が怖い所でもある。シリカやリーファも不安そうにアスナ達の背に隠れた。

 正直、クラインの女への節操の無さに関しては一欠片も信用していないアキト。

 どんなお願いをするのかは大体目に見えていた。

 

 

 「ん〜〜〜〜どーすっかなぁ〜!! ねぇ、お嬢さん方?」

 

 

(これは酷い)

 

 

 クラインのその聞いた事も無い高い声に、アキトはなんて残念な男なのだろうと、思わずにはいられなかった。

 救いようの無い男だった。断罪されても文句は言えない。

 ヒーローにとっても救えない人間はいる。勿論、それは救いたくない人間も同様である。

 アキトはサッと目を伏せた。

 

 しかし、そんな女性陣の救世主となったのは、アキトではなくシノンだった。

 

 

 「何言ってるの?アンタもうお願い事聞いてもらったじゃない」

 

 「へ?」

 

 「今さっきアキトに水を貰ったでしょ?それでもう終わったじゃない」

 

 

 アスナ達は、それを聞いて目を見開いた。

 そして思い出す、クラインが激辛を食べた瞬間、アキトに水をくれと頼んでいた事を。アキトは皮肉を言うのも忘れてクラインに水を提供していた。

 つまり、クラインのお願いは既に達成されていたのだ。

 

 

 「お、おいおいおい!! あれは違うだろ!!」

 

 

 クラインは必死にそう捲し立てる。だが、シノンの発言は正当性のあるもので、女性陣達は反撃のチャンスとばかりに正論を叩きつけていく。

 

 

 「そ、そうですね!確かにあれは、アキトさんに対するお願い事でした!」

 

 「そうよね、さっきので終わりよね」

 

 「……え?おい、ちょっと、何だよこの流れ……」

 

 

 シリカとアスナのその発言に、クラインの表情は段々と儚いものに変わっていく。だが、この流れに逆らおうとしているのはクラインだけで、彼の目論見は着実に失敗へと向かっていた。

 リズベットもリーファも、焦った様に言葉を重ねた。

 

 

 「良かったわね〜、アキトにお願い聞いてもらえて」

 

 「うんうん!」

 

 「そりゃねぇだろうよー!激辛食っただけ損じゃねぇか!おいアキト、お前もなんか言え……っておい!アキト?」

 

 

 クラインが辺りを見渡すが、アキトの姿が何処にも見当たらない。

 いつの間に、と彼らも驚くが、ユイただ一人が、その行く末を見守っていた。

 

 

 「アキトさんなら、今日はもう寝るそうで、2階に上がっていきました」

 

 「おおおおー!お前もか!」

 

 

 最後の頼りだったアキトは、既にこの場にいなかった。

 クラインの目論見は、完全封殺された瞬間だった。流石、不憫な男というカテゴリに関しては右に出る者はいない野武士面(言い過ぎ)。

 救う慈悲無し。神は死んだ。

 

 

 「下心ありありの態度を見せるからこうなるんだよ……」

 

 「そこまでやましい事をしようだなんて、別に考えてなかったのによぉ……」

 

 「お前がそう思っても、周りはそう思ってくれなかったんだな……」

 

 「可哀想な俺!!」

 

 

 エギルとクラインのその会話を耳に、彼女達は笑い合う。こうして、幸せな時間が、笑い合う瞬間が、段々と増えていく。

 キリトの死は、まだ乗り越えられた訳じゃない。それでも、彼らは着実に前に進みつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 故人曰く、人生楽あれば苦あり。

 楽しい事があれば、苦しい事もある。幸せなだけじゃ居られない、と。

 

 

 ある人が言った、『人生はプラスマイナスゼロ』だと。

『プラスな事』あれば、必ず『マイナスな事』もある。

 楽しい事があれば、幸せな時間が続けば、それだけ悲しい事、不幸な事が起こる、と。

 

 

 

 こうして、アスナ達は今この瞬間をみんなで笑い、幸せな時を過ごしている。

 

 

 だが、それを帳消しにする程の事が、これから先起きる事になるかもしれない。

 

 

 それは突然、思いもよらぬタイミングで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─── その時は、刻一刻と迫っていた。





最近妄想で、この作品をクリアした後の話を考えていたら、ロスト・ソング編や、ホロウ・リアリゼーション編を書いてもいい気がし始めて怖い。
というか気が早い。書けるのはもっと後、この作品が完結してからですね。まあ、まだ書くかどうかは未定ですが。

モチベの為にも、か、感想を……(震え声)

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