ソードアート・オンライン ──月夜の黒猫──   作:夕凪楓

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メリークリスマス!

という事で!
何の案も無いのに書いた話をどうぞ。

アキトのクリスマスへの想いを綴ったポエム的な話を書きました!
時系列は50~59話辺りと結構前ですが、アスナ達は殆ど登場しません!殆どアキト君の話です!


そんな話が読みたい訳じゃねぇ!って?
ゴメンなさい……私もですはい。



閑話 一年後のクリスマス・イヴ

 

 

 

 

 自身の部屋の窓を、徐に開ける。

 すると当然ながら、雪舞う景色が、アキトの視界を覆った。

 吐息は白く、空へと消える。

 雪はいつ見ても、決して良い気分なれはしなかった。

 白は、好きな色だった筈なのに。

 

 

 いつから嫌いになったんだろうと考えたが、そんなのはとっくに分かってた。

 それは一年前。

 色んなものとの別れを思い知った、あのクリスマス・イヴ。

 親友と決別し、仲間の死を痛感し、そして『約束』を立てたあの日。

 

 

 それを思い出すと、この日はとても過ごしにくかった。

 こんな事を思いながら目を覚めるなんて、我ながら嫌になる。

 けれど、決して捨て切れない過去があり、忘れたくない想いがある。

 ベッドに横になるアキトは、そこから感じる肌寒さで思わず毛布に包まれる。

 

 寒い。それでいて、冷たくて、どこか寂しかった。

 

 

 「……変わらないな、いつまで経っても」

 

 

 そう一人溜め息を吐く。女々しいと感じても、この日ばかりは何をする気にもならない。

 《ホロウ・エリア》や迷宮区の攻略も、どこかへの散歩も、お気に入りのあの丘も。

 どこにも足を動かす気になれない。

 

 時刻は朝の8時を回っている。デスゲームに閉じ込められてもう2年。それだけ経つと、もうこの世界での生活も慣れ切ってしまっているだろう。

 窓の外から見えるプレイヤー達はすっかりイベント気分なのが分かり、アキトはその目を伏せる。

 危機感の失せた、現実と何ら変わらない世界。だけど、それでもこの世界から出て、現実世界に帰りたいと願った人達がいた。

 そんな彼らとの別れを痛感した、このクリスマス・イヴは。

 やはり割り切る事すら難しく、とても好きにはなれなかった。

 

 

 12月24日。リアルタイムで稼働しているこの《ソードアート・オンライン》、つまり当然現実世界でもクリスマス・イヴなのだ。

 仮想も現実も本質的には変わらない。危機感も無ければ現実と遜色無い世界。

 きっとあちらの世界でも、ここと変わらず賑わっている事だろう。下層がどうかは分からないが、それでもアークソフィアのプレイヤーを見れば、なんとなしに察する事が出来る。

 

 

 「……」

 

 

 駄目だ。やはり、何もする気にもならないし、何も考えたくない。

 アキトは窓を閉めて、そのベッドに向かって倒れる。

 反動で身体が軽く跳ね、やがて沈む。

 その感触を、ボーッとしながら感じ取る。その手を自身の目の前に持っていき、その手を見つめる。

 

 

 「……くそ」

 

 

 この時期は嫌いだった。

 雪の降る景色、街並み、フィールド。特にクリスマスの時期になると、色々な事を思い出す。

 その度に自分の変化やそれまでの弱い自分に辟易し、責め続けるだけの時間が始まる。

 仲間を守れなかった、無力な自分を────

 

 

 

 ────コンコン

 

 

 

 

 「っ……」

 

 

 突然の扉のノック音に、アキトは身体を震わせる。

 考えていた事が脳のどこかへと飛んで行き、アキトの視線は自身の部屋の扉へと映る。

 暫く見つめていると、聞き慣れた声がくぐもってきこえた。

 

 

『アキトさん、入っても良いですか?』

 

『アキト君、起きてるー?』

 

 

 その声の主はユイとアスナのようだった。

 正直、あまり話したくない相手ではあった。というか、今のアキトには、誰かとの会話すら億劫だった。

 けれど、そのまま放置しておく訳にはいかず、アキトは気だるそうにしながら扉まで向かい、その手を掛けた。

 

 開いた先には、いつもの服を来たユイとアスナがいた。

 アキトはそんな彼らを一通り眺めると、小さく口を開いた。

 

 

 「……何か用か」

 

 「今日、下の階でクリスマスパーティーをやる事になったんです!」

 

 「エギルさんが店を使っていいって言ってくれて、自由参加って事になったの。私達は勿論全員参加するけど、アキト君はどうするかなって思って」

 

 

 話を聞くと、どうやらクリスマスパーティーのようだ。

 今日はそもそもイヴなのだが、と思わなくも無いが、世間はクリスマス当日よりもイヴの方が盛り上がるのだ。

 正直イヴと銘打ってはいるものの、12月24日は我々にとって何の縁も無い世界のどこかにいる誰かの誕生日、つまるところ全く関係の無い日だろうと思ったアキト。

 ユイはとても楽しみなのかキラキラと目を輝かせており、アスナはニコニコと嬉しそうに笑っていた。

 今の話を聞く限りだと、どうやらいつものメンバーに加え、良くエギルの店で屯っている他のプレイヤー達も参加する、割と規模の大きいパーティーなのだろう。

 アルゴに確認を取らせて見れば、この75層よりも上の層で、大々的なクリスマスイベントクエストなどは無いそうだ。

 

 ──── 一年前と違って。

 

 

 「……それ、今からやるのか?」

 

 「ううん。やるのは夕方から。それまでは各自自由なんだけど、私達はみんなでクリスマスの街並みを見て回る感じかな」

 

 

『みんな』というのは言わずがもがな、いつものメンバーだろう。

 それから察するに、彼女達は自分を誘いに来たというところだろうか。

 だがそれは、雪に溢れた街の中を歩くという事で、それはアキトにとっては、辛い事を思い出す引き金になりかねなかった。

 忘れたいわけじゃないし、忘れてはいけない事だ。そして、忘れたくないものでもある。

 だからこそ、今日というこの日だけは、と思うのは、いけない事だろうか。

 

 

 「あ、アキトさん……良かったら一緒に……」

 

 「……悪いけど、俺はパス」

 

 「え……」

 

 

 アキトは自然とそう言葉にしていた。

 それを聞いたユイは、残念を通り越して何とも言えない顔をしていた。

 先程までの嬉しそうな顔とは打って変わって、何だかこちらが悪いみたいで、アキトはバツが悪かった。

 

 

 「……用事がある訳じゃないんでしょ?エギルさんから聞いたわよ?」

 

 「……根回し早すぎだろ」

 

 

 アスナの発言に眉を顰める。

 そういえば、昨日の段階でエギルに今日の予定を聞かれた気がする。

 あの時は、今日という日の事を嫌でも考えてしまっていた為に、半ば適当に返事をした感じは確かにあるし、用事が無いのも事実だ。

 当日は、さらにその想いを募らせた。

 だから、彼女達と外に出るのは抵抗があった。

 

 

 「今日寒いから、外に出たくねぇんだよ」

 

 「何よそれー、子どもは風の子でしょ?」

 

 「そう、子どもは風邪の子なんだ。体調崩したりしたらやってられねぇ」

 

 「VRで風邪なんてある訳無いでしょ……」

 

 

 微妙な意味の違いにゲンナリしながら、アスナはアキトをジト目で見る。

 すると、アスナでもアキトがいつもとどこか違う雰囲気を纏っている事に気が付いた。

 いつもなら頼み事は、嫌々な表情を作りつつ、それでもユイが頼んだりすると最終的には渋々と了承していた。

 だけど今回、そもそもユイの誘いを言い切る前にアキトが断りを入れていた。事前にその誘いを断るつもりだった事が伺える。

 ならば、彼の言っている理由は巫山戯たものだ。そんな理由で断るつもりではないだろう、その表情がそう言っていた。

 どこか寂しそうで、悲しそうで。

 

 

 「……他に理由があるの?」

 

 「……」

 

 

 アキトは僅かに反応すると、その視線を横にずらす。

 アスナからも、ユイからも目を合わせないようにと、宿の床を見つめる。

 この時期に外に出たくない理由など、色々ある。

 だけど、どれもこのタイミングでは彼女達に話したくなかった。それを言う事は、とてもじゃないが、今のアキトには難しかった。

 けれど、理由も無しに納得はしないだろう。彼女達も無理矢理には連れて行かない筈だ。

 

 

 「……雪が……白が、嫌いなんだ」

 

 「白……?」

 

 「だから、悪いけど外には出ない」

 

 「え、ちょ、アキト君……?」

 

 

 アスナ達の返事も聞かず、アキトはその扉を閉めた。

 扉に背を預け、そのままズルズルと腰を下ろしていく。

 彼女達に当たる訳にはいかないと、そう思ったのに、ユイにあんな顔をさせてしまうなんて。

 まるで進歩してない自分に、アキトは自嘲気味に笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●○●○

 

 

 

 「あ、おかえりー。アキトは何だって?」

 

 

 1階でアスナとユイを待っていたのはいつものメンバー。

 シリカ、リズベット、リーファ、シノン。クラインは風林火山のメンバーと何やらする事があるらしく、夕方のクリスマスパーティーまでは帰って来ない。

 エギルは変わらず店番と、そのルーティンを保っていた。

 

 アキトを誘う事になり、アスナとユイに行ってもらったは良いが、少し戻って来るのが遅かった為に、彼女達は不思議そうにアスナとユイを階段の下から見上げていた。

 リズベットは開口一番、アスナ達に戦果を聞いたが、アスナは困ったように小さく笑った。

 

 

 「……パスだって」

 

 「……まあ、そんなんだろうと思ったけどさー……」

 

 

 リズベットもある程度予想していた為、苦笑を浮かべるばかり。

 シノンは不思議そうに首を傾げて口を開く。

 

 

 「ユイちゃんが頼んでも断ったの?アイツ」

 

 「うん……誘い切る前に断ったから、初めから誰が来ても断るつもりだったのかも」

 

 「本当は何か用事があるんですかね?」

 

 

 アスナの説明でシリカが思い付いたように問い掛ける。

 その線も無くは無いが、アキトの様子を見るに、あのまま部屋に居続けるつもりなのでは、と思ってしまった。

 いつものような態度はあまり感じられなかったし、どこか疲れているようにも見えた。

 

 

 「もしかしたらアキト君、今日はこのまま部屋にいるのかも……」

 

 「……え、な、何?アイツ具合でも悪いの……?」

 

 「具合というか……その……少し、元気が無さそうだったっていうか……」

 

 「ちょっと、心配ですね……」

 

 

 リーファがそう言うと、アスナは先程の彼の表情がフラッシュバックした。

 こちらの誘いに断る前から、その表情はどこか暗く、半ば強引に会話を打ち切り、扉を閉めようとした時は、とても悲しそうで。

 何かあったのだろうか、それとも。

 このクリスマス・イヴという日に、何か特別な意味があるのだろうか。

 周りの空気が悪くなりつつある中、アスナの隣りにいたユイは一際落ち込んでいるように見えた。

 

 

 「……」

 

 「ユイちゃん?」

 

 「っ……は、はい、どうしましたか?」

 

 「えっと……大丈夫?」

 

 「……はい、大丈夫です……」

 

 

 ユイはそう言って無理して笑うが、やがてその顔を俯かせる。自分の着ているワンピースを見下ろし、そのスカートの部分をきゅっと握った。

 アキトに断られた事が、余程応えたのだろう。

 そのユイの顔を見た彼女達からすれば、『アキトの野郎……』くらいの気持ちを持った事だろう。

 だがそれは、ユイの想いを汲んだらの話だ。もしかしたら、アキト自身にも、何か事情があったのかもしれない。

 外どころか、部屋からも出ない理由が。

 

 ともかく、ユイがこうして悲しげな表情を作っていると、どうにかしてあげたいと思ってしまう女性陣。

 彼女達は自然とユイの元へと集まった。

 

 

 「よぉーし!それじゃあ予定通り、みんなでお出掛けしましょう!ね、ユイちゃん!」

 

 「り、リズさん……」

 

 

 リズベットはユイちゃんの手を優しく握り、引いて歩く。

 ユイは目を丸くしながらも、リズベットに引かれるがままに階段を下りた。

 それを見たリーファやシリカも、笑みを浮かべてユイに駆け寄った。

 

 

 「どうせなら、夕方まで思いっ切り楽しんじゃおっ!」

 

 「行こっ、ユイちゃん!」

 

 

 「リーファさん、シリカさん……はいっ!」

 

 

 ユイの顔は、段々と明るいものへと戻りつつあった。

 アスナはそんな彼女の笑顔と、それを作ったリズベット達を見て、改めて感謝した。

 エギルはそんな彼女達を、遠くから微笑ましく見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●○●○

 

 

 どれだけ時間が経とうとも、アキトはその場に座り込んでから全く動かない。

 今までは平常だったのに、雪降るこの時期が来た瞬間にこうなるのかと、自分でそう思っても変えられなかった。

 部屋には明かりが付いておらず、時間が経つほどにその室内は闇に染まる。外は晴れてるわけでは無く、曇りで淀んでいる。

 気温が低くなるこの時間帯、アキトの部屋は冷えに冷え切っていた。

 

 

 「……雪……白、か……」

 

 

 アキトは、先程アスナに断りを入れた時に発した自分自身の言葉を思い出していた。

 言い訳染みた発言に思えたが、実はあながち嘘じゃなかったのだ。

 

 白は、好きな色だった。

 何も知らない無知の色。始まりの色。ここから、新たな色へと染まる事が出来る、自由な色。

 何者にも変われる、そんな力があるように思えた。

 白は正義の色だと、誰かがそう言っていた。

 

 自分が正義だとは思っていないが、何者にもなれる白は、とても魅力的で、憧れだった。

 なりたいものへとなる事が出来る、それがとても素晴らしいものに、あの時は思えたのだろう。

 

 あの頃は、それが装備にも顕著に現れていた。全身を覆う白い装備は、遠目からでも良く目立っていた。

 白いコート、白いズボン、白い刀。何もかもが白くて、今にしてみれば恥ずかしい事この上ない。

 けれど、そうする事で、変わる力が欲しかった。弱さに怯えるばかりじゃなく、独りでも生き抜いていける強さが欲しかった。

 そうすれば、いつかきっと、何かに変われると思っていた。

 

 

 「っ……」

 

 

 アキトは、今の自分の装備を思い出し、その拳を強く握る。

 黒いコートに、黒いズボン、黒い剣。何もかもが黒くて、深い闇の色に思えた。

 

 あの時はまだ、黒は嫌いな色だった。

 何色にも変われない、何者にもなれない。どんなものにも染まらない、拒絶の色だから。

 そして、それは自分に良く似ていたから。

 決して変わる事の無かった、自分自身に思えたから。

 

 変わりたかった自分に、変われない色がそっくりで。

 とても嫌いな色だった。

 

 なのに、全身を黒に染めた剣士に、自分は憧れた。

 彼が身に付けると、自分にとっては拒絶の色だった黒が、違う意味のあるものに見えた。

 それが彼と自分の差なのだと痛感し、それがとても羨ましくて、とても妬ましかった。

 

 現実では変わる努力どころか、変わろうともしなかったのに、この世界に来た途端に都合の良い人間だと、自分自身で嫌になった。

 誰かを守れる力など、この世界に来るまでは欲する事すら、考えた事すら無かったのに。

 守りたい大切なものが出来た瞬間に、その欲は肥大して。

 結局、望むだけ望んで、欲しかったものは何もかも失った。

 

 

 「……空っぽだな」

 

 

 何も無い、何も持ってない、何も残ってない。

 皮肉なものだ。何もかもを手放し、何もかもが滑り落ち、失ったからこそ、空っぽになった手で、自分はもう一度剣を握る事が出来たのだから。

 守るものを失ってから、戦う術を手に入れたなんて。

 なんて滑稽で、酷く醜い。たった一人、ただ独りの悪足搔きだったなんて。

 

 何か、罪滅ぼしのつもりでいたのかもしれない。

 

 今自分が掲げた『誓い』すら、初めは義務的なもので。自己満足で。

 決して、自分から出た願いでは無かった。他人の願いを、自分のもののようにしたかったのかもしれない。

 誰か(キリト)の願いを、いつの間にか自分の願いだと、そう置き換えて、仲間を守るだなんて、悦に浸って。

 自分が(キリト)を気取っても、それはただの間抜けに思えた。

 

 

 けれど、たった二人だけ。

『黒が似合う』と、そう言ってくれた人がいた。

 この世界と現実世界に一人ずつ。自分を肯定してくれた、そんな風に感じさせてくれた人がいたのだ。

 

 

『今のアキトなら、黒もきっと似合うよ』

 

『桐杜は、やっぱり黒が一番似合うって』

 

 

 二人の意味は、全く違うものだったけれど、自分にとって、自身によく似た色の意味を変えてくれた人達だった。

 それはきっと、アキト自身の生きる意味合いにも関わってくる事だったかもしれない。

 たかが色の事でと、そう誰もが思うかもしれない。それでもアキトにとっては、考え方が、それこそ、世界が変わったような気がした。

 あの世界だからこそ、自分は本気で戦えたのだ。

 嫌いな色が、好きになれた気がしたのだ。

 

 

 そして、そんな幸せが過ぎ去り、アキトは白が嫌いになった。

 それは、雪の色。何もかもを失ってしまったのだと、自分で認めてしまったあの日。無力な自分が身に付けていた色、どこまでも広がる、終わりの見えない雪原の色。

 この世界に、たった一人取り残されてしまったような、そんな感覚に陥る。

 透明だからこそ感じる、恐怖と悲しみの色。

 何も無い、何者でもない、自分によく似た色だった。

 ずっと憧れていた筈の色が、今になって自分と重なって。

 あまりにも皮肉だった。

 

 

 どうして。

 どうして自分だけ。

 何故、こんなにも上手くいかなくて。

 自分はただ、たった一つ、願い事をしただけなのに。

 

 

 ただ、大切だと感じられるものが欲しかったのに。

 世界を敵にしたっていい。守りたいものがあったのに。

 

 

 

 

 

 

 

 気が付けば、闇の中に埋もれていた。

 目を覚ますも、何も見えない。本当に目を覚ましたのかも、疑いたくなる程に暗く、アキトは目を見開いた。

 

 よく目を凝らせば、そこは自分の部屋だった。とても冷えていて、現実世界なら風邪を引く事間違い無しだろう。

 窓の外は何も見えず、もう深夜帯である事が伺えた。

 

 時刻を見れば、夜の11時半。

 外は街灯と、ほんの少しのイルミネーションの輝きを放っており、それでも、外を歩くプレイヤーは思ったよりも少なかった。

 それを、ずっと扉に寄りかかったまま座っていたアキトには分かるはずは無かったが、辺りがとても静かな為に、無意識的は察していた。

 

 

 「……もう、こんな時間か……」

 

 

 アキトは力無くそう呟くと、俯いていた顔を上げる。

 自身の今の状態も相成って、部屋もより一掃暗く感じる。今の今まで、自分は眠っていたのかと思うと、何とも勿体無い日を過ごしたものだ。

 

 この時間帯なら、ユイ達が誘ってくれたクリスマスパーティーも終わっているだろう。

 彼女には悪いが、あの時はそんな気分じゃなかったのだ。

 

 

 「……何で……そんな気分じゃなかったんだっけ……」

 

 

 アキトはその足を伸ばし、扉に背を預けたまま、天井を見上げた。

 目が覚めるその瞬間まで、何を考えていたのか、それを考えていた。

 いつから眠っていて。

 今まで何を考えていたのか。

 

 何か、夢を見たような気がする。

 どんな夢かは、全く覚えていない。

 けれど、酷く懐かしく、大切な想いを感じた。

 

 

 

 

 「……っ……え……あれ……」

 

 

 

 

 いつの間にか、その頬には涙が伝っていた。

 アキトは思わず目を見開いて、慌ててその頬を拭った。

 けれど、とめどなく溢れる涙、原因も分からずに流れる涙に、アキトは遂にその動きを止めた。

 ポロポロと、際限なく。自分と理性とは裏腹に決壊する想いが、体現されていた。

 

 彼らを失ってから、もう1年以上が経った。

 それから、ここに来るまでに色々な事を感じた。ずっと独りでここまで来た。

 最初はそれでも良いと思った。それが最善だと思った。

 だが、その途中一度だけ、一人のプレイヤーとパーティを組んだ事はあった。

 その時感じたのは、懐かしさ。一緒に組む事で感じるのは、いつだってかつての仲間達。

 この層へと赴いて、それは顕著に現れた。キリトの仲間達と出会って、それ以外でも知り合いが出来て。その誰もが優しくて、アキトは自然と彼らをかつての仲間と重ねてた。

 

 

 

 

 ああ、そうか。

 俺は。

 

 

 

 

 「……独りぼっちが……怖かったんだ……」

 

 

 涙は止まらない。自分が変わらず弱かった事を知った。

 誰かが傍に居てくれないと、自分は頑張れない事を理解してしまった。

 ずっと、誰かが笑った顔を見たかった。自分に向けられるものが欲しかった。認められない事実が辛くて、その全てがどこか独り善がりで。

 ただ、自分は。

 他者との繋がりが欲しかったのに。

 

 

 「…………っ……っ……」

 

 

 流れた涙は止まらない。

 何が悲しかったのかなんて分からない。今まで何を考えていたのかさえ曖昧で、この涙に意味など無いかもしれない。

 それでも、アキトは自身の涙を止められないでいた。

 とても切なくて、とても悔しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その扉を静かに開く。

 1階へと下りる階段までは廊下が続いており、その間に幾つかの部屋への扉がある。

 それぞれ、アスナ達の部屋だった。

 すっかり静かのを見ると、もう皆寝てしまったのかもしれない。とすると、既にクリスマスパーティーは終了したのだろう。

 

 アキトは最初にアスナ達とあった時よりは、スッキリしたような表情を作れていた。

 ずっと自分を責め続ける、地獄のような時間は終わり。

 いつまでも嘆いていたって、仕方が無い事は分かっていた。どこかで踏ん切りを付けなければならないと理解してた。

 だからこそ、今日という日を一日使って、幾分かマシになった気がする。

 過去に浸るのは、楽な道だが、それは逃げだ。

 

 

 「いつまでも、くよくよしてらんないな……」

 

 

 アキトは静まりかえった2階を見渡す。

 夕方にクリスマスパーティーをやったのは、恐らく明日に響かないように早めに終わらせる為だろう。

 いくらクリスマスだといっても、この世界のプレイヤーはのんびりしていられない。二日三日も攻略を疎かには出来ないからだ。

 エギルの店としての役割も、この時間なら終了し、今の時間帯なら、この宿で部屋を借りてる者しかエギルの店は出入り不可能だろう。

 

 アキトは部屋からゆっくりと出ると、そのまま静かに廊下を移動する。

 あまりにも冷たく、それでいて静かで。アキトはほんの少しだけ、心細くなっていた。

 単純にお腹が減っており、何か食べる物が無いか、無ければ外へ出るつもりでいつもの戦闘時の装備まで身に付けていたアキトは、その背の《エリュシデータ》の重みを感じながら歩く。

 クリスマスパーティーに出なかった自分が、空腹で外を出るなど何ともアレだが。

 

 

(……ユイちゃんに悪い事したな……)

 

 

 折角誘ってくれたのにと、それを断った事に罪悪感があった。

 勿論、断った理由が単なる私用だからこそ、後ろめたく感じている部分もあった。だからこそ、誰かと顔合わせになるのは避けたいが為のこの時間帯だった。

 けれど、ここまで静かだと、やはり感じてしまう。

 このどうにもならない、どこまでも『独り』だという感覚。取り残されたと感じる。

 また、自分だけ生き残って、と自身を責め立てるように。

 不快感ばかりが身体を襲う。

 

 

(独りって……こんなに辛かったっけ……)

 

 

 ずっと孤独だったのに、いつの間にかそれを寂しく感じるようになっていた。

 これは成長なのだろうか。いい意味で変わったと言えるだろうか。

 こんな想いをしたくなくて、大切なものを失いたくなくて彼らを守る為に強さを求めた。

 自分は今度こそ、大切なものを守れるだろうか。

 

 

 アキトはその階段をゆっくりと下りる。

 下はまだ明るいのが見えた為に、エギルはまだ起きているのが分かった。

 有難い、と心の中で感じつつ、その階段を一段ずつ下りていく。

 そして、下の階が見えた瞬間────

 

 

 

 

 

 

 アキトは、目を疑った。

 

 

 

 

 

 

 「……あ、アキトさん!」

 

 「アキト〜!」

 

 「え、嘘!? ……あ〜……やっと起きて来たー!」

 

 「全く……随分な寝坊ね」

 

 「遅えぞアキト!折角の飯が冷めちまってんだろうが!」

 

 

 そこには、いつものメンバーが円テーブルに料理を囲って席に座っていた。

 アスナ、シリカ、リズベット、リーファ、シノン、クライン、エギル、ユイ、そしてストレアまで。

 他にプレイヤーはおらず、どうやら彼らだけのようで、料理には一切の手を付けずに座っていた。

 各々がこちらを見上げて文句を言いつつ笑みを浮かべている。アキトが来た事で漸くご飯にありつけると、クラインが満面の笑みと共に感動の涙を流してた。

 

 だが、そんなのは問題じゃない。

 この深夜近くにみんなで料理にすら手を出さずに何をしているのだと、そう思った。

 アキトは、震える声で、目を見開きながら慌てて口を開いた。

 

 

 「な、何、してんだよ……パーティーは……」

 

 「そりゃあやったわよ。あたし達は何も食べて無いけど」

 

 「っ……なんで……」

 

 「アンタを待ってたんでしょ」

 

 

 リズベットとシノンの返しで、アキトは瞳を揺らす。信じられないと頭がそう言っていた。

 夕方の時間帯から今の今まで、一体何時間経ったというのか。

 

 

 「……俺を……待ってた……?な、なんでそんな事っ……」

 

 「アキトさん」

 

 

 アキトの言葉を遮って、ユイが前に躍り出る。

 自身を真っ直ぐに見上げるユイに、アキトは気圧された。

 

 

 「私、今日はアキトさんとも一緒にいたいです。一緒に料理を楽しんで、笑い合いたいです……!」

 

 「……ユイ……」

 

 

 その切実な願いに、曇ったものは一つも無くて。

 午前中に誘ってくれた時よりも強気に言い放った彼女は、とても可愛らしい笑顔を向けてくれていた。

 

 

 「アキト君」

 

 「……閃光」

 

 「私達はもう仲間なんだし、パーティーはみんなでやらないと、ね?」

 

 「……」

 

 

 仲間。

 その言葉が、酷く胸に突き刺さる。孤独だった去年の今日を思い出し、その顔を思わず伏せる。無上な程の優しさが、無性に心に響いた。

 

 

 「……悪かった、待たせて」

 

 「……少し遅いけど、おはよう、アキト君」

 

 

 アキトの精一杯の謝罪を、アスナは笑顔で受け取った。周りも、そんなアキトの言動を意外に思いつつも、各々何も言わず、ただ笑顔で彼を見つめるだけだった。

 ユイはそのアキトの手を、恐る恐るといった風に握る。

 

 

 「アキトさん、行きましょう!たくさんご馳走用意してますよ!」

 

 「……ああ」

 

 

 アキトはユイに引かれるままに、そのテーブルへと向かう。

 周りの暖かな視線が向けられるが、それも悪くないなと小さく笑った。

 

 

 「よぉし!んじゃまっ、早速食べようぜ!何からにすっかな〜?」

 

 「クライン、アンタさっきつまみ食いしようとしてたでしょ?」

 

 「リーファ、そっちの野菜取って貰える?」

 

 「あ、あたしも食べます!」

 

 「きゅるぅ♪」

 

 「アキト、これ凄く美味しいよ!」

 

 「お前らがっつき過ぎだろ……」

 

 

 各々が喋り出し、一瞬で騒がしくなる。

 そんな光景を黙ったままに眺め、そして懐かしく感じた。

 こんなちっぽけな世界を守る為に奮闘したあの頃を思い出す。

 ずっと嫌な気分で過ごしていたクリスマス・イヴだったが、最後の最後で悪くないものを抱く事が出来た気がする。

 それは、ひとえに目の前の彼らのおかげ。

 

 キリトの仲間達は、誰もが強くて、温かくて、優しくて。

 いつか、そんな優しさに溺れてしまう日が来てしまうかもしれない。

 今度こそ、自分は守りたいものを守る事が出来るだろうか。

 考えれば、考える程に、不安が募る。

 けれど。

 

 今、目の前には笑い合う彼らの姿が見える。

 そんな彼らの前で、こんな顔をするのは、きっと失礼だ。

 自分が来るまで、ずっとここで待っててくれた彼らの為にも。

 

 今はただ、この時間を楽しもう。

 

 

 

 

 「うおおぉ!?これ美味ぇ!アキト、食ってみろって!」

 

 「そういやアキト、アンタ今日部屋でずっと何してたの?」

 

 「アキトさん、このお肉にはこっちのソースが合いますよ!」

 

 

 

 

 ……ただし、自分のペースで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●○●○

 

 

 遅くに始まったせいで、日はすっかり変わってしまった。

 そのタイミングでメッセージが入り、パーティーを抜けて店の入口に寄りかかる。

 賑やかな声を背にして、アキトはそのメッセージを開く。

 

 

『アキト君、メリークリスマスだよーっ♪最近どう?私は元気だよー(*´ω`*)』

 

 「……日変わる瞬間に送りやがって……」

 

 

 受信時間を見れば、イヴからクリスマスへと、その日が変わった瞬間に送られたようだった。そう愚痴を溢すも、アキトは小さく笑みを浮かべていた。

 知った名前のプレイヤーからのメッセージというだけで、結構嬉しいものだなと、アキトは感慨深い何かを感じる。

 アキトはメッセージを送ってきた人物に対して、返信を打つ。

 

 

To アキト

『はいはい、メリクリメリクリ』

 

 

 「……こんなんで良いかな」

 

 「良いわけ無いでしょ」

 

 「うおっ、ビックリした……」

 

 

 アキトの背中から声が掛けられ、瞬間その身体が震え上がる。

 後ろを見れば、栗色の髪を持つ、アスナがこちらを覗いていた。

 

 

 「な、なんだよ……ってか、勝手に人のウィンドウ見んなよ」

 

 「見たんじゃなくて見えちゃったの。それにしたって、折角のメッセージをそんな適当に返すのはどうかと思うな」

 

 「別に……関係無いだろ」

 

 「誰から?友達?」

 

 「いなそうに見えるだろ。悪かったな」

 

 「そんな事言ってないじゃない……」

 

 

 アスナは呆れるように溜め息を吐き、アキトと扉を挟んで寄り掛かる。

 アキトはそんなアスナを一瞥した後、ウィンドウに視線を落とした。

 先程まで書いていたメッセージを消し、新たに代案を考える。

 

 

 「……ここに来る前に、一人だけ……パーティを組んだ事があったんだ。その時、フレンド登録したってだけで、それっきり会ってない」

 

 「へえ……何だか意外」

 

 「……何が」

 

 「アキト君、確かにあんまりフレンドいそうにないから。申請しても断るし」

 

 「……かもな」

 

 

 些細な会話が、ポツリと寒空に消える。

 粉雪が降り、それが肌に触れる度に、色々な事を思い出す。

 嫌いになってしまった色が、視界を覆っていく。

 そんな中、アスナが小さく口を開いた。

 

 

 「……今日、ゴメンね。無理に誘っちゃって。アキト君、最初からパスだって言ってたのに、なんか無理矢理参加させたみたいで……」

 

 「……別に、謝る事じゃないんじゃね?民主主義的に言えば、多数決でお前らが正しいんだし」

 

 「もう……またそういう事言って……本当に良かったの?」

 

 「……?」

 

 

 彼女の声のトーンが低くなる。

 それに気付いて、アキトはウィンドウから視線をアスナへと移した。

 アスナは首を傾けて、こちらを見ていた。

 

 

 「今日の朝のアキト君見たら、やっぱりパーティーは、アキト君にとっては迷惑だったかなって」

 

 「……」

 

 「体調が悪かった、とかじゃ、ないんでしょ?」

 

 「……まあ、な」

 

 

 彼女の気遣いが、心に染みた。

 今日の朝の一度きりの顔合わせで、アキトがどんな状態なのか、なんとなく察していたのかもしれない。

 

 

 「別に、嫌だったとか、そういうんじゃないんだ」

 

 「え……?」

 

 「俺……クリスマス……特にイヴは、独りなんだって、ずっとどこかで思ってた気がするから」

 

 

 アキトはアスナから視線を外すと、雪舞う暗い空を見上げる。

 そうして、自身の思いの丈を、自然と口にした。

 

 去年は、独りだった。それだけなのに。

 あれが全てな気がしてた。あの時たった独りだった自分は、これからもずっと独りなんだと思っていた。

 孤独をこれからも貫けば、どこか楽になれた気がした。失うものがなくなったなら、もう失った時の悲しみを抱く事も無い。それがきっと、正しい選択なのだと、無理矢理に、強引に、納得した。

 

 

 「けど……今年は君らが傍にいて……そしたら、また……怖くなった」

 

 「アキト君……」

 

 「……悪いな、自分から話振っておいて。これ以上は喋る気になれないや」

 

 

 彼のその苦笑いは、とても切なそうに見えた。

 アキト自身、きっと無理して笑っている自覚があった。

 彼らを失ったのだと、そう認めてしまってから、初めてのクリスマス。

 やはり、こんな気持ちには嫌でもなってしまう。

 アスナ達にはまだ、この気持ちの理由を話せずにいた。彼らを仲間だと思うなら、いつかは話さなければならないのかもしれない。

 けれど、アキトにはどうしてもそんな気分にはなれなかった。

 

 

 「けれど、今年は私達がいるから」

 

 「え……」

 

 

 隣りからのそんな声に、アキトは目を丸くして見つめる。

 アスナは優しげな笑みを浮かべて、アキトを見つめ返していた。

 

 

 「君は一人じゃないし、独りになんかさせない。私達は、いつだって君と一緒にいるから。だから、無理しなくても良いんだよ?」

 

 「……アスナ……」

 

 

 彼女のそんな言葉を、何度聞いたか分からない。

 けれど、それはすんなりと胸に入り、心地良い気分を抱く。

 言葉に詰まり、何も言えなくても、そう思ったのは確かな事実で。

 

 

 「ゆっくりで良いんだ。アキト君のペースで、いつか、自分には私達がいるんだって、そう思ってくれれば良いの。そうなったら……」

 

 「……」

 

 「……いつか、聞かせてね?」

 

 「……ああ。いつか、な」

 

 

 アスナの言葉に、アキトは小さく笑みを浮かべた。

 彼女も、そんなアキトを見て、寒さからか、その頬をほんのり赤くしながら笑った。

 今はまだ、無理かもしれない。けれど、きっといつか、少しずつ。

 そうして前に進めていけたなら。

 この選択を、誇れるものに出来たなら。

 目の前の彼女にも、ちゃんと話せるかもしれない。

 

 

 「……あ、リズが呼んでる。そろそろ戻ろっか」

 

 「……先、行っててくれ。メッセージ打ち直す」

 

 「ちゃんとしたのを送ってあげなよ?」

 

 「分かってる」

 

 

 アスナは嬉しそうに店の中へと入っていく。

 それを見た後、アキトはウィンドウのメッセージを打ち直し、そして送信した。

 フッと軽く息を吐いて、雪舞う景色を眺める。

 イヴは終わり、クリスマスへと、日が移行する。

 あれからきっかり、1年が経ったのだと自覚した。

 

 その指で虚空を撫で、ウィンドウがまた開く。

 アイテムストレージを開き、その中の一つを、オブジェクト化した。

 それを見つめたアキトは、小さく、儚く笑った。

 

 

 「……サチ。俺は、ちゃんと前に進めてるかな……」

 

 

 

 

 

 

 その手には、既に何かが記録された、記録結晶が握られていた。

 

 








小ネタ


① 例えば、こんな解釈(今話後半参照)


アキト 「俺……クリスマス……特にイヴは、ずっと独りなんだって、思ってた気がするから(引き篭もってゲームとかやるし、毎年外は寒いし)」

アスナ 「……(彼女とかつくらなそうだもんなぁ……)」

アスナ 「……けれど、今年は私達がいるよ」メソラシ

アキト 「その哀れみの視線やめろ」








② 白が嫌い


ユイ 「あ、アキトさん……これ、どうですか……?」

アキト 「……良いんじゃないかな、いつものワンピースだと今日は寒いし、セーターなら丁度良いぐえっ!……な、何すんだよ……!」

アスナ 「(アキト君が『白が嫌い』って言うから、ユイちゃん着替えたのよ!? ちゃんと褒めてあげて!)」

アキト 「あ……そういう……だからピンクのセーターなのか……」

ユイ 「……」ソワソワ

アキト 「凄く似合ってると思うよ」

ユイ 「……!」パァッ

アキト 「……勘違いさせてるなら、謝るけど」

ユイ 「え……?」

アキト 「ユイちゃんの白いワンピースも、俺は似合ってると思うよ。俺は、いつものユイちゃん(のワンピース姿)も好きだな」

ユイ 「っ……す、すす、好きって……!?」

アキト 「え……?うん、(ワンピースも)可愛らしくていいなって思う……あ」←察し

ユイ 「っ……!っ……!」(///_///)










③ メッセージの相手


リズベット 「……そういえば、さっき誰からのメッセージだったの?」

アキト 「……別に、誰だって────」

アスナ 「アキト君がここに来る前にフレンドになった人からだって」

リズベット 「へぇー!アンタ友達いなさそうなのにね〜」

アキト 「……余計なお世話だ」

シリカ 「……」ジー

リーファ 「……」ジー

ユイ 「……」チラッ

ストレア 「……あっ、これ美味しい♪」

シノン 「……で?」ジトー

アキト 「あ?……何だよ」

シノン 「……もしかしなくても、女の子よね?」

アキト 「……」

全員 『……』

アキト 「……そうだけど」

ユイ 「っ……」

シノン 「……はぁ」

アスナ 「やっぱり……そういうところ、誰かさんとそっくり……」

クライン 「何だよオイ!お前ぇもかよー!ホントお前もキリトも女の子ホイホイだなぁ!」←ガチギレ

アキト 「……んなんじゃねぇよ……ってか何だよ、女の子ホイホイって……」




④ アキトの今日


シノン 「……で、アンタ今日1日部屋に閉じ込もって何してたわけ?」

アキト 「……ね」

全員 『ね?』

アキト 「……寝てたけど」

全員 『……』

シリカ 「アキトさん……」

リーファ 「幾ら何でも……」

リズベット 「それは流石に……」

アスナ 「私達がどれほどアキト君を待ってたか……」

アキト 「何この言われよう……」


























⑤ メッセージの返事



送信したメール
『アキト君、メリークリスマスだよーっ♪最近どう?私は元気だよー(*´ω`*)』


??? 「……」

??? 「……」ソワソワ


──── ピコン♪


??? 「っ!」バッ!


To アキト
『ああ、悪くないよ。態々ありがとな』


??? 「……」

??? 「……ふふっ♪」





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