ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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書k(以下略)その3

 高校の修学旅行で半ば強引にオタク班の一員にされ(老け顔強面な点から人除け目的と思われる)、自由行動で強制連行された秋葉原でラノベという文化を知り、『禁書目録』『半月』既刊全巻を買い占めて移動時間もひたすら読み耽っていた作者、『こみっくパーティー』で恋愛SLGという分野を知り、『ROUTES』等アクアプラス(現LEAF)作品で見解を深めていく。
 その後、大学の自由単位で文学創作演習なるものを戯れに選んで執筆する楽しみを知り、誘われて所属した文芸サークルにてTRPGという文化も知り、毎週毎週部室でセッション三昧。中二病フルスロットルな日々を送り、戯れに始めた『三国志に現代人が転生したら』的な二次創作小説の投稿を不定期で始めて今に至る。



Lights Camera Action XIV

『それじゃあ、協力してもらっちゃおうかなァ? ()()()、ね』

 

 今更になって思うことがある。あの日、あの時、好奇心に任せてあんな話を聞かなければ。あるいは、あの如何にも悪だくみをしている笑顔に咄嗟に頷いていなければ。今ここで()()()()にはあってなかったんじゃなかろうか、と。

 

 

 

「"Puma(プーマバギー)"は突破力に長けたビークルです。大きな車輪で段差や障害物をものともせず戦場を駆け回ることが出来ます。搭載されたビームキャノンは、照準圏内に捉えると自動的に射撃する1人(ソロ)パターンと、銃座にもう1人が搭乗し直に操作することの出来る2人(デュオ)パターンを用意しております。お好きな方で、広いステージを縦横無尽に駆け回りましょう」

 

 

 

『次に"Insomnia(ウチのかいしゃ)"から出すゲームのシステム設計・構築・デバッグなんかを手伝って欲しいんだよね。今度のはかなり力入れて開発していて、絶対に成功させたいんだ。けど、流石に人手が足りなくなってきちゃってね』

 

「あなた今"超有名企業(インソムニア)"を『ウチの会社』って言いました?」とか、「教員の副業ってどうなんですか?」とか、言いたいことは山ほどあったのだけれど、その時は完全に混乱してしまっていて、生返事しか出来ていなかった。これも第3の失敗だったと思う。

 

 そして、そのまま呆気なく連行されていった、どこにでもあるような雑居ビルの一角に待ち受けていたのは更なる衝撃で。

 

 

 

「"Landstalker(ランドストーカー)"は近~中距離用のガトリングガン、遠距離用のプラズマモーターランチャーを搭載した多脚型戦車です。如何なる悪路も4つの脚がガッチリと地面を掴んで車体を安定。生半可な攻撃ではビクともせず、敵地へとにじり寄っていく様は迫力満点です」

 

 

 

『やぱやぱぱやぱや~♪ アブラカタブラヤサイニンニクマシマシ~♪ キミがあっくんの認めたショーライユーボーなバイトクンだね~? ワタシが"Insomnia"のシャチョー兼プロデューサー兼ディレクター兼プログラマー兼……あと何だっけ? イッパイアッテナ、数え切れんのだよルドルフくん。ナニハトモアレ~、そんな篠ノ之束さんダヨ♪ キリキリマイテンテコマイアフリカマイマイってくらい働いてもらっから、カクゴしとけ~?』

 

 これで度肝を抜かれるなって方が無理じゃないかと思う。真面目にそう思う。彼女の資金源(おさいふ)についてもまた大きな謎の一つであったが、まさかゲーム会社を立ち上げて真っ当に稼いでいたとは。いや、偽名使ってるから、正確には真っ当な手段ではないのだけれど。

 

 

 

「"Hovership(ホバーシップ)"は戦場(フィールド)全てを上空から見下ろしながら、あらゆる地形を無視しての移動・攻撃が可能な唯一の飛行ビークルです。搭載されたミサイルは連射性にこそ優れないものの、最大9体もの敵を同時に捕捉・爆撃出来ます。戦況を大きく変えることができるでしょう」

 

 

 

 それからはもう、自分の専用機"打鉄弐式(うちがねにしき)"の開発の合間をぬって、ただひたすらにプログラミング、エンコーディング、デバックの繰り返し。度々、ソースコードがゲシュタルト崩壊してきそうなまであった。これを生業にしているのだから、世の中のシステム関連の会社で働くプロの皆様はやっぱり、頭のネジが数本くらい吹っ飛んでるのかもしれない。勿論、いい意味で。

 

 ただ、悪いことばかりでもなかった。主に手伝ったビークルのシステム、特に"Landstalker(ランドストーカー)"と"Hovership(ホバーシップ)"に、マルチロックオンシステムをゲーム用のプログラムとして()()()()()作業はとても勉強になった。今まで自分が最適と思っていたものを、決められた容量の範疇で、万全に動作するように、そして万人が容易に操作できるようにする為の簡易化と削減。それを課せられ、熟慮したことで、今まで見えなかった、自然と除外されていた選択肢が見えてきた。そして思ったのだ。きっと、()()を自分にさせる為でもあったのだ、と。やっぱり先生は凄いや、と。

 

 でも、それだけじゃなかった訳で。だからこそ今、物凄く困ってる訳で。

 

 

 

「これらは戦場の至る所で回収できる資源(リソース)を基地へと持ち帰ることで製造出来ます。刻々と変化する戦場で、如何に効率的に資源(リソース)を集め、どのような組み合わせで製造し、どのように敵基地を攻略するか。仲間たちと協力して戦略を練り、勝利を目指しましょう」

 

 

 

『折角だし、発表会の方も手伝ってってよ~。バイト代はずむからさ~』

 

 正直、それまでのバイト代も()()()()()()()()()というのもあって、また深く考えずに頷いてしまったのが運の尽き。会場入りして挨拶しに行った瞬間に拘束され、気付けばこんなフリフリ衣装に着替えさせられてステージ横に。『基礎から自分で組んだキミが、イチバンカッコよく魅せられるっしょ~?』なんて言われたら、強く否定することもできず。

 

 

 

「では早速、弊社のプログラマーによるデモプレイをご覧いただきながら、詳細を説明していきましょう。Hairpin(かんざし)さん、準備をお願いします」

「――――はい」

 

 

 

 ここまで来てしまったら、腹を括ろう。アルバイト扱いとはいえ、ちゃんとお金を貰ってやった仕事だ。最後まで責任をもって見届けなければ。

 

 嗚呼。けれど、願わくば。

 

(お姉ちゃんにだけは、こんなとこ見られませんように……ッ!!!!)

 

 あの人に見られたらどうなるか、何をするか、判ったものじゃあないのだから。

 

 

 

 

 

 

 同刻。レゾナンス西館3階 フルーツパーラー"ドルーパーズ"内。

 

「――――何してるんだよ、母さん」

ほうひはほは(どうしたのだ)ふほは(デュノア)

「……何でもないよ、何でも。ほら、口にもの入れたまんま喋らない。お行儀悪いよ」

「む。んぐ、すまない」

 

 スマホで()()()()()を見ながら僕、シャルロット・デュノアは両手で頭を抱えて、か細い苦悶の声を絞りだした。その隣で顔がパンパンになるほどいちごパフェを頬張っているラウラの口元を拭いながら、改めて画面の中、何故かフリフリのエプロンドレスを身に纏い、大勢の前で司会進行役をしている母の姿を半眼で見下ろす。

 

『ちょっと、シャルロット。動画配信サイトのどれでもいいから、このイベントの生放送、見てみなさい。アニー、凄いことになってるわよ?』

 

 きっかけは不意に届いた1本の、そんな義母からの電話だった。愉快だと言わんばかりの、大笑いしそうなのを必死に堪えているのが解る声色での進言に従って動画サイトのアプリを開けば、件のゲームイベントのステージ、その生放送が真っ先におススメ(サジェスト)に上がっているではないか。一体何だと言うのかと見てみれば……何が映っていたのかは、もう言わずとも解るだろう。

 

「なんで? "Great Clock Company(医療機器メーカー)"に就職したんじゃなかったの?」

 

 しかも記憶通りなら、確か事務職だったハズだ。百歩譲って司会進行役だけならまだ解らなくもないとして、なんでこんなコンパニオンのような真似をしているのか。まったくもって、意味不明である。ロゼンダさん曰く、父はもっと狼狽えているらしくて、泡吹いて卒倒する寸前だったんだそうな。

 

「すみません、遅くなりました。お化粧室が混みあってまして」

「お帰りなさいだ、姉様」

「……おや? シャルロットさん、その動画は―――」

「あ、あぁ、これ? いや、なんでも」

 

 そこに、トイレから戻ってきたクロエさんに手元を覗き込まれ、咄嗟に誤魔化してしまいそうになり。

 

「―――あぁ、アニーさんですね。そういえば今日でしたか、新作の発表会は」

「へ?」

 

 その予想外の反応に、ぽかんと呆けてしまう。なんで彼女が訳知り顔なのだろうか。確かに、既に皆には自分の事情を説明した時に、家族のことも手持ちの写真と併せて紹介はしているけれど。

 

「おや? 違うのですか?」

「う、ううん。あってる。あってるんだけど、え、クロエさん、何か知ってるの?」

 

 尋ねると、クロエさんは滔々と説明してくれた。"Great Clock Company"と"Insomnia"、どちらも彼女のご両親、つまりアリスター・カデンソンと篠ノ之束博士が創設し、経営している会社であること。そういった事情から雇っている社員は極めて少なく、双方に在籍している者が殆どであること。その例に漏れず、母も双方の業務に就いていること。そして。

 

()()()()ェ?」

「はい。その場その場の思い付きで()()()()()()()をすることは、お母様には珍しいことではありません。勿論、その分の補填はしています。給金でも、休日でも」

 

 恐らく今回もその類でしょう、とあっけらかんと告げる彼女に、今度こそあんぐりと大口を開けて言葉を失う。

 

「もっとも、本気で嫌がることまで強制はさせません。その場合はお父様たちが止めます。窘めてか、物理的にかは、場合によりけりですが」

「物理的に止められるんだ……」

 

 あの人、肉体的なスペックも物凄い、って聞いたことあるんだけど。

 

「あぁ、もう」

 

 もうとっくに一生分驚き尽くしたと思っていたのに、ポップコーンみたいに後からポンポン出てくること出てくること。何となく察してはいたけど、どうやらこれから退屈とだけは無縁の生活になりそうだ。

 

 ……よし。

 

「もう何か言ってないこととかない? この際だから、知ってること全部、教えてよ」

「む。そうだな。私も知りたいことは沢山あるぞ姉様」

「そう、ですね。流石に全てという訳にはいきませんが、私の知り得る限りで、支障のない範囲であれば」

 

 とうに冷めているだろう紅茶を傾けながら、小首を傾げつつそう言うクロエさんの姿は一枚の絵画かってくらい様になっていて、ともすれば嫌味っぽく聞こえる台詞なのに、全くそう感じさせない上品さがあった。

 

「といっても、そうですね、どこからお話しするべきでしょうか。……あれはそう、6年前。私にとってはつい昨日の出来事ですけれど」

「え。もしかしなくても最初から全部話す気なの?」

 

 それから暫く僕たち2人は、まるでお酒に酔っ払ったみたいに頬を赤らめる彼女の視点から見た、控えめに言っても贔屓目たっぷりな思い出の数々を山のように聞かされる羽目になる。これなら服とか、化粧品とか、自分たちの買い物に行った凰さんたちの方についていった方が良かったかな、なんてちょっぴり思ってしまったくらい、長々と。

 

 

 

 

「――――フム。どうやら大丈夫そうッスね」

 

 暗く狭い空間で独り言ちながら、ここからは直接見えないハズの景色を見下ろしている。

 

 新鮮なフルーツをふんだんに使った甘味や飲料を主な商品とした飲食店、その客席で談笑している3人の少女。いや、今は1人が一方的に喋っているのを、向かいの席に並んで座る2人が聞かされている形になるか。見目麗しい彼女たちは自然と周辺の人目を惹きつけている。その中に『良くない輩』がいないかどうか確かめるため、相棒から要請が来てから30分と少しの間、常から周囲に張り巡らせている警戒用の子機(ガジェボット)、その1つを彼女たちの近くに忍ばせていた訳だが、そういった者は見受けられないと判断した。

 

 これで警戒を解く訳ではないが、緩めても問題はないだろう。何かが起きたところで、迅速且つ十全な対応ができる確信はあることだし。

 

 と。そこまで考えたところで。

 

「ム」

 

 ガチャリ、と鍵の開く音がする。どうやら待ち合わせの相手が来たようだ。キィ、と若干耳障りな音が続いて、開いた扉の向こうから眩しい光が射し込み、それを遮るように自分を覆う人影が1つ。

 

「お。ホントにいたよ。お久し振りですなァ、クランクの旦那」

「お久し振りッスねぇ。Mr.島倉」

 

 彼の名は島倉。それ以外に知っていることは、あまりない。知っていることと言えば、彼が密輸入を生業とする商人であり、十分な金額さえ支払えば()()()()()()()()()()()()()()届けてくれる凄腕だということ。それくらいだ。彼との付き合いに必要なのは、それくらいでいいからだ。

 

「確かに俺ァ()()()()()()で商売してますがね、世界広しといえど、()()()()()で待ち合わせをするのはアンタくらいのもんですぜ?」

 

 っつうか、アンタにしか出来ねぇや。彼は苦々しい笑みを浮かべてそう呟きながら、彼はこの場所――レゾナンス中央館3階 エレベーター横のコインロッカースペース――を見回して。

 

「ちゃんと()()()()()()()()ッスね?」

「そりゃもう。そんじゃ、さっさと場所を移しやしょう」

 

 手足を収納した自分を手早く5429番のロッカーから取り出して()()()()()()()()()()()にしまい込み、何食わぬ顔で人混みの中へと紛れていった。

 

 

 

 

―――――そして、同刻。東館4階 フロンティアシネマ 9番シアター内。

 

 

 

 

「おいケツアゴ」

「なんだいゲキマユ」

「…………会長。これは一体、何が起きてるんでしょうか」

「…………さぁ、私にもさっぱり(『一触即発』の扇子で口元を隠しつつ)」

 

 

 

 静かに、苛烈に、しかし着実に、事態は進行していく。

 

 

 




 補足説明

・“プーマバギー(Puma)”“ランドストーカー(Landstalker)”“ホバーシップ(Hovership)”(出典『4』)
 大体作中で説明した通り。仕様が異なるのは今後の伏線の1つなので、ご了承くださいませ。兎に角デザインが神がかっているので、ご存じない人は動画でも画像でも調べてみよう。


 どうも、筋肉痛にならない為に入念なストレッチをしている筈なのに、翌朝筋肉痛を感じると『あぁ、俺昨日も頑張ったな』と若干楽しくなってしまう作者のGeorge Gregoryです。最近リングフィットが楽しすぎて最大負荷なのに4時間とかぶっ通しでやってしまう。寝冷え対策に飲み始めた養命酒の効果もあってか、最近寝起きは洗いたてのパンツを履いた正月元旦の朝のよォにすっきり爽やか。目に見えて痩せて来たという実感が湧いてくると、またやる気も増すというもので。

 ようやくアニメの『呪術廻戦』を見始めて、脳内キャストとほぼ一致の声とアホほど動く作画に開いた口が塞がらない。調べてみたら2クールで姉妹校交流戦は最後までやってくれると聞いた。ありがとう。ありがとう。悠仁と東堂の伝説の『あのシーン』が今から楽しみでならない。

 ……クラウドさんは、ご愁傷様。招待状も届いてないのに、勝手にスマブラ世界まで追っかけてきたね。あれもうただのアドベントチルドレン@任天堂じゃん。

 では、また近い内にお会いできることを願って。

 いつも感想ありがとうございます。あなたのその一言が俺の何よりの原動力です。
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