ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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皆さん最新トレーラー見ましたァッ!?
オラワクワクが止まらねぇゾッ!!


Evasive Emotions Ⅶ

――――興味半分であるのは認める。だが、もう半分はちゃんと本気の質問だ。唯一の家族の恋愛事であれば、そりゃあ気にもなるというものだろう。

 

 一夏は昔から手のかからない子だった。幼年期にはもう私と2人だったからだろう、所謂『普通の家庭』というものを知らずに育った。いや、まぁ、そもそも何をもってして『普通』とするかにもよるから何とも言い難いのだけれど、少なくとも一般の家庭で享受できる程の愛情を注げたか、と言われれば、悔しいが首を振らざるを得ない。

 

 だから、なのかは判らないが、一夏は何においてもまず『織斑千冬(じぶん)』を優先する傾向が強かった。

 

 それが嬉しくないと言えば、まぁ、嘘になるのだが、同時に手放しに喜べもしなかった。私の立場が故に何度危険に晒したかは最早数えきれないし、それでなくとも『果たして一夏(おとうと)()()で真っ当に人並みの幸せを得られるのだろうか』と悩むようになった。本人の納得や満足が最優先なのは勿論であるし、どのような決断をしようが最終的には最大限の助力と応援をする積りではいるのだが、保護者としてはそれが公序良俗に反するものでないことを願わずにはいられなかった。

 

 だからこそ、たまたま集まっていた面々を見て、これは丁度良い、と思ったのだ。

 

「どうした、遠慮なく言ってくれて構わんぞ? 酒の席だ、無礼講ってヤツさ。それに、一夏のことだ、少なくとも1時間は帰って来んよ」

 

 経験則からして間違いない。家でだって1度沸かせば延々と入っているあの無類の風呂好きが、この絶好の機会を逃す筈がない。消灯時間までに風呂上がりお馴染みの()()()()を楽しむだろう時間を考慮しても、それくらいはかかるハズだ。

 

 2本目のノンアル飲料のプルタブを開けながら室内を見回す。表情は当惑半分、遠慮半分といった具合か。『誰か先に行ってくれないものか』といった風に互いをちらちらと見合っている。これは最初の1人が名乗り出るまで暫くかかるか、それならいっそこちらから指名してやろうか、なんてことを考えていると。

 

「―――じ、自分はッ!!」

「お?」

 

 膝の辺りの浴衣をギュッと握り締め、顔を真っ赤にした篠ノ之妹が、プルプルと小刻みに震えながらそんな大声を上げた。意外な展開だ。てっきり最後の最後まで自主的には言い出せずにいるかと思っていた。

 

「じ、自分にとって一夏は、負けたくない相手、です」

「ほぅ?」

「最初は、生意気なヤツだ、と思ってました。いきなり道場にやってきて、弱いクセに、一丁前に根性だけはあって、妙に肝が据わっていて」

「あぁ、初めて私に付き添って来た時のことだな?」

 

 よく覚えている。物珍しげに練習風景を眺めていたと思った次の瞬間、『俺もやりたい』『千冬姉と試合するんだ』と言い出した一夏を見た先輩方に『活きの良いのがいるなぁ』と揶揄されて、妙に照れ臭くなってしまったっけか。

 

 そして、そんな生意気極まりない一夏を見て。

 

「『お前と織斑さんとではまともな試合にすらならんッ!!』だったか?」

「うぅ……忘れて下さい」

 

 実に清々しい、見事な一刀両断であった。何の根拠も実績もない同年代の素人(クソガキ)が無知に任せた大言壮語を吐いてみせたのだ。日々真面目にコツコツと研鑽してきた篠ノ之からすれば、さぞ面白くなかったことだろう。

 

「一夏が道場に通い始めてからも、それは全然変わらなくて。正直、必要以上に強く当たってしまっていたと、思います。どうせまた口だけなのだから、負かしている内に不貞腐れて辞めるだろう、と」

 

 剣道に限らず、スポーツ全般にそういった事例は多い。幼稚な憧れだけで門を叩き、その勢いのままに大成するような器の持ち主はほんの一握りだ。増してや篠ノ之は道場の娘なのだから、そのような軟弱者を実際に何人も見送ってきたに違いない。

 

「『女に負けたって何とも思わない』『手加減してやったんだ』そんな捨て台詞も聞き飽きていて。……でも、一夏は違いました。思い切り打ち負かした私に向かって『いつか必ず正々堂々と負かしてやる』と、素直に負けたことを悔しがり、何度負けてもへこたれることなく、自分が強くなる為の努力を惜しまなかった」

 

 朝早くから道場に来て雑巾掛けから始め、周囲の皆に頭を下げて練習法やコツを訊いて回り、見取り稽古にも誰よりも真剣に取り組んだ。そんな()()()()()を門下生の皆が可愛がらないハズもなく、どんどん道場に溶け込んでいく様を見てほんの少し肩の荷が軽くなったように感じたのは、ここだけの話である。

 

「勝手な偏見でアイツの有り様を決めつけた自分を、酷く恥じ入りました。そして同時に『負けてなるものか』と、強く奮い立たされもしました」

 

 後輩に追いかけてもらえるような背中でありたい。その意識は、日々の鍛錬をより実りのあるものへと変えたのだという。柳韻先生に先輩として一夏の指導を任されてからは、より一層身が引き締まる想いだった、と。

 

「姉さんの一件があって、離れ離れになってから一時期、その、少し荒れたりもしましたが、その想いがあったからこそ、剣道だけは続けていられたんだと思います。だからこそ、学園で再会して『剣道を辞めた』と聞いた時はショックでしたし、その上で負かされたあの時は、もう、何が何やら、で」

「剣道場での仕合、だな。私も聞いている。随分と愉快なことになったそうだな?」

「はい。衝撃でした。私の知る一夏の面影がまるでなくなっていて……こう、ついて来てくれていると信じて()()()()()に走っていたのに、ふと振り返ると、いつの間にかいなくなっていたような、もうとっくの昔に追い越されていたことにようやく気付いたような」

 

 ふむ。大分饒舌になってきたな。周りの面々も少しずつ興が乗ってきたらしく、若干前のめりになりながら、ふんふんと相槌を打っている。……ラウラだけはラムネを飲むのに悪戦苦闘しているようだが。あぁそうじゃない。凹んでいる部分を上手く使え。そうだ。そうやって飲むんだ。

 

「それからは、知っての通りです。変に歪んだまま伸びきっていた鼻っ柱をぽっきりと折られて、うじうじと悩んで、そんな自分の背中を叩いてくれた、その、友だちに、恥じない自分でありたい、と、そう思うようになって」

 

 気持ちも乗ってきたのか、ちょっと話が逸れてる気もするが、面白いのでそのまま観察を続ける。凰がこそばゆいのだろう顔を背けて顔をむずむずとさせている隣で、オルコットは感極まって既にどこからか取り出したハンカチを結構な具合に濡らしている。

 

「あ、あれ? えっと、兎に角、ですね」

「ククク……おぅ、そのまま続けろ」

「その、ですから、私と一夏の間に、何か特別なことがあった訳じゃあ、ないんです。門下生の先輩後輩として出会って、同じ小学校だと知って、互いに無遠慮にものを言い合ったりしている内に、周囲にからかわれるようになったりとか、そんな些細なことの積み重ねだけしか、私にはなくて」

 

 でも、と一区切りを入れると、篠ノ之はすっかり結露に塗れた缶の緑茶で喉を潤し、1つ大きく呼吸(いき)をして。

 

「気付いたら、好きになっていたんです」

 

 キャーッ、という黄色い声はオルコットとデュノアによるものだ。まぁ、こんな王道にも程がある少女漫画じみた告白なぞ、現実(リアル)ではそうそうお目にかかれないだろうからな、無理もない。

 

「誰にも、渡したくありません。置いて行かれたく、ありません」

「そうか」

 

 青臭い。だが、あぁ、良い。酒の()()には最高だ。あぁくそ、今すぐ冷蔵庫からキンキンに冷えたビールを取り出したくなるじゃあないか。

 

 篠ノ之のそれは実のところ、完全な一方通行ではない。

 

 大前提として、一夏にとって女はあくまで『庇護対象(まもるもの)』だ。"戦乙女(わたし)"でさえその範疇だというのだから、これはもう文字通り、くたばるまで完全に覆ることはないだろう。そんな女でありながら、初めて自分を負かした、家族(わたし)以外の存在。初めてそこから逸脱した例外。それが織斑一夏にとっての篠ノ之箒という少女なのである。それまでクラスメイトの名前すら滅多に出て来なかったというのに、道場に通うようになってからはまぁ、やれ『強かった』だの、やれ『負けない』だのと、兎に角篠ノ之の話題ばかり出て来るものだから、察するどうこう以前の話である。当の本人は無自覚なようだが。

 

(まぁ、だからといって、ワザワザそれを教えてやる義理もないが)

 

 アルコールは含まれていないハズなのに、どうにも心地が良い。肴が上等だとこうも簡単に場酔い出来るものなのか。あぁ、今までの自分にはなかった感覚だ。なかなかどうして、悪くない。

 

「……アタシは、千冬さんも知っての通りだと思いますけど」

「おぅ」

 

 そんな篠ノ之の勢いに便乗することにしたのか、今度は凰がぽつぽつと喋り出した。

 

「救われたんです、一夏に。アタシ自身じゃどうにもできなくて、ただひたすら溺れないように()()()しか出来なかったあの場所から、なんてことのないように拾い上げてくれて、真正面から立ち向かっていって。陳腐な言い方するなら、ヒーロー、ってヤツだったんですよ。ピンチに颯爽と駆けつけてくれた、ヒーロー」

 

 凰が最初に我が家に遊びに来たのは、私たち姉弟(きょうだい)が帰国し、一夏が復学してから2週間と経たない頃だった。今の彼女からは想像もつかないほどおどおどとした怯え様で、『借りて来た猫のよう』とは正にこのことか、と思ったものである。それが回数を重ねるに連れて徐々に遠慮がなくなっていき、逆に姉弟揃ってご実家の中華料理店にも何度もお邪魔したりと、家族ぐるみの付き合いもそれなりに重ねていくことで、間もなく最高学年に上がろうという頃には、殆ど今の凰鈴音(ファンリンイン)の人物像が出来上がっていたように思う。

 

「そんな一夏が『ヒーローだ』って憧れてるIS乗りがいるって知って、ならいつかソイツを超えれば、アタシのことだけ見てくれるかなって。ISに乗ろうって決めたのはホント、そんな勢いが9割くらい、っていうか」

「ほぅ? では残りの1割は何だと?」

「まぁ、その、何て言うか」

 

 もごもごと口ごもる様子にちょっとした愉悦を覚えながら、3つ目の缶を呷る。うぅむ、味や喉越しは悪くないが、やはりこう、飲み応えというか、満足感がない。これでは逆に飲む量が増えてしまいそうな気がする。なまじ自分は酒が入ると食欲が増すタイプだから余計に。

 

 嗚呼飲みたい。一息に呑みたい。そんな欲求を、空になってしまった缶の底を覗き込みながら必死に抑え込んでいると。

 

「今度は、アタシの番だ、って。いつかもし、一夏が苦しかったり辛い目にあった時、アタシがその助けになれたら、って、思うんです」

 

 ……ハハッ。これで飲むなと言うのか。いやさ自業自得ではあるのだが。

 

「その為には、強くなくちゃ、ダメですから。隣に居て頼もしいって、背中を任せても安心だって信じてもらえるくらい強くならなきゃ、ダメですから」

 

凰鈴音(ファンリンイン)』という名前は、恐らく現時点において『篠ノ之箒』に次いで一夏の口から聞いた回数が多いだろう女の名前だ。出会いこそやはり『庇護対象』ではあったが、ちょいと気心が知れてからは()()()()()である。大半の女子が別次元(アイドル)のように扱ってくる中で()()は、愚弟もさぞ心地が良かったことだろう。何せ()()()()()()()()()()()のだから。

 

「その為ならば、"戦乙女(わたし)"も超える、と?」

「はい。超えます。いつか必ず、超えてみせます」

 

 おぉおぉ、吠えるじゃあないか。未だ肌を微かに粟立たせる程度でしかない、しかし確かな殺気。あぁ、懐かしさすら覚える。一堂に集い犇めき合う世界各国の強豪たちが揃って『自惚れるな小娘』と一切の容赦なく叩き付けて来た()()()()()()のような、実に心躍る刺激。

 

「――――言ったな、小娘」

 

 くしゃりと缶を握り潰し、傍らのゴミ箱へ勢いよく放り込んで、ちょっぴり、ほんのちょっぴりだけ、()()()()()()()()。常より努めて心の奥底の方へと追いやっている、私の()()()()、その一端。自然、細まる(まなじり)は刀剣の如き鋭さを帯びて、三日月のように歪む口元は犬歯を剥き出しにした獰猛な笑みを浮かべる。

 

 瞬間、見せた反応は様々だった。

 

 最も早かったのはデュノアだった。少し焦ったような表情を浮かべながらも、咄嗟に"RRCⅡ"の腕部装甲を展開し防御姿勢までとってみせたのはなかなかどうして、いい反応速度である。次点の篠ノ之は一気に顔を青褪めさせたものの、すかさず僅かに跳び退りながら腰元、佩いてもいない刀を掴もうと手をやっていた。剣術道場とはいえ、箱入り娘の()()でこれなのだから、やはり柳韻先生の指導は大したものだと再確認する。

 

 ラウラとクロエ・カデンソンはどちらも大きな動きこそ見せなかったが、ラウラはラムネ瓶からビー玉を取り出そうとあれこれ試行錯誤しているようで、よくよく観察してみれば既に重心が浮いており、直ぐに戦闘態勢に移れる状態であることが解る。私が本気でないことは殺気の加減で判ったのだろう、そこまで警戒している様子も無い。『万が一の為に』といった具合か。流石はバリバリの現役だ。反対に、カデンソンの妙に自然体な反応はどうだろう。元より感情の発露が大きいタイプではないが、それにしたって―――と考えて、あぁそうだ、コイツは学園に来るまで束のところにいたんだったか、と思い至る。アイツと付き合えるような輩が『普通』であるハズはない。ましてや『母』などと呼んで慕えるのなら尚更だ。

 

 そして。

 

「~~~~~~ッ!!」

 

 少し、感心した。私の殺気を真正面からぶつけられて尚、()()()()か。呑まれる寸前ながら、しかしその瞳に未だ意気は健在。額に嫌な汗を滲ませながらも、歯を食いしばって必死に、ブレることなく真っ直ぐに私を見据える双眸。あぁ、中国でも格上相手に何度もこうして()()()()()()()のだろうことが容易に想像できる。成程、()()()が気に入るワケだ。

 

「――――織斑先生、その辺で」

「む。いかんな、つい加減を間違えたか。私の悪癖だな」

 

 俄然面白くなってきた、とあわや『蓋』を全開にしかけた直前、絶妙なタイミングで横槍を入れられ、張り詰めていたものが一気に霧散した。それに従って室内に充満していた緊張と共に、全員が臨戦態勢をようやく解いた。真正面から受け止めていた凰なんて、両手を床につき肩で大きく息をしているほどである。うぅむ、少しやり過ぎてしまったか。

 

「皆さん、折角気持ちよく汗を流してきたばかりですのに、これでは元の黙阿弥、というヤツですわ」

 

 そして、その横槍を入れて来た張本人、セシリア・オルコットはといえば、なんともないといった風に泰然自若としているではないか。流石に英国貴族出身なだけあって、踏んできた場数の差が出たか。肝の据わり具合がそこらの小娘とは違う、ということなのだろう。

 

 

――――素知らぬ顔をしているセシリアであるが、平静でいられているのではなく、昼間の『もう1つの核爆弾級の殺気』の経験があったから辛うじて取り繕えているだけである。

 

 

「ア、アンタ、()()()()浴びてなんともないワケ?」

「凄いね、オルコットさん。僕、そんなワケないって思ってても、鳥肌が止まんなかったのに」

「身じろぎ一つしない、か。柳のような静けさ、見習わねば」

「フフッ。淑女の嗜み、ですわ」

 

 口元に手をやり優雅に返すその様は、他の面々に比べて随分と成熟しているように窺える。やはり、そういった経験値においては、同世代の中では頭1つか2つばかし飛び抜けているようだ。後々のことを考えても、一夏には特にこういった部分を見習ってもらいたいものである。

 

――――三者三様の驚きに微笑みで誤魔化しているセシリアであるが、平然として『微動だにしなかった』のではなく、正座していた時間が余りに長くて足が痺れていて『微動だに出来なかった』という方が正しかったりする。

 

 

「それで? 次はお前の番か、オルコット?」

「ご指名とあらば。……そうですねぇ、どう言ったものでしょうか」

 

 うぅん、と小首を傾げて暫し考え込むような様子を見せるオルコット。どういった風に言えば適切なのか、悩んでいるのだろう。

 

「素敵な殿方だと思いますわ。真面目な努力家。物腰も柔らかく、腕っ節も教養もある。少々乙女心に鈍感だとは思いますけれど、そこはそれ、これからどうとでもなりますし」

 

 むしろそのような殿方を燃え上がらせてこそ()い女というものでしょう、と艶やかに微笑むその顔は自信に溢れていて、その隣にいる篠ノ之と凰は()()()()()な様子である。そんな2人をオルコットは見やって更に笑みを深め、続けた。

 

「素敵な殿方ほど、多くの女を魅了するものです。同好の士、というのも(わたくし)的にはポイント高いですわね」

 

 そう、一夏とオルコットには共通点がある。今から6年前、一夏は誘拐現場から自分自身を、オルコットは暴走列車から両親を共に"黒豹"に救われており、その境遇から同じ憧れを抱き、しかしその理解者に飢えていた。自分に負けず劣らず存分に語れる相手とあらば、そりゃあ放っておいたって親しくもなろうというものである。

 

 が、気になることが1つ、ある。何も今日に限ったことでなく、今までを見てきてずっと気になっていたことが、1つ。

 

「それほど好ましいと言っておきながら、お前はそこの2人と違って、あまり餅は焼いておらんようだな?」

 

 そう、オルコットはこれだけ一夏への好意を表明していながら、こう、()()()()()()()()とでも言うのだろうか。篠ノ之や凰に比べて、どうにも()()()()()ような気がしてならない。

 

 そして。

 

「お餅、ですか? ……あぁ成程、焼き餅(ヤキモチ)。そう、ですわね。確かに嫉妬するほどかと問われれば、答えには逡巡してしまいます」

「ほぅ?」

 

 これはなかなか、面白い答えが返ってきたものである。先程までわかり易くうろたえていた篠ノ之と凰なんて「え?」と言わんばかりにぽかんと口を開けて呆けているし、他の面々も少なからず驚きの反応を見せていた。

 

「不肖の弟では不服か。無理も無い」

「いえ、決してそのようなことは」

「なら、何だ? 奥歯に物が挟まった様な物言いは好かん、はっきり言ってみろ。何、酒の席だ。多少は目を瞑ってやるとも」

 

 手早く逃げ道を封じてやれば、微かに「こういうところは似た者同士ですのね……」という呟きが聞こえた。誰と似ていると思われたのかは判らないが、何故かとても嫌なヤツと並べられたような気がして少し癪に障った。一先ず黙って続きを待ってはやるが。

 

 すると。

 

「よく、解らないのです。何せ(わたくし)、恋愛経験というものがありませんので」

「ただの1度も、か」

「はい。あるいは、その自覚がないだけ、なのかもしれませんが。一夏さんのことは、確かに好ましく思っています。それこそ、今まで出会ってきた殿方の中では、一番に。けれど、(わたくし)にはこの『好ましい』が果たして『Like』なのか『Love』なのか、その区別がつかないのです。今までずっと、意図的に()()()()()を避けて来ましたので」

「意図的に、とは?」

(わたくし)は、貴族の娘ですから」

 

 丁寧に淀みなく紡ぎ出された言葉を聞いて初めて、私はオルコットに年相応の()()()というか、()()のようなものを感じ取った。ようやく、目の前の彼女を『英国貴族の娘』でなく、『1年1組(じぶんのクラス)の生徒』として見られた様な、そんな気がした。

 

「貴族の娘である以上、(わたくし)に恋愛の自由はありません。家にとって利のある方の下へ嫁げるよう、ありとあらゆる教養を求められ、それに応えるのが当然の義務でした。何を隠そう、今回学園に入学したのもその一環ですので」

「つまり、誑かしに来たと認めるのか」

「あけすけに言ってしまえば、はい。国から直々に()()()()()()と。ですけれど、(わたくし)は幸運です。だって、一夏さんは思っていた以上に素敵な方だったのですもの」

 

 訊けば、渡されたプロファイリング資料を読んだ時点で、既にかなり好感度は高かったらしい。そして、学園に来てからも、その評価は上がり続けたのだという。

 

「何より、あの初めての円舞曲(ワルツ)。えぇ、えぇ、心が躍りましたとも。荒削りで乱暴な、けれどとても情熱的な鼓動(ビート)。あの熱は(わたくし)、きっと()()()()()のお婆ちゃんになってしまったって、忘れられませんわ」

 

 滔々と淀みなく流れていたオルコットの言葉が不意に熱を帯び、両目は懐かしむように、想いを馳せる。他でもない、クラス代表決定戦のことだろう。

 

「ですから、えぇ、お2人があまりにモタモタしているようなら、いっそ(わたくし)が横から掻っ攫ってしまうのもアリかな、とは。幸い、一夏さんも(わたくし)のことは憎からず思ってくれているようですし」

「ンナァッ!?」

「ちょ、セシリアァッ!?」

「あら、そんなに意外なことですの?」

「だってアンタ、お茶会の時『応援する』みたいなこと言ってたじゃないのよッ!?」

 

 ふむ。お茶会、とやらのことはよく解らないが、多分コイツらのプライベートの話なのだろう。篠ノ之は既に許容量超過(キャパオーバー)のようであんぐりと口を開けたまま固まっているし、凰は目を白黒とさせながら声をひっくり返している。おぉおぉ、これまた愉快なことになってきたじゃあないか――――と思ったのも束の間。

 

「えぇ、言いましたわ。お友だちの恋は報われて欲しいですもの。けれど、それとこれとは話が別、ですわよね?」

「は? え? ……は?」

「先程も言いましたけれど、(わたくし)も一夏さんのことは素敵だと思っていますし、同じくらい期待もしていますの」

「き、たい?」

「えぇ。彼はもっともっと強くなりますわ。彼と言う物語がどのような道程(みちのり)を経て、どのような結末を迎えるのか、それを見届けたいのです。ここに家や国は関係ありませんわ。ただ(わたくし)、セシリア・オルコット個人の意思で、そうしたいのです」

 

 オルコットが恍惚したように微か、頬を紅潮させながら語る様を見て、凰は今度こそ言葉を失い、金魚だかのように口をぱくぱくと開閉させていた。

 

「つまり、お前はその過程で一夏が選ぶ相手が自分でなくとも構わない、と?」

「その時は、えぇ、とても残念ですけれど、その時はその時ですわね。あらゆる手を尽くして尚、ダメだったというのなら、(わたくし)と一夏さんの縁は()()()()()()()()()()()()ということなのでしょう」

 

 ふむ。現実的で、打算的。どこか冷めているようで、そうではないような。あぁ、きっとこれは正しいのだろう。だが、何故だか解らないが()()()()()()()()()。上手く言い表せない、けれど今コイツに叩きつけたところで理不尽にしかなり得ないだろうこの苛立ちを、早くも4本目のノンアル飲料で喉奥に無理やり呑み込んだ。くそぅ、違う意味で飲みたくなって来てしまったではないか。

 

「チッ、消灯時間まであとどのくらい……ン?」

「…………」

 

 と、思わず置時計のある方へと視線をやって、やいのやいのと文字通りに姦しく騒いでいる篠ノ之・凰・オルコット3人組をじぃっと見ているラウラの表情が、ほんの微かではあるが陰りを帯びていることに気がついた。

 

「ラウラ、どうした? 冷たいものを一気に食べ過ぎて、腹でも痛くなったか?」

「いえ、体調は問題有りません。……が、教官。1つ、ご質問させて頂いても宜しいでしょうか?」

「許す。言ってみろ」

 

 ラウラからの質問など、随分と久し振りのことだ。それこそ、ドイツにいた頃以来ではないだろうか。そんな風に記憶を掘り返していると。

 

 

 

「――――私はアインが、いえ、一夏が好きです。大好きです」

 

 

 

「……お、おぅ」

 

 なんともドストレートな告白に瞬間、室内の時間が完全に止まった。予想外が過ぎる第一声に、不覚ながら私までもが思い切り面喰ってしまった。

 

「私は一夏に、どれだけ返しても返しきれない大恩があります。仮に、本当に仮の話ですが、祖国から『織斑一夏を消せ』という指令が下ったとして、恐らく私は持てる全てを一夏を生かす為に費やすでしょう。『代わりに死ね』と言われたなら、私は喜んでこの身を差し出すでしょう。本人は、嫌がるでしょうが」

 

 余りの重さに誰1人として二の句が継げないでいた。何よりも、それを至極当然のことのように淡々と語るラウラの姿に、いっそ恐怖すら覚えているのだろう。

 

「故に、私は一夏にIS適性があると発覚したというあのニュースを耳にして直ぐ、自ら学園へ赴くことを志願しました。今や一夏は、いついかなる時、どこからどのように狙われるかも全く解らない、極めて危険な立場になったと判断した為です」

「そうか、お前の入学が少し遅れたのは」

「はい。元々学園への進学が決まっていた者に無理を言って代わってもらったので、その手続きの為に。……本当はもっと遅れるかと懸念していたのですが、何故か軍の皆が総出で協力してくれたので、かなりスムーズに話が進みまして」

 

 それはそうだろう。本人たちのその自覚はないが、一夏とラウラの2人は殆どドイツ軍のマスコットのような扱いを受けている程の人気ぶりなのだから。在独時代当時、2人揃って基地内を歩けば写真を撮られ、頭を撫でたり抱っこさせろ、などとせがまれるなんてのは日常茶飯事。常日頃から憮然とした顔を崩さないご高齢の将校方でさえ、まるで自分の孫の相手をするかのように相好を崩して茶菓子を振る舞っていたほどだ。そんな目に入れても痛くないほどの孫娘が滅多に言わない()()()。それはそれは皆喜んで手を貸しただろうことは想像に難くない。

 

「月に1度の文通も来なくなりましたし、電話やメールのやりとりも出来なくなって、とても不安に思っていました。5月に入ってようやく電話が出来て『大丈夫か?』と訊いてみれば開口一番に『代表候補生と戦うことになったから戦略を一緒に考えて欲しい』と言われて、それはそれで驚きはしましたが、ようやく近況を聞けて安心しました。教官を始めとした頼もしい人たちがいるから心配は要らない、と」

 

 そして、学園に来て実際にその『頼もしい人たち』のことも確かめてみて、どうやら一先ずは杞憂に終わったようだと密かに安堵していたのだという。

 

「ですから、先程の3人の言葉も、私は嬉しいのです。彼女たちはこの先、何があっても一夏の味方でいてくれる、決して裏切ることはないだろうと、そう確信できたのですが……」

「ですが、何だ?」

 

 あからさまに困惑の表情へと変わるラウラの顔は、まるで迷子のそれであった。そう、丁度、挫折から立ち直って間もない、一夏にあちらこちらへと引っ張り回されていたあの頃の様な。

 

 そう、それは、つまり。

 

「何故、でしょうか。聞いている内に、嬉しいだけじゃなくて、こう、胸の辺りがもやもやしてきてしまって」

「「「「……………」」」」

「おかしいのです。3人の言葉に負の感情を抱く要素など欠片もないハズなのに。これは、やはり私が欠陥品だから、なのでしょうか?」

「「「「……………」」」」

 

 息苦しさを覚えたのだろう心臓に手をやりながらちょっぴり潤んだ瞳で『その発言』はもう()()()()()()()()()()()()()()じゃないか、とか。お前今まで完全に無自覚であんな露骨にも程がある言動してたのかマジでか、とか。あぁ確かに本来なら踏むべき手順を幾つもすっ飛ばしてあの段階に進んでしまったからなまじ解りづらかったのかもしれないな、とか。言いたいことや思うところが多すぎて完全に思考回路の電源が落ちて固まってしまった。

 

 いや、お前、だから、それは、つまり。

 

「――――嫉妬だよ、ラウラ。それは嫉妬」

「し、っと?」

「そう。それは、それだけラウラにとって一夏は大切で、とっても大好きなヒトだってことさ」

「いや、私が一夏を大好きなのはもう解っていることなのだが、ならば私は一体3人の発言のどこに嫉妬したというのだろうか?」

「あぁ~もうッ!! これだからもうッ!! カワイイなぁボクのルームメイトはァッ!!」

「ムグッ!?」

 

 ただ1人、その赤裸々にも程がある吐露を受けて尚、微笑ましく見守っていたデュノアだけが端的な、そして真摯な回答をした。それでも理解できない初めての感情に戸惑うラウラを見た瞬間、そんな高い声を上げて胸元へ抱き込む姿は妙に手慣れているように窺えた。

 

「大丈夫だよ、ラウラ。それは誰もが当たり前に持ってる、ごくごくフツーの感情だよ。キミはただ、他の人よりもそれを知るのがちょっぴり遅かったってだけさ」

「む、むぅ」

「焦ることないよ。ゆっくりその理由を考えていけばいいんだ。大丈夫。ボクらが手伝ってあげるからさ」

 

 呆気にとられている間に、言おうと思っていたことを全部言われてしまった。しかし、ふむ。出会った頃はまるで生気の感じられなかった小娘が、いっぱしに恋を知るまでになったか。いつかはこうなるだろうと思っていたが、いざその時になるとこう、感慨深いものがある。

 

「あ、ちなみにボクは普通にいい友だちだと思ってますよ。ルームメイトだった時も色々気を遣ってくれたし、女だって解ってからも変わらず接してくれてますし」

「そういう対象ではない、と?」

「はい。ボクは別に国から何も言われてないですし、それに、その」

 

 と、そこで区切ると、少し照れ臭そうに頬を掻いて。

 

「ボク、他に好きな人がいますから」

 

 そう言った瞬間、生徒たちが一斉にざわめいた。

 

「それは、憧れではなく、か?」

「正直、それもありますね。でも、それだけじゃないんです。それだけじゃ、このドキドキの説明はつきませんから」

「え、千冬さん、相手解るんですか?」

「見ていれば解るだろうに。まぁ、お前たちは一夏しか見ていないだろうしな」

 

 驚いた表情で問うてくる凰にそう返しながら嘆息して、改めてデュノアに続ける。

 

()()()は手強いぞ。恐らく、他者に()()()()()()を求めていない。欠落、ではないだろうが、生徒ばかりか、我々教員相手でも()()()()()()として一切見ていない。学園へ来て間もない頃、多くの職員が『若い男なんて絶対に問題を起こすに決まってる』と豪語していたが、今まで浮いた話の1つも出てこなかった。あの新聞部でさえ、記事をでっちあげる余地すらなかった、と言っていたそうだ」

「みたいですね。ちょっと聞いて回ったことがあるんですけど、特に整備科の先輩から沢山エピソードを聞かされました。男嫌いの過激派が陥れて退職に追い込もうと何度も色仕掛けをしたけど、全然相手にされなくて逆に自信を失くしてた、とか、色々と」

 

 それが却って好感度を爆上げして、何なら翌年の整備科志望人数が異様なほど増えたんだとか。あれ以来、過激派の連中もおとなしくなったもので、なまじ悪行を表沙汰にしない・出来ない連中だけにいい加減どうにかせねば、と頭を悩ませていた良識派の職員たちもこれには大喜びして、ほんの謝礼として整備管理課への予算が多めに割かれたらしい。そもそも、嘘か真か判らないが、理事長推薦の上での引き抜きだそうだから、多少の権力で圧し潰そうとしたところで更に上から潰し返されそうではある。

 

 まぁ、それは兎も角だ。

 

「今や全世界から狙われているのは一夏だけではない。むしろ、一夏以上に狙われていると言っていい。いい意味でも、悪い意味でも、な。加えて本人があの調子だ。まず間違いなく、悲恋に終わるぞ」

 

 そこまで言ってようやく他の面々は相手を理解したようで、揃って意外そうな顔をデュノアへと向ける。そんな反応を向けられて、デュノアは。

 

「構いやしませんよ」

 

 何ともない、と笑ってみせた。

 

「『この先もっと素敵な人が~』とか、競争率がどうとか、どうでもいい。今ボクが、シャルロット・デュノアが、アリスター・カデンソンに恋をしているってことには、変わらないから」

 

 こうまで変わるか。こうまで変えるか。正直、学園に来て間もない頃のデュノアにはいとも容易く手折れてしまいそうな危うさがあるように見えていた。周囲に気付かれないよう上手く取り繕っていたし、そのように立ち振る舞ってもいたが、私以外にも解る者には解っていたハズだ。だが、()()()()()()()のは政府、あるいはそれに準ずる存在であることは明白であった為に、不用意に手や口を出すことは躊躇われていた。

 

 それが、()()()()()()の翌朝、示し合わせたようなタイミングでのデュノア社の共同開発が情報公開され、学園上層部からは学籍情報の変更通知。あぁ、()()()()()()()と察するのは容易だった。

 

「知ってますか?『恋多き愛の国』なんて言われてますけど、フランス人は結構身持ちが固くて、一度決めたらとことん尽くす情熱の持ち主、なんですよ?」

「そうか。そうまで言うなら、好きにすればいいさ」

「はい。言われなくとも」

 

 いけしゃあしゃあと言ってくれる。だが、あぁ、この様子なら本当に問題なさそうだ。

 

「さて、そうなると残るは―――」

「―――私、ですか」

 

 満を持して、最も腹の読めない彼女の番、である。

 

 クロエ・カデンソン。ラウラの出自を知っている自分としては、異様なほど似ている彼女の出自も何となく想像がつき、"黒豹"の正体を知った今、どのような経緯でヤツの娘を名乗っているのかもある程度の予測はできる。だが、学園に来てからそれなりの月日が経って尚、全くその内面を覗かせない。学園では絵に描いたように模範的な優等生。授業態度は真剣そのもので、常に5分前行動をし、提出物は決して滞りがなく、当然小テスト等の成績は常に上位をキープ。クラスメイトたちとの不和も特に見受けられないし、一夏たちとは()()()()()()

 

 だが、()()()()だ。()()()()なのだ。

 

 表面上は確かに問題ないだろう。だが時折、ともすれば挫折していた頃のラウラ以上に分厚い『壁』を感じる瞬間がある。そして、ほんの少しの隙間からスルリとこちらの心の底を覗き込む観察力も持ち合わせている。典型的な『他人(ヒト)を信用していない人間』の行動だ。……何故解るかって、そりゃあ自分も昔はそうだったからである。尤も、彼女のように周りに合わせるような器用な真似もできなければ、その必要も感じていなかった訳だが。

 

 そりゃあ名義上だろうが、親が()()()()なのだ。言えない・明かせない事情など山のようにあることだろう。学園に提出されている資料もどこまでが正しいか解ったものではない。

 

 はっきり言えば、何も解らないに近い。無感情、無個性という訳ではない。常に嘘を吐いている、という訳でもない。

 

『ヒトは誰しも属するコミュニティに合わせた仮面を被っているもの、と思っていたのですが、先生は違うのですか?』

 

 あぁ、正しいさ。正しいとも。誰もがそれを自然にやっているさ。お前のそれも、他の皆とさして変わらないことなのかもしれない。

 

 だが、お前は―――

 

 

 

「特に、何も。何も、ありません」

 

 

 

 ―――ほら、な。やはり、お前も、『普通じゃない』んだろう?

 

「どういう意味か、訊いていいか? そこで完全に固まってるコイツらにも解り易く」

「失礼。皆様、本当に真剣に打ち明けて下さいましたので、私も嘘を吐くべきではないと判断しました」

 

 あぁ、この不器用さ。やはりお前、文字通りの()()()()()なのだろう。あぁクソ。いつも当たっていて欲しくない予測ばかり当たってしまうな、私は。

 

「別に、路傍の石くれのように全く意に介していないだとか、そういう意味ではないのです。お父様の手紙でも、お母様の思い出話でも、織斑さんのことは大変好意的にされていましたし、直にお会いしてからもその認識の更新を必要と感じたことはありません。むしろ上方修正しても構わない、と思っているくらいです」

 

 感情のこもっていない声色で淡々と語る様はやはり、先ほどのラウラと瓜二つだ。迫力はこちらの方が段違いだが。それだけまだ、『壁』は分厚いのだろうと推測できる。ラウラは『唯一の成功例』と聞いていた。では、『それ以外』だったのだろう彼女は一体どこで、どのような扱いを受けてきたというのだろうか。

 

 そして。

 

「織斑さんについて私の中にあるのは、ただ1つ。期待です」

「期待、だと?」

「はい。果たして織斑一夏(かれ)Alister Kadenson(おとうさま)の望むものを見せてくれるのか。この1点に尽きます」

 

 なぁ、"黒豹"よ。

 

『彼には強くなってもらわないと困るんですよ。……あまり時間がないかもしれませんしね』

 

 なぁ、Alister Kadensonよ。

 

『例え何があろうと、オイラは一夏くんの味方なんでね』

 

 とてもじゃあないが、私は未だにあの時のお前の言葉を信じられそうにないぞ。

 

 

 

 

 

 花月荘、大浴場前廊下にて。

 

「ふぅ~……いい湯だったけど、広すぎて全然落ち着かなかったな」

 

 時刻は間もなく22時。消灯時間まであと30分前後といった頃合。織斑一夏はちょっぴり湿ったままの頭から微かに湯気を上らせながら大浴場から売店の方へと歩いていた。

 

 最初は折角の露天風呂、しかもロケーション最高の檜風呂を貸し切り、という今後あるかないかも判らないような風呂好きにとって至高の贅沢を時間いっぱいまで味わい尽くしてやろう、という積りでいたのだが、銭湯やスパ施設のように何種類もの浴槽やサウナがあったりする訳でもなく、加えて旅館の客室の方から微かにきゃあきゃあと皆が騒いでいる声が聞こえるのもあってどことなく居たたまれなくなり、早々に上がってきてしまったのである。

 

「勿体ないことしちゃったかな。でも、あのままいてもゆっくり出来なかった気もするし」

 

 これも一種の貧乏性だろうか。学生寮の大浴場も毎度、精々1時間が()()()()だ。どんなに良いものでも、気持ち一つでこんなにも魅力が半減するのだなぁと、そんなことをたまたま見つけた自販機で買った瓶コーラを飲みながら思っていた、その時だった。

 

「ん?」

 

 ふと視線が止まったのは、温泉にはお馴染みのゲームコーナー、その一画。綺麗にはされているものの、ひょっとすると自分よりも年上なのでは、ってくらいまで古びた雰囲気を隠しきれていない筐体と睨めっこをしている浴衣姿の背中が1つ。周囲、というかそもそもゲームコーナーに他に人影はなく、ただ1人だけが微動だにせずにぽつんと立っているだけなので、妙に目を惹いた。

 

「あの髪色は、確か」

 

 見覚えのある色だった。色素の抜けたような青白い髪。昼間にも見た色だし、もう1人同じ色をしている人が『自分の家系独特の特徴だ』と言っていたから、直ぐに解った。

 

 何をしているんだろうと近づいてみる。どうやら彼女が覗き込んでいるのは、クレーンゲームの筐体のようだ。あの独特のロボットアームが見えたから間違いない。近づくに連れて、その景品も徐々に見えてきた。箱に入ったものがプラスチックのレール2本の上に乗っかっていて、それをアームの動きで下に落とすタイプのものらしい。女の子が欲しがっているのだから、化粧品なんかを入れるポーチのキャラものとかだろうか、なんて予測を立てながら更に近づいて行って―――

 

「―――え」

 

 いや。まさか。そんな。でもあのマークは間違いなく。

 

「『カッチュウジャー』じゃねぇかッ!!」

「ひぅッ!? お、織斑くんッ!? え、あれ、ほ、本音ッ!? いつの間にかいなくなってるッ!?」

 

 あ、やべ。思わず大声出しちゃった。驚かしてゴメン、更識さん。

 

 




 どうも、前にも言ったかもだけど初めてのリアルタイム特撮はそれぞれジュウレン・ZO・ティガ、作者のGeorge Gregoryです。7月のトリガーさんが待ちきれませんね。シン・仮面ライダーの公式背景にいるジャケットライダーには島本先生の漫画版の面影を感じる。というか、先に公式で特撮の仕事してたの島本先生の方だから庵野監督も意識したとか、そんなですかねぇ。……サテ、『カッチュウジャー』ッテナンダローナー(棒読み)。

 お排泄物捗りました。お陰で文字数凄い事に。まぁマジレスしますと、ここは一切手を抜きたくなかったのと、出来れば分割もしたくなかったので、ちょっと更新期間貰いました。何せ本章最難関にして1つ目の山場なもので。うーむ、それでも上手く伝わっているか不安ではありますが。

 さて。

 とうとう『パラレル・トラブル』の公式プレイ動画がアップロードされましたね。何アレ? 世界? もう画面の中にもう1つの世界があんじゃん? PS5ってあんなにスゴくてスゴいとはきいてない。

 もう1人のネファリウス、そしてもう1人のロンバックスの少女・リベット、見覚えのある惑星ステージや敵キャラの数々、ボタンの押し加減によるガラメカの使い分け、豊富にして歴代ファンにも嬉しいアーマーのラインナップ、そしてやはりあったゴールデンボルト……今回の武器屋担当、マダム・ズーコンも良いキャラしてましたね~、あれズーコン・ファミリーからだとどういう位置づけになるんだろ。気になる。

 まだ見てない人は直ぐ見に行こう。直ぐにだ。俺の駄文なんか読んでる場合じゃないぞ(ォィ

 では、また近い内にお会い出来ることを願って。

 いつも感想ありがとうございます。あなたのその一言が俺の何よりの動力源です。
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