ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】 作:George Gregory
バルファルクは手記で存在仄めかしてたし納得。
と、なると、アッチもいずれ出る、のか……?
家族とは最も身近な他人である。最初にそう言ったのは、どこの誰だったか。
血縁者であれば、そりゃあ文字通りに同じ血が流れているのだから、外見や性格が似たりするのも自然なことなのだろう。けれど、どれだけ似ているとしても、決して全く同一の
なのに、何故か、世間はそれを認めてはくれない。
光が強ければ強いほど、それが落とす影は濃くなる。その才能や活躍が輝かしければ輝かしいほど、子であれば親の、下の子であれば上の子の面影を、勝手に重ね合わせられる。実の親にでさえ。いや、実の親だからこそ、なのかもしれないが。
別に、何も最初から煩わしかったワケじゃあない。自慢だった。こんなに凄いんだぞ、と誇らしかった。それを羨ましがられているだけの内に、自分から気付ければまだ良かったのかもしれない。
「
始まりはそんな一言だったように思う。言った本人だって大して気にしてもおらず、本当に軽い気持ちで口にしたに違いない。想像だにしていなかったろうし、とっくの昔に忘れてしまっているのだろう。そんな些細な一言が誰かの心を深々と突き刺し、今も尚癒えない傷を負わせていたかもしれない、なんて考えもしないのだろう。そこにはきっと、いや、間違いなく悪意や大した考えなんてものもないのだから、殊更に
あぁ、それでも。例えそうだとしても、きっと。
この人だけはと、信じていたんだけどな―――
花月荘、ゲームコーナー内。
「―――ナルホド、ね。あの会長さんが、そんなことを」
レトロな電子音がどこか遠く聞こえるような錯覚を覚えながら、
「今はそんなでもない、と、自分では思ってるんだけどね。
そんな俺の真横、ゲームコーナーの端っこにあった簡素なベンチに並んで座っている簪さん(名前で呼んでくれと頼まれた)が物憂げな笑みを浮かべつつ話してくれたのは、彼女の食べかけの抹茶アイス(コーンタイプ)が溶け始めてしまう程度には長くて、そして思っていた以上に重い内容だった。
『千冬姉のことを? どうしてそんなこと訊きたがるんだ?』
『えぇっと、織斑くんって、
そんな会話から始まった『更識』という家の在り方と、そんな家に生まれた彼女の今までについてを聞いて抱いた感想は、きっと彼女は自分なりの理解や分析は終えているのだけれど、その
けれど、俺にそれを打ち明けてくれた理由は、なんとなくだけれど解った。
「お姉さん、織斑先生も、凄い人でしょう? でも、私たち姉妹と違って、こう、
「ん~、そうだなぁ……」
だから、真剣に考える。俺なんかで助けになれるのならと、糖分を摂取したばかりの脳ミソをフル稼働させて、何をどこからどのように説明したものか、と考える。
そして。
「えっと、まず確認なんだけどさ、簪さん」
「え、う、うん、何かな」
「その、“
『更識家』の仕事に一切関わっていない自分でも、“織斑一夏”についての情報はある程度把握出来ていた。なんせ年明けのIS適性発覚時の彼の保護と、その後数ヶ月に渡る身辺警護を担当したのが何を隠そう『更識家』なのである。特に彼が
「突然の事態で相当混乱しているだろうに、決して腐らず、毎日あの分厚い参考書に真剣に向かっていました。あの短期間で何度、替えの筆記具の買い出しを頼まれたか、もう覚えちゃあいませんね。えぇ、感心しましたよ。彼で良かった、とさえ思いました」
それから、『更識家』が調べ上げた彼の過去についてもそれなりに。中でも最も目を惹いたのが6年前の記述。第2回"
「その目的が、織斑先生を勝たせない為だった、って。犯人は全員捕まったけど依頼元までは把握してなくて、流れを遡ろうにも介した人数も多ければ、その中には行方不明になってる人もいたりして、結局黒幕は判らずじまいだった、とも」
「……そうか。そこまで知ってるんなら、話は早いかな」
手持ちの情報を全て明かすと、織斑くんはモナカの最後のひと欠片を呑み込んでしまってからほんの少しだけ逡巡するような沈黙の後で、こう続けて。
「
「えっ」
思わず、息を呑んだ。初めて見たのだ。いつも自信に溢れていて、人当たりのいい笑みばかりを浮かべている織斑くんの顔が、翳りを帯びているのを。
「織斑くんの、せい?」
「あぁ。『日本で待ってろ』って言われたのに無理言ってついてって、『この人たちの傍にいろ』って言われてたのに、半端な自信で調子に乗ってさ、気ィ利かせた積りでノコノコ1人になったところを掻っ攫われて、
表情も、口調も、それだけで胸が締め付けられそうなほど酷く自嘲的で、その時の傷は今になっても尚、ともすれば全くと言っていいほど癒えていないのだと、直ぐに解った。解ってしまった。
「千冬姉、何もかも全部放り出して駆けつけてくれてさ。あの時初めて見たんだ。あんな、泣きそうな千冬姉の顔。捕まってる間もずっと、自分の無力さとかを噛み締めてたけどさ、アレがイチバン辛かった。『あぁ、俺の考えなしのせいで、こんな顔させたんだ』って」
なのに、織斑先生は叱りもせず「怪我はないか」「怖かったろう」と、こっちを慮るような言葉を繰り返しているだけで、それが却って『自分はまだまだ
「少し真面目に考えてみればさ、当たり前の話なんだよ。ずっと、ずっと前から、
未成年の親無し。1人でも満足に暮らせないだろうに、更に幼い弟を抱えて。それがどれほどのものかは、想像を絶する。とてもじゃあないが、筆舌に尽くしがたい。
「なのに、千冬姉からただの一つも文句を聞いたことがなかったって、気付いたんだ。悔しかった。あんな顔させるまで、そんなことにも気付けなかったバカな自分が、大嫌いになった」
それからは、
「まぁ、だからさ。俺が千冬姉をどう思ってるかって言ったら、引け目とか、後ろめたさとかと、それ以上の感謝、なんだよ」
「感、謝」
「そ。感謝。早く独り立ちして、自分の面倒は自分で見れるから、って言えるようになって、千冬姉には、自分のことだけ、自分の幸せのことだけを考えてもらいたいんだ。……まぁ、だからっていざ結婚相手とか連れて来られたら、素直に祝福できるかどうか、ちょっと自信ないんだけどさ」
「自分の、幸せ」
そもそもあの
愚痴なんかはよく
「まぁ、俺としてはこんなとこだよ。だから俺、学園に来るまでは、高校を出たら直ぐに就職する積りでいたんだ」
「そう、だったんだ」
上手く言葉が出て来ないのは何故だろう。自分から聞きたくて尋ねたことなのに。比較するのもちょっとアレだけど、箒との時はこうじゃあなくて―――
(―――あぁ、そうか。
きっと、彼も
要するに、これはつまり。
(私、最低だ)
勝手に決めつけて、勝手に思い上がって、勝手に失望して。これが最低でなくてなんだというのか。
「でも、千冬姉は昔から『明確な目標がないなら進学しておけ』って譲らなくてさ。だったら家からもそんなに遠くなくて、進学だろうが就職だろうがそれなりに有利な
「え、わ、わ」
そのように語る彼の顔が妙に眩しく見えて、つい目を背けるように俯いているとそう指摘されてようやく、既に結構溶け始めていたアイスが手に伝い落ちてきているのに気付いて、慌てて下から舐めとった勢いのまま残りを一息に口に含んでしまう。少々行儀が悪いけど、考えている余裕はなかった。
「にしても簪さん、抹茶味好きなんだな。昼もかき氷食べてたし」
「うぇッ!? み、見てたのッ!?」
「おう。一気にかきこんで頭キーンってなってたろ。あれ見てたら俺も食いたくなっちゃって、後で俺も食ったんだ。美味かったなぁ」
「う、うぅ」
なんだこれは。罰ですか。罰が下ったんですか。恥ずか死にしそうなんですけれども。いやしかし、ここで話題が変わるのは割と好ましい展開だった。このままだと自分から話題を振っておきながら空気を悪くしてしまいそうだった。
「俺、実は抹茶味って、昔とびっきり渋いのにあたってからあんまり得意じゃなかったんだけど、今日改めて食ったらこれが結構美味くてさ。こう、餡子の甘さがスーッと流されてって、口の中がスッキリする、あの感じ? やっぱ味の好みって歳とると変わるもんなんだな」
「……私も、小さい頃はそんなに好きじゃなかったよ。そもそも子どもの舌って、渋味や苦味は危険信号って捉えるものだから」
「へぇ、そういうものなのか。じゃあ好きになるきっかけか何かがあったんだな」
「きっかけ」
はて、きっかけ。気付いた頃には自然と好んで食べたり作ったりするようになっていたけれど、何かあってのことだったっけか。改めて考えてみると、意外と出て来な―――
『一口だけ、分けたげよっか』
「―――あ」
そうだ。そうだった。そもそも初めて食べたのは。
「お姉ちゃん、だ」
「ん?」
「小さい頃からお姉ちゃん、お抹茶が好きで」
幼い私には、姉だけが食べていたあの緑色のお菓子がとても特別なもののように思えて。けれど、初めてちょっとだけ分けてもらった時、その苦さを堪え切れなくて思わず半べそをかいてしまって。
『この良さが解らない内は、まだまだコドモね』
そんな茶目っけタップリの言い回しが妙に悔しくて、ムキになって言い返したんだ。「いつか解るようになるもん」って。それから色々と試したり、自分で作ったりを繰り返す内に、いつの間にか好きになってて。
「ホントに好きなんだな、会長さんのこと」
「……尊敬は、してるよ」
そうだ、それは嘘じゃない。けれど、面白かったものも、好きだったものも、興味を持ったものも、何から何まで、当たり前のように上を行かれてしまっては、いくらなんでも限度ってものがある。
解っている。解ってはいるのだ。今なら、『あの言葉』が
抹茶味は好きになった。けれど、肝心の私自身は、まだまだ。
「っと、そろそろ部屋に戻らないとヤバいな。あんな話で、何か参考になったか?」
「……うん、とても。ありがとう、織斑くん」
「そか。ならよかった。それじゃ、また明日な。簪さんも早いとこ部屋戻っとけよ」
「うん。また明日」
ひらひらと手を振りつつ離れていく背中を見送りながら、改めて思う。彼は、織斑一夏は、紛れもない主人公だ。
「
同族意識なんて以ての外だ。比べること自体おこがましいにも程がある。
あぁ、どうしよう。なけなしの勇気を振り絞って、一歩踏み出したのに。
「……もうやだぁ」
どんどん自分を嫌いになっていくだけじゃあないかと、くしゃくしゃになってしまいそうな顔を覆って、塞ぎ込むように膝を抱えた―――
『まぁ、だからさ。俺が千冬姉をどう思ってるかって言ったら、引け目とか、後ろめたさとかと、それ以上の感謝、なんだよ』
「……そう、だよな」
『そ。感謝。早く独り立ちして、自分の面倒は自分で見れるから、って言えるようになって、千冬姉には、自分のことだけ、自分の幸せのことだけを考えてもらいたいんだ』
「それ以外に、あるハズ、ない、よな」
―――そのほんの少し先で、彼が自分に言い聞かせるように、小さく呟いていたことになんて、まるで気付かないままに。
同刻。遮るもの1つない一面の月光の下、雲を遥か下に見下ろしながら夜空に佇む影1つ。
《……もうやだぁ》
《それ以外に、あるハズ、ない、よな》
「……い~い感じに拗らせてんねェ有精卵ども」
『ウゥ~聞いてるだけでキュンキュンしちゃうな~ッ!! イイねイイね~青い春真っ盛りだ~ッ!!』
「でも、そろそろ一皮剥けてくんないとコッチも困っちゃうんだよねぇ。アフィリオン、エネルギーは?」
『おかげさまで満タンだよッ!! いつでも呼んで~♪』
「よし。それじゃ、まずは―――」
そして、翌日。
「―――と、いうワケで、です、ね。午前中の実技演習の時間を利用しまして」
「お前たち全員とカデンソンでの1対1での模擬戦闘を行うことになった。……もうこうなったら知らん。いい機会には違いないのだから、学べるだけ学べ」
「オテヤワラカにヨロシクゥ」
「「「「「「「えぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!?!?!?!?!?」」」」」」」
苦々しい顔の山田・織斑両教諭の隣でVサインと共に告げる"黒豹"へ、1年生全員の叫声が夏空に空しく何度も木霊していった。
どうも、好きなモンスターはディアブロス・ティガレックス・ジンオウガ・ガムートな作者のGeorge Gregoryです。後、蒼と黒の亜種は全般好き。リアルタイムで追いかけて来たので携帯機のテーマモンスターは特に堪らないものがあります。
RISEは専らハンマーとガンランスでヒャッハーしてます。次点で大剣と、最近練習してるのが片手剣。今作は鉄蟲糸技のお陰で他の武器に手を出すハードルがグッと下がってる気がします。試したいのが沢山あって迷っちゃうな。狩猟笛も楽しそうだし。
かなり駆け足になりましたが、これ以上は蛇足になりそうだしテンポよく進めて行きたいのでこのように畳みました。ついつい細かく書き込みたくなる、僕の悪いクセ(ティーポットクイッ) 細かい部分は是非、皆様の類稀なる想像力でもって補っていただこうかと(ぁ
さぁ、露骨な強化イベント、はっじまっるよ~( ´Д`)ノ
では、また近い内にお会い出来ることを願って。
いつも感想ありがとうございます。あなたのその一言が俺の何よりの動力源です。