ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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PS5の抽選に外れまくっている内にRISEが残すところ最大・最小金冠勲章のみになりました。
新しい武器覚えながら殲滅作業に勤しんでおります。


Ramping Up Ⅱ

 ようやくだ。ようやく()()()()()()()を思い切りぶん殴ってやれる。そう考えるだけで自ずと逸るように手足は疼き、心臓はどんどん脈打つ速度を上げていく。熱心なマンツーマン指導で場は温まっており、ギャラリーたちは1人残らず真剣な眼差しで、アタシたちの戦闘を一瞬たりとも見逃すまい、としているのが解る。

 

 "甲龍"を展開する。一気に視点が高くなり、視界がグンと広がるこの瞬間が、悔しくもあるけれど、割と好きだ。肩を回したり、膝を屈伸させたりして、今日の調子を確かめる。うん、悪くない。朝ごはんだって大盛3杯ちゃんと食べたし、そのお腹もすっかり()()()()いて、食べたものがエネルギーに変わって体中にしっかり行き渡っている感じがする。そんな風に自己分析をしながら、目の前、呑気に伸びをしたり、ストレッチをしながら開始の合図を待っている"黒豹"ことカデンソンさんを見下ろす。

 

(―――小さい)

 

 ISは四肢に纏う装甲とスラスター部を含めて全長3~4mが平均的なサイズだ。身長が160にも満たない自分でさえ、今は目線が疑似的に身長が倍近くになったくらいの高さにある。

 

 けれど、だ。カデンソンさんが素で180超の長身でありながら、"黒豹"を纏った姿はいいとこ2mといった具合。単純に考えれば、この時点で互いの優劣は明白だ。『大きさ』と『強さ』は密接な関係にあるからだ。

 

 肉体が大きい、ということは、それだけ生み出せる力も大きい、ということに等しい。質量は勿論、それに伴う慣性、遠心力、位置エネルギー。体格差が倍もあれば、他に余程の条件等がない限り、この優劣が覆ることはない。だからこそ、アタシは"甲龍"を作る際、決して他の機体に劣ったりすることのないよう、装甲やスラスター、武装に至るまでゴツく、分厚く、そして大振りにするよう注文をつけた。

 

 けれど、()()()()()()()()()()()()()。この男が、この機体が、あの織斑千冬の駆る"打鉄"の一撃を易々と受け止めるばかりか、真っ向からの鍔競り合いで何度も拮抗してみせた、『あの試合』を。

 

「フタリとも、準備はイイッスか?」

「いつでも」

OK(オッケー)

 

 少し離れた位置から、タブレットらしき端末を持ったクランクさんが、アタシたちの間で視線を交互させながら訊いてくる。アタシは緊張を保ったまま一切視線を逸らさずに答え、カデンソンさんは未だにどこか気の抜けた感じで答える。その温度差にまた少し、イラっとさせられるけれど、今は思考の外に追いやる。そのように努める。

 

 そして。

 

「デハ―――始めッ!!!!」

「覇ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 その合図と同時、アタシは即座に2振りの"双天牙月(青龍刀)"を展開、連結させ高速で回転させながら距離を詰める。"甲龍"は近・中距離特化のパワーファイター。成人男性の平均的な身の丈くらいもある"双天牙月"の巨大な刃も、轟々と風が唸り声を上げるような勢いで軽々と振り回せる程の馬力がある。扇風機でさえ人の指くらいなら切断してしまうことがあるのだから、この鋼鉄のミキサーに巻き込まれれば、いくらなんでもタダでは済むまい。

 

「炸裂弾程度で止めれるもんなら、止めてみなさいっての、よォッ!!」

 

 そんな強気の()()()()でもあった。が、しかし。

 

「…………」

 

 "黒豹"といえば全く微動だにしない。更識生徒会長と戦った時のように銃を抜く素振りばかりか、ただただ真っ直ぐに突っ立ったまま、微塵も動く気配すら見せない。一体どういう積りなのか知らないが、いくらなんでも随分と嘗められたものだ。ならば望み通りにしてやろうと、右腕の竜巻を叩き込もうとして。

 

「――――は?」

 

 その一撃は、まるで(もや)(かすみ)にでも振るったかのように、何の手応えもなく(くう)を切った。躱された、と理解するまでに刹那を要し、直ぐ様、返す刀で胴薙ぎを狙うが、それも軽やかに避けられる。

 

「こ、のォッ!!」

 

 勢いを殺さないままに"双天牙月"を分割。全身のバネと体捌きで更に力を乗せた怒涛の連撃。アタシの必勝パターンの1つ。これで捉え切れない相手は今までいなかった、のに。

 

「な、んで、当たらないのよッ!?」

 

 雲を掴むよう、とはこのことか。ここまでの手応えのなさは未経験(はじめて)で、余りにも気味が悪かった。そこに確かにいる相手に、確かに当たるように打っている攻撃が、まるで当たらない。それが何故なのか理解できない。

 

「ガツガツに攻めているだけのようで、実のところ、そうじゃあない」

「ア゛ァッ!?」

「キミはその類稀な洞察力、いや、嗅覚かな、それでもって自然と『狙われたくない瞬間』に『狙われたくない場所』を狙っている」

 

 突然の得意げな物言いに思わず荒げた声も意に介さず、"黒豹"はアタシの連撃の中で軽やかに踊ってみせながら、続ける。

 

「重心移動。攻防の切替(スイッチ)。潰されたくない機会(チャンス)。邪魔されたくない過程(プロセス)。挫かれたくない一手(アクション)。それが、()()()()()解る。だから自然にそこを狙うことが出来て、その積み重ねの結果として、キミは今まで勝ち続けて来られたワケだ」

 

 手は緩めてなどいない。むしろ更に苛烈に。後のことなと一切考えず、今ここで捻じ伏せることだけを。なのに、どうして。

 

「加えて、キミの動きは対人競技のそれじゃあない。極めて動物的。型らしき型もなく、()()()()な体勢からでも強引に叩き込んでくる。それでいて狙いは的確なんだから、お行儀の良い『試合』しかしてこなかったような相手には通じるかもね。

 けど、さ」

 

 何故だ。何故。誰もが顔を青褪めさせたアタシの猛攻を受けて、そんな涼やかな表情で不敵に笑っていられるんだ。

 

 そう思った次の瞬間、世界が()()()とひっくり返った。

 

「ッ、ガァッ!?」

 

 次いで背中を襲う強烈な衝撃に喘ぐ最中(さなか)、舞い上がる砂塵の向こうに広がる透き通った夏空のど真ん中に、ひゅんひゅんと風切り音を鳴らしながら回る影が1つ。あれは、まさか。そう気づいた時には既に遅く。

 

「ヒッ」

 

 寸前。本当にまつ毛や鼻先が触れてしまいそうなほど、1センチもないような位置に、いつの間にかアタシの手から離れていた"双天牙月"の片方の切っ先が停止していて。

 

「オイラ、()()()()()()()()()なんだよね」

 

 仰向けで大の字なアタシを見下ろしながら、落ちてきた"双天牙月"をわざわざギリギリアタシの真上で受け止める"黒豹"の、仮面(マスク)越しだけど絶対に憎らしい表情をしているんだろうな、って顔を見上げながら、思う。嗚呼。やっぱり、アタシ。

 

「アンタのこと、大ッ嫌いッ!!」

「おっと」

 

 仰向けのまま"龍咆"を撃ち、微かに反応を見せた隙に"双天牙月"の側面を蹴り飛ばして、その後を追いかけてキャッチ、そのまま大きく距離をとる。

 

「さぁ、こっから華麗に巻き返しッ!!」

「出来るといいねぇ」

「うっさいッ!!」

 

 

 

 

「マジ、かよ」

 

 強いのは知っていた。そりゃあ6年前、救われたあの日からずっと憧れ続けてきたのだし、何なら何度も戦っているところを目の当たりにしているのだから。けれど、()()()()()、と。

 

凰鈴音(ファンリンイン)は強い。それは確かだ」

「ラウラ」

「まったくのIS素人から僅か2年弱で代表候補生になった。その事実が何よりの証明だ。『麒麟児』の噂は瞬く間に各国へと広まり、私の耳にも入っていた。学園に来てからも、その名に恥じぬ強さを見せてくれた」

 

 いつの間にか隣に来ていたラウラの言葉に頷きを返す。自分たち専用機持ち同士での練習試合じゃあ頭一つ抜けて勝率が高いし、何よりも怖いのは、正にカデンソンさんの言う通り、その鼻の鋭さだ。こっちの()()()()を嗅ぎ取って出鼻を挫かれ、息継ぎを潰される。これを直感でやっているというのだから恐ろしい。

 

 そんな鈴が、一撃もまともに入れられていない。こんな一方的な展開になるなんて。

 

「私でも()()()()()アイツは完全には捉え切れん。さながら野生の獣の()()だ。いくら現役の軍人でも『人間(ヒト)の皮を被った野生の獣』との戦闘は想定してはいない。が、カデンソン氏は違うようだな」

「違う?」

「『攻めっ気を嗅ぎ取って襲ってくる』は、つまり『攻めっ気を嗅ぎ取ると襲ってくる』。『隙を見つけて潰しに来る』は、『隙を見つければ潰しに来る』だ。カデンソン氏は先刻からずっと、(ファン)()()()()()()()

「それ、って」

 

 つまり、『攻めっ気らしい動き』や『偽物の隙』を見せて、ワザと襲わせている、と?

 

「攻める場所、タイミング、何もかもが氏にコントロールされている。あれでは持ち味も何もあったものではない」

 

 理屈は解る。そんな難しい話じゃあない。聞いているだけなら、だが。果たしてそれを実践に移せるヤツがどれだけいるだろうか。

 

「これが、世界か。広いな」

 

 感心したようなその一言を最後に、ラウラは口を真一文字に閉じたまま2人の戦闘の続きを見守り始めた。俺も一緒にその続きを見届けようとして。

 

「お隣、失礼してもいいッスか?」

「え?」

 

 ラウラの反対側の隣でいつの間にか、クランクさんがこっちを見上げていた。

 

 




 どうも、今月に入って既に3度も全裸で寝落ちしている作者のGeorge Gregoryです。夜勤上がり、40分ほど徒歩で帰り、汗を流し弁当箱を洗ったとこまでは大体覚えてるんですけどね……最近気絶するようにブレーカーがプツッと落ちて、気が付いたら夕方とか真夜中なんだよな。

 リアルタイム以降初のゼロワンを見返し、滅亡迅雷の4人が好きすぎることを再確認。最後発の亡と違ってほぼ強化もテコ入れもないのに最終決戦まで初期形態で戦い続けた滅さんやっぱり中の人補正なんだろーか。

 本章は、短めでも切りの良いところでどんどこ更新していこうと思います。実際、プロットだけなら10話分くらい出来上がってるので、後は俺ちゃんの肉付けの手腕次第……ガンバレ、俺。

 では、また近い内にお会い出来ることを願って。

 いつも感想ありがとうございます。あなたのその一言が俺の何よりの動力源です。
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