ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】 作:George Gregory
正直、妬けました。ハイ。羨ましくて仕方がなかった。
正真正銘、あの時が
あれからの血の滲むような努力と、それ以上の凄絶な経験が、彼女を強くした。彼女自身も、事ある毎にそう言ってますしね。多分、僕らの中でイチバン変わったのも、影響を受けたのも、彼女なんじゃあないかな。
『使う気がなかった』。なのにセシリアは、『使わせた』。上回ったんですよ。あの日、あの時の“先生”の想定を。
代表決定戦にはISに乗って数ヶ月の素人相手に辛勝で、その後も活躍の機会に恵まれず、練習試合の勝率も振るわなければ、国から課されていた
でも、あの一件で痛感しました。ヒトの成長って、『坂道』じゃなくて『階段』なんだなぁ、って。緩やかに昇っていく実感なんてまるでない日々に決して腐らず、挫けず、本気の努力を続けられた人だけが、『壁』を『階段』に出来るんだ。
“先生”はよく、こう言ってました。『集めた部品が揃う』『歯車が噛み合う』って。同じ意味ですよね。今までそれぞれ、個別にしか動かせなかった回路が、中継器を得た途端、連動して、それまでとは比べ物にならないくらいの出力を生んだりする。でも、そうだと解っていても、その為に今のままでいいのか、新しい何かを始めるべきなのか、後になってからじゃあないと解らない。だから、明確に長所と短所と『こうするといいよ』ってひとりひとり具体的に教えてくれた“先生”は本当に凄いと思うし、そんな“先生”の予想をいい意味で裏切ってみせたセシリアのことを尊敬したし、同時に凄く悔しかった。
だって、“先生”の反応が全然違ったもの。それまでの皆や、
繰り返しますけど、セシリアのこと、本当に尊敬してるんです。だって、見てて知ってたし、解ってたから。ずっと、ずっと、愚直なくらいずっと、頑張ってたこと。いつも余裕があって優雅なようで、水面下じゃあいっつも120%で頑張ってるってこと。……あぁ~、何て言ったらいいんだろう。あれから結構経つのに、ちょうどいい言葉が見つかんないや。彼女とはホント、
でも、うん、あの
4:36。更識簪の握るストップウォッチは、そのような表示のままで停止していた。視線の先では相変わらず泰然自若として佇んでいる"
ここまで何十人もの生徒が挑戦をした中では、時間いっぱいを使い切った凰さんに次いで2位。決着はSEの限界消費によるものなのだけれど、攻撃を食らっての消費ではなく、BITの不慣れな制動による予想以上の消費の為であるから、ひょっとするとSEがもってさえいれば凰さんのように5分間フルで戦い切れたかもしれないと思う。
肩を大きく上下させながら、額から滝のような汗を流している彼女の姿に、日頃の『優雅たらん』としている面影はかけらもなく、けれどそれを見ている誰もがその様を尊いもののように捉えていることは、勝敗が決して暫くして尚続いている静寂が、何よりも如実に物語っていた。
素晴らしい試合内容だった。素人目に見たって、誰もが手放しにそう思える、そんな内容だった。
まさか近接戦闘の弱点をそのように補ってくるとは。目から鱗である。3対6基のBITを1対2基毎に
「カッコいい」
ロマンに溢れている。自分の感想はこれに尽きた。いや、だって、ねぇ。
「エネルギー消費が大きかった原因は恐らくブレードビット。"
きっと、いや、間違いなく彼女は
「それが6基も、あるいは
それは、"
ぞくり、と。その姿を想像して、戦慄を覚えた。これを、たった1人で思いついたというのか。なんて恐ろしい。いや、きっと、彼女にそこまでの意図は、まだないのだろうけれど。
「BITはビーム兵器。出力を転用できれば
「か~んちゃん」
「―――に゛ゃッ、ほ、本音?」
突然、頬に冷たい感触を覚えてすっとんきょうな声を上げながらそっちに視線をやれば、相変わらず
「飲み物貰ってきたよ~。試供品だからタダなんだって~。どっちがい~い?」
「あ~……『
"GGC"の商品だから、アルバイトの時にも沢山貰ったし、どんなのかもよく知ってる。疲労回復だけじゃなく、体力増強効果もあるらしい栄養ドリンクだ。後半の効果は眉唾物だとは思っているけれど、確かに飲むと元気になったような感覚があるし、作っているのが
「こまめに水分補給しとかないとダメだよ~。また運ばれたくないでしょ~?」
「う」
そう、自分にはつい目の前の作業に没頭して寝食を忘れてしまう悪癖がある。事実、今日もまた、皆のデータ取りが捗りすぎて、すっかり忘れてしまっていたワケだし。
「あ、美味しい」
どうやら"Platinum"は酸味のきいた柑橘系の味みたいだ。初めて飲んだけれど、こっちは"Super"と違って割と好きだ。
「あ、りがとう、ございました」
「こっちこそ。面白かったよ。自分で考えたのかい?」
「はい。その、恥ずかしながら、英国には却下されてしまった没案、なのですけれど」
「え。なんで? こんな面白いのに、やらないなんてありえなくない?」
「それが、その―――」
「―――あ~、それは、うん、確かに契約云々も絡んでくるだろうし、向こうの言い分にも一理あるねぇ。でもなぁ、それにしたって
「それ、って、つまり」
「新しく組んだげるよ、トレーニングメニュー。なんならちょいちょいこうして、実践訓練に付き合ってもいい」
「本当ですかッ!?」
「どこまでやれるようになるのか、オイラも俄然興味が出てきたよ。……しかしまさか、自力でここまで。嬉しい誤算だなァ」
「? 最後の方が、上手く聞き取れなかったのですが、なんと?」
「いいや、ただの独り言。それだけ驚かされたってことさ。大したもんだよ、セシリア」
「あ、え、あ、あぅ」
あ。頭ポンポンされてる。先生って、本当に嬉しそうな顔で恥ずかしげもなくしれっと
「オルコット家のご令嬢も形無しかぁ」
解るよ。自分も初めてされた時は顔真っ赤にして固まっちゃったから。
「う~ん、ホントにそれだけカナ~」
「? 他に何かあるの?」
「……何でもないよ、独り言~」
本音が謎めいた微笑みでそんなことを言ったのを不審げに見やった直後。
「せ、先生ッ!! 次ッ、僕でもいいですかッ!?」
彼女にしては珍しい、どこか少し焦ったような大声を上げながら勢いよく立ち上がったのは、シャルロット・デュノアだった。
「お~、いいよ~。それじゃ早速、スタンバっちゃって~。セシリア、後で詳しく決めよう」
「は、はい」
すっかり骨抜きというか、夢見心地というか。ふらふらと覚束ない足取りでこちらへと歩いて来るセシリア・オルコットとすれ違う瞬間も、何やら凄い顔をしている。あれは、羨ましがってる? 悔しがってる? どっち? それとも両方? どちらにせよ、あれは嫉妬だ。『面白くない』って顔だ。
「へぇ、あんな顔もできるんだ」
もっと淡白というか、
つまり、それが意味するところは。
「…………」
あぁ、これで確信に変わった。
『面白くない』と考える自分に『そんなハズはない』『そんな暇はない』と強く念を押す。
今は日々がとても充実しているし、他にリソースを割いていられるような余裕なんてない。"打鉄弐式"の完成、その為に必要な知識や技術や経験を、少しでも早く、少しでも多く。改めてそう強く思い直して、始まろうとしている次の対戦のデータを取るために集中し始めた。
「……も~」
隣で本音が『ヤレヤレ』って風に苦笑していることにも、まったく気づかずに。
どうも、冷えピタの消費量が最近えげつない作者のGeorge Gregoryです。貼ってるだけで寝心地の良さが段違い。下手すりゃ全裸でも寝苦しいとか最近の猛暑はホント、おかしいですわ……北海道は湿度が低い方なのがまだ救いですかね。エアコンも冷房よりドライ運転で割と凌げる。というかそっちのが快適だったりする。
ナノテックの炭酸量に関しては、原作でラチェットが飲んだ時の反応から『多分こうなんだろうな』と解釈しました。味に関しては完全な妄想です。栄養ドリンクは学生時代、専らM〇NSTERのオレンジにお世話になってましたが、最近はとんと飲まなくなりましたね。たまに味が恋しくなって飲むことはありますが、頼ることはすっかりなくなりました。
いいテンポで更新続けられてるので、この調子でさっさと『あの戦闘』に持っていきたいところ。……正直、そこからが長いんだよな、このSS。
では、また近い内にお会い出来ることを願って。
《追記(2021.9.12)》
書こうと思ってた描写を入れ忘れていたことに今更気付いて加筆修正しております面目ない。
いつも感想ありがとうございます。あなたのその一言が俺の何よりの動力源です。
【追記】
普段やっている文章を書く練習で書き上げた短編を、一部の方から要望があったので公開することにしました。良ければ下記URLからどうぞ。
https://syosetu.org/novel/266870/