ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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【作者からの読者の皆様へ】
お手数ですが、本話を読む前に前話を読み返して下さると幸いです。
ハイ、久し振りにやらかしました。
入れないといけないハズの描写を入れ忘れてしまったことに今更気付きました。
なので、前話のラストを少々加筆修正しています。
本話を読むにあたっての問題はありませんが、目を通しておいてくださると嬉しいです。



Ramping Up Ⅶ

 IS学園1年1組副担任、山田真耶教諭にとって、その対戦カードは非常に興味深いものであった。

 

 山田真耶。嘗て織斑千冬と共にくつわを並べたこともある代表候補生時代の彼女は、その異名を『銃央矛塵(Killing Shield)』とされた。専用のカスタマイズを施した"Rafale"を自在に操り、数多くの対戦相手をその弾幕の中へと沈めてきたことからである。生来の重度の()()()()が災いして寸でのところで国家代表こそ逃したものの、その卓越した操縦技術と穏やかな人柄を買われ、現在こうしてIS学園にて教鞭を振るっている。

 

 そんな彼女にとって、シャルロット・デュノアという操縦者(パイロット)と"Rafale Revive CustomⅡ"という機体は、多くの点から密かに興味を惹かれていた対象であった。

 

 奇しくも現役時代の自分と同じ"Rafale"のカスタム機。搭載している武器の傾向ばかりか、選ぶ戦術までもが酷似しているのに加えて、あのデュノア社にてテストパイロットをしていただけあって、彼女は非常に器用だ。日々の授業や試験で用いる各種後付装備(パッケージ)の扱いだってソツなく人並み以上にこなしてみせる。

 

 そんな、あまりにも自分と似た彼女が、これからあの"黒豹"に挑む。

 

(どうなるんだろう)

 

 決して好戦的ではない、むしろ争いごとは好まない性格である彼女だが、そこはそれ、例え現役を退いたとしても()()()()()()()()()()

 

 眼前、真っ向から見合う両者の間で視線を左右させる。

 

 "黒豹(カデンソンさん)"は相変わらずの自然体。ほどよく脱力、弛緩している両手にはやはり、何も携えてはいない。既に頭部のヘルメットを装着しているので表情は窺い知れないが、漂う雰囲気からは疲労や緊張の気配は一切感じられない。1年生ほぼ全員、実に80人以上を朝からぶっ続けで相手しているというのに、なんてタフネスだろうか。機体のエネルギーが未だもっているのも勿論だが、その集中力が途切れていないのが不思議でならない。

 

 対する"RRCⅡ(デュノアさん)"であるが、普段よりも血気盛んというか、どうにも()()()()になっているように見える。いかにも『目にもの見せてやろう』と張り切っているような感じだ。意気込みは良いと思うけれど、同時に()()()()()とも思う。果たしてあれでいつも通り、あるいはそれ以上のパフォーマンスが出来るのだろうか。

 

 そんなことを考えている内に。

 

 

 

「――――始めッ!!」

 

 

 

 隣の織斑先生が鋭く開始を告げた瞬間、"RRCⅡ"が距離を詰めながら腕部の物理シールドに内蔵された"Gray Scale(69口径パイルバンカー)"の炸薬装填部(リボルバー)()()()()()()に鳴らした。

 

 対して"黒豹"は、それは凄まじい速さで"Dual Vipers(二挺拳銃)"を展開、連射を始める。が、"RRCⅡ"は物理シールドを前面に構え、低く屈んだ姿勢で被弾面積を最小限にし、そのシールドの側面に"Garm(アサルトカノン)"の銃身を乗せるようにして撃ち返しながら強引に突撃していく。そのまま打撃(バッシュ)かタックルを狙っているようだ。

 

 大した牽制にもならないと悟るや否や、"黒豹"が片手の"Dual Vipers(拳銃)"を"Omni-Wrench(オムレンチ)"へと換装し、勢いよく振り下ろす。するとレンチのアゴが主軸部から外れ、エネルギーワイヤーでまるでヨーヨーのように伸びながら"RRCⅡ"の頭上目がけ、低く鋭い放物線を描きながら迫っていく。

 

「なんのッ!!」

 

 シールド越しの攻撃も想定済みだったのだろう、"RRCⅡ"はシールドを跳ね上げるようにしてそれを迎撃。打ち払いながら"Galm(アサルトカノン)"を"Rain of Saturday(連装ショットガン)"に一瞬で切り替える。速い。恐らくコンマ2秒以下。国家代表クラスにも引けを取っていない。

 

 既にショットガンの有効射程圏内。これなら多少雑に撃っても()()()()()()。自分でさえそんな確信じみた予測をした。

 

 けれど。

 

 

 

「―――惜しい」

 

 

 

「え」

 

 我が目を疑い、目を凝らした。

 

 理由は2つ。まず1つ目は、"黒豹"の武器が"Dual Vipers(二挺拳銃)"から初めて見るものへと、いつの間にか換装されていた点。

 

 その銃は、決して『拳銃』などとは呼べない大口径。側面から下部にかけて巨大なリボルバー機構が実に無骨に露出、というかまったく銃身に収まりきるようなサイズではなく、装填される弾丸がいかに大きいかを物語っている。外観と色、そしてこの場面(射程)で彼が選んだことと、以前見せてもらった"黒豹"の資料の記憶とを照らし合わせて、あれは恐らく"Magma Cannon(マグマショット)"という近~中距離射程のショットガンであろうとアタリをつける。

 

 そして、2つ目。何よりもこれに驚いた。換装の速度が、尋常ではないほど速い。恐らくコンマ1秒以下。時すら止めたのではと錯覚するほどの、基礎中の基礎を極限まで磨き上げた『理想』。理解した瞬間、背筋を駆け上がったのは優れた技を見た感嘆ではなく、届かぬ先を見た嫉妬でもなく。

 

 乾いた銃声が2つ鳴る。先に火を噴いたのは"Magma Cannon(マグマショット)"。太い銃口から放たれた散弾は、名の通りにぐつぐつと煮え滾るマグマのような赫耀の尾を引きながら、しかしそのまま飛散することなく蛇のように弾道をくねらせ、全弾が正確に"RRCⅡ"へと襲い掛かっていく。

 

「な」

 

 何故、先に武器を展開していた自分よりも早く撃てるのか。彼女の顔はありありとそう物語っていながらも、そこは流石に代表候補生。咄嗟に襲い来る炎の蛇の群れへ引き金を絞りながら斜め前方へと低く跳ぶようにして最小限の被害に留める。そのまま"Rain of Saturday(連装ショットガン)"を収納して空いた手に"Bread Slicer(近接ブレード)"を逆手に展開しつつ"黒豹"の懐深くへ転がり込み、立ち上がる勢いに乗せて左の腰から右の肩への切り上げを狙う。

 

 "黒豹"は重力に任せて緩やかに背後へ倒れるようにして、すれすれでその斬撃を回避。それを見ると好機と判断したのだろう"RRCⅡ"はシールドの先端、"Gray Scale(パイルバンカー)"の穂先をがら空きになった胴体へ向けて叩き込もうとして。

 

「う―――」

 

 その穂先を、"黒豹"の足裏のバーニアの推進力が十全に乗った蹴りが寸前でかち上げる。そうして完全に防御の出来ない()()()()の姿勢になってしまった"RRCⅡ"の胴体に。

 

「―――わァッ!?」

 

 今度こそ"Magma Cannon(マグマショット)"の砲火が炸裂する。風船の破裂音のような乾いた銃声が3度続けて鳴り、その度に"RRCⅡ"の巨体が()()()に折れ曲がるようにして大きく吹き飛ばされた。

 

「ッ、なに、くそォッ!!」

 

 そんな不安定な体勢のまま、デュノアさんは歯を食いしばって再度"Galm(アサルトカノン)"を展開。面を作るように弾丸をばら撒きながら距離をとって仕切り直そうとする。が、やはり"黒豹"はそれを必要最低限の動作だけで回避しながら、逃がすまいと距離を詰めていく。両手に再び、やはり一瞬で"Dual Vipers(二挺拳銃)"を展開しながら。

 

「…………」

 

 ふいに、今朝のことを思い出す。

 

 まだ日が昇って間もないような頃、耳元でのいきなりの爆音に叩き起こされたかと思えば、いつの間にどうやって入ってきたのかは知らないが、バズーカ状の巨大なクラッカーを担いだカデンソン先生がいたのだ。

 

「今日の予定を変更していただきたく。理事長には許可貰ってますんで」

 

 なんてことをのたまわれた時はどうなることかと危惧していたが、いざ蓋を開けてみればどうだろう。彼の指導は実に的確かつ具体的で、教員である自分までもが自然と聞き入ってしまうような内容だった。

 

 しかし考えてみれば、技術者(メカニック)操縦者(パイロット)。双方において優れた知見を持ち、その腕は言わずもがな世界が認める一級品。そりゃあ比べるのも馬鹿々々しくなるというものである。

 

 彼が赴任してからというもの、何人もの教員が彼の奔放な、しかし()()()()()と的を得まくっている振る舞いに振り回され、参ってしまって、学園を去っていった。尤も、こう言ってしまうのもアレなのだけれど、去っていった人たちは皆、お世辞にも()()()()()()()ではなかったので、職場の環境はむしろ改善されたと言っていい。

 

 そして、自分との彼との付き合いはといえば、主な担当科目がISに関する実技や理論というのもあって、決して浅くも短くもない。

 

 一見すると軽々で杜撰な態度をとることから誤解されがちであるが、ことISに関してはどこまでも真摯。知識・経験共に豊富で、話してみれば基本的におちゃらけてはいるけれど、根の部分はとても穏やかな人物であることも解った。

 

 そんな彼を何故、今になって自分は。

 

「それが正しい反応だ、山田先生」

「織斑、先生?」

「アイツは次元が違う。この経験が生徒たちにとっていい刺激であるのは間違いないだろうが、我々はただただ素直に憧れたり、盲目的に従うのみであってはならない」

「……はい」

 

 IS学園は極めて特殊なケースであるとはいえ、自分たちは教師だ。親元を離れて学園に通う生徒たちの安全を、ご両親に代わって守る義務がある。故に、自分たちは常に『最悪』を想定して動かなければならない。そして、この場合における『最悪』とは、言うまでもなく。

 

(でも、だったら、何故)

 

 彼がもし()()()になってしまったら、自分たちには彼を止めうる手段がない。そのビジョンを思い浮かべることが、全くできない。それを不安と思うのは実力不足は勿論、『そんなことはありえない』と彼の人柄を信じられない不徳もあり。

 

 そして、より一層それを掻き立てるのが、ちらりと横目に見上げた先でほんの微かに吊り上がっている、唇の端。

 

(あなたはどうして、そんなに嬉しそうに笑っているのですか、織斑先生……?)

 




 補足説明

・“マグマショット(Magma Cannon)”(出典『4』)
 デュアルヴァイパーと並んで『4』の初期装備であるショットガン系ガラメカ。歴代のショットガン系の中でもかなり使い勝手が良く、チューンナップで大幅に性能を変えることもできる。作中でも説明したが、デカくて無骨なリボルバー機構と、それによる排莢音が最高にイカしている(作者の意見です)


 どうも、ようやく1回目のワクチン接種を終えた作者のGeorge Gregoryです。1日経っても接種箇所が腫れたみたいな痛みがあり、微熱みたいな感覚が続いていますが、大きな副反応もなくすんなり無事に仕事にも復帰。来月の2回目は、流石にヤバ気かしら。

 短めですがキリが良いので(いつもの) 困るとつい第3者視点に頼りがち。でも主観が入ってないから書きやすいんですよねぇ。戦闘描写は特に。

 緊急事態宣言延長の影響か、何故か勝手に有給消化シフト組まれて今月連休多め……ノルマの5日はまだしも、勝手にどんどこヒトの有給使わないでくんないかなぁ。何かあった時に困るじゃんよ。

 ともあれそんなわけで、既に次回の内容もほぼ纏まっているし、早ければ今週中に更新します。お待ちくだされ。まぁ、ついつい溜めてしまっていたMCUフェーズ4のドラマ作品やら『ブラックウィドウ』やら『シャン・チー』やらも見ないとなんですガネ~。リバイスもドチャクソ面白いし、困っちゃうな。

 では、また近い内にお会い出来ることを願って。

 いつも感想ありがとうございます。あなたのその一言が俺の何よりの動力源です。
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