ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】 作:George Gregory
――――『似てるな』って思ったんだ。
あの日。タッグマッチトーナメントの日。ラウラと"
こう思うのは烏滸がましいのも不謹慎なのも解っているのだけれど、手を伸ばせば簡単に届いてしまいそうなあまりにも近い距離で繰り広げられている『キレッキレの大立ち回り』に、思わず心が躍った。不幸中の幸い、とはちょっとニュアンスが違うかな。けれど、予想外の幸運だったことは間違いない。
教員部隊の人に助け起こされるまで地べたに這い蹲ったまま、ずぅっと見入ってた。魅入られてた。そして同時に、恐れ多くも、見た気がしたんだ。自分の戦闘スタイルを突き詰めた先にある理想形、あるいは完成形、その1つを。
"
こんな御大層な名前を貰っちゃあいるけれど、要するに大容量の"
だからこそ、
勝てる、なんて思い上がっちゃあいない。例え武装なしの上で逆立ちしてもらった上でだって、正直勝てる気がしない。けれど、『負けない戦い方』に関しては人一倍長けている自信があったし、"RRCⅡ"はそれこそ
そうだ。そのハズだったのに。
(何をやっているんだ僕はッ!!)
完全に我を見失ってた。こんな大雑把な組み立てで"
今更それを思い出したって、もう遅い。既に先生は僕の弾幕をするすると潜り抜けながら緩やかに2つの銃口を持ち上げている。あの"
シールドを前方に構えながら全力で後方に飛び退りつつ、"
……いや、自分でもなんとなく理由は解っているのだけれど、今それを認めてしまうと、もう何も手につかなくなるほどの大混乱と羞恥心に飲み込まれてしまいそうなので、必死に意識の外へと追いやろうと努める。まぁ、そもそもからして
「ッ、ウッソ、これだけ距離とっても当ててくるのォッ!?」
いくらISのエイムサポートがあるとしても、とっくに拳銃の射程じゃないのに、当たり前のように弾丸が"RRCⅡ"の肩や腕や、時折頬を掠めるような位置を通り過ぎて行って、まるで生きた心地がしない。こっちは不規則に動きながらライフルで撃ち続けて、それでもまるで当たっていないっていうのに。改めて敵に回すとこの恐ろしさがよく解る。今まで先生の相手をしてきた人たちは皆、こんな気分だったのかな。そりゃあ
依然、薄氷の上で綱渡りを続けている思考回路で考える。さっきの"
武器の展開の要する時間の差? それも確かにあると思う。"
(どうしてだ、どうして―――わァッ!?」
「呆けてる余裕があるのかい?」なんて言っている風に、1発の弾丸が額のど真ん中目がけて飛来してSEに弾かれ、その衝撃に上体が仰け反らせられ、その閃光に視界が明滅させられる。
マズい、このままだと追撃で一気に。そう思って強引にでも視線を戻した先で。
「あ」
"
(そうか、
そのように
改まって考えてみれば、なんてことのない単純な話なのである。
『銃を撃った』という結果の為には、弾丸を籠め、ホルスターから抜き、撃鉄を起こし、銃を構え、
では、これをISで行った時はどうなるか。どうなっているか。
弾丸を籠めるのも、撃鉄を起こすのも、インターフェースによって自動で行われる。『ホルスターから抜く』という行為は『"
そして僕は"
「それだけじゃあまだ遅い、ってことなんですよね」
「あぁそうさ。
目を覚ますと僕は仰向けに倒れていて、頭部装甲を解除した"
先生が肩に担いでいるのはついさっき、キレイに僕の頭を撃ち抜いてみせたライフル銃。名前を"
「キミに限らず、大部分の
ISはどんな姿勢でだって武器を展開させられるのだから、
曰く、"
「気持ちは解らなくもないけど、
つまり、いちいち無手の状態から早撃ちをするように"
「何か、コツみたいなものはありますか?」
「キミはどうやって"
「理論を勉強して、実践を繰り返して」
「
なんとも軽く言ってくれる。それとも、それだけ期待してくれてるってことなんだろうか。だとしたら、あぁ、そう考えただけで嬉しくなってしまう僕がいる。なんて単純なんだろう。でも、嫌じゃない。だから困る。とてもとても困ってしまう。
「大丈夫さ。これで
「何、より?」
「キミはアルの子なんだ。解らないハズがない」
「あ……はい」
ポンと頭に乗せられた掌に、髪が乱れないくらいそっと優しく撫で回される。無骨な金属の掌なのに暖かく感じたのは、その言葉の嬉しさも確かにあるけれど、それ以上に。
「よぅし、それじゃあ次は―――」
「―――私だ。構わないだろうか」
「OK。それじゃヨロシク。ほら、安全なとこまで下がっててね」
ラウラの凛とした名乗りに応えて所定の位置に戻っていく先生の肩ごしの笑顔に、段々と緩んでいく顔を両手で隠しながら、僕は皆のところへと戻っていく。お風呂上りかってくらいに火照っていて、とても熱い。多分、熟したトマトかってくらいに赤くなっている気がする。けれど、うん、やっぱりこれも嫌じゃないと思っている僕自身に、ほんのちょっぴり呆れてしまいながら。
補足説明
・“スナイパーライフル(Flux Rifle)”:出典『3』
名前の通りライフルなので、特性上万能とはいかないが、最初から最後まで頼りになる攻撃力・貫通力共に『3』において最強クラスのガラメカ。ガードボットやヘビーガンナー、ジャイアントメガボットのような大物連中が、コイツの一発であっさり轟沈していくのは実にスカッとする。ホロシールドとコイツのコンボは最早理不尽以外の何物でもない。その影響で後々のシリーズ作品においてライフル系に仕様変更(という名の弱体化)が入ったんじゃねーかなぁと勝手に作者は邪推している。
・“クイックチェンジ”
ラチェクラシリーズにおける武器の切り替えシステムの呼称。『1』ではまだゲーム内時間と並行して、であったが、『2』以降はポーズ画面のようにゲーム内時間が停止した状態で切り替えられるようになった。ので、傍から見ればコンマ1秒もクソもねーよな、という解釈で本作は書いており、事実上の『最速』となる。これを超えようと思ったら文字通り『時間を止める』か某『斬り抉る戦神の剣』的なことをしなければならない。
どうも、スムージー生活2ヶ月目に突入した作者のGeorge Gregoryです。小松菜・キウイ・リンゴ・バナナ・ブルーベリー・黒ゴマ・ハチミツを中心にあれこれ試す日々、楽しい。
既にコメントで言及されている方も何人かいらっしゃいましたが、ラチェットの戦闘スタイルにイチバン似ているのがシャルロットと"RRCⅡ"なんですよねェ……解る人にはこれだけで俺が彼女に何をさせようとしているかは解っちゃうかしら。
後もう少しで『あの事件』に突入します。書き始めた頃から早くやりたくて堪らなかった山場……イロイロ考えてますので、もう少し、もう少しだけ待ってておくんなまし。
では、また近い内にお会い出来ることを願って。
いつも感想ありがとうございます。あなたのその一言が俺の何よりの動力源です。