ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】   作:George Gregory

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ずっと溜め込んでた『ワンダヴィジョン』『ファルコン&ウィンターソルジャー』『ロキ』を一気見した勢いのまま『シャン・チー』を映画館に見に行って燃え滾った勢いのまま書いてます。



Ramping Up Ⅷ

――――『似てるな』って思ったんだ。

 

 あの日。タッグマッチトーナメントの日。ラウラと"Schwarzer Regen(シュバルツェア・レーゲン)"を飲み込んだ、真っ黒で禍々しい"暮桜"の()()()()()の前に颯爽と現れ、一方的に圧倒してみせた"黒豹(せんせい)"の戦い方。まるでおもちゃ箱をひっくり返したかのように、見たこともない武器が沢山出てきて、それらを出し惜しみなんて一切しないで、次々に切り替えて相手に一切の余裕を与えない。

 

 こう思うのは烏滸がましいのも不謹慎なのも解っているのだけれど、手を伸ばせば簡単に届いてしまいそうなあまりにも近い距離で繰り広げられている『キレッキレの大立ち回り』に、思わず心が躍った。不幸中の幸い、とはちょっとニュアンスが違うかな。けれど、予想外の幸運だったことは間違いない。

 

 教員部隊の人に助け起こされるまで地べたに這い蹲ったまま、ずぅっと見入ってた。魅入られてた。そして同時に、恐れ多くも、見た気がしたんだ。自分の戦闘スタイルを突き詰めた先にある理想形、あるいは完成形、その1つを。

 

 "高速切替(Rapid Switch)"

 

 こんな御大層な名前を貰っちゃあいるけれど、要するに大容量の"拡張領域(バススロット)"を最効率稼働させることで、事前の武装の呼出(コール)を省略、展開や換装を戦闘と同時進行させられるという、機能でも、ましてや単一仕様能力(ワンオフアビリティ)でもなんでもない、けれど僕のちょっとした自慢の特技。即ち、豊富な搭載量が生む手札の数と、その切替の速さによって、あらゆる戦況に柔軟かつ即時の対応ができる、というのが僕、シャルロット・デュノアと"Rafale Revive CustomⅡ"の強みというか、持ち味だ。

 

 だからこそ、()()()()()()()()()()()()()()()を見たいと思った。真正面、真っ向から見せてもらえるなら、この身をもって味わわせて貰えるのなら、これ以上の機会はないと思った。まぁ、それとは別に至極私的な理由もあるにはあるのだけれど、そこはそれ、内緒の話である。

 

 勝てる、なんて思い上がっちゃあいない。例え武装なしの上で逆立ちしてもらった上でだって、正直勝てる気がしない。けれど、『負けない戦い方』に関しては人一倍長けている自信があったし、"RRCⅡ"はそれこそ()()()()()()作られた機体だ。

 

 そうだ。そのハズだったのに。

 

(何をやっているんだ僕はッ!!)

 

 ()()()()()。初っ端から盛大に、それはもう見事なまでに()()()()()

 

 完全に我を見失ってた。こんな大雑把な組み立てで"Gray Scale(パイルバンカー)"なんか当てられるワケがないじゃあないか。あの"戦乙女(ブリュンヒルデ)"ですら攻めあぐねた人だっていうのに。

 

 今更それを思い出したって、もう遅い。既に先生は僕の弾幕をするすると潜り抜けながら緩やかに2つの銃口を持ち上げている。あの"Dual Vipers(二挺拳銃)"の正確無比な射撃は、外すのを期待するだけ無駄だ。ならせめて躱すための猶予を得る為に、少しでも長く距離をとる。

 

 シールドを前方に構えながら全力で後方に飛び退りつつ、"Garm(アサルトカノン)"から"Vento(55口径アサルトライフル)"へと切り替えて、更に連射をしながら考える。何故、あんな『今から直接叩き込みに行ってやる』なんて()()()()()な真似をしてしまったのか。

 

 ……いや、自分でもなんとなく理由は解っているのだけれど、今それを認めてしまうと、もう何も手につかなくなるほどの大混乱と羞恥心に飲み込まれてしまいそうなので、必死に意識の外へと追いやろうと努める。まぁ、そもそもからして()()()()()()()()()()のだけれど。

 

「ッ、ウッソ、これだけ距離とっても当ててくるのォッ!?」

 

 いくらISのエイムサポートがあるとしても、とっくに拳銃の射程じゃないのに、当たり前のように弾丸が"RRCⅡ"の肩や腕や、時折頬を掠めるような位置を通り過ぎて行って、まるで生きた心地がしない。こっちは不規則に動きながらライフルで撃ち続けて、それでもまるで当たっていないっていうのに。改めて敵に回すとこの恐ろしさがよく解る。今まで先生の相手をしてきた人たちは皆、こんな気分だったのかな。そりゃあ()()()()()()()って心折れるよね。

 

 依然、薄氷の上で綱渡りを続けている思考回路で考える。さっきの"Magma Cannnon(ショットガン)"はどうして、僕の"Rain of Saturday(連装ショットガン)"よりも先に撃つことが出来たんだろう。

 

 武器の展開の要する時間の差? それも確かにあると思う。"黒豹(せんせい)"のそれは、僕の"高速切替(Rapid Switch)"なんて名前が恥ずかしくなってしまうくらいに速い。性能なのか技術なのかは判らないけれど、どちらにしたってあの速さは()()()()()()()()()()()()という確信がある。だって、さっきの銃声の時間差はそれだけでは説明できないほどに長かったから。

 

(どうしてだ、どうして―――わァッ!?」

 

「呆けてる余裕があるのかい?」なんて言っている風に、1発の弾丸が額のど真ん中目がけて飛来してSEに弾かれ、その衝撃に上体が仰け反らせられ、その閃光に視界が明滅させられる。

 

 マズい、このままだと追撃で一気に。そう思って強引にでも視線を戻した先で。

 

 

 

「あ」

 

 

 

 ()()。いや、多分これはきっと、()()()()()()()()()と、直感的に確信した。

 

 "黒豹(せんせい)"が真っ直ぐに僕へと向けている"Dual Vipers(二挺拳銃)"の輪郭がほんの刹那、()()()と認識したと思ったら、その姿が既にまったく別の銃器へと変わっていた。長い銃身に添えられた照準器(スコープ)。それが意味することは、他でもなく。

 

(そうか、()()()()()()だっt―――)

 

 そのように()()()()()()瞬間、()()()()()()()()()に再び、今度は先ほどよりも遥かに強烈な衝撃と閃光が炸裂して、SEが尽きたのを知らせる警告音が徐々に遠ざかっていくのを覚えながら、僕はあっさりと意識を刈り取られた。

 

 

 

 

 改まって考えてみれば、なんてことのない単純な話なのである。

 

『銃を撃った』という結果の為には、弾丸を籠め、ホルスターから抜き、撃鉄を起こし、銃を構え、照準(ねらい)を定めて、引き金を絞る、といういくつもの過程(プロセス)が必要だ。

 

 では、これをISで行った時はどうなるか。どうなっているか。

 

 弾丸を籠めるのも、撃鉄を起こすのも、インターフェースによって自動で行われる。『ホルスターから抜く』という行為は『"拡張領域(バススロット)"から呼び出す』に相当する。そして、ハイパーセンサーがあるとはいえ、銃を構えるのも、狙いを定めるのも、引き金を絞るのも、操縦者(パイロット)自身の操作によるもの。

 

 そして僕は"高速切替(Rapid Switch)"によって極めて高速で『ホルスターから抜く』ことは出来るワケだけれど。

 

「それだけじゃあまだ遅い、ってことなんですよね」

「あぁそうさ。()()()()()()。まだまだキミは、()()()()()()()

 

 目を覚ますと僕は仰向けに倒れていて、頭部装甲を解除した"黒豹(せんせい)"が僕を見下ろしていた。どうやら意識を失っていたのはほんの数秒だけで済んだらしい。尤も、実際の試合じゃあその数秒が命取り、なワケだけれど。

 

 先生が肩に担いでいるのはついさっき、キレイに僕の頭を撃ち抜いてみせたライフル銃。名前を"Flux Rifle(スナイパーライフル)"と言うらしい。先生が持っている中でも、『ごく一部』を除けばトップクラスの破壊力と貫通力を持っているんだとか。「そんな危ないのを僕に使ったんですか」と少しむくれてみせると、先生は声を出してひとしきり笑った後、「ゴメンゴメン」と謝りながら僕を助け起こして、こう続けた。「正直言うと、キミみたいな相手がイチバン苦手なんでね、手加減が難しかったんだ」と。そう言われてしまうと、まぁ、悪い気はしなかった。

 

「キミに限らず、大部分の操縦者(パイロット)がそうなんだけど、『構えてから狙って撃ってる』ようじゃあ、オイラからすれば絶好の隙で、宝の持ち腐れなんだよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、不思議でならない。あぁ、引き金は『触れればいい』くらいにしておくともっと良いね」

 

 ISはどんな姿勢でだって武器を展開させられるのだから、()()()()()()()()()()()()()()()。ハイパーセンサーによるエイムサポートがあるのだから、()()()()()()()()()()()()()()()()。展開した時点で正しい姿勢で構えセンサーで狙いを定めておけば、もっと言うなら、展開する前からそれらを済ませておけば。

 

 曰く、"世界大会(モンド・グロッソ)"ですら()()()()が殆どを占めているし、むしろ実戦経験、特に実銃を扱ったことのある人ほどその傾向が強いらしい。「染みついてしまっているんだろうね」と苦笑いしながら、先生は続ける。

 

「気持ちは解らなくもないけど、使()()()()()()使()()()()()()()()()。折角あれもこれも勝手にやってくれるように出来てるのに。もっと頭を柔らかくしなくちゃ」

 

 つまり、いちいち無手の状態から早撃ちをするように"Dual Vipers(二挺拳銃)"を使っていたのも、先生なりの手加減の1つだったワケだ。それでも尚、追いつけていないのだから、"高速切替(Rapid Switch)"が聞いて呆れる。"高速切替(Quick Change)"くらいの方がお似合いなような―――いや、なんとなくだけれど、それも恐れ多い気がするのでやめておこう。

 

「何か、コツみたいなものはありますか?」

「キミはどうやって"高速切替(それ)"をそこまで磨き上げたんだい?」

「理論を勉強して、実践を繰り返して」

()()()()()()

 

 なんとも軽く言ってくれる。それとも、それだけ期待してくれてるってことなんだろうか。だとしたら、あぁ、そう考えただけで嬉しくなってしまう僕がいる。なんて単純なんだろう。でも、嫌じゃない。だから困る。とてもとても困ってしまう。

 

「大丈夫さ。これで()()()()んだし、何より」

「何、より?」

「キミはアルの子なんだ。解らないハズがない」

「あ……はい」

 

 ポンと頭に乗せられた掌に、髪が乱れないくらいそっと優しく撫で回される。無骨な金属の掌なのに暖かく感じたのは、その言葉の嬉しさも確かにあるけれど、それ以上に。

 

「よぅし、それじゃあ次は―――」

「―――私だ。構わないだろうか」

「OK。それじゃヨロシク。ほら、安全なとこまで下がっててね」

 

 ラウラの凛とした名乗りに応えて所定の位置に戻っていく先生の肩ごしの笑顔に、段々と緩んでいく顔を両手で隠しながら、僕は皆のところへと戻っていく。お風呂上りかってくらいに火照っていて、とても熱い。多分、熟したトマトかってくらいに赤くなっている気がする。けれど、うん、やっぱりこれも嫌じゃないと思っている僕自身に、ほんのちょっぴり呆れてしまいながら。




 補足説明

・“スナイパーライフル(Flux Rifle)”:出典『3』
 名前の通りライフルなので、特性上万能とはいかないが、最初から最後まで頼りになる攻撃力・貫通力共に『3』において最強クラスのガラメカ。ガードボットやヘビーガンナー、ジャイアントメガボットのような大物連中が、コイツの一発であっさり轟沈していくのは実にスカッとする。ホロシールドとコイツのコンボは最早理不尽以外の何物でもない。その影響で後々のシリーズ作品においてライフル系に仕様変更(という名の弱体化)が入ったんじゃねーかなぁと勝手に作者は邪推している。

・“クイックチェンジ”
 ラチェクラシリーズにおける武器の切り替えシステムの呼称。『1』ではまだゲーム内時間と並行して、であったが、『2』以降はポーズ画面のようにゲーム内時間が停止した状態で切り替えられるようになった。ので、傍から見ればコンマ1秒もクソもねーよな、という解釈で本作は書いており、事実上の『最速』となる。これを超えようと思ったら文字通り『時間を止める』か某『斬り抉る戦神の剣』的なことをしなければならない。

 どうも、スムージー生活2ヶ月目に突入した作者のGeorge Gregoryです。小松菜・キウイ・リンゴ・バナナ・ブルーベリー・黒ゴマ・ハチミツを中心にあれこれ試す日々、楽しい。

 既にコメントで言及されている方も何人かいらっしゃいましたが、ラチェットの戦闘スタイルにイチバン似ているのがシャルロットと"RRCⅡ"なんですよねェ……解る人にはこれだけで俺が彼女に何をさせようとしているかは解っちゃうかしら。

 後もう少しで『あの事件』に突入します。書き始めた頃から早くやりたくて堪らなかった山場……イロイロ考えてますので、もう少し、もう少しだけ待ってておくんなまし。 

 では、また近い内にお会い出来ることを願って。

 いつも感想ありがとうございます。あなたのその一言が俺の何よりの動力源です。
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