ラチェット&クランク:インフィニット・ストラトス 【Ratchet & Clank:Infinity Sphere】 作:George Gregory
同刻。ドイツ東部、ザクセン州ドレスデン。"
「―――まーたナチス残党が悪役だったな」
「何回目かなぁ、このパターン」
「とっくに数えちゃいねーよ……にしても、すっかり
「初めは私たち2人だけだったのにね。ちょいちょい参加者が増えるようになったのは、一夏が参加してくれるようになってからじゃない?」
「その流れで隊長も頻繁にくるようになったってのもあるだろ」
「だね。最初は市販のお菓子なんかを持ち寄るくらいだったのに、いつの間にかデリバリー頼んだり、手料理作って持ってくるようになったり」
「あれも最初は一夏だったろ。焼きおにぎり」
「そうそう。あれ美味しかったよね~。皆で取り合いになってさ」
「ありゃあマジで美味かったからな、仕方ない。俺も3個食ったし」
「僕は2個。フフッ。元気にしてるかな2人とも。今は確か、臨海学校っていうのの真っ最中だっけ」
「デカい温泉のある旅館で2泊3日だとよ。羨ましいね」
「ねぇ。次は久し振りにヒーローものとか見ちゃう? あの2人のこと考えてたら見たくなってきちゃった」
「あぁ、いいんじゃねぇか? ここんとこずっとミステリだのホラーだのばっかりだったし」
「一夏がいた頃は、彼のリクエストで毎週必ず見てたもんね」
「お陰で影響受けた隊長もすっかりハマってやがったな」
「何見る? 最近は配信サービスが充実してて選り取り見取りだよね」
「あ~、冬に新作の公開が決まったし、復習も兼ねて
「いいね。ん~と、初期の3部作と、監督代わってからのと~」
「……本当に変わったよな隊長は。なんつーか、いざって時の頼もしさは一層研ぎ澄まされてんのに、それだけでもなくて」
「暖かくなった?」
「それだ。で、近くなった。距離が。心の」
「解るよ。まるで感情なんてないみたいに淡々としてるから『冷水』なんて呼ばれてたのに、よく笑うようになった。すごくいいことだよ」
「だな。あぁ、初期の『2』からにしようぜ。折角だ、映画館で俳優見比べられるようになっとこう」
「イイね。あ、イヨ~? 今からコレ見るんだけど、どう?」
「ついでだ、マチルダも呼んで来いよ。冷蔵庫にザッハトルテがあるから、ジャム持ってこいって伝えとけ。アイツのお袋さんのジャムは絶品だ」
「賛成。ほら、早く早く~」
"
対ビーム仕様ルナーズメタル・ヘキサ合板装甲 全距離対応強襲型。右肩部の主武装たる88口径レールカノンが明らかに重量過多のようであるが、PIC制御により鈍重さを感じさせない機動力を持つ。
またこのレールカノン、一見すると古典的兵器のようであるが、推進用の液体火薬をシリンダー内で臨界寸前まで加熱させ、発射時にはバレル内のレールガン機構で追加速させることで、ISでなければ実現不可能な驚異的弾頭速度を誇り、リボルバー機構によってその連射さえも可能にする。その大反動は脚部のアイゼンが銃架として機能することで解決している。
武装は他に、両腕部にプラズマ手刀をそれぞれと、4本のワイヤーブレードを搭載。砲撃の間隙を潜り抜けた先にはそれらが待ち受けている。ワイヤーブレードによる拘束や、軍人として鍛え上げられたナイフの技術が決して逃がさないという、第3世代機、いやさ現行の全機種をして屈指の完成度を誇る機体と言っていいだろう。
そして、この機体を語る上で欠かせないのが『停止結界』こと"Active Inertial Canceller"。空間干渉型の第3世代兵器。性能は広い射程での、停止限定のベクトル操作。圏内に踏み入ったものはあらゆる慣性を殺され、身じろぎ1つとれなくなる。
そんな"
"
故にこそ、彼女の"
以上のような点から、ラウラ・ボーデヴィッヒと"
そんな、非常に強力な"AIC"であるが、決して万能というワケでもない。
まず、発動するにあたって対象を視界に捉えはっきりと認識する必要がある。領域に侵入してきたものを片っ端から自動的に止めてしまうほどの利便性ではないので、視覚外や認識外からの不意打ちは勿論、"
加えて、『Inertial Canceller』という名の通り、動きを封じられるのは慣性が働いているものに限られる。近接武器や実弾であれば可能だが、光線兵器には全く効果がないというのはタッグマッチトーナメントにおいてシャルロット・デュノアが実践してみせた通り。
そして3つ目。対象の大きさや数に比例して、消耗するエネルギーと
故に、1年生の代表候補生の中で、"黒豹"に一矢報いれるとしたらラウラ・ボーデヴィッヒと"
「こ、れは、なんとも厄介な」
これで通算6度目になる背後からの爆発に思わずそう短く吐き捨て、ぐらついてしまった"
丸い頭にとってつけたようにアンバランスなカメラアイと、適当に折り曲げた針金のような頭頂部のアンテナ。二頭身にも満たないような小さいボディからほんのちょっぴりしか伸びていない脚で、よくもまぁここまですばしつこく走り回れるものである。その小型ロボットたちは"黒豹"の腕から、まるで丸めたちり紙のように次々に放られ、地面に落ちたと同時に起動。こちらを認識し、真っ直ぐに突撃してきて、そして。
「ぐぬッ」
トラバサミのようなギザギザの歯をめいっぱいに開いて噛みついて、ドカン。プラズマ手刀等で迎撃、叩き落しても同様。威力はそこそこ程度であるものの、音と爆炎が派手で酷く集中力を削がれる。そして何せ、この数だ。見渡す限りに満遍なくばら撒かれているので、1つや2つ止めたところでさして意味をなしていない。
「せぇッ!!」
ワイヤーブレードで一帯を薙ぎ払う。突撃の為のブースターを搭載しているとはいえ、基本的に二足歩行で近づいてくる為、一掃すること自体は難しくない。が、薙ぎ払っている間は。
「ホラ、また防御がお留守だ」
「チィッ」
その分、"黒豹"に対して無防備になってしまう。
"
「ガッ!?」
既に視界の外に放られていた小型ロボットがあちらこちらから襲い掛かってくる。先程からずっとこの繰り返しだ。一向に攻勢に移れないまま、じりじりとSEが削られていく一方。堪ったものではない。
『貴殿であれば、私と"
仕合を始める前、このように問うたのは先刻挙げた"AIC"の性能や難点を考慮した上で、それでも尚、それなりに善戦することは出来るだろうと踏んでいたからだ。"黒豹"の戦闘を見た回数は片手で数えられる程度でしかないが、それでも今までに見てきた武装には十分に対応ができるという確信があったからだ。
それを、まさか、こんな形で疑似的な多対一の状況を生み出すとは。恐れ入った。これはまだまだ、私の想像力というものが足りなかったらしい。
さて、改めて冷静に戦況を整理しよう。
周囲には自立稼働する爆弾の包囲網。抜け出そうとすれば、その外から確実にこちらの体力を削りつつ逃がしてくれない"黒豹"。レールカノンやワイヤーブレードではその速度を捉え切れず、プラズマ手刀の距離には踏み込んで来ない。またその反動がある為に射撃体勢にある間、自分は微動だにすることが出来ない。"AIC"で捉えることが出来ても、その維持はもって3秒前後。それでなくとも周囲の爆弾がそれを許さない。爆弾を封じればその隙を"黒豹"が見逃さない。
「このままではジリ貧、だな」
そう、
「いいだろう。
レールカノンで再度"黒豹"へ狙いを定める。但し、今度はアイゼンで固定せずに。当然、当たるなどとは思っていない。そのような意図がそもそもない。
なので、
「お?」
ワイヤーブレードを頭上に射出。その穂先をしっかりと視界の中心に定め、"AIC"を発動。瞬間、完全に慣性を殺され空間に縫い留められた穂先を支点とした巨大な
「おぉ?」
そうして180度、機体に加わるベクトルの方向が完全にひっくり返った瞬間に解除。勢いのまま体勢を整えながら、両腕のプラズマ手刀を展開。眼下、驚きのあまりか間抜けな声を漏らしてこちらを見上げている"
「
「
「うぉ――――」
榴弾を何発も叩き込んだような轟音と共に炸裂。吹き飛ばされた"黒豹"が岩盤に叩きつけられる。そこで初めて、周囲の皆からわっと歓声が沸いた。
「――――あぁ、良かった。今のはいい『遊び心』だった」
「お褒めに預かり光栄だ。しかし、今ので決まったとは思っていなかったが、そうもケロッと起き上がられると流石に複雑だな」
「いやぁ、誇っていいよ。こうもまともに一撃を食らったのはいつ振りかもわかんないもの」
衝撃で砕けた
「まぁいい。良い機会なんでな、暫く付き合ってもらうぞ"黒豹"」
さて。果たしてここからどのように攻めたものか。
どうも、ディズニー+で昔VHSが擦り切れるまで見たお気に入りを見つけてはしゃいでヘビロテしている作者のGeorge Gregoryです。『ティモンとプンバァ』シリーズと『三人の騎士』は特に未だに諳んじられるレベル。
AICとワイヤーブレードとか『やれ』と言っているようにしか見えなかった、と供述しており(ry
多分あと1~2話他の視点を挟んで、でようやく次に進めます。目標、臨海学校編は今年中。……守れるといいなぁ。
では、また近い内にお会い出来ることを願って。
いつも感想ありがとうございます。あなたのその一言が俺の何よりの動力源です。